無理、しないで。
あのウマのことが気になったのは……見るからに、普通の人間なら無理の範疇のことをこなしていたからだ。
普通なら根を上げて切り上げるようなことをどうにかこうにかして成し遂げようとする。
それが…恐ろしくて。
周りは、その姿を賞賛し、憧憬するが、自分にとっては崩壊の道を辿っているようにしか見えず。
まるで『昨日までは動いていたのに』と、古い機械に言うかのような未来が…見えてしまって。
「…どうしたの?」
思わずその手を掴むと不思議そうな顔をされた。
よくよく見ると、相手の顔はどことなく疲れており。
───ちょっとこっち。
有無を言わさず手を引くと、素直についてきた。
───ん。
そのまま引っ張ってきた場所は、人気のない中庭の片隅。
そこで手を離して向き直るが、相手は不思議そうな表情でこちらを見るだけ。
───……何を焦っているんだ?
そう聞けば更に不思議そうな顔をする相手。
そんな相手の両肩に手を置くと、しっかりと目を見る。
───あのな……お前は確かに凄いよ。けど、それが全てじゃないだろ?ちゃんと……休んでいるか?
その言葉に相手は目をパチクリとさせてから小さく笑った。
「ああ、なんだそんなこと?大丈夫、ちゃんと休んでいるよ」
そう言って肩から手を外そうとするが、その手を掴む。
───噓だ。お前、最近ろくに寝てないだろ?クマが出来てるじゃないか。
そう言うと相手が顔を引きつらせるのが見える。
「……それは……その……」
口ごもる相手に対して更に言葉を重ねる。
───お前が頑張ってるのは知ってるけど。メシもろくに食ってないだろ。手首の掴んだ感じが違う。
「う、うん……食べてるのは食べてるけど、その……」
相手が更に口ごもるのを見て、思わずため息が漏れる。
───別に責めているわけじゃない。ただ……心配なんだ。お前までさ、ああなったら……自分はどうすればいい?
わざと困った風にして告げると相手は少し悲しそうな顔をする。
「……ごめん」
小さく謝る相手に対して首を振ると、相手の手を取る。
───謝らなくていいさ。とりあえず今日は休めよ?メシは持ってきてやるからさ。
断りを入れてから食堂に向かい、二人分の食事を貰ってくる。
───ほら、食べようぜ。
「…いただきます」
自分よりもずっと小さい咀嚼。
どうせこのひと皿すべてをこのウマが食べられないことを知っているから。
───おなかいっぱいになったら。
「分かってるよ」
───食べすぎて、吐いてもな。
「分かってるってば」
たぶん親友枠はこの気持ちが強いんだろうな。
よっぽどのことじゃないと折れないとは思ってるけど、本当に折れた際に自分が傍にいないと嫌だなって思ってる感じ。
タヒぬならあの有象無象の前じゃなくて俺の前でタヒね、みたいな。