さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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どこから取りだしたんです…?



えいやっ!

「は、」

「あ、先輩。少し待っててくださいね」

 

生意気だとかどうとかで絡まれて、「あぁ長引きそうだ」と内心嘆息していたところ、可愛がっている後輩-シルバーチャンプが俺に絡んでいるヤツの頭をどこから持ってきたのか分からない金属バットでフルスイングした。

響く鈍い音。

 

「先輩、大丈夫でしたか? 怪我は?」

「…いや、ない。ありがとう」

「いえ。先輩が無事で良かったです」

 

にっこりと微笑むシルバーチャンプ。

金属バットが似合ってて怖いなと場違いなことを思った。

その後、俺はシルバーチャンプにお礼としてクレープを奢った。

シルバーチャンプは遠慮していたが、俺がどうしてもと言うので折れてくれた。

 

「守るためなら俺はどんな暴力だって振るいますよ」

 

自分に何か災が降りかかった時は何もしないくせ。

大切な人に災が降りかかるならそうすると言う。

 

(ま、コイツはそういうヤツか)

 

 

殴る時には躊躇するな。

やるなら見敵必殺(サーチアンドデストロイ)

目潰しだとか卑怯上等。

勝ったやつが正義で、三十六計逃げるに如かず。

 

「……」

 

あとは足音の消し方とか手の痛くならない殴り方とか。

抵抗しないだけ。

抵抗しないだけで…"やり方"は、知っている。

"やり方"を知っているが故に…。

 

「…ん、」

 

手の中から捨てた石はカツンと音を立てて転がった。

『走ること』の才能とはまた別に生まれながらにして備わっている性能はそのまで考えなくとも、もはや本能に近い反射で動ける。

 

(…こんぐらいのなら、この人らも少し休めば自分で保健室行けるだろ)

 

パサパサと埃を払おうにも染み付いてしまった色やら匂いやらは消えなくて。

さてどうすっかなと、この目立たぬ場所からそこそこ目立つ場所にあるシャワー棟までのルートを脳内で描きつつ、また石を蹴った。

 

 

「わっ」

 

寮部屋に帰ってきた途端、かけられた消臭剤に声を上げる。

 

「おけーり」

「はぁ…」

 

部屋の中に入ると側面、背面とまた消臭剤をかけられ。

それに首を傾げれば、「もう風呂行った方が早いな」と。

 

「風呂?」

「そ。お前、───」

「あ……」

 

先輩にはかなわない。

満遍なく洗い流してきたつもりだったんだけどなぁ。

袖口に鼻を当て、くんくんと匂いをかごうにももうよく分からない。

 

「やっぱ、臭いですか?」

「いや? 別に」

「あ、…そうですか」

 

 

パタンと扉が閉じる。

それに【金色旅程】は「はぁ」とため息をついた。

アイツが、()()()()()引き金を引いたのは自分で、その結果アイツは害意を感じると反射的に動く機械のようになってしまった。

どれだけ洗い落としても薄らと香る匂いに、瞳孔の開いた目…。

 

「はぁ」





【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
守るためなら容赦はない。
やるならやるで暴の者。
約束されし血の宿命。
まぁ、手出しさえしなければ何もしないので。
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