さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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激アツ展開すぎるのでは???



あるCMの話

記念CMというか、まあそういった類いのものを撮るのだという。

そういうわけで集められたのは府中のレース場。

懐かしの勝負服を身にまとい、年に見合わずフンスフンスしていると出演者の呼び出しがかかる。

そうしてひとりずつゲートインして、

 

「♪」

 

ゲートが開いた瞬間飛び出す。

懐かしい感覚だ。

とはいえ引退して随分と立っているから鈍っているような気もするが。

 

(新鮮だな〜)

 

あの日走った時とは違う走り心地に感嘆しつつ、楽しく走っていく。

そもそも靴自体も進化したよな〜。

 

(楽しい〜)

 

ぐんぐんと進んでいく。

 

「はっ、はっ、はっ」

 

息を整える。

そりゃそうだ。

現役の頃ならともかく今はもう引退しているんだし。

……いや、それにしても……。

 

「みんな来ないね?」

 

思わずそう呟くが、その呟きに答えるものは誰もいない。

ただひとりを除いては。

 

『おーっとここでシンボリルドルフが上がってきた! これはすごい!』

 

実況の声が聞こえると同時に歓声が上がる。

 

(ルドルフ?)

 

そういえば居たっけかと思い出す。

カツラギは予定が合わなくて、ルドルフと僕が年長組で…って。

 

(ルドルフに上がってこられちゃ世話ないだろう、若人(わこうど)!!)

 

僕もルドルフも年寄りだぞ!?

 

「くそう、負けるか!」

 

僕は負けず嫌いだ。

誰にも負けないくらい。

だから走る。

全力で走る!

 

『やはりシルバーバレットが先頭でゴールイン!!』

 

実況の声が聞こえると同時に僕はゴールしていた。

それから少ししてルドルフが入ってきて、後続も続々。

 

「や、ルドルフ」

「おひさ、しぶりです…」

「息整えなよ〜。あ、スタッフさん水分くださ〜い」

 

見るに全員汗だくだ。

そもそも最近暑いしな。

涼しい時ってほぼないからこうなってもおかしくはないというか。

でも、

 

(若い子でも、こんなもんか〜)

 

 

その人たちと一緒に走れることに感動しながら、その実舐めていた。

自分たちよりもずっと年嵩のいった彼らだから、きっと自分たちが勝つことなど容易いだろうと。

だがそんなことはなかった。

彼らは全力で走っていて、その差は縮まるどころか開く一方だった。

 

「はっ!はっ!はっ!」

 

息が切れるがそれどころではないと走る。

初めに凄まじいスピードで逃げていった往年の大逃げの怪物を虎視眈々と狙う皇帝。

あのスピードに一瞬でも虚をつかれたのが敗因だったのだと言わんばかりに直ぐに対応した皇帝は通常なら逃げの作戦といえる場所に位置取り、機を伺い。

もうそうなってしまえば自分たちはなし崩しで、三位争いをしているという有様だった。

 

「はっ、はっ」

 

それでも負けたくないと走る。

そんな時だった。

 

『おーっとここでシンボリルドルフが上がってきた! これはすごい!』

 

実況の声が聞こえると同時に歓声が上がる。

 

(クソっ!)

 

CM撮影ともあり、普段よりは数少ない観客の目はもうふたりの走りに釘付けだ。

誰も後方にいる自分たちに目もくれず、銀色の弾丸を、皇帝を、応援している。

 

「負けるか!」

 

自分も負けじと走る。

 

(まだだ!)

 

と思ったところで。

 

『シルバーバレットが先頭でゴールイン!!』

 

実況の声が聞こえると同時に一際大きな歓声が上がった。

 

 

「はあっ、はっ」

 

そんな時だった。

ふとその人たちと目が合った気がしたのだ。

いや違う、確かに合ったんだ。

 

(あ……)

 

あの目は知っている。

現役の時何度も見た目だ。

もう引退したから見ることもないと思っていた。

見定める、いや『こんなもんか』という…。





僕:
シルバーバレット。
年老いてもやべ〜ヤツ。
でも現役時よりは出力ダウンしてるんだよなあ、これでも。
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