さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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いってくれると、


いっしょに

夢のために、たくさんの人を踏みつけにした。

踏み躙って、夢に手を伸ばした。

だから、僕はきっと地獄にいくのだ。

そう、目の前の相手に告げると「なら、一緒にいこうか」と優しく頬を撫でられた。

 

「ひとりじゃ怖いでしょう?だから、一緒に」

 

ほろほろ涙を流す僕の雫を掬うキミは、どこか嬉しそうに笑っている。

 

「大丈夫、怖くないよ。地獄でもキミをひとりにはしないから」

「ほんとう?」

「うん、約束」

 

そう言って、僕の小指と自分の小指を絡める。

指切りげんまん。

嘘ついたら針千本のーます!

つたない口調で歌いながら、キミは僕を抱き寄せる。

 

「だから、一緒にいこうか」

「……ん」

 

そうして僕たちは手を取り合って歩き出した。

もう後戻りはできないけれど、それでもいいと思った。

だってもう先行きは決まったのだから。

……初めて勝った、あの日に。

 

*

 

誰にも見せないキミの弱さを見た。

本来ひとりで抱え込んだだろう弱さを、見た。

目の前のキミは今にもほろほろと、クッキーみたいに崩れていってしまいそうで人知れずゴクリと唾を飲んだ。

 

「キミは、ひとりで抱え込みすぎだよ」

「……」

「もっと周りを頼ったっていいんだよ」

 

そう告げると、彼は少し驚いたように目を丸めた。それから、そっと瞼を落とす。

 

「……いいんだ」

「どうして?」

「これは僕が選んだ道だから」

 

そう言って薄く笑う彼に、胸がズキリと痛む。

ああもう!

こんなときまで強がらなくていいのに!!

そんな気持ちを込めて彼を抱きしめると、嫌に体が冷えていた。

 

「ねえ、僕は頼りないかな?」

「……え?」

「僕は、キミの助けになれないかな」

 

そう問うと彼は少し考え込んでから「ううん」と首を振った。

 

「キミは十分僕を助けてくれているよ」

 

そう言って僕の背中に腕を回して抱き返す。

その仕草がなんだかいじらしくて、思わず彼の頭を撫でた。

すると彼は嬉しそうに目を細めるものだから、もう可愛くて仕方がない。

ああもう!どうしてこのウマはこんなに可愛いんだろう!!

そんな気持ちを込めて抱きしめる力を強くすると、彼は僕の肩口に顔を埋めた。

「ありがとう」と呟く声は少し震えていたけど、僕は聞こえないふりをした。

 

・

・

・

 

大切なあの子は、一緒に地獄に落ちてくれると言った。

けれど、あの子は僕にとって大切な子なので、最期の最後に手を離した。

キミが行くのはこっちではないんだよ。

僕ひとりでいいんだよ、と。

 

「ねえ、」

「なに?」

「キミは……天国にいくべきだよ」

 

そう告げると、彼は驚いたように目を見開いた。

そうして、手を離した。





一緒に地獄へ行こうねしてたのに手放されちゃった!
しかも当の本人は「あの子は綺麗な所へ行くべきなんだ…」してるから…。
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