さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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やーなの!!!!



あるイベントにて

思えば年老いたものである。

それは自分たちを世話してくれている人々を見ても思うことで。

ここにやってきた頃は若々しかったオニーサンも今ではおじさんであり。

昔みたいにキャアキャア言われなくなったことを考えると…。

 

『スー』

『ん』

 

スリ…と自分に擦り寄ってきた明るい栗毛に返事を返す。

年老いて痩せてしまった体ではその体格に擦り寄られるのはちょっとキビシイのだけど、手加減されていることは分かるので、その毛並みをグルーミングする。

 

「おう、今日も仲良しだな」

『うん』

「でもそろそろ時間だから行こうか」

『ん』

「はい、こっちな~」

『ん』

 

オニーサンとのおしゃべりは楽しいけど……。

この時間は終わりはちょっと憂鬱だ。

なにせ、

 

『や!』

『グローリー…』

『やー!やー!』

「うおっ!」

 

親友のグローリーこと、グローリーゴアに繋がっていた手綱がオニーサンの手から離れ、彼が首を振るのに合わせてぐわんぐわんと揺れる。

 

「ちょ、グローリーゴア!落ち着けって!」

『やー!』

「うおっ!?」

 

手綱をなんとか握りなおしたオニーサンが宥めようとするも、グローリーは聞く耳を持たない。

それどころか、さらに強く首を振って……。

 

『…グローリー?』

『っ、』

『落ち着こう、ね?』

 

意識的に声を低くして言い聞かせると途端に大人しくなった。

 

『もうご飯の時間だしさ。おなか、空いたでしょう?』

『……、』

『ね?』

『……、うん』

「はー……」

 

グローリーが落ち着いたのを見てオニーサンが息を吐いた。

 

「ありがとうな」

『ん』

 

まあ、親友である以上、これくらいはね?

でもまあ……。

「今日もまたか…」と呟くオニーサンにはちょっと申し訳ないと思う。

…ごめんね。

 

 

…なんてことが日常茶飯事だというのに。

何を思ったのか、故郷で展示イベントに出ることになってしまった。し、本来なら僕だけのところ…。

 

『スー、スー』

『…はぁ』

 

僕と離れられない親友も一緒に展示されてしまうことになった。

とはいえ、グローリーの様子はいつも通りで僕にベッタリ。

写真だってフラッシュありで撮られまくっているが、僕さえいればどうでもいいらしく、逆にもっと撮れと言わんばかりにベッタリ度がいつもに増してすごい気がする。

 

 

サンデースクラッパの一般公開

 

201×年○月☆日、東京競馬場にてサンデースクラッパの一般公開がイベントのひとつとして行われた。

内容としては繋養先の米国から東京競馬場まで輸送し、同競馬場のパドックを周回させ、放牧するというものであった。

当初はサンデースクラッパ1頭だけの公開の予定だったのだが、かつて同馬としのぎを削り、現在は共に同牧場で繋養されているグローリーゴアが同馬と離されると精神的に不安定になるため苦肉の策で帯同馬兼共に一般公開とあいなった…。





【戦う者】&【栄光を往く者】:
ふたりはニコイチ。
ずーっとべったりだった。
故に後年でも語り草になる。
とはいえ二頭とも美人さんだからなあ…。(遠い目)
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