さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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どこにもいけないけれど。




しあわせなくらし?

我が子たちに軟禁されて随分と経った。

『仕事』もしなくなったし、表舞台にも立たなくなった。

 

(暇だなあ)

 

料理こそ、何とかさせてもらえるものの、それ以外の家事はさせてもらえない。

掃除も、洗濯も、料理も。

全て、子どもたちがやってしまう。

 

(暇だなあ)

 

『仕事』をしていた頃は、毎日忙しくて大変だったけど、今の方が辛い気がする。

だって……。

 

「ねえ」

「何?」

「何かすることはないの? 僕」

「ないよ」

「……そう」

 

……これだもの。

もうね……本当にね!

 

「じゃあさ、何か本でもちょうだいよ」

「家にあるの読めばいいじゃないですか」

「全部読んだから言ってるんだよ」

「そう。じゃあ、これですね」

 

そう言って手渡されたのは、絵本だった。

しかも、表紙に描かれているのは、どう見ても僕だ。

 

「……これって……」

「はい、父さんです」

 

……嘘だろ?

なんで僕の絵本があるんだよ。

いや、確かに僕は伝説だけどさ……なんで絵本なんだよ!

そんなツッコミを心の中に留めておきつつ、聞いてみることにした。

 

「…誰が作ったのこれ」

「僕らですよ」

「は?」

「だから、僕らが作りました。これとか、いい出来だと思いますよ? ね、父さん」

 

いや……そんなキラキラした目で言われても困るんだけど。

 

「……まあ、うん。ありがとう……」

 

とりあえずお礼だけ言うと、子どもたちは満足そうに笑った。

 

(ああもう……)

 

本当に暇だ。

でも、この絵本だけは読みたくない!

絶対美化されてる!!

そんな思いを抱きながら、僕はその絵本を机の引き出しの中にしまいこんだのだった。

 

「やっぱいつもの本読むか」

 

羞恥心で心をグチャグチャにされるよりかは。

 

「父さん、何読んでるの?」

「うわっ!?」

 

突然背後から声をかけられて、思わず飛び上がる。

振り返るとそこには、一人の少年の姿があった。

 

「……なんだ、キミかあ」

「うん」

 

彼は僕の息子の一人だ。

名前は…なんだっけ?

なんで名前で呼ばない、()()()()かというと……まあ色々あったからだ。

そんなことを考えていると、彼が口を開いた。

 

「……ねえ」

「ん?なに?」

「これ……面白いの?」

 

そう言って彼が取り出したのは…さっきしまった、

 

「…うん、あげるよ。キミに」

「……いいの?」

「うん。僕には必要のないものだから」

 

良い人の顔をしながら、シレッと嘘をつく。

すると、彼は嬉しそうに笑った。

 

「ありがとう」

 

ああ……本当に罪悪感で死にそうだ。

でも、仕方ないじゃないか!

だって、あの絵本本気で読みたくなかったんだから!!

 

(それにしても……)

 

この少年も成長したなあ。

もう僕よりも身長高いし。

まあ、僕はもう成長しないんだけどさ。

 

「ねぇ、父さん」

「んー?」

「大事に、するね」

「うん」





僕:
シルバーバレット。
いつでも脳を焼く。
現在は家で静かに暮らしている…らしい?
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