さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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信じるものは救われる。



魔法の言葉

物心ついた時から、神様じみたモノだった。

キッカケは、近所に住んでいた地方トレセン所属だったお姉さん。

幼い僕によくしてくれたウマで、時には危ないところを助けてもらったこともある。

そのお姉さんが故障をした。

流れてきた噂によると復帰ももはや絶望的だという話にお姉さんの元を訪れてみればひどく絶望した顔をしていて。

だから、僕は。

 

「お姉さん」

『……』

「ぜったい、大丈夫だから」

 

そう言って手を握った。

握り続けた。

お姉さんの怪我が、どうか治りますようにと毎日お姉さんの手を握って、怪我した場所を撫でて、願った。

するとどうしたことか、奇跡的に、再発の予兆も欠片もないほどに、怪我が完治したのだ。

もちろん僕は神様なんかじゃないから、本当にそうなのかなんてわからない。

けれど、お姉さんは僕を見てありがとうと言ってくれたし、もうレースにも復帰できるらしい。

だからきっと大丈夫なんだと。

でも、その話がお姉さんや、近所の人たちから広まって。

自分も自分もと、こんな田舎くんだりまで僕を訪ねてくる人が後を絶たなくなった。

だから、僕は祈った。

 

「大丈夫」

『……』

「ぜったい、大丈夫だから」

 

また祈った。

今度は怪我が治ったとかじゃない。

もうレースに復帰できるだろうという人たちにも願った。

けど、やっぱり変わらなくて。

そんな日々が続き、やがて噂は人伝に人から人へ広まっていく。

僕の元にはたくさんの人が訪れては神様扱いして、そして去っていくのだ。

 

(ただ、祈ってるだけなんだけどなあ)

 

僕としては普通にしてるだけなんだけど。

でも、みんなは違う。

僕からしたらちょっと不思議な偶然を持ってるだけの子どもでしかないのに、そんな僕を神様扱いしてくるのだ。

 

(……もう、疲れちゃった)

 

僕はただ普通に暮らしたいだけなのに。

そんな僕の願いが通じたのか、それとも偶然か。

それからしばらくしたある日のこと。

 

「あ……」

 

いつものように祈りを捧げ終えてぼうっとしていると突然声をかけられる。

見ればそこに立っていたのは一人のウマだった。

年齢は僕と同じくらいといったところだろうか。

だがその目を見て、僕を頼りに来たわけではないと理解する。

だってそのウマは僕のことを信じてなどいなくて。

ただ、その目に宿るナニカに。

 

(この、人なら…)

 

そう、思った。

家族も僕のことをそういう風には見ないけど。

でも。

でもさあ。

 

(期待、しちゃったんだよ…)

 

神のように崇められる自分が。

そう、思ってしまったのなら。

 

(仕方ない、よね)





僕:
シルバーバレット。
信じられたせいで成功する確率が上がってるのも要因な気はするね。
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