さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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いってくれると、


いっしょに

夢のために、たくさんの人を踏みつけにした。

踏み躙って、夢に手を伸ばした。

だから、僕はきっと地獄にいくのだ。

そう、目の前の相手に告げると「なら、一緒にいこうか」と優しく頬を撫でられた。

 

「ひとりじゃ怖いでしょう?だから、一緒に」

 

ほろほろ涙を流す僕の雫を掬うキミは、どこか嬉しそうに笑っている。

 

「大丈夫、怖くないよ。地獄でもキミをひとりにはしないから」

「ほんとう?」

「うん、約束」

 

そう言って、僕の小指と自分の小指を絡める。

指切りげんまん。

嘘ついたら針千本のーます!

つたない口調で歌いながら、キミは僕を抱き寄せる。

 

「だから、一緒にいこうか」

「……ん」

 

そうして僕たちは手を取り合って歩き出した。

もう後戻りはできないけれど、それでもいいと思った。

だってもう先行きは決まったのだから。

……初めて勝った、あの日に。

 

 

誰にも見せないキミの弱さを見た。

本来ひとりで抱え込んだだろう弱さを、見た。

目の前のキミは今にもほろほろと、クッキーみたいに崩れていってしまいそうで人知れずゴクリと唾を飲んだ。

 

「キミは、ひとりで抱え込みすぎだよ」

「……」

「もっと周りを頼ったっていいんだよ」

 

そう告げると、彼は少し驚いたように目を丸めた。それから、そっと瞼を落とす。

 

「……いいんだ」

「どうして?」

「これは僕が選んだ道だから」

 

そう言って薄く笑う彼に、胸がズキリと痛む。

ああもう!

こんなときまで強がらなくていいのに!!

そんな気持ちを込めて彼を抱きしめると、嫌に体が冷えていた。

 

「ねえ、僕は頼りないかな?」

「……え?」

「僕は、キミの助けになれないかな」

 

そう問うと彼は少し考え込んでから「ううん」と首を振った。

 

「キミは十分僕を助けてくれているよ」

 

そう言って僕の背中に腕を回して抱き返す。

その仕草がなんだかいじらしくて、思わず彼の頭を撫でた。

すると彼は嬉しそうに目を細めるものだから、もう可愛くて仕方がない。

ああもう!どうしてこのウマはこんなに可愛いんだろう!!

そんな気持ちを込めて抱きしめる力を強くすると、彼は僕の肩口に顔を埋めた。

「ありがとう」と呟く声は少し震えていたけど、僕は聞こえないふりをした。

 

 

大切なあの子は、一緒に地獄に落ちてくれると言った。

けれど、あの子は僕にとって大切な子なので、最期の最後に手を離した。

キミが行くのはこっちではないんだよ。

僕ひとりでいいんだよ、と。

 

「ねえ、」

「なに?」

「キミは……天国にいくべきだよ」

 

そう告げると、彼は驚いたように目を見開いた。

そうして、手を離した。





一緒に地獄へ行こうねしてたのに手放されちゃった!
しかも当の本人は「あの子は綺麗な所へ行くべきなんだ…」してるから…。
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