さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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キミはどうしたいの?



虜のまま

自分が『純粋』でなくなったが故に、『純粋』なモノに人は憧れるのだろうか。

そうは考えようとも、今日も楽しげに走るキミを見て、ズキ…と心が軋む。

 

『ただ、走るのが好きなんだ』

 

誰に熱烈な視線を向けられようとも、妬まれようとも、関係なしに飛ぶように。

何のしがらみもないのだと、そう告げるように。

キミは走るのが好きだ。

ただ、それだけなんだ。

 

「ほら!こっちこっち!」

「はいはい」

 

今日もまた、自分はキミに誘われるままに走り出す。

『純粋』でなくなった自分と、『純粋』なままのキミ。

そんな歪な関係が成立してから、もうどれだけ経っただろうか。

この関係がいつから始まったのかなんて、もう思い出せないけれど……。

その関係は今もまだ続いている。

いや、続かざるを得ない…か。

だって。

 

(キミは、綺麗だから)

 

一度虜になってしまえば、もう手放せなかったんだ。

 

「ふぅ……」

 

走り終えた後、いつものようにキミは深呼吸を繰り返す。

そして、こちらに顔を向けて……。

 

「今日も楽しかったね!」

 

満面の笑みで、そう言うんだ。

その笑顔に、思わず見惚れてしまう自分がいる。

 

(あぁ……)

 

この笑顔が見れるのなら、自分はもう何もいらないなと、そう思ってしまうくらいに。

 

(でも……)

 

この笑顔を見ているのは自分だけじゃない。

いちおうは学園内のグラウンドであるからして、少なくとも数人は人がいる。

ほう、と微かにつかれる息の音に、微かに紅潮した頬。

汗で張り付いた前髪を鬱陶しそうに払う仕草。

そして何より、その笑顔に魅せられているのは……自分以外にもいるのだ。

 

(キミは、綺麗だから)

 

ただ走るのが好きなんだというが、その『純粋』な「好き」はほとんどの人にないものだろう。

誰かに勝ちたいだとか、有名になりたい、だとかそんな気持ちが誰しも少なからずあるはずだ。

でも、キミのそれは違う。

()()()()()()

 

(そんな『純粋』な好きを……)

 

誰かが汚すなんて、あってはならないんだ。

 

(だから、自分は……)

「ねぇ!聞いてる!?」

「え?あ、あぁ……」

 

そんなことを考えていると、不意に顔を覗かれる。

どうやら、上の空で返事をしていたらしい。

 

「もう!ちゃんと聞いててよ!」

 

ムッとした顔をするキミに「ごめんって」と軽く謝る。

 

「それで、どうしたの?」

「えっとね……その……」

 

そう聞くと、途端にキミはモジモジとし始める。

 

「その……もしよかったらなんだけどさ」

 

あちらこちらに視線をやって、意を決したように顔を上げると……。

 

「今度の日曜日、一緒にどこか行かない?」

 

なんてことを言ってくるのだ。

 

(あぁ……)

 





ほとんどの人が無くしてしまった『純粋さ』を持つキミに惹かれてしまうみんなの話。
たぶん今回の視点主以外にも堕としてんだろなぁ…。
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