さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

97 / 1539
夢はまだ、終わらない。


お前にだけは負けられない

小さなころからずっと、俺の前にはお前がいた。

"シロガネハイセイコ"。

同じ親父から生まれた、ある意味半身。

見惚れるような馬体と、それをも凌駕する力強い走り。

……あぁ、見蕩れなかったといえばウソになるさ。

憧れなかったといえばウソになるさ。

でもさ、俺はさぁ…、

 

(お前に勝ちたいんだよッ!)

 

お前が『アイドル』だというのなら、俺は『ヒーロー』なんだ。

ほら、…主役(ヒーロー)は遅れてやってくると言うじゃないか。

 

『シロガネハイセイコが逃げる。

ハイセイコが逃げる。

無敗の三冠なるか!

父であるシルバーバレットの夢を叶えるか!?

ッおーっと、ここでシロガネヒーローも飛んできた!

猛烈な勢いで詰め寄っていく!

逃げ切るか!差し切るか!

差した、撫で切ったァッ!!

シロガネハイセイコ!お前のライバルは俺だーッ!!

シロガネヒーローが菊花賞を勝ちました!』

 

なんつー顔してるんだ。

撫で切る一瞬、目を見開いたお前の顔のなんと面白いこと。

そして、今。

誰も見ていなかったぼんやりとした目にギラついた焔がともった。

…それのどこが『アイドル』なんだか。

 

*

 

父のようになりたかった。

父の夢を叶えたかった。

僕は"ハイセイコ"だから、そうあれと願われた。

ただ、その夢を追い続けた。

 

父の相棒だった人が僕の手綱を握り、僕の力を何倍にもして引き出した。

だから、慢心していたのかもしれない。

 

『シロガネハイセイコが逃げる。

ハイセイコが逃げる。

無敗の三冠なるか!

父であるシルバーバレットの夢を叶えるか!?

ッおーっと、ここでシロガネヒーローも飛んできた!

猛烈な勢いで詰め寄っていく!

逃げ切るか!差し切るか!

差した、撫で切ったァッ!!

シロガネハイセイコ!お前のライバルは俺だーッ!!

シロガネヒーローが菊花賞を勝ちました!』

 

気づけば僕の横にキミがいた。

幼いころからずっと一緒のキミ。

完璧なレース展開のはずだった、体調だって今まででいちばん良かった。

なら、なぜ負けた?

 

呆然とする僕の前でキミが笑う。

負けた僕を嘲笑っているというわけではない。

それが分かっているのにどうにも気持ちに整理がつかない。

 

「…気持ちで負けたねぇ」

 

そう、父の相棒だった人が言う。

気持ち。

ぼんやりと歩く僕に彼は「それが『悔しい』ってことさ。…そういえばキミは、負けたことがなかったね」と言う。

 

「今、それが知れてよかった。

キミは強くなれる。

今よりもずっとずっと」

 

この気持ちを糧にしろと言う。

それが大きな焔になるのだと。

『負けたくない』という、勝利への執念になるのだと。

 

そう…、そっか。

……なら、今度こそ。




シロガネハイセイコ:
シルバーバレットの初年度産駒。母父ハイセイコー。
主戦騎手は白峰透。
負けたのは唯一シロガネヒーローだけ。
この菊花賞のあとに腹いせとしてジャパンカップを取りに行く。
性格はいちばん父よりで、敗北を知ったシルバーバレットともいえるかもしれない。

シロガネヒーロー:
シルバーバレットの初年度産駒。母父タケホープ。
主戦騎手は某ヒットマンさんかな〜?という感じ。
ガチガチのステイヤー。
だが生涯敗北を喫した相手はシロガネハイセイコだけ。
明るいが少々調子乗りな性格っぽい。

シルバーバレット:
子どもたちにはわわ…ってなってる。
初年度から桜花賞・皐月賞・日本ダービー・菊花賞を子どもたちが獲ってきたのに宇宙猫してる。
なおこのあとも子どもたちがバカスカ勝ってくるし、どっちかというと日本G1より海外G1をかっさらってくる子どもたちなのでそのたびに宇宙猫顔。
最終的には子どもたちが優秀すぎて怖くなってべそかきはじめる。
ちな、産駒の中で唯一未勝利だった子も種牡馬になったら大成功かましてそれにもガチ泣きした(怖くて)。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。