帆波ちゃんと桔梗ちゃん
「ば〜ぢ〜ま〜ん〜」
「私、ちょー頑張った!
プライベートポイント90000ゲットだぜ!」
「そっちはどうだった〜」
「う〜ん?128000ポイント?」
「な…なんで…」
「朝食の準備をポイントで請け負ったからな」
「それに清隆分のポイントをゲットだぜ!」
「ずるーい」
「クラスポイントは桔梗のグループのほうが断然上だろ?クラスへの貢献度で言えば、一番だ。」
「えへへへへ〜」
「でも、合宿中、八幡のご飯おあづけはしんどかったの。
今日は期待してるよ♪」
「へいへい。ちょっと待っとけ」
「それにしても、帆波ちゃん大丈夫かなー」
「あぁ。例の噂か…」
「私、この空気イヤだよっ。中学を思い出すんだ」
「なんとかならない?」
「あの時と一緒だ。噂の出処を特定させ…」
「それはダメ。」
「なんでだ。一番効率的だろ」
「それは絶対に許さない!」
「でも、帆波ちゃんなんで否定しないのかな?
根も葉もない噂だよね?」
「それはお前が1番分かってるだろ?」
『一之瀬帆波は犯罪者である』
『暴力沙汰をおこした過去がある』
『援助を受けて交際していた』
『窃盗、強盗を行った』
『薬物の使用歴がある』
これが今1年で噂されている内容だ。
「なるほどね…。少なくとも一つは真実なんだね」
「そうだ。だから完全に否定もできんのだろう」
「おそらく本命は窃盗だと思うがな」
「なんで?」
「暴力沙汰なんていまさらだろ。龍園と須藤でお腹いっぱいだ。それ以外は現実的ではない」
「今回の件、手助けはできるが
俺は直接的には関われんぞ」
「え〜。なんで〜。」
「『比企谷八幡は犯罪者である』」
「なるほど!違和感ないね♪」
「桔梗はどうしたいんだ?噂を薄める事だけならできる。
だが、それだと一之瀬は救われんぞ」
「どうすればいいのかな?」
「一之瀬には共犯が必要だ」
「共犯?」
「過去に犯罪もしくは大きな事件を起こしたとかだな。」
「それを乗り越えて
今があるという姿をしっかり見せつけてやることだ」
「今俺が知る限りでは桔梗にしかできん」
「つまりどういう事?」
「桔梗の本当の姿。
それに中学時代の話を一之瀬に話せるかどうかだ」
「それができるなら、俺は今回の件、全力をつくすぞ」
「…………」
「ちょっと時間もらっていい?」
「当然だ。
別に俺達が一之瀬を救わなくちゃならん理由はない」
「桔梗の判断に委ねるぞ」
「うん…。ありがと。八幡」
……
数日がたった。噂はますます広がり、当人の一之瀬は体調を崩したらしく学校を休んでいるらしい。
Bクラスの雰囲気は殺伐としたもので、犯人探しにやっきになっていた。
「ねぇ…。比企谷くん…」
「比企谷くんは私の味方だよね…」
「はぁ。別に桔梗は桔梗だろ?それ以外何があるんだ?」
「う…うん!八幡はそうだよね。私決めたよ。
この雰囲気がキライ。帆波ちゃんを助けてあげたい!」
「後悔はないんだな?」
「もちろん♪」
「分かった。桔梗にも少し手伝ってもらうぞ」
次の日から、一之瀬の噂だけではなく、全クラスに様々な噂が流れだした。Cクラスは以下のような内容だ。
『本堂遼太郎は肥満の女性しか興味がない』
『篠原さつきは中学時代売春をしていた』
『佐藤麻耶は小野寺かや乃を嫌っている』
『比企谷八幡は櫛田桔梗に好意を寄せている』
そんな噂を聞いて不謹慎ながら内心にやにやしていた。
『比企谷八幡は櫛田桔梗に好意を寄せている』か…
「おいっ!比企谷!!
俺の桔梗ちゃんに好意があるってどういう事だ?」
山内が八幡に詰め寄っている。
(そもそも、いつからお前の桔梗ちゃんになった?)
「ただの噂だろ?」
「俺の許しなく桔梗ちゃんに
ちょっかいだしたら絶対に許さないからな」
(なぜ?山内の許可がいる?というか名前で呼ぶな)
山内はその後も噂になっている当事者にちょっかいを出していた。クラス内での好感度はストップ安だ。
直接的にではないにせよ、どのクラスにも噂を煽る生徒は一定数存在しているようだ。噂はどんどんと広がっていく。あとの事は八幡がなんとかしてくれるだろう。
次は私が帆波ちゃんを立ち直らせる番だ。
……
放課後、私は帆波ちゃんの部屋に訪れた。
ぴんぽ〜ん
「あっ。帆波ちゃん?学校休んでいるって聞いたからお見舞いにきたんだ。少しだけ大丈夫かな?風邪でも食べやすいものをいくつか買ってきたから、少しだけ部屋にいれてくれないかな?」
帆波ちゃんの体調は少し回復してきたようで、部屋に招き入れてくれた。私が他クラスというのもよかったのだろう。
「急にごめんね。帆波ちゃん」
「いやいや。私こそ心配させちゃったかな」
「ううん」
「早速で申し訳ないんだけど
『一之瀬帆波は犯罪者である』
『窃盗、強盗を行った』
これって事実なんだよね?」
「えっ…」
「全ての噂が嘘なら否定すればいい。
でも、帆波ちゃんにはできなかった。
そういう事だよね?」
「…………」
「別に責めるつもりはないんだよ。
少し私の話を聞いてもらえないかな」
「帆波ちゃんは私の事どう思う?」
「桔梗ちゃんは凄く気も効くし、みんなにとても優しいよね」
「ありがと♪でも、それは全部嘘」
「う…嘘…?」
「私はね。何でも1番になりたいんだよ。最初は勉強も運動も1番になれたけど、私より凄い人はいっぱいいた。」
「承認欲求っていうのかな?私はその状況に満足できやかったんだ。それで思いついたのが、誰よりもみんなに信頼される櫛田桔梗。私はね。それを演じてるだけなんだよ」
「中学の時なんだけど、それで溜まったストレスを掲示板にね。クラスメイトの悪口を書いて発散してたら、それがみんなにバレたんだ。それからは酷かった。今まで親友って言ってくれた友人は離れていった。好きだと言ってくれた男の子もいなくなった…」
「今みんなが知っている櫛田桔梗は全部嘘なんだよ」
「な…なんで…そんな話…」
「私にはそんな状況でも、私の本性を知っても変わらず接してくれる人がいたんだ」
「今、私はその人のように帆波ちゃんを支えたいと思ってる。私じゃ不足かな?」
そういうと一之瀬さんは目に涙を浮かべ過去の過ちを打ち明けてくれた。それを聞いた私の正直な感想だ。
あれ?私の話と釣り合ってなくない?
帆波ちゃんの話は入院していたお母さんを気遣い、そして妹さんの為に万引を犯してしまったとの事だ。もちろん、万引は絶対にダメだが、お母さんの説得もあり、お店に謝罪。世間的には既に許されている。帆波ちゃんは良い子のままだ。
「ごめんね。辛かったのにね。
話してくれてありがとう。」
「でも、この事実を聞いても
Bクラスの人達は帆波ちゃんを責めないと思うよ」
お人好し軍団のBクラスだ。全てを打ち明けても何の問題もないだろう事は簡単に想像できる。
「もし、受け入れられなくても私達は秘密を共有した仲だからね。ずっと帆波ちゃんの味方だよ」
帆波ちゃんが泣き止むまで私はその場で寄り添っていた。
次の日、登校した帆波ちゃんは過去の過ちをクラスメイトに話した。その上でいままで通りBクラスの為に頑張りたいと素直な思いをぶつけた。
途中Aクラスからの妨害はあったらしいが、そこは『帆波ちゃん至上主義の教室』だ。あらためてクラスの信任を得られたようだ。
また、1年に広まった各クラスの噂は学校側が動いた事により徐々に終息していった。
……
「八幡くん。今回はありがとね〜」
星乃宮先生が感謝の意を伝えてきた。
「なんの事っすか?俺は自分の噂が広がるのがイヤだったんで相談させてもらっただけです。」
「またまた〜。」
「一之瀬さんが危なかったのは分かってたんだけどね〜
私達教師は生徒間の争いに自発的には動けない。
今回、他クラスの君から
相談してくれて動きやすかったよ〜」
「たまたまっす」
「ふふっ。そう言う事にしておいてあげる」
……
「で?で?桔梗ちゃんを支えているのは誰なのかな?」
「うざい。黙れ」
「にゃー」