「……私に送ったメールこれはどういう事?」
誰もいない階段の踊り場で軽井沢がオレに聞く
【From:綾小路清隆
どんなものであれ
堀北に反論しろ
その後、
比企谷に意見を求めろ】
「オレのすることの意味をいちいち気にしてたらキリがないぞ」
「ふーん…つまり理由を聞かずにおとなしく指示に従えってことね。わかったわよ」
「比企谷の意見どう思った?」
「最初は『何言ってんだこいつっ』てかんじだったけど、よくよく聞くと『なるほどなっ』と思わせられた。」
「………比企谷の意見を聞いて堀北が気付けばよいが、もし気づかなかった場合、イヤな役目をさせるかもしれん。」
「はぁ…いいよ。それぐらい。その代わり何があっても守ってくれるんでしょ」
「あぁ。約束する。」
……
「推薦競技はどうするの?」
「出るつもりはないが?」
「八幡。運動そこそこできるよね。」
「そこそこしかできん。平均かそれ以下ぐらいだ。運動部には全く敵わん。」
「借り物競争とかはどう?運動能力あまり関係ないよ」
「無理だ。絶対にゴールできん。」
「お題に友達という言葉があれば、その時点で終わりだ。それ以前に俺が人に話しかけられると思うか?」
「ご…ごめん。」
「そっ…そうだ。なら私と二人三脚にでよう!」
「それも無理だ。」
「二人三脚に櫛田がでるとなったら、他の男どもが殺到するはずだ。その中でペアが俺になるとかありえんだろう」
「う〜ん……じゃあ、八幡とのペアが成立したら参加してくれるのかな?」
「成立できたらな。」
「約束したからね。」
そう言うと櫛田は携帯を取り出し、クラスメイトにメールや電話を始めた。
「そういう事だから協力してくれないかな?」
「この二人なら運動能力もぴったりと思うんだ。参考にしてくれるとうれしいよっ」
「…くんは借り物競争がいいと思うなっ。かっこいい所期待してるね♪」
「うん。うん。二人だけの秘密だね。」
・・・・・
「な…何をしているのかな?櫛田さん。」
「根回し。どんな事しても必ず成立させてみせるからね♪待っててね。八幡くん♪」
し…しまった。櫛田の影響力忘れてたわ。
これは腹くくるしかないのか?
……
堀北や須藤を中心に体育祭に向けての準備は順調に進んでいる。推薦競技の二人三脚(男女混合)に櫛田が立候補した時、これは荒れるかと思ったが、スンナリ比企谷とのペアが決まった。あいつら何をしたんだ……。
このまま行けばDクラスはそこそこの結果で終われるだろう。龍園の動きは気になるが、このままで良いのか?
オレは今回堀北に敗北を味あわせたいと考えている。
比企谷の発言で相手のメンバー表を手に入れる事の有用性。また、相手に渡ることへの危惧に気づけばと思っていたがその兆候はない。
やはりいずれかの方法を実行するしかないのか?
次の土曜日。オレは比企谷とチェスをしていた。やはり面白い。実力ではまだまだ及ばないが、時より思いがけない一手を打ってくる。一見意味のない手に見えるが、場が進むことで比企谷の意図がみえてくる。最近はこの時間を楽しみにしているオレがいる。
「比企谷。一つ頼みがあるんだが。」
「なんだ?」
「体育祭。このまま龍園が動かないって事あると思うか?」
「ないだろうな」
「オレは比企谷に接触してくると考えている。その時にDクラスのメンバー表を渡してくれないか?取引の報酬は好きにしてくれて構わない。」
「綾小路が何を考えているのか知らんが断る。」
「なんでだ?フォローは必ずするぞ。お前にも悪い話ではないだろう?」
「俺は積極的に協力するつもりもあんまりないが、クラスの足を引っ張るつもりはない。」
「お前にも理由があるんだろうから詳しくは聞かんが、今回の場合、どんな結末になるか不確定要素が多すぎる。」
「すまんな。比企谷。変な事を言った。」
「大丈夫だ。この事は誰にも言うつもりもない。話す相手もいないしな。」
やはり比企谷を動かすのは無理か。こうなればCクラスの真鍋達を動かして、軽井沢からCクラスに渡るよう調整するしかないな。
今回真鍋達の動きが大きくなるのは心配だが仕方ない。
「そういえば…」
「なんだ?」
「二人三脚の櫛田とのペアの件、何したんだ?」
「俺が聞きたいわっ!!」