さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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無自覚に継承してる感じ。



祈りを叶えて

新興宗教のような、ものが流行っているらしい。

いわく、その存在に祈ると脚が速くなるとか。

いわく、その存在に祈ると故障が治るとか。

けれどそれが新興宗教ではないのは、よくある妨害な御布施とか妙ちきりんな物品を買わせたりはしないということで。

 

「つまり、お祈りするだけで幸せになれるって寸法か」

「……だが、そう上手くいくものか?それで速く走れたら誰も苦労しないだろうに」

「いやでも、信じる者は救われるって言うもんな」

 

そうボヤきつつ、サンデーサイレンスはその建物に足を踏み入れる。

理由としては単なる好奇心から。

どうやら随分な信者がいるようで、その建物の入り口には長蛇の列ができていた。

 

(こりゃあ無理だわ)

 

あまりの並びように俺は近くの店で時間を潰すことにする。

そうしてようやっと人の波が消えたところで、件の建物に入り込み…。

 

「だぁれ?」

「は、」

 

一直線に廊下を進んだ先にはそこそこの広さのホールがあって。

その奥の御簾の向こうから男女どちらともつかない声がした。

 

「みんなじゃないし、僕に助けを求めに来た人でもないよね?だあれ?」

「あー、俺はサンデーサイレンスってんだ。アンタは?」

「僕はね、」

 

御簾が「よいしょ」との声と共に上がり、顔が露わになる。

それは───人形のように美しい顔だった。

 

「『シルバーバレット』って言うんだよ」

 

そんなことを言って笑ったウマは……ひどくつまらなさげに見えた。

 

 

どうやら、シルバーバレットはサンデーサイレンスを気に入ったようだった。

本来なら時間になれば閉じるはずの門を開けっ放しにして出迎えては、信者から貰ったという菓子などを馳走してくる。

 

「あのね、僕ね、サンデーが生まれて初めてできた友だちなんだあ」

「…学校は?」

「ホームスクーリングってやつだねえ。家族が教えてくれてたの」

「だからそんなに白いのか」

「まあそれもあるけど…。すぐ真っ赤になっちゃうんだ、僕のお肌」

 

笑う彼とは裏腹に、サンデーサイレンスは顔をしかめる。

何故なら、目の前の体が異様に華奢だからだ。

まだ骨と皮になっていないだけで、何時そうなってもおかしくないような。

 

「サンデーも肌白いよねえ。僕、お外のことあんまり知らないけど、きっと素敵なところなんだろうね」

「……どうだろうな。でも、少なくともここよりはいいんじゃねぇか」

「そうなの?そっかあ……」

 

そう呟くとシルバーバレットは御簾の向こうに引っ込む。

そしてまた信者から貰ったという菓子を持ってくるのだった。

そんな日々がしばらく続いたある日のことだ。

サンデーサイレンスはシルバーバレットに珍しく、自主的に、声をかけられた。

 

「あのね、お願いがあるんだよ」

「なんだ?」

「お外に、連れてってほしいんだ」

「は、」

「もうすぐ、家族の誕生日なんだ。だからプレゼント買ってあげたくて」

「……そうか。いいぜ」

「本当?ありがとう!」

 

シルバーバレットは嬉しそうに言う。

サンデーサイレンスは、それをどこか冷めた目で見つめていたが……やがて、小さく笑った。

 





僕:
シルバーバレット。
気づけば神様扱いで、そう扱われて信者っぽいのができたのをいいことに家に据え置きにされちゃった。
信者の人たちを放っておけないので自分からは逃げられない模様。
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