でも友情だと言い張る。
「い゛っ!?」
鋭い痛みが駆けのぼってきた。
その原因は分かっているので「いたいよ…」と漏らせば、もっと力を込められて。
「ひ、ぅ…」
牙が、皮膚を突き破る感触。
熱い吐息が、傷口を焼く。
「ぁ……は……」
血を啜る音。
じゅるり、と唾液を絡ませて啜られる音に、ぞくりとしたものが背筋を這い上がる。
「……ん」
小さく喉を鳴らして、離れていく気配。
それを名残惜しく感じながら見上げれば、その張本人はぺろりと唇を舐めていて。
「ま、満足……?」
「……」
ん、とでも言いたげに鼻を鳴らす相手に苦笑する。
「あとで絆創膏貼ってね」
しかしこの痛みにも慣れたものだ。
はじめの方は噛まれるたびに悲鳴をあげていたがこうも回数を重ねれば慣れてしまう。
「できた」
「ありがと、グローリー」
くしゃりとその髪を撫でてやれば、気持ちよさそうに目を細める姿が愛らしい。
しかしそれも束の間のことで。
「もう噛ませないよ」
「ちぇっ」
じろ、と自分の体に注がれる熱い視線にため息をひとつ。
これじゃ吸血鬼も真っ青だ。
毎度綺麗に治るからいいが、もう少し手加減をしてほしいものだ。
「もう……自分が痛くないからって、調子に乗らないの」
「だってー」
ぶーぶーと不満を漏らすグローリーゴアにはいはいと返して、その体を抱きしめる。
すると途端に嬉しそうに笑うものだから、こちらもつい頬が緩んでしまうのだ。
「ほら、いい子だからベッド行くよ」
ぽんぽんと背中を叩けば素直に抱き上げてくれるのでそのまま寝室へと向かうことにする。
ふたりベッドに横たえればすぐにいつものようにスキンシップをし始めるものだから、やはりグローリーゴアは甘えん坊だなぁ…なんて。
「はいはい」
*
牙が、疼く。
あの子が自分以外に愛想を振りまいているのを見ると。
あの子が自分以外の有象無象に笑いかけているのを見ると。
どうしようもなく、苛立ちと焦燥感に駆られる。
「グローリー?」
きょとり、とした目で見つめてくる彼女の首筋に噛みつきたい衝動をぐっと堪え…。
でも。
ああ、もう限界だ。
「……痛いよ」
思わずその細い首に牙を突き立てれば小さく抗議の声が上がる。
しかしそれを無視してさらに深く歯を埋め込めば、やがて諦めたのか抵抗はなくなった。
代わりに聞こえてくるのは荒い息遣いと微かな母音だけになる。
存外血が出るほどに歯を立てるというのは難しい。
だが、それがいい。
「ん、ひ……」
小さく漏れる声にぞくぞくする。
ああ、やっぱり自分はケモノなのだなと実感してしまうのだ。
だってこんなにも美味なのだから。
彼女の血は甘くて濃厚で……まるで麻薬のように中毒性がある。
(もっと欲しい)
本能が叫ぶままに吸い付けば、やがてぐったりとした様子でこちらに身を預けてくる彼女の姿があった。
「…」
やりすぎたかなと思いつつも反省はしない。
いやだってしょうがないじゃないか。
(好きなんだから)
【栄光を往く者】:
グローリーゴア。
噛みグセがある軸。
そこそこの頻度で吸血鬼みたくなってる。
もしくは獣。
でも噛み付く相手はたったひとりのみ。