怪物二匹。
オグリキャップというウマは基本穏やかで、天然な、でもそういうところがチャームポイントなアイドルではあるが。
「……」
「…なぁに?」
「あなたに、勝つ」
「…へぇ」
「勝って、あなたを何処にも行かせない。
"オグリキャップは終わった"と言われていた折。
誰も見向きしなかった『化け物』に、
真正面から睨みつけ、静かに啖呵を切っていた。
その威圧をものともせず、『化け物』は愉快そうに目を細めるだけで「とりあえずゲートに入ろうか」と、オグリキャップの肩を叩く。
まるで子どものわがままを宥めるように。
「まずは走るにしてもゲートに入るところからだろ?」
「あぁ……」
口調も、雰囲気も、普通のウマと変わらない『化け物』は優しく、だが確実にオグリキャップに釘を刺す。
"無闇矢鱈と威圧するな"と。
「……」
オグリキャップは無言で頷くと、ゲートに入った。
「……」
そして『化け物』もまた、何も言わずゲートへ入り……。
「……」
歓声の後に、悲鳴。
中には怒声のようなものも聞こえる。
だが、その全てが煩わしい。
なにせオグリキャップの前を走る『化け物』は一瞬でも気を抜いたらそのまま駆け抜けていってしまうから。
前に出て、虎視眈々と、神経を張りつめて。
そこまでしないと────。
『おおっと、ここでオグリキャップが早めに仕掛けた!?』
まるでまだレースに慣れていないジュニア級の選手のように、前を行く『化け物』に迫っていく。
「もう少し、もう少しで……ッ!」
オグリキャップは必死に食らいつくが、それでも『化け物』は涼しい顔のまま、最終コーナーへ入っていった。
「あ……」
その背中が遠くなっていくのを感じて、オグリキャップの足が止まりかける。
だが。
"まだだ!"と己に鞭を打つように足を動かし、さらに加速する。
そうして、意識的に領域を開く。
普段は条件をつけて開いているソレを、条件を無視して、何とか押さえつけて制御。
それぐらいしてようやっと…目に見えた結果が出始めるのだから、『化け物』の恐ろしさたるや。
『ここで、オグリキャップが加速した!これは持つのか!?』
「っ!」
"まだだ"と、さらに足を動かすが、それでもあと少しが届かない。
「……ッ」
『化け物』はただ、淡々と走っているだけに見えるのに。
その背がどんどん遠くなる。
まるで届かない星のように……いや違う。
この『化け物』は星などではない。
そんな生易しいものではないのだ。
───"そんなものに、させてやらない"ともいうが。
「シルバァ、バレットぉぉぉぉおおおおお!!!!」
「!」
鼓舞するように『化け物』の名を呼ぶ。
それに驚いたように、『化け物』が振り返った。
「!!」
そうして。
"やれるものなら、やってみろ!!"
そう咆哮が返されて。
その叫びに続けるように『化け物』は……いや、シルバーバレットは笑ってみせると。
「────」
ちなこの話の掲載があったあと、"【葦毛の怪物】オグリキャップ"ってアプリに実装されるんだよね。
しかも中距離の人権級でね…(遠い目)。
全員まとめてぶっ差すオグリキャップですわ(なお)。