さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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離しやしない。



ぐしゃぐしゃの執着

我が祖父-ホワイトバックは稀に見るほどに凶暴…らしい。

らしい、というのは基本彼が僕ら家族にはとても優しいからであって、そんな面をまったくもって見せないからだ。

 

「優しい、良いおじいちゃんなんだけどなァ」

 

それまで絡んでいたのに、祖父の名を出した途端、脱兎のように逃げ出していくチンピラに、僕はため息を一つつく。

 

「まぁいいや」

 

気を取り直して、僕は再び歩き出した。

しばらく歩いて、ようやく目的地が見えてきた。

 

「ザンさん、います?」

「おー」

 

入ったのは馴染みの蹄鉄屋で。

整然と…ディスプレイはされていない商品の横を通り過ぎた先の、レジで老年のウマが煙草を蒸かしているのに「体に悪いですよ」といつも通りの苦言を呈すれば、「テメェのジジイだって吸ってんだろ」といつも通りに返される。

 

「おじいちゃんのこと、知りませんか」

「あ?」

「一週間前の、朝から家居なくて」

「知らねェな」

「……そうですか、ありがとうございます。また来ます」

「おー、気ィつけて帰れや」

 

ザンさんはそう言って煙草の火を消すと、再びレジ横の新聞を読み始めた。

僕はその背に一礼すると店を出た。

 

「どこ行ったんだろ……」

 

祖父の行き先は皆目検討がつかない。

まぁいつものことと言えばいつものことだけれど……。

 

(でも)

 

今日だけはどうしても何だか…探し出さなくちゃ、いけないような気がしたのだ。

 

 

「ふぅ…」

 

可愛がっている子どもが店の近辺から完全に去った後、『ザンさん』と呼ばれた男は椅子から立ち上がった。

そして明確な足取りで奥へ進むとそこには、

 

「よォ」

「…」

 

手と足を縛られ、轡を噛まされ転がされている小柄なウマがいた。

そのウマの名はホワイトバック。

…先程の子どもが探しに来ていた、祖父本人だ。

 

「そろそろ観念したらどうなんだ?」

 

ザンさんはウマの轡と手足を縛っている縄を解こうとはせず、ただ見下ろしている。

 

「……」

 

ホワイトバックは何も答えない。

いや……答えられないと言った方が正しいか。

彼は今、猿轡に加え、目隠しまでされているのだ。

だから何も見えないし、喋れないのである。

 

「ったく」

 

そんな様子にザンさんは呆れて肩を竦めると、そのウマが転がされている床から少し離れた。

すると拘束されているとは思えない動きで、ホワイトバックはザンさんの方へと脚の力だけで、()()()()()()()()

 

「ったく、まだ諦めてねェのか」

 

そう言いながらも彼はウマの拘束をキツくするべく動く。

しかしそんな様子を察してか、ホワイトバックは大きく身を捩って抵抗すると、そのまま床を転がり始めた。

そして壁にぶつかると、再び転がっていき……今度は店の裏口へと向かっていく。

そんな様子を見て、ザンさんはため息を吐くと拘束具の一部を引っ掴んで、元の場所に戻した。

 

「俺みたいなヤツに執着されて」

 

可哀想に、

 

「なぁ?」





欲しい欲しい欲しい!
なのでこうしましたっていう。
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