無人島試験①(改定版) ※特別試験説明回①
常夏の海。広がる青空。澄み切った空気。そよぐ潮風は優しく体を包み込み、真夏の猛暑を感じさせない太平洋のど真ん中。そう、ここはまさにシーパラダイス。
今すぐ寮に帰りたい。夏休みは部屋から極力でないと決めていたんです。プリ○ュア達も待っています。無理なら千葉まで連れ帰って下さい。集団行動なんて拷問と変わりません。お願いします。
「諦めろっ!比企谷くん♪」
「他人事でもないだろ。櫛田こそ無理だろ」
「う〜ん…表面上は大丈夫じゃない?」
「いや…後から怖いんだが…」
「それになんで普通に俺の隣にいるんだ?」
「一学期の間考えたんだ。別に問題なくない?」
「いや。問題だろっ」
「さて、問題です!」
「急になんだ」
「前提条件は櫛田桔梗の評価が落ちない事」
「…………」
「山内もしくは池と2人でいる所をクラスメイトに
見られました」
「おう」
「櫛田桔梗の正しい対応は?」
「男性側から誘いがあった。特に深い関係ではない」
「そうだね」
「その時の櫛田の評価は…」
「お疲れさま☆もしくは趣味悪い?」
「間違いじゃないね」
「では、次の問題です。
比企谷八幡と2人でいる所をクラスメイトに
見られました。
櫛田桔梗の正しい対応は?」
「中学のクラスメイトだ。昔話してた。」
「その時の櫛田の評価は…」
「あっ。そうなんだ。それに隣の人誰?」
「ダメージが大きいのは?」
「多分…山内・池だな。」
「そう言う事だよっ」
「そうなのか?」
「それにしても夏休みにバカンスに連れていってくれるって学校側もふとっぱらだね〜。ご飯や施設も一流だし、流石国営?」
「そんなわけないだろ」
「えっ?」
『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まりください。程なくして島が見えてまいります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧にいただくことができるでしょう』
突然そんなアナウンスが流れた。『意義ある景色』か。別に必要ないな。
「はぁ…部屋戻るわ」
「景色見ていかないの?」
「いらん」
……
【From:櫛田桔梗
池に下の名前で呼ばれる事になった。
死ぬの?私】
【From:比企谷八幡
ヒキガエルよりマシだろ?】
……
『これより、当校が所有する孤島に上陸いたします。生徒は全員ジャージに着替え、所定の鞄と荷物をしっかり確認した後、携帯を持って30分後にデッキに集合してください。それ以外の一切の私物の持ち込みを禁止します。また、暫くお手洗いに行けない可能性がございますので、忘れずに済ませてください』
「ではこれより、Aクラスから順に船を降りてもらう。それと敷地内への携帯の持ち込みは禁止だ。各担任にしっかり提出するように」
拡声器をもった教師の声に従い、生徒たちが順番に降りていく。
「ではこれより、本年度最初の特別試験を行う」
Aクラスの担任、真嶋先生からの特別試験の開始を宣言する言葉が発せられる。
「期間は今から一週間。8月7日の正午に終了となる。これから1週間、この無人島でクラスメイト全員と集団生活することが試験となる。なお、これは実在する企業研修を参考にした現実的なものであることをあらかじめ伝えておく」
「無人島で生活って……この島で、寝泊まりするってことですか?」
「そうだ。試験中の寝泊まりする場所はもちろん、食事の用意まで全て自分たちで考える必要がある。試験実施中、正当の理由なく乗船することは許されない。試験開始時点で、各クラスごとにテント2つ、懐中電灯2つ、マッチを一箱支給する。また、歯ブラシに関しては各生徒に1セットずつ配布。日焼け止めと女子生徒の場合に限り生理用品は無制限で支給する。各クラスの担任に願い出るように。以上だ」
「先生、今は夏休みですし、我々は旅行という名目で連れてこられました。企業研修ではこんな騙し討ちのような真似はしないと思いますが」
「なるほど、確かにそういう点では不満が出るのも納得できる。だが安心してもらっていい。この1週間、君らは何をしようと自由だ。海で泳いだりバーベキューをするのもいいだろう。キャンプファイヤーで友人と語り合うことだって悪くない。この特別試験のテーマは『自由』だ」
「この無人島における特別試験では、まず、試験専用のポイントを支給する。各クラスに300ポイント支給され、このポイントを上手く使うことでこの島を1週間旅行のように楽しむことが可能だ。今から配布するマニュアルには、ポイントで購入できるすべてのもののリストが載っている。生活必需品、飲料水や食糧、バーベーキューをするための道具や海で遊ぶための道具など幅広く取り揃えている」
「集団生活を送る上で必要最低限のルールは試験に存在するが難しいものは一つもない」
「この特別試験終了時には、各クラスに残ったポイントをそのままクラスポイントに加算し、夏休み明け以降に反映する」
「今から各クラスに1冊ずつマニュアルを配布する。紛失などの際は再発行も可能だが、ポイントを消費するのでしっかり保管しておくように。また、試験中に体調不良などでリタイアした生徒がいるクラスは30ポイントのペナルティを受ける決まりになっている。今回はAクラスに欠席者がいるため、Aクラスは270ポイントからのスタートとなる」
その後、各クラスごとに自分たちの担任の元に集まり、補足説明を受けることとなった。
「今からお前たちに腕時計を配布する。試験中この腕時計は常に身に付けておくように。許可なく腕時計を外した場合にはペナルティが課せられる。」
「でも身につけたまま海とか入って壊れたりしないんですか?」
「完全防水なので問題ない。万が一故障した場合は早急に代替品と交換するようになっている」
「大丈夫だって!食糧は適当に魚とか果物を見つけてさ。寝床も足りないテントは葉っぱとかで作ろうぜ!最悪体調崩しても頑張るぜ」
「残念だが池、お前の目論み通りにはいかない。マニュアルの最後のページを見ろ」
最後のページには以下のマイナス査定が記されている。
『著しく体調を崩したり、大怪我を負い続行が難しいと判断された者がいた場合、マイナス30ポイント。及びその者はリタイアとなる』
『環境を汚染する行為を発見した場合。マイナス20ポイント』
『毎日午前8時、午後8時に行う点呼に不在の場合。一人につきマイナス5ポイント』
『他クラスへの暴力行為、略奪行為、器物破損などを行った場合、生徒の所属するクラスは即失格とし、対象者のプライベートポイントの全没収』
「お前が無理をするのは勝手だが、もし10人の生徒が体調不良となったらマイナス300ポイント。強行するときはそれを覚悟するんだな」
「つまりさ、ある程度のポイント使用は仕方ないんじゃない?」
「最初から妥協するのは反対だぜ。やれるとこまで我慢すべきだ」
「茶柱先生、仮に300ポイントを全て使用してしまった後にリタイアする者が現れたらどうなるんでしょうか」
堀北が質問する。
「その場合リタイアするものが増えるだけだ。ポイントは0から変動しない」
「つまりこの試験ではマイナスに陥ることはないということですね」
「僕からもいいですか先生。この点呼とはどこで行うんですか?」
平田が質問する。
「担任は自分のクラスと共に試験終了まで行動を共にする。お前たちでベースキャンプを決めたら、私はそこに拠点を構え点呼を行う。一度ベースキャンプを決めたら正当な理由なくベースキャンプの変更はできないからよく考えるんだな」
「先生、トイレなどはどうすればいいんですか?」
クラスの女子が質問する。
「トイレか。それならクラスに支給される簡易トイレを使え。1つしかないから大切に扱うように」
そういうと茶柱先生は1つの段ボールを取り出す。
「もしかして、私たちもそれをつかうんですか!?」
「男女共用だ。だが安心しろ。着替えにも使えるワンタッチテントがついているから誰かに見られるような心配はない」
「そういう問題じゃなくって!段ボールなんて無理です!」
「なに、これはただの段ボールではない。災害時などによく使われるものだ」
茶柱先生は慣れた手つきでトイレを組み立てて、青いビニール袋を設置し白いシートのようなものをその中に入れる。
「このシートは吸水ポリマーシートと言って、汚物を固めるものだ。ビニールに吸水ポリマーを重ねる。これを繰り返すことで1枚のビニールで5回前後使用可能だ。なお、このビニールとシートは原則無制限に支給する」