最後の第7戦目。
『チェス』 必要人数1名 時間1時間(切れ負け)
ルール・通常のチェスルールに準じる
ただし41手目以降も持ち時間は増えない
司令塔・任意のタイミングから持ち時間を使い
最大30分間、指示を出す事ができる
「3勝3敗で最後の7戦目に挑める。これほど嬉しいことはありませんね。しかもこの種目が最後に選ばれるなんて……。やはり残り物には福があるようです」
「この第7戦目は司令塔の実力に大きく左右される戦いになる」
「生憎と、オレはチェスが得意なんだ」
「それはそれは…奇遇ですね。
では私の選んだチェスは失敗だったかも知れません」
坂柳が選んだ生徒は橋本正義
「なっ」
対戦場に入ってきたCクラスの生徒をみて坂柳は驚いた表情をみせた。そう、オレはここまで堀北鈴音を使っていない。坂柳は当然堀北が現れる事を想像していたのだろう。この程度の揺さぶり坂柳には通用しない。ただ、この後の展開を考えると、何もしないよりマシだ。
「驚きました。最後は堀北さんだと思っていたんですが。浅はかな奇襲でしょうか?それとも彼は堀北さんに並ぶ実力者なんでしょうか」
「さあな」
「準備が整ったようですね。
では、これから第7戦のチェスを始めます」
『お願いします』
両者、八幡と橋本がゆっくりと頭を下げる。
いよいよ最終戦が始まる。
……
「よろしくな比企谷」
そう気安く声をかけてくる。
「あぁ。よろしく頼む」
「それにしても、まさか比企谷がでてくるとはな」
「同感だ」
「チェスを覚えて数カ月だからさ。手加減してくれよ?」
「残念だが俺も変わらん」
「それではこれより、第7戦目の種目、チェスを始める」
先生からの指示に従い、席につく。
「先攻後攻の決め方は分かるよな?」
「左手」
開かれた手には白の駒。つまり俺が白の先手だ。
初手はポーンE4
返しの手はポーンE5
すかさずナイトを動かし、黒のポーンを狙っていく
「俺も色々坂柳から教えてもらったからな。ここで黒が不利になるようなオープニングにはしないぜ」
……
「いいか八幡。序盤は正攻法でいけ。すぐに圧倒するな」
「いや。できんが?」
「決定的な1手がくるまでとにかく我慢しろ」
「あと持ち時間は極力使用しないように気をつけろ」
……
序盤はお互いに長考することなくすすんでいく。
「捻くれた戦い方だろ?」
「坂柳も一緒なのか?」
「ああ。坂柳も俺と一緒だからな。教えた時に1番フィーリングがあったんじゃないか?そっちは、こっちと違って手堅いみたいだが…独学か?」
「そうか…それは良いことを聞いた」
そろそろか。俺はこの盤面で考えられる最善の1手をさす。
(なっ!)
この1手で白に一気に形勢が傾いた。
橋本の手が止まる。初めての長考にはいった。
……
モニターに映し出された両者の対決。
「このまま終局まで見ていたくなるような
面白い勝負ですね」
「賛成だ。このまま最後まで見届けよう」
「フフ、そうですね…と言いたいところですが、そうもいきません。今の1手このまま任せていたら取り返しがつかなくなります。なかなかやりますね彼」
坂柳から司令塔としての関与がパソコンに表示される。
……
「坂柳がでてきたら可能なら10分耐えてくれ」
「不利な状況から挽回するためにある程度
本気でくるはずだ」
「その間にできるだけ坂柳のうち方を把握してくれ」
「いやいや無理だろ」
「次だ」
「無視かよっ」
……
こいつもバケモンだな。こんな奴相手に綾小路の指示無茶苦茶じゃないか。
「オレが変わるまで、正攻法で貫いてくれ。
もちろんノータイムだ」
ちっ。綾小路とやってなかったら瞬殺だったぞ。
1手進む事に形勢が逆転していく。
もうそろそろいいだろう…清隆
「さて、これでやっと…私達の勝負になりましたね」
「……」
持ち時間30分と限られているが終局までには十分足りるだろう。
『おいおい、
お前らどんな異次元の戦いしてんだよ……!』
『……………………』
「どうですか綾小路くん。
私の1手は、あなたの心に届いていますか?」
「ああ。痛いほどにな」
「心配していませんよ。
綾小路くんは些細なミスなど絶対にしない」
「だったら、諦めてくれてもいいんだけどな」
「それはできない相談です。ミスがないのであれば実力を上回り正面突破するだけです」
『……………………』
「ああ、なんと楽しい時間でしょうか。もう、ギャラリーへの気遣いなんてどうでもいい。私はただ、この一戦を人生で最高のモノにしたい。そう強く願っています」
『……………………』
「あなたはその程度で終わる人ではありませんよね。
綾小路くん。見せて下さい」
清隆から次の手の指示がくる…。おかしい…。これまでノータイムで指示がでていたが一瞬の逡巡。有り得んだろ。あの綾小路が…
……
「仮にオレの関与が始まっても絶対に思考を止めるな」
「次の一手八幡ならどう打つか考え続けるんだ」
……
清隆から指示があった一手。なにか違和感がある。
考えろ。八幡。
今まで何十何百局と清隆とチェスをしてきただろう。清隆の打ち手・思考を全てをトレースしろ。それに坂柳の思考もだ。
「あ〜。頭が割れそうだ」
そうだな。清隆。
次はここだ。
坂柳はその一手を見て、焦燥を感じでいる。
そして、オレは生まれて初めて微笑んだ。
オレはその一手を確認して関与を終わらせる。
「何故ですか?勝負を諦めたのですか」
「お前は比企谷を舐め過ぎだ。
この勝負…オレに固執しすぎた。それがお前の敗因だ」
……
「最後は八幡にまかせる。その覚悟をしておけ」
「おいっ!」
……
八幡にミスはない。これで勝負は決まるだろう。
「はぁ…はぁ…」
「これでチェックメイトだ」
Aクラス対Cクラス 4勝3敗 Cクラス勝利
「あ〜疲れた。一年分働いた気がする」
対局が終わり、
特別棟から出ようとすると桔梗が待っていた。
「なっ。おっおま…」
【挿絵表示】
……
これで1年生編完結です。後書き?の後に前半部分を改定していく予定です。ここまでお付き合い頂き、ありがとうございます。
ののんさんに支援画像頂きましたので、
エピソード追加してみました。