さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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愛しているから、


おもいおもい

「よくあんな面倒な人と付き合えるわね」

 

そう言うと、父は「結構言うねぇ…」と少々引き攣った顔をした。

私の父-サンデースクラッパは、あるウマの…恋人通り越してもはや伴侶といえるまでの関係性に至っている。

それはひとえにあるウマこと、グローリーゴアが…。

 

「スー」

「どうしたの、グローリー」

 

とてつもなく、面倒な男だからである。

父とその男は自他ともに認める相思相愛だ。

それは互いに子どもができる前からそうだったようで、世間からもこのふたりはもうそういうものだと見られているぐらいには、だ。

その男が、父にかつてこう言ってきたらしい。

 

「スーとの子どもが欲しい」

 

……と。

それを言われた時の父の心境は想像に難くない。

なにせ、その男-グローリーゴアはどうしようもないほどの面倒なウマで、自分の興味のあることしかやりたがらないような男だからだ。

そんな彼でもさすがに冗談だろうと、常識的に父は考えていたのだが……彼は違ったようだ。

 

『僕は本気だよ』

 

そう一言だけ言ったらしい。

それからはもう怒涛だったという。

自身に一目惚れだった父の長女(私にとっては姉にあたる)との間にできた子が親子二代での三冠バになったのを皮切りに合法というか擬似的に…。

 

「お仕事は?どうしたの?」

「…終わってるよ」

「……そう」

 

日々同じことを繰り返しているせいか。

きっとサボって来ているのだろうがここで動かそうとしてもテコでも動かないことを知っている父は相手の好きにさせることに決めたらしい。

膝の上に乗せられ、抱き締められ、首筋の匂いを嗅がれたり、スキンシップをされるのを当たり前のように受け入れている。

大の大人ふたりがするにしては親密過ぎるそれは、きっと父がグローリーゴアに対して甘すぎるからだろう。

……いや、父も大概なのだが。

 

「スー」

「……なあに?」

「好きだよ」

「……僕も」

 

好きと伝え合うのを見るたびに私は思うのだ。

このふたりはもうどうしようもないほどに互いが互いに惚れ込んでいるのだと。

そんなふたりを間近で見ながら育った私だが、特にこれといって影響は受けなかったと思うし、これからもそうでありたいものだ。

……しかしだ。

 

「────、」

 

彼が私を呼ぶ。

グローリーゴアの子である彼が。

どうにも嫉妬深い彼はあまり私が他に目移りすることを良しとしない。

自身の父であるグローリーゴアと、昔からよくしてもらった私の父と会う時だけは何とか許してもらえるが…。

 

「もう帰るの?」

 

こくりと彼が頷く。

その手に促されるままに手を取れば優しく横抱きにされた。

 

「またね、────ちゃん。今度は赤ちゃん見せに来てね」





重い思い。
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