さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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技能値30くらいに自分の"魔性"に自覚がある銀弾とCBの話。



APPはどれぐらいなんでしょうねぇ…?

シルバーバレットは、『特別』を愛することができないウマであった。

いや、できないというより()()()()()というべきか。

もはや誰から言われたのか忘れてしまった言葉に、今もなお囚われている。

 

──お前は、在るだけで人を狂わせる。

 

まだ幼かったシルバーバレットにそう言った誰か。

それが誰であったのか皆目の見当もないが、家族でなかったのは確かであった。

家族はそんなことを言わない。

彼らはとても優しい人たちだ。

『誰か愛する人を見つけなさい』と言ってくれた。

だからあれは家族の言葉ではない。

ならば、あの時の光景もきっと違う。あれはただの夢幻か、あるいは──そこまで考えて、目を開ける。

そこには見慣れた天井があった。

それから慣れた手つきで服を着替え、トレセン学園に登校。

変わらず話しかけてくる知り合いたちにいつも通り、可もなく不可もなく対応して席に着く。

 

「おはよう、シルバー!」

「あぁ、おはようミスター」

 

席に着くといの一番に話しかけてきたのはミスターシービーだ。

明るいみんなの人気者。

…だが、今日に限ってはいつもとは違う様子だった。

なにせジットリとした湿度でこちらを見ているのだ。

その目はまるで獲物を一欠片も逃さないようにしようという獣のごとく、鈍く輝いている。

 

「…どうしたの?」

「……別に?なんでもないよ?」

「えぇ……」

 

思わず呆れた声が出る。

これは絶対何かあるな、と思ったその時。

おあつらえ向きにチャイムが鳴った。

 

 

「まさか喫茶店に誘われるとはね」

「アタシだってたまには年頃らしく振る舞うよ」

 

放課後。

シルバーバレットはミスターシービーと共にトレセン学園から少し離れたこじんまりとした喫茶店にいた。

店内にいる客は彼女たちふたりしかいない。

しかしそれでも居心地が悪いわけではなかった。

窓から見える外の世界は橙色に染まりつつあり。

黄昏時、逢魔が刻ともいうものはまさに今のような時間帯を言うのだろうとすら思う。

どこか現実離れしているこの風景の中でシルバーバレットはミスターシービーに対峙していた。

 

「それで?一体何を聞きたいんだい?」

「単刀直入に聞くけどさ、」

 

ミスターシービーがグラスの中の氷をカラコロと回す。

 

「シルバーって、誰か他人を『特別』にしたことって…ある?」

 

あまりにも唐突すぎる質問に面食らい、虚をつかれ。

「家族とかトレーナーは無しだよ」と先手を打たれたのを理解するのに数秒かかった。

そしてその後に、頭の中では思考が始まる。

ミスターシービーが言おうとしていることは恐らく、彼女のような少女がするものではない。

もっとこう、成熟した大人たちがするような類のものだ。

それをどうして自分に対して問うのか。

そもそもなぜそんなことを聞くのか。

疑問だらけの頭を落ち着かせながらシルバーバレットは言葉を紡ぐ。

自分が今どんな顔をしているのか分からない。

おそらく酷く困惑した表情をしているに違いないが、それを彼女に見られているのは…何故か嫌ではなかった。

それが良いことなのか悪いことなのかはさておき。

 

「はは。なぁに、怖がらなくていいよ」

 

じぃ、と剣呑な光を宿す目が見つめる。

 

「シルバーの【特別】に、」

 

───アタシを置くことを、考えてくれれば…それでいい。

 

「そんな話さ」





とりあえず…意識ぐらいはしてもらわなきゃ。ね?
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