さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

971 / 1416

似たもの同士。



怪物どっち?

生まれながらに『怪物』であった。

それを、生まれながらに理解していた。

愛しているが故に、喰らいたい。

愛しているが故に、壊したい。

最悪の矛盾。

愛しているのに、愛しているのに、愛しているのに。

愛したあなたの、すべてが欲しくて。

善意も、悪意も、喜怒哀楽も。

自分だけに、向けて欲しくて。

自分以外があなたの感情を揺さぶるなど、許容できなくて。

だから。

だから、我が愛しきあなたは同じように、『怪物』になってくれたのですね。

『怪物』になれば。

血も肉も骨も心も魂もすべて余すことなく。

私だけのものになるから────と。

ああ、ああ、ああ!

なんて、なんて!

 

「…嬉しい」

 

ああ、私は今幸せです。

幸せですとも!

だって、あなたも同じ気持ちなのでしょう?

私と同じ───。

 

「『怪物』同士、仲良くしましょう……?」

 

大量の(のろい)に濡れたその手を伸ばしながら、『怪物』はただ嗤った。

 

 

あの子は、たったひとりだった。

自身を『怪物』とし、『怪物』としてあらんとした、たったひとりの存在だった。

だから、ただ傍にいた。

傍にいて、あの子のひとりぼっちの『怪物』に手を伸ばした。

どうしてそこまでするの? と周りは驚いただろう。

それはあの子が『怪物』であり、あの子がただの人間だからだ。

ああ、違うよ?

あの子は本当に素敵で素晴らしい人間だもの。

故に、

 

───どうして、触れるの?

 

そう、心底不思議そうに告げる華奢な身体を抱き締める。

脆く儚い身体。

『怪物』として生まれ落ちなければ、その身体はとうに壊れていただろう。

『怪物』として生まれなければ、きっとこの子はみんなに囲まれていただろう。

ひとりぼっちの、哀しい子。

そんなのは悲し過ぎるもの。

 

「僕はキミに救われたんだ」

───そんなの知らない。

「キミが気付いてないだけだ」

───知らない、そんなこと。

「でも、ひとりじゃなくなっただろう?」

 

怯える体を掻き抱いて。

その額に、口づけを落とした。

「キミのそばにいるよ」

───いらない。

「それでも傍にいる」

───来ないで。

「キミが嫌だって言っても傍にいる」

───構わないで!

「大丈夫だよ、大丈夫」

 

だって、僕たちは同じなんだから。

『怪物』同士なら、一緒にいたって大丈夫でしょう?

 

「キミは、僕の『怪物』だもの」

───……。

「……だから、もう泣かないで」

───……。

「僕がずっと傍にいるから」

 

ああ、でも。

キミが本当に泣きたい時は。

僕がその涙を喰らってあげるからね?

 

「ずうっと、一緒」





怪物同士で愛し合ってろ!
…まあ普通の人ならその愛に押しつぶされちゃうからね、仕方ないね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。