「1年Dクラス 比企谷八幡です。
茶柱先生はいらっしゃいますでしょうか」
放課後、櫛田と共に職員室を訪れた。
「え?サエちゃん?
えーっとね、さっきまでいたんだけど」
振り返った先生は、セミロングで軽くウェーブのかかった髪型の今時の大人って感じの人だ。親しそうに茶柱先生の名前を呼ぶ。年齢も近そうだし友達なのかもしれない。
「ちょっと席をはずしてるみたい。
中に入って待ってたら?」
「いえ。廊下で待っています」
「私は1年B組の担任、星乃宮知恵っていうの。佐枝とは高校からの親友でね。サエちゃん、チエちゃんって呼び合う仲なんだ〜。凄いでしょ〜。で、比企谷君とそこの彼女は付き合ってるの〜??」
「俺と彼女が釣り合うわけないでしょう」
(ちっ)
「意外かな〜、
私が学生だったら比企谷くんは放っておかないのに〜」
そう言いながら、人差し指で「つんつんっ」とオレの髪の毛(アホ毛)を突ついている。
なぜ俺の周りにいる女性は強化外骨格の持ち主ばかりなんだ。中学時代に鍛えられた結果、このタイプはすぐみわけられるようになった。
「あざとい」
「あっ…あざといっ!?」
(くすっ)
「何やってるんだ、星乃宮」
茶柱先生が突然現れ、クリップボードの角で星乃宮先生の頭をしばいた。小気味の良い音が鳴り、ちょっとだけ担任に感謝する。
「いったぁ!何するのサエちゃん!」
「お前がうちの生徒に絡んでいるからだろ。
悪いな比企谷、
こいつはこういう奴なんだ、諦めてくれ」
「なによ。サエちゃんが不在の間、
応対していただけじゃない」
「放っておけば良いだろ。もう高校生だ、櫛田も一緒にいるだろ。なんのようだ櫛田、比企谷」
「茶柱先生、
来月私達に振り込まれるのは何ポイントですか?」
櫛田の問いに職員室の空気が緊張する。
「……その質問には答えられない。」
「では、ポイントが増減する理由を教えてもらう事はできますか?」
茶柱先生は笑みを浮かべながら
「それも答えられない。」
と回答した。
「で、比企谷はなんのようだ。」
次は俺の番のようだ。
「この学校にマックスコーヒーは売ってますか?」
一気に職員室の空気は弛緩し、先生は答える。
「マックスコーヒーか聞いた事がないな。
チエ知っているか?」
「私も知らないかな~。売ってないんじゃない?」
「では、マックスコーヒーを購入するのに何ポイント必要ですか?」
再度職員室に緊張が走る。
「説明しろ。比企谷」
「昨日先生は『敷地内で買えないものはなく、学校内でもそれは同様』とおっしゃいました。であれば、マックスコーヒーを買う権利も買えると考えたのですが」
俺が答えると
「はっはっはっ。お前はおもしろい生徒だな。
マックスコーヒーを買う権利か。
通常の販売価格で問題ないぞ」
「では、ポイントお支払いするので、毎月配達お願いできますか」
「わかった。手配しておこう。」
「あとこの学校でバイトは可能ですか?」
「バイトは認められていない。」
「そうですか。わかりました。」
「じゃあ〜私のお仕事手伝ってくれるかな〜。頑張ってくれたらおこづかいあげるよ〜。比企谷君おもしろそうだし〜」
「いいんですか?では、お願いします。」
…
「チエが初対面の生徒に『あざとい』って言われるなんてな。なかなかおもしろいものを見させてもらった。」
「ほんと比企谷君 ひどいよね〜。でも、2人凄いね。たった2日でここまで気づくなんて〜」
「Sシステムの全てを理解しているわけではなさそうだがな。及第点だ。」
「これはDクラスも侮れないかな。
下剋上ねらっちゃう?」
「そんなわけないだろ」
比企谷と櫛田か。大きな期待はしてなかったが、拾いもんかもしれんな。
…
「なんで今日も俺の部屋にいるんですかね?櫛田さん」
「作戦会議?
あと、節約が必要なのもわかったからね。
ご飯作って♪」
「なんで俺が」
「専業主夫目指すなら、いい練習になると思わない?」
「養われるつもりはあるが養うつもりはない。どうしてもというなら食費の7割と飯が『必要な日』は連絡しろ。それが条件だ。」
「う〜ん。八幡なら食材は無料コーナーのものが中心になると思うし……わかった。それでいいよ。ご飯が『いらない日』は連絡するね。」
こいつ。毎日来る気か!?
「で、八幡はこれからどうするの?」
「別に何もしないが」
「多分、来月からポイントが減らされる事、知ってるの私達だけだよ?」
「支給ポイントが増減する仕組みはわからん。
他人をあてにするぐらいなら
節約と小遣い稼ぎで十分だ。」
「八幡はそうだよね。私はどうしようかな〜。」
「それとなく無駄遣いをしない事。学校生活で気になった事があれば注意していけばいい。仮に来月10万振り込まれても当たり前の事言ってるだけだしな。櫛田なら上手くやれるだろ。振り込まれるポイントが減ってたら、その事に早めに気づいてたけど、確証がなかったから強くは言えなかった。て言えば周りの評価あがるんじゃね。知らんけど」
「うん。それがいいな。
相変わらず悪知恵だけは働くね。」
「実は私より性格悪くない?」
「それはない」