さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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やっと…。



これで独り占め

あの頃と比べると、随分とがらんとしてしまったものである。

あれだけの数の子どもが暮らしてもまだ有り余る大きさだった家は、大人ふたりになってしまうと、もう…。

 

「掃除は…使う部屋だけで、屋敷全体は時期を決めてそういう業者を入れようか」

「そうだね」

 

僕と、家主のグローリーゴアだけになった家は、なんだかとても静かだ。

 

「寂しくなっちゃったね」

「……ああ」

 

グローリーが淹れてくれた紅茶を飲みながら、僕らはしんみりとしてしまう。

当主の座を無事引き渡して隠居の身となったグローリーは僕だけを傍において、残りの人生をここで過ごすつもりらしい。

 

「でも、これからはふたりだけだよ」

「そうだね」

「楽しみ」

「…僕も」

 

ふたりは笑いあって、それから……どちらからともなく抱き着いた。

子どもたちが家に増えるにつれ、中々出来なくなったこの触れ合いは、僕らにとってとても大切な時間だ。

 

「愛してる」

「僕もだよ、グローリー」

 

出会った時から、もはやこうなることは運命づけられていたのかもしれない。

それを少しだけ癪に思うけれど、ふたり揃って互いを手放せないほどにズブズブに沈んでしまった現状を思うと、運命に感謝していいものかどうか。

 

「ねえ、グローリー」

「なんだい?」

「僕ね、キミの事……大好きだよ」

「……言われずとも」

 

でも、これはこれで悪くない。

そう思えるくらいには、僕はキミに毒されているから。

 

 

僕が向ける愛を、キミが受け入れてくれるようになって。

ふわふわとした笑顔で「僕も好き」などと返してくれた暁には、何故録音しておかなかったのだろうと悔やまれた。

僕の愛は、キミの全てが欲しいという欲張りなものだ。

それなのに、キミはいつだって「僕も好き」と、ふわふわ綿菓子のように返してくれるものだから……僕はもっともっとと際限なく求めてしまうのだ。

 

「ねえ、グローリー」

「なんだい?」

「僕ねぇ、キミが僕の料理を幸せそうに食べてくれるの、好きなの」

 

栗鼠みたく頬いっぱいにキミが作った料理を頬張る僕を、キミのふにゃんとした笑顔が見ている。

 

「だから、これからもいっぱい食べてね」

「……うん」

 

遠に掴まれて久しい胃袋はキミの料理なしじゃもう生きていけないし。

「今日はご飯抜きです!」なんて言われた日には胃袋が「ごめんなさい!」とでも言うかのようにグーグーキュルキュルと泣き叫ぶし。

キミが僕の傍で笑ってくれるだけで、僕は幸せになれるんだ。

 

「ねえ、グローリー」

「なんだい?」

「僕ね、キミの事……えへへ」

「……分かってるさ」

 

代わり映えのない日常。

でも、これはこれで悪くない。

そう思えるくらいには、僕はキミに毒されているから。

 





ふたり暮らし:
サンデースクラッパ&グローリーゴア。
広い屋敷にふたり暮らししている。
グローリーゴアは隠居したので日々色々なことをしては幸せに浸っているらしい。
もしかしたら旅行とかに行ってたりとかも…?
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