さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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『最強』の内側を唯一知る。



あなただけ

【金色旅程】が知るシルバーチャンプという後輩は、世間や周りが言うように孤高の存在…ではなく、泣き虫で痩せっぽちの、ただの子どもだった。

 

「先輩、ただいま帰りました」

「ん」

 

どうしてか、シルバーチャンプは【金色旅程】によく懐いた。

そりゃあ確かに寮の同室でよくしてやったけれど、それにしても。

 

「おみやげ、いっぱい買ってきたんですよ」

「おー」

 

引退レースを終え、秘密裏に帰ってきたシルバーチャンプを出迎えるのは【金色旅程】のみ。

本来なら取材陣やらファンやらに囲まれて、凱旋パレードとかしてもおかしくはないのに。

 

「先輩、今日はトレーニングなかったんですか?」

「まあな」

 

そんなことはない。

だが、シルバーチャンプのことを迎えに行くと正直に告げて、許可をもらっただけだ。

 

「あ、そうだ。先輩ってもうご飯食べました?」

「いや、まだだ」

「じゃあ一緒に行きませんか?いま帰ってるルートに美味しいお店があるらしくて!」

「あー……」

 

シルバーチャンプはにこにこと笑いながら【金色旅程】の手を引く。

その姿はまるで親に甘える子どものようだ。

 

 

(……こいつ、俺がいなくなったらどうなるんだろうな)

 

そんな心配をしてしまうほどには、この後輩は危うかった。

ニコニコと無垢に笑い、先輩先輩とまとわりついてくるシルバーチャンプ。

 

「先輩、俺ね」

「……うん?」

「先輩に、会いたかった」

「……そうかよ」

 

その笑顔はあまりにも眩しすぎて、【金色旅程】はそっと視線を逸らしたのだった。

 

 

シルバーチャンプは、ずっとずっと【金色旅程】を慕っている。

"前"とは違い、随分な実力になってしまったシルバーチャンプを疎むことなく、むしろ「よく頑張ったな」と褒めてくれた。

シルバーチャンプの頑張りを、認めてくれた。

それがどれほど嬉しかったか、きっと【金色旅程】はわからないだろう。

だからシルバーチャンプも、この気持ちを伝えなかった。

『先輩!俺、先輩のことが大好きです!』なんて伝えても困らせるだけだとわかっていたから。

 

(でも……)

 

それでもやっぱり伝えたかったのだ。

"前"に言えなかった分を取り返すように。

 

「あ、先輩!またビデオ見てるんですか?」

「おー。お前も見るか?面白いぞ」

「……じゃあ、ちょっとだけ」

 

シルバーチャンプは【金色旅程】の隣に腰掛ける。

"前"にはなかった距離感が妙にこそばゆくて、シルバーチャンプは少しだけ頬を染めた。

 

「あ、先輩!俺、この映画気になってたんです!」

「そ」

「いつか一緒に映画館行きません?」

「まあ、そのうちな」

 

シルバーチャンプが【金色旅程】に異様なまでに懐くようになったのは、一重にこの距離感のせいだろう。

"前"はこんなに近くにいられたことがなかったから。

 

(……でも)

 

シルバーチャンプは知っている。

この距離が、もう長く続かないことも。

 

「先輩は、すごいですもんね…」





【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
逆行軸。
最強になったが、その素を知るのは家族と同室である【金色旅程】のみ。
だいぶ【金色旅程】に依存してそう。
情緒ぐちゃぐちゃだあ…。
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