どうしようもなく痛くて、苦しくて、たまらなかったのを覚えている。
(ここは…)
次に意識を戻すとたくさんの人が泣いていた。
どうしたのかと思っても僕の体は誰にも触れることができなくて。
そんな僕は泣いている人たちの中で唯一泣いていなかった騎手くんについていった。
妹のシルバフォーチュンは元気そうで何よりだった。
騎手くんのいうこともちゃんと聞いていたようだし。
フォーチュンの活躍を見届けてから、次に騎手くんが面倒を見ることとなったのは新しい僕の弟だというサンデースクラッパだった。
スクラッパは勘が鋭いのか何なのか、誰にも見えない僕に気づいていたようでいつも怯えていて、騎手くんが危なかったのでその間だけは少し遠くから見守っていた。
それから、スクラッパの面倒を見終わって騎手くんは事故に遭って騎手を辞めた。
騎手を続けられないほどの怪我だったのだという。
騎手を辞めた騎手くんはめっきりと人に会うのを止めた。
あまり人の来ることがない安いアパートの一室で僕の写真を見ては泣き、僕の名前を呼びながら眠ってうなされて起きてを繰り返して。
憔悴しきった彼は正直見ていられなかった。
もう、その頃には僕も自分が死んだのだと気がついていたけれど。
(騎手くん…)
何もできないなりに、
(嬉しいよ)
どうにかしてこの現状を打破した方がいいと畜生にしては賢い頭が言っていたけれど。
騎手くんが僕のことを覚えていてくれているのが嬉しい。
騎手くんが僕のために泣くのが嬉しい。
騎手くんが僕の夢を見てうなされているのが嬉しい。
騎手くんが僕の帰りを待ってくれているのが嬉しい。
騎手くんが僕の死を信じていないのが嬉しい。
騎手くんが、騎手くんが、騎手くんが、騎手くんが、…。
一番嬉しいのは、
(僕が騎手くんにとっての一番の疵になれていること…)
日常生活もままならないくらいに僕のことを思ってくれている。
眠れないほどに僕の帰りを待ってくれている。
(…なんて可哀想な騎手くん)
僕みたいなヤツに囚われて可哀想。
でも、でもさぁ、
(それが嬉しいんだ)
おかしいだろうけど。
騎手くんは僕のことを最高の相棒だと言うけど、僕がこんなヤツだったって知ったら幻滅するだろうけど。
(騎手くん。キミは…僕にとってカミサマみたいなヤツだったんだぜ)
こんな僕を一身に信じてくれた。
僕がいいと、僕じゃなきゃ駄目だって言ってくれた。
(…騎手くんはあと何年生きるんだろう)
僕は、どれほどキミがおかしくなろうとも傍にいるよ。
見えなくても傍にいるよ。
キミが亡くなったら、僕が足になって楽園へ連れて行ってあげる。
(それまでは…、それからもずっと一緒だよ)
…愛してるぜ、透。
お互いがお互いを「自分にはもったいない相手」と思ってるけど、それはそれとしてお互いに相手が選ぶのは何度生まれ変わっても未来永劫どう足掻いたって自分だけって考えている白峰おじさんとシルバーバレット。
お互いに愛が重いし、執着もバリバリだし、失礼だな純愛だよしてるんだ。
あの日からずっと、シルバーバレットは白峰透のそばにいた。