特別試験①
始業式が終わってから数日が過ぎた。
「全員揃っているな?」
チャイムが鳴るとほぼ同時に、教室に姿をみせる茶柱先生。朝のホームルームが始まって教壇に立つ先生の顔つきは真剣そのものだった。
「先生、特別試験ですか?」
「気になるところではあるだろうが、話をすすめて行く前にやってもらう事がある。これは今後の学校生活をおくる上でとても重要なことだ。全員、携帯を取り出し机の上に置くように。もし、忘れた生徒がいれば、すぐにとりに帰ってもらうことになるが…流石に忘れた生徒はいないようだな。ではまず、各々学校のHPにアクセスし、新しいアプリケーションをインストールしてもらう」
新しくいれたアプリは『OAA』と呼ばれるものだった。このアプリは全学年の個人データが入っており、個々の成績を数値上で把握できる代物らしい。個人情報保護法仕事してくれ。OAA導入の話題冷めやらぬまま、2時間目の授業が始まる。
「これから特別試験の概要を説明する。肝心のその内容だが、新入生である1年生と、おまえ達2年生がパートナーを組み行う筆記試験となっている。今回の特別試験では筆記試験とコミュニケーション能力が大きく問われる」
○学年別におけるクラスの勝敗
クラス全員の点数とパートナー全員の点数から導き出す平均点で競う。平均点が高い順から50,30,10,0ポイントのクラスポイントを報酬として得る
○個人戦の勝敗
パートナーとあわせた点数で採点される。
上位5組のペア:10万プライベートポイント
上位3割のペア:1万プライベートポイント
合計500点以下の場合:2年生は退学。1年生は3ヶ月間プライベートポイントの支給は行われない
意図的に点数を操作、下げたと判断された生徒は学年に関係なく退学とする。同じく低い点数を第三者が強要した場合も同じく退学とする。
「パートナーはお互いの了承で成り立ち、OAA内で登録することにより完了となる。今日この瞬間から組むことは可能になるが、一度パートナーを許諾した場合には、その後如何なる理由があろうともペアを解除する事はできない。以上が4月に行われる特別試験の概要だ。気を引き締めて挑むように」
さて、余り物に期待するしかないな。学力ではそれなりの評価をされているはずだ。流石に退学って事にはならんだろう。それにしてもこの試験あまりにもA・Bクラスが有利じゃないか?学力での総合力を考えたらC・Dクラスに勝ち目はないな。まあ、学生の本分は勉強と言われればそれまでか。
……
その後の昼休み。クラスメイトが食堂に向かう準備を始めるなど動き出そうとした時だった。
ガラガラガラ
「やっと見つけましたよ。せぇ~んぱぁ~い!」
そこに現れたのは一人の女生徒だった。見られる事に慣れ、その上で求められるキャラクター性を発揮する。男子生徒にとって理想の後輩像。亜麻色の髪の美少女がそこには立っていた。その女生徒は別のクラスにも関わらずある人物の前に迷う事無くすすんだ。クラスメイトの全員が呆気にとられたのか動けないままだ。
「先輩。入学してから何日がたったと思うんですか。先輩のことですから感動的な再開を考えてくれてたかもしれませんが時間かけ過ぎです。小町ちゃんも女性は待たせたらダメと言っていたじゃないですか。お久しぶりですが、先輩が変わっていなくて安心しました。それにしてもOAA便利ですね。先輩の事だからDクラスかと思っていたんですが、まさかCクラスとは思いませんでした。見つからないはずですね。あっ。感動の再開だからといって、口説かないでくださいね。ごめんなさい。二人きりの時にあらためてお願いします」
よくわからないが、どうやら?八幡は振られたらしい。
「お…おまっ…なんでここに」
「忘れてました。今回の特別試験。先輩とペアになる為に来ました。どうせ先輩の事だから余り物でいいかって考えてたんですよね。携帯貸して下さい。」
「おっ…おぅ」
思いがけない一色の登場に思わず携帯を渡してしまう。
「これで登録は完了ですね。
それでは末永く宜しくお願いします。」
「おっ…おまえ。そんなに簡単に決めていいのか?」
「なに言ってんですか?
私のペアは先輩以外ありえないですよ?」
「いろはちゃん。久しぶりだね〜」
「げっ!櫛田先輩。なぜここにいるんですか…」
「『八幡』と同じクラスだからだよっ。
そんなに軽率にペア決めて大丈夫なの?」
(八幡もだぞ!)
「これでもですか?」
そう言って一色は自分のOAAを表示した。
『1年Aクラス 一色 いろは
総合力:A
学力:A(92)
身体能力:B(74)
機転思考力:A(91)
社会貢献性:A(94)』
「私もこの1年で成長したんですよ?」
(ちっ)
「じゃ…じゃあ
なぜここにいるのか説明してもらえるかなっ?」
「……」
一色は少し考えたうえで人差し指を顎に当て小首を傾げながら櫛田に答えた。こいつのあざとさレベル上がってないか?
「う〜ん…。私は別に構いませんが、
櫛田先輩は大丈夫ですか?」
「どういう事かなっ?」
「…………」
一色はそのまま何も言わず上目遣いで桔梗を見つめる。
「わかったよっ」
…っ!?桔梗(櫛田)が折れただと
「では、今日先輩の部屋で再開を祝しませんか?先輩の部屋番号あとで連絡下さい。あっ。夕食はハンバーグでお願いします。これから昼食ですよね?食堂で一緒に食べましょう!オススメとか教えて下さいね。Cクラスのみなさんお騒がせして申し訳ございませんでした。さっ。先輩行きますよ〜」
そう言って八幡はひっぱられて教室を出ていった。
「綾小路くん」
「なんだ?」
「綾小路くんには今の状況が理解できているのかしら?」
「さっぱりだ」
「そう…少し安心したわ」