さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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救い?



どうすることも

『見て欲しい』って気持ちは、往々にして傲慢なものだと思う。

何かを成してこそ見てもらえるというのに、何の努力もなく『見て欲しい』と願うのは、傲慢以外の何者でもないではないか。

 

「、」

 

…ずっと、そう、思っているのに。

誰もが(×)を、()()()()()()()

いつかいた"あの人"に。

『第二の"あの人"』になれるんじゃないかって、みんな。

 

「────」

 

……でも、それは違うんだ。

だって、"あの人"は死んだ。

死んでしまったから、その席には別の人が座ることになった。

そして、その人は"あの人"になれない。

だから、そこに座る人は二度と現れない。

"あの人"の席は永遠に空白のままなんだ。

 

「──────」

 

……ああ、そうだ。

わかってるよ。

それがどれだけ酷いことなのか。

必死に縋る手を離させることほど、残酷なことはない。

言うなれば、"あの人"は溺れるものが掴む藁であり、暗闇の中の光明であるのに。

"あの人"に似ているからと、手を伸ばしてきたのを似ている(×)自身が外すのだ。

 

「──────」

 

……でも、それでも。

みんなは、"あの人"を()()()()

"あの人"に成れない(×)を、仕方なく見ているんだ。

 

「─────」

 

ああ、そうだ。

わかってるよ。

それがどうしようもないことだって。

 

「──────」

 

ああ、わかってる。

でも───それでも(×)は。

ずっと、その席に憧れてたんだ。

 

 

壊れていくのを、見ていた。

『第二の"あの人"』だと目され、その期待に応えようとして壊れていく誰かを、ずっと見ていた。

優しかったあの子が、真面目だったあの子が、生意気だったあの子が、()()()になっていく。

それで最後には"あの人"に成れないと言って、その席に座ることを自ら拒む。

 

「─────」

 

……けれど、それは仕方のないことだとわかっている。

だって、みんなが見ているのは"あの人"で。

だから、そこにいる(×)を見ていない。

"あの人"になれないなら、見てもらえないのは当然だ。

それでも辛うじて誰かの記憶に残っているのは、あの子の努力がゆえだろう。

……でも、もう限界だったんだと思う。

 

「大丈夫か?」

 

伸ばした手に何の反応もない。

しかし、そんなのにはもう慣れてしまった。

嫌がられるなんてわけもなくされるがままに抱き上げられる体をベッドに持っていく。

 

「寝ろ」

 

ぼんやりとしたあの子を慰めるように撫でる。

嗚呼、

 

(自分がキミを救えるなんて、思っていないけれど)





見てくれないことを知っていたけど見て欲しかった。
見ていたけど、あの子はそれに気づいてくれなかった。
だから、────壊れちゃった。
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