絶筆となった妖精物語   作:鴉眼

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戦争遊戯(ウォーゲーム)・攻城戦ルール
・期間は三日間
・この期間中に使う物資は、各々のファミリアが用意すること
・敵大将の撃破が勝利条件である
(参照:『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』6巻)


ちょっとした裏話
実は設定を固めていた初期段階、主人公の主神をモーリアンではなくケルヌンノスにするか迷っていました。




目録/序

 

 独りの踏破が開幕する。

 

 逃げること能わず其は支配の異端者。止めること能わず其は崩壊の鐘を鳴らす嵐。

 

 堅牢に聳え立つ四方の門は役目を果たせず。

 

 眩き一槍が城門を貫き、開戦の狼煙を上げる。

 

 門は廃墟へと逆戻り。万夫不当の兵士たちは己が無力を知る。

 

 力抜けした四肢は向かうべき先を見失い、二度と太陽を拝めないだろう。

 

 孤城を覆う雨雲。轟く偽りの雷鳴。地上へ投影された夢幻。

 

 目くるめく変わる舞台の演目にみなは置いてけぼり。

 

 俳優の喚きに惑わされ、先見の心構えすら無意味にする。

 

 神々よ、お付き合い願う。最後の主役の大一番。

 

 三度、落陽を迎えず。大切りは薄明の空の下で。

 

 寵児は嵐に晒され、妖精は振り回され。

 

 会場を沸かす血塗れの神槍。

 

 このたび幕が上がるのは悲劇に非ず。ただ、どうかお忘れなく。

 

 『触らぬ神に祟りなし』

 

 たった一度の縁でこの通り。

 

 面白おかしく、書き手なき舞台に上げられる。

 

 

 

 それは一人の少女が見る夢。

 

 夢の光景(挿絵)に添えられる十七節の詩(地の文)

 天上から授けられた啓示が如く。子に読ませる、教訓(警告)を秘めた一冊の絵本。

 

 開かれた本は機微に疎い神の視点。

 結末を先に知る無粋さに、傍迷惑な付録(呪い)はご愛敬というもの。

 

 生かすも殺すも本人次第というが、さて。

 

 

◆◆◆

 

 

「―――――」

 

 声を押し殺した悲鳴が上がる。寝汗で背中にベットリと張り付いている寝間着の感触を意に介さず彼女――カサンドラは寝床から飛び起きる。痛むほどシーツを握りしめていた自身の手が現実であることを訴えてきて、混乱を落ち着かせようと深い呼吸を繰り返す。

 カサンドラ・イリオンは予知夢を見る予言者である。

 戦争遊戯や遠征などといった大事が差し迫った時、彼女が見る夢は近い未来に直面する出来事を告げる。否が応でも押し付けられて吐き気を催す悪夢な時があれば、酷く抽象的で要領を得られず内容の大半も理解できない時もある。

 

(ああ、キツイなぁ……)

 

 内容的なキツさでいえば此度の予知夢はまだ良い方。残虐な目に遭うことはなく誰かが死ぬこともなかった。それだけで随分と心の負荷を軽くさせる。

 冷静さを一握りほど取り戻した寝起きの頭で、予知夢の内容を振り返りだした。

 

 “支配の異端者”“崩壊の鐘を鳴らす嵐”――『夢』の中にいる誰かの影が鐘の音を響かせながら、嵐を引き連れやって来た。

 “四方の門は役目を果たせず”“眩き一槍が城門を貫き、開戦の狼煙を上げる”――城門を崩落させる光輝の塊。

 “万夫不当の兵士たちは己が無力を知る”“二度と太陽を拝めないだろう”――太陽の明かりが届かない城内で溢れ返る、瞳から光が消え項垂れる者達。

 

「はぁ……」

 

 節を振り返ると共に再生される夢の光景。

 予知夢が知らせる戦争遊戯(ウォーゲーム)の行方に、思わずといった様子でため息が漏れる。

 気が重くなりがらも、後半部分に意識を移して気づく。

 

(何だか使われている言葉、劇場関連の単語が多い)

 

 “演目”、“俳優”、“大切り”、“悲劇”、“書き手”。

 後半部分はあからさまに劇場を意識している。

 ファミリア同士の決闘である戦争遊戯(ウォーゲーム)は確かにオラリオ中の者達が観覧して楽しむ、娯楽という側面はあるそれにしても、その様を劇場として形容するには適切だとは言い切れない。

 演目はゲームの種類に、俳優は駒に、大切りは勝負所に、悲劇は惨敗に、書き手はプレイヤーに。置き換えることは不可能ではない。遊戯という言葉通りに盤上遊戯の方が合ってそうなのに、違和感を押し切って劇場関連の言葉が使われている。

 

(劇にしかない要素……)

 

 不自然な言葉選びに隠された意図。

 劇がテーマとして使われていることを念頭に置いて予知夢を掘り下げる。

 

(“寵児は嵐に晒され、妖精は振り回され”……“寵児”は団長(ヒュアキントス)のこととして、“妖精”が騒動の中心にいるあのエルフ(モルガナ)

(“会場を沸かす”これを言葉通りに受け取って、前節の“神々よ、お付き合い願う”を考えるとオラリオにいる神々を興奮させる何か……)

(“血塗れの神槍”は前の節から続いているなら団長の得物が波状剣(フランベルジュ)なのを考えれば、あのエルフの得物のことなのかな……)

 

 各節が何を指し示すのか、それぞれの節から予想を立てていく。

 

(“書き手なき舞台に上げられる”――“舞台に上げられる”?)

 

 その節を切っ掛けに、一つの可能性を思い立つ。

 

「観客すら参加者……?」

 

 俗にいう飛び入り参加。客の反応すら劇の一部に組み込んで、時には客本人を舞台上に上げる演出。

 可能性の一つとして思いつくも、あり得ないと即座に否定する。参加者は事前に決められた一人と七十二人。相手ファミリアに誰かが改宗(コンバート)した知らせはなく、助人の加入すら認められていない。

 飛び入り参加や観客が参加することが前提の劇は盤上遊戯では表現できない要素だけれども、それにしても思い至らない。はたして、開幕した戦争遊戯(ウォーゲーム)に途中参加する裏技なんてあり得るのだろうか。

 

「あぁ、どうなるんだろ……」

 

 様々な可能性に頭を巡らせても、納得できる未来予想図をカサンドラは何も考えつかない。

 ただ、一筋縄ではいかない。そのことを再認識して寝床に沈みたくなる欲求が噴き出す。心の奥底で絡みつく無気力感に支配されそうになっている所を踏みとどまる。

 

 重くのしかかる両足が寝床からズレ落ちる。重い足取りのまま、起床の準備を始めた。

 

 

◆◆◆

 

 

 遠いオラリオの地から響き渡る銅鑼の音を、アポロン・ファミリアの団員は右から左へ聞き流した。

 南側外壁の上からだだっ広い岩場を眺めつつ、彼は戦争遊戯後のことに考えを巡らせていた。

 

 彼らの主神が違うファミリアの眷属を見初めて、強硬手段に打って出ることは初めてではない。過去に何度も、幾人もの眷属を執念深く付け狙い、相手が根負けするまで追い詰めている。

 強引に改宗(コンバート)された者達の中には、実行犯である彼らと連携を取ろうとしない者達がいる。ある程度割り切ってくれる相手ではなく、聞き分けが悪かった場合は彼らにとって死活問題に直結する。

 なんせアポロン・ファミリアは探索系ファミリア。財政は迷宮(ダンジョン)探索の収入で成り立っている。迷宮探索は死と隣り合わせであり、禍根を残したまま一緒に迷宮に潜れば、何をしでかすか分かったものではない。

 背中から刺される、怪物進呈(パスパレード)を仕掛けられる。

 考えれば出てくる出てくる、容易にパーティを壊滅させられるシチュエーションの数々。迷宮探索中にパーティが内部分裂する心配なんてしたくない。それが彼の噓偽りない本音である。

 そもそも元凶ではないにしても紛れない実行犯なのだ。その時点で関係を築くという第一歩が大きな関門のに、一緒に迷宮探索をするのが無理難題なのだ。

 戦争遊戯の後に待ち受けている面倒ごとにどう対応するか、有り余る三日間という時間がその問題をどうしても直視させてしまう。

 

 ——アポロン様の好色も程々にして欲しいぜ。

 

 思わずそんな愚痴がこぼれそうになったその時。

 辺りを見渡した彼の瞳に、ある光景が飛び込んでくる。

 南側、城砦正面、でこぼこ道の岩場を悠々と進む——背中に大荷物を背負った、小さな人影。

 

「まじか……」

 

 自身が目にしている光景を信じられないと思いつつ、その身体は既に次のアクション、城内に居る仲間たちに敵がきた警報を鳴らすべく動く。彼と同じように、外壁の上で哨戒していた弓兵たちも、開幕早々に仕掛けてきた敵の接近を気づきその弓を引く。

 次々と放たれる鉄の雨。空を覆う矢の大群が逃げ道を許さず、左右前後、全方位のどこに避けようが標的の全身を突き刺しにする。 

 

 空からの袋小路が迫りくる中、悠々と歩んでいたモルガナの姿が消える。

 

「!?」

 

 岩場一面が矢で埋め尽くされる。しかして、狙いである相手がいない。弓兵たちの視野から、完全に外れた。

 

「どこに行きやがった!?」

「下だ!真下にいる!!」

 

 一拍遅れて、一人の弓兵が気づく。何時の間にか先ほどまでいた位置から、眼下にまで距離を詰められている。目下にまで攻められた事実に動揺する身体を黙らせ、弓に矢を番える。

 

 第二の一斉掃射。頭上からの脅威が秒読みになろうと狙われている当人は一切揺れず、モルガナは城壁に手を置き、冷淡に口を開く。

 

「【最果て(オークニー)】」

 

 超短文詠唱。たった一言のトリガーで放たれる眩い閃光が、城壁を貫いた。

 

 

「第一関門、突破」

 

 

 城壁が崩落し土埃を上げる瓦礫の山。南側城壁に穿たれた大穴。

 防衛として全く機能しなくなったことを示すように、自らが開けた穴から城内へと足を踏み入れる。

 

 ——他の奴らも呼べ!絶対に一対一で対応しようとするな!

 ——見張りは何をしていた!!

 ——誰か、早く団長に伝えろ

 

 巣を叩かれた蟻のようにワラワラと、城内から流れ出るアポロン・ファミリアの団員たち。敵城のど真ん中へと、単身突撃してきた愚か者を囲む。

 

「さて、慣らしますか」

 

 蛮勇をふるい包囲された愚者(モルガナ)は、絶望的な状況でもその水面が如き碧眼は波紋を映さず。続々と来るアポロン・ファミリアの団員たちへ澄んだ瞳を向けている。

 唯一の敵を囲むことに成功して戦況を支配している筈のアポロン・ファミリアの団員たちは、誰もがその表情に余裕を見せておらず。眼前で佇む敵が引き起こした惨状に、如何なる慢心を抱く余裕を奪う。

 

 両者動かない均衡状態。

 束の間の静寂を破るは、爆ぜた足音。

 

「1」

 

 次に鳴り響いたのは、地面に叩き付けられた轟音。

 モルガナに頭部を鷲掴みにされ、倒れているアポロン・ファミリアの団員は意識を失っている。

 

「2、3、4」

 

 次の行動に細心の注意を払っていた一人が、そのみぞおちに殴りつけられた一発の拳骨に沈み。隣にいた味方が倒されたことに気づき得物たる剣を振るうも躱され、カウンターに顎への鋭い一撃で意識を刈られた。意識を失い緩やかに倒れゆく団員をそのまま、突然の攻勢に置いてけぼりを食らっていた他の団員ごと近場の壁に押し込んだ。

 

「まだまだ、ズレてる」

 

 敵が動きを止めた隙を狙った槍の刺突。急所を狙った矛先が空を切る。獲物を外れた槍を逆に握り返し、担い手ごと柄を振り回す。振り回された使い手は槍から手を放してしまい、弧を描いて宙を舞う。

 

「5」

 

 淀みない流れで妖精が舞い、風が吹く。

 そよ風とは程遠い、嵐そのものが吹きすさぶ。巻き込まれた物全てを薙ぎ倒し、通った道には荒らされた痕しか残らない嵐の蹂躙。此処に居る者を逃さず殲滅しても止まらぬ、無慈悲な暴威がそこにいた。

 

「10、11」

 

 闘志に溢れた鼓舞は逃避の号令に取って代わる。悲鳴混じりの逃走。圧倒的暴力を目にし、その多くは勝てることなど頭になく。身の安全を確保すること、ただそれだけに頭が支配される。

 戦う意志が挫けたことなど関係なく。背を見せた者たちに慈悲をかける心などなく。

 暴威の権化は淡々と、骨身に刻んだ戦いの技術へと身を委ねる。

 

「12、13、14」

 

 荒れ狂う暴風に立ち向かう者は誰もおらず。また一人、一人と、嵐に呑み込まれる。

 

「15っと。今日のところは、これまでですね」

 

 意識を失い戦闘続行不可能となった犠牲者たちの山が築かれる。死屍累々。そうとしか言えぬ惨状に、新たな被害者が重ねられる。自らが築いた山の上で、蹂躙者は独り感触を確かめるように繰り返し手を握りしめる。

 

「それにしても、振り回されるなぁ~、この規模の強化は」

 

 ついさっきまで暴力の限りを尽くした姿では考えられない呑気さで、彼女は城壁に開けた穴へと踵を返す。

 大方の予想を裏切る一方的な蹂躙劇で幕を開けた戦争遊戯(ウォーゲーム)は、まだまだ始まったばかり。

 





ファタ・モルガナ

発展アビリティ
・神秘
・魔導

スキル
失義妖精(アンシリー・コート)
・攻撃魔法の威力を高域強化
・同族に対し攻撃魔法の威力を超域強化
・憎しみの丈に比例して効果が向上する

傾国悪法(ドミネーター)
・任意発動
・知性体と敵対した時、全アビリティ能力高補正
・敵の数が多いほど効果が向上する

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・■■■■
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魔法
聖槍(ロンゴミニアド)
詠唱式:【最果て(オークニー)

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詠唱式:【■■■■■■、■■■■■。■■■■■、■■■■■■■■■■■。■■■■■、■■■■■■。■■■■■■■■、■■■■■■■■■■】
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