さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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たぶん、双方的に。



理解不能

「なんでみんなあんなに気負うんだろう?」

 

コテリとシルバーバレットが首を傾げる。

普通に走れば勝てるのに、と心底から思っている顔だ。

そりゃあそうだろう。

だってこのウマは最初から最後まで誰にも競り合われたことはなく。

自分のペースで好きに走って、それで勝っていたのだから。

誰にも影を踏ませず、背中だけを見せて。

 

「どうして?」

 

無邪気に、残酷に。

シルバーバレットは不思議そうに告げる。

 

「それができたら困りはしねぇよ」

 

そしてそれにそう返すのは親友であるサンデーサイレンス。

あまりにも無垢な、無垢すぎる疑問にもぶっきらぼうに返して、それで納得させられるぐらいには信頼関係を築いている。

 

「でも、みんなはそうじゃないよ?」

「そうだな。それができるからお前は強いんだよ」

「ふぅん?」

「……ああ、そうだ」

 

その無垢な問いにサンデーサイレンスは肯定を返す。

シルバーバレットは自分が強いことを自覚していない。

だから自分の強さが他のウマとどう違うのかを理解せず、ただ走ることを楽しんでいるだけ。

だがそれはあまりにも残酷なことだ。

レースに勝つという目的のために走るのではなく、ただ楽しんで走るだけ。

 

「みんなは違うの?」

「ああ」

「じゃあ僕は?」

「お前は……ちょっと特別だ」

「そっかぁ」

 

シルバーバレットはサンデーサイレンスの答えに満足して頷く。

そして、その無垢な瞳で親友を見つめてこう尋ねた。

 

「ねぇ、サンデーサイレンス」

「……なんだ?」

「僕と走ってくれる?」

 

そんな言葉にサンデーサイレンスはコクリと頷くと、準備運動をし始める。

 

「でも、日常用の靴だから本気で走れねぇぞ」

「それは僕もそうだよ」

「そういやそうか」

 

ふたり、ふらりと走る。

だがしかし、その走りは徐々にスピードを上げ、やがて全力疾走へと変わっていく。

 

「やっぱりお前、速いな」

 

サンデーサイレンスはシルバーバレットの走りをそう評する。

その言葉は紛れもない事実であり、このレース(遊び)においてサンデーサイレンスは常に二着だった。

一着はいつもシルバーバレットで、二着がサンデーサイレンスだ。

それを彼は特に何とも思ってなかった。

逆に、現役時代に足を骨折したり屈腱炎を発症したことがあるらしい相手に怪我がないように、と。

 

「ねぇ」

「なんだ?」

 

走りながらシルバーバレットはサンデーサイレンスに話しかける。

その口調はどこか弾んでいて、まるでこれから遊びに行く子どものようだ。

 

「僕って速いのかなぁ?」

 

そんな質問にサンデーサイレンスはこう返す。

 

「ああ」

 

とだけ言って頷いた。

そして彼は続けて言うのだ。

このレースが日常用の靴でやっているから、全力ではないだけで。

きっと、今でも───。






僕:
シルバーバレット。
自分が出来ることはみんな出来ると思っている。
何やかんやと人の心がなさそう。
なんで?って無垢に詰めてくるんだ…。
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