さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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あなた自身が否定する。



どうしてあなたは

シルバーチャンプには、自分を『お姉さま』と慕う後輩がいる。

 

「おはようございます、お姉さま」

「お、おう…。おはよう、プレアー」

 

シルバープレアーというそのウマ娘は、シルバーチャンプよりも少しだけ大きい小柄な娘で、少し心配になるぐらいぼうっとマイペースな少女だ。

中等部一年生である彼女は、何を思ったかシルバーチャンプを初対面から慕い始め、今では会うたびに食事に誘われるほどである。

 

「今日もお昼、どうですか?」

「あ、あぁ…お前が、よかったら」

 

まあ、シルバープレアーが慕ってくれるようになってから、クラスメイトの誘いの猛攻を避けられるようになったのは不幸中の幸いだが。

 

「俺といても、何も楽しくないだろう」

 

ポツリとこぼした言葉はいつも通り。

こてんと首を傾げる後輩もいつも通り。

俺は、何も面白みがないウマ娘なのに。

慕うなら、クラスメイトのアイツらの方がいいだろうに。

 

「楽しくない、ですか?」

「……あぁ」

 

シルバープレアーは、少し考え込んでから、口を開いた。

 

「私は、お姉さまといる時間が好きです」

「っ!」

 

思わず息を飲む。

『好き』だなんて言葉、親以外に言われたことがなかった。

 

「お、お前……」

「はい?」

 

きょとんとした顔の後輩に、俺は……。

 

「……いや、なんでもない」

(……俺みたいなのを『好き』だなんて……変わったヤツだ)

 

ぽっと思わず頬を染めてしまうのに後ろから「おい」と慣れ親しんだぶっきらぼうな声が響いて、

 

「先輩」

「よう。プレアー、同席いいか?」

「はい。【金色旅程】先輩ならぜひ」

 

そういえば…。

 

(先輩、プレアーにだけは優しいよなあ)

 

他のやつには威嚇したりとかすんのに。

普段の先輩を思い浮かべて、俺は首を傾げた。

 

「先輩、明日もご一緒にどうですか?」

「あぁ」

 

 

シルバープレアーはお姉さまのことが大好きだから、いつもお姉さまをお昼に誘っている。

……なのに、

 

(……)

 

『俺みたいなの』と言った時のお姉さまは、なんだか寂しそうだった。

そんな顔をさせたくないのに、私にできることが何も思いつかなくてもどかしい。

 

「……なあ」

「はい?」

 

そう悩んでいる自分に声をかけてきたのが、お姉さまの同室である【金色旅程】先輩だ。

この先輩は、お姉さまのセコムとして学園内で有名な方で、お姉さまに近寄る輩は片っ端から威嚇したりと大変な方である。

 

「お前、アイツのことどう思ってんだ?」

「どう……とは?」

「……そのまんまだよ」

 

ぶっきらぼうな先輩の言葉に少し考えてから、私は口を開いた。

 

「大好きな人です」

「なら、いい」

 

あら?

たぶん噛みつかれるだろうなあと思いながら口に出した言葉だったがすんなりと納得されて、私は少し拍子抜けする。

 

「アイツは、自分を卑下しすぎる」

「……はい」

 

お姉さまは、いつも『俺なんか』と言う。

それは、私や【金色旅程】先輩……そしてお姉さまのクラスメイトとかの人たちが何度言っても治らない口癖だ。

 

(私がもっと大人でしっかりしていれば)

 

お姉さまを安心させてあげられるのにと悔しくて拳を握る私に先輩は言う。

 

「でもな、そんなアイツがお前の前でだけは違うんだ」

 

静かにそう告げた先輩は、ぺこりと頭を下げると。

 

「アイツを、頼む」

「え、あ…」





伸ばされている矢印を自分でへし折りまくっている自己肯定感ド底辺。
たぶんよっぽど攻めに攻めないと受け入れてくれないんだ。
なのでドンドンいこうぜ!(なお当人のことは見ないものとする)
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