『最強』の内側を唯一知る。
【金色旅程】が知るシルバーチャンプという後輩は、世間や周りが言うように孤高の存在…ではなく、泣き虫で痩せっぽちの、ただの子どもだった。
「先輩、ただいま帰りました」
「ん」
どうしてか、シルバーチャンプは【金色旅程】によく懐いた。
そりゃあ確かに寮の同室でよくしてやったけれど、それにしても。
「おみやげ、いっぱい買ってきたんですよ」
「おー」
引退レースを終え、秘密裏に帰ってきたシルバーチャンプを出迎えるのは【金色旅程】のみ。
本来なら取材陣やらファンやらに囲まれて、凱旋パレードとかしてもおかしくはないのに。
「先輩、今日はトレーニングなかったんですか?」
「まあな」
そんなことはない。
だが、シルバーチャンプのことを迎えに行くと正直に告げて、許可をもらっただけだ。
「あ、そうだ。先輩ってもうご飯食べました?」
「いや、まだだ」
「じゃあ一緒に行きませんか?いま帰ってるルートに美味しいお店があるらしくて!」
「あー……」
シルバーチャンプはにこにこと笑いながら【金色旅程】の手を引く。
その姿はまるで親に甘える子どものようだ。
(……こいつ、俺がいなくなったらどうなるんだろうな)
そんな心配をしてしまうほどには、この後輩は危うかった。
ニコニコと無垢に笑い、先輩先輩とまとわりついてくるシルバーチャンプ。
「先輩、俺ね」
「……うん?」
「先輩に、会いたかった」
「……そうかよ」
その笑顔はあまりにも眩しすぎて、【金色旅程】はそっと視線を逸らしたのだった。
*
シルバーチャンプは、ずっとずっと【金色旅程】を慕っている。
"前"とは違い、随分な実力になってしまったシルバーチャンプを疎むことなく、むしろ「よく頑張ったな」と褒めてくれた。
シルバーチャンプの頑張りを、認めてくれた。
それがどれほど嬉しかったか、きっと【金色旅程】はわからないだろう。
だからシルバーチャンプも、この気持ちを伝えなかった。
『先輩!俺、先輩のことが大好きです!』なんて伝えても困らせるだけだとわかっていたから。
(でも……)
それでもやっぱり伝えたかったのだ。
"前"に言えなかった分を取り返すように。
「あ、先輩!またビデオ見てるんですか?」
「おー。お前も見るか?面白いぞ」
「……じゃあ、ちょっとだけ」
シルバーチャンプは【金色旅程】の隣に腰掛ける。
"前"にはなかった距離感が妙にこそばゆくて、シルバーチャンプは少しだけ頬を染めた。
「あ、先輩!俺、この映画気になってたんです!」
「そ」
「いつか一緒に映画館行きません?」
「まあ、そのうちな」
シルバーチャンプが【金色旅程】に異様なまでに懐くようになったのは、一重にこの距離感のせいだろう。
"前"はこんなに近くにいられたことがなかったから。
(……でも)
シルバーチャンプは知っている。
この距離が、もう長く続かないことも。
「先輩は、すごいですもんね…」
【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
逆行軸。
最強になったが、その素を知るのは家族と同室である【金色旅程】のみ。
だいぶ【金色旅程】に依存してそう。
情緒ぐちゃぐちゃだあ…。