さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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周りのヤツらを目とか脳を丸焼きにするタイプの存在。


無敵の弾丸へ、キミに魅せられた僕らより

シルバーバレットが死んだ。

寒い冬が首をもたげてきた日のことだった。

地の果てまで駆けれただろう存在は空へと昇り、海へと堕ちたらしい。

 

「うそだ…」

 

そう呟く自分を嘲笑うかのように情報番組はシルバーバレットの訃報を垂れ流す。

画面の一部を占領する写真に『あぁ、キミはそんな顔をしていたのか』と考える。

誰もが遠ざかるキミの背を見るしかなかった。

追い縋ることしか、いや、追うことさえ許されなかったキミ。

すべてを覆い隠す勝負服をまとったキミの目に映っていたものはきっと、先頭の景色だけだろう。

 

どれほど必死で走ろうがただキミは前にいる。

顔のない者。影のない者。

その呼び名は確かにキミを現していた。

けれど、……キミがいなくなって数年経った今だからこそ考えることがある。

あの時、もしも自分がキミを追い抜かせていたのなら。

キミは今もまだこの世界にいてくれただろうか、と。

"楽園"なんて場所じゃなくて、ゴミゴミしてるけど、それでも愛おしいこの世界に。

どれだけ走っても抜かせなかったその背を追い抜かすことができれば、

できていれば、

 

「キミは、ここにいてくれた…?」

 

自分に勝てるやつがいないから"楽園"に行ったのだ、なんてキミの存在を覚えている人たちはそう言って自分を慰めている。

その言葉を聞くたびに自分は思うのだ。

『あぁ、あの時キミの背に届いていれば!』と。

そうしていればキミの目は"楽園"なんかに向かなかっただろうから。

キミは最期まで負けたことがなかったんだってね。

ならさ、キミを負かせることができていたのなら、そうなった可能性もあるわけだ。

…まぁ、結局はたらればの話だけれど。

 

でも、そう考えちゃうんだ。

たぶんキミと一緒に走った人たちはみんなそうだと思う。

キミの遠ざかる背に絶望しながらも、どうしようもなく惹かれてしまって。

 

だから今でも。

あの時代にいた人間は走り続けている人が多い。

気づいたらキミと走ったことのある人だけが参加できるグループチャットまで作っちゃったんだ。

でね、そこでみんな言ってるよ。

『シルバーバレットはいなくなったけど、いつか追いつけるように頑張ってる』って。

キミみたいになりたいって、キミのようにはなれないと知って絶望したって、走ることをやめられないって。

 

シルバーバレットの走りに魅せられたから止まれないんだ、って。

 

だからさ、いつか"楽園"に辿り着いたらよろしく頼むよ。

そしてまたあの時みたいに、一緒に走ってくれるとうれしいな。

 




シルバーバレット:追いつきたかった存在。でも勝ち逃げされた。
あの遠ざかる背はどうしようもなく絶望的であったけれど、魅せられずにはいられなかった。

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