さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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立ち直れるかな〜…?



ぽっきし

シルバアウトレイジが壊れてしまったのは、ふとした拍子にだった。

 

(────ぁ、)

 

ただただ普通に。

ぼうっとしていた折に、ぽろりと。

大きな塊から小さな欠片がこぼれ落ちるように。

その小さな欠片のあった場所からザラザラ崩れるように。

シルバアウトレイジは、壊れてしまった。

 

「────」

 

呆然とする。

それは本当に唐突で、何が起きたのかまるで理解できなかったから。

……いや、違うか。

きっと俺は理解したくなかっただけだ。だって、壊れたということはつまり、俺の全てが無に帰すという訳で。

だから俺はその現実を無意識に拒絶して、けれどそんな俺の現実逃避を嘲笑うようにシルバアウトレイジ(おれ)は崩れていく。

そうして俺がどうにも出来なくなった頃に後輩-【飛行機雲】が俺を見つけて…。

 

 

「……」

 

目を覚ますと、ぼんやりとする。

特段何もする気が起きないのを、【飛行機雲】が抱き上げて食卓につかせる。

そこから匙や箸を使って食事を取らせる。

……まぁ、俺は子どもじゃないから食事くらいは自分で出来るのだが。

【飛行機雲】は俺が匙や箸を使えないと思っているのか、それともただ単に俺を甘やかしたいだけなのか……。

なんにせよ、この生活も悪くないと思えてしまうのが恐ろしいところだ。

 

「……」

 

……いや、違うか。

そもそも俺はもう、とっくにおかしくなっているのだから。

後輩に甘やかされて世話を焼かれて、それを心地いいと思ってしまっている時点で俺の精神はもう終わっているのだ。

……いや、それも今更か。

だって俺は、とっくの昔に終わっているのだから。

 

「先輩」

 

しかし、件の後輩は俺の世話を嬉々として焼く。

風呂だったりなんだったり。

人間として生きていくに必要な行動のすべてを補助し、依存させる。

 

「いいんですよ、いいんですよ」

 

蕩けるような甘い声で、【飛行機雲】は囁く。

 

「先輩はもう頑張らなくていいんです」

「……っ、」

「だって先輩には僕がいるんですから。先輩が頑張る必要なんてどこにもないんですよ?」

 

それは甘い誘惑だ。

今の今まで俺が必死に保ってきたものをいとも容易く打ち崩す悪魔の囁きだ。

……だが、俺はそれを拒めない。

いや、そもそも拒むという選択肢自体が存在しないのだろう。

もう俺は終わってしまっているのだから。

 

「先輩」

「……?」

 

ああ、そうだ。

だから俺はもう……。

 

 

「……先輩」

 

先輩は答えない。

ただ虚空を見つめてぼんやりとしているだけだ。

 

「先輩、僕はここにいますよ」

 

それでも構わずに僕は続ける。

先輩の心を繋ぎ止めるように。先輩が本当に壊れてしまわないように。

 

「先輩、好きです」

 

愛を囁くのも忘れない。

こうでもしないとすぐに先輩は自分の殻に閉じこもってしまうから。

そうしてまた照れたように瞬きするのに、僕は…。





嬉々として世話を焼く【飛行機雲】くんとぐったりモードな【銀色の激情】。
…元に戻れたら、いいね。
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