ようこそ正反対の二人がいく教室へ   作:ゆうき35

79 / 91
満場一致試験の本番は1話にする予定でしたが長くなりましたので分割します。最終試験より長文になったかも…


満場一致特別試験② 修学旅行の行き先は?

次の日、教室に入ってきた茶柱先生の固い表情を見て、多くの生徒はすぐに異変に気付く。

 

「10月の体育祭の前に、おまえたちに新たな特別試験に挑んでもらう。素直に認めてしまえば、例年であればこの時期に特別試験が行われるケースは少ない。事実、1年生や3年生たちに特別試験が実施される事はないからな。おまえたちには今回『満場一致特別試験』に挑んでもらう。今回の特別試験は非常にシンプル。特別試験の実施日は明日、内容は名前からも察することが出来ると思うが、複数の選択肢の中から、満場一致になるまでクラス内で投票を繰り返し行ってもらうものだ」

 

それからいくつかの例題を受ける事になった。一見簡単なように思えるが、クラス39人の意見を一致させる事は並大抵ではないようだ。

……

お昼休み。今回の試験対策として、意見がわかれた際の主導役は堀北に、そして、清隆と軽井沢の交際が周知された。愛理はやはり大きなショックを受けているようだ。フォローは波瑠加にまかせるしかないだろう。

 

その日の夜、俺は桔梗を部屋に呼ぶ。桔梗から部屋にくる事は多いが、俺から部屋に招く事は始めてと言ってもいいだろう。

 

「珍しいねっ。八幡からお誘いなんて♪

 何かな?何かな?」

 

「今度の文化祭。佐藤達が考えた企画の総合プロデュースを実施する事になった。この企画が通れば、桔梗にも協力してもらいたいと思っている」

 

「はあ…そんな事だと思った。それは全然大丈夫だよっ」

 

「そして、ここからが本命なんだが。明日の特別試験、仮にクラスメイトを退学にする選択肢が発表された時、○○が○○と言うまで退学者がでる選択肢を選んで欲しい」

 

「なんで?」

 

「野暮用と文化祭の為だ。頼む、桔梗。こんな事頼めるのはお前だけだ」

 

「ふふっ。いいよ。八幡の為なら♪」

……

9月17日。夏休みが明けて3週間と経たず、次の特別試験がやってきた。

 

「これより満場一致特別試験を開始する。ここからはルールに則り進行するため、インターバル以外で席を立つ事や、禁止されたタイミングでの雑談などは容赦なく注意をとっていく。心してかかれ」

 

モニターが切り替わり、カウントが30秒から始まる。やがて、カウントが0になると、文字が切り替わり最初の課題が表示された。

 

【課題1】

3学期に行われる学年末試験でどのクラスと対決するか選択せよ。(クラスの階級の変動があった場合でも、今回の選択が優先される)

※()内の数字は対戦時に勝利することで追加されるクラスポイント

 

【選択肢】

・Aクラス(100)

・Cクラス(50)

・Dクラス(0)

 

第2回目の投票結果でCクラス。つまり一之瀬クラスを全員が選択する事で課題はクリアとなる。順調な滑り出しだ。

 

【課題②】

11月下旬予定の修学旅行に望む旅行先を選択せよ

 

【選択肢】

・北海道

・京都

・沖縄

 

「この投票先も先程と同じようなもので、この1票で確定するわけじゃない。残りの3クラスの状況に応じて結果が変わる事もあるので、その点は理解しておくように」

 

『第1回目投票結果』

 

北海道 16票

京都   4票

沖縄  19票

 

「満場一致とならなかったため、これよりインターバルを行う」

 

「なあなあ、これって特別試験と言えるのか?全然楽勝っていうかこんなの…」

 

インターバルになると、本堂が拍子抜けしたように笑って言った。

 

「思うことがあるのは皆同じだと思う。だけど、まずはこの課題に集中しよう」

 

気がそぞろになる事を警戒し、洋介がクラス全体を引き締め直す。

 

「堀北さん。何かアドバイスはないかな?」

 

「……」

 

「堀北さん?」

 

「ごめんなさい。少し考え込んでしまったわ。複雑でもなんでもない選択肢だけど、意外と満場一致にするのは苦労するかも知れないと思っていたの。修学旅行は私達にとって重要なイベントだし、当然その行き先をわたしの1言でまとめる事もできないわ。とにかく、希望する旅行先の意見を聞かせてもらう所から始めるしかないわね」

 

それを待っていたかのように須藤が手をあげる。

 

「んじゃ、俺から。俺は沖縄にいれたぜ。修学旅行と言ったら海だし沖縄が定番だろう?1番投票数も多いし決まりでいいんじゃねーの?」

 

「ちょっと待ってよ。沖縄が定番の1つなのは認めるけど、それを言うなら北海道だってそうだし。投票数だって僅差じゃない。皆、スキーとかやりたくない?」

 

北海道に投じたと思われる前園が須藤に反対するように言った。その後、収拾のつきそうにない議論を交わし、2回目の投票の時間となった。

 

『第2回目投票結果』

 

北海道 18票

京都   5票

沖縄  16票

 

「仕方ないわね。こうなったら勝負で決める以外にないんじゃないかしら。北海道を希望する人3人、沖縄を希望する人3人、それぞれ代表を選んでじゃんけんをしてもらう。勝ち抜き戦よ。ただし、投票数の少ない京都に関しては1人にさせてもらうわ。厳しい戦いだけれど極力公平性を保つためよ」

 

「誰も出ないなら大将として出させてもらう。俺は必ず京都へ皆を連れて行く」

 

そう強い意志を表明し、厳しい戦いに身を投じたのは啓誠だった。初めて声をあげた京都派の生徒。京都は俺の希望する修学旅行先でもある。俺の分まで任せたぞ啓誠。見事勝ち抜けば、これからの予定をひとつスルーできる。

 

3回目の投票に間に合わせる為、手早くじゃんけんが始められるとあっさりと沖縄チームが先勝する展開に。一瞬で夢破れた京都チームは失意のまま戦場を去った。勝負の結果だが、北海道チーム大将の篠原が崖っぷちからまさかの3連勝を飾り勝利に導いた。3回目の投票になり、全員がタブレットを操作する。

 

『第3回目投票結果』

 

北海道 38票

京都   1票

沖縄   0票

 

「満場一致とならなかったため、これよりインターバルを行う」

 

3回目の投票で残った京都への一票。クラスメイトの視線は自然と啓誠に向けられる。

 

「ちっ…違うぞ。俺は間違いなく北海道に投票した」

 

啓誠は狼狽えながら反論する。

 

「さっきの勝負の結果、北海道に投票する事になったはずだけど…この結果に不満があるなら名乗り出てもらえるかしら」

 

「京都に投票したのは俺だ」

 

「どうしてかしら?比企谷くん」

 

「じゃんけんで決めるってあまりにも安直すぎるだろ。しかも、京都派の意見は一切聞かれていない。明らかに不公平だ。それにこの結果、半数近くは本当はまだ納得してないんじゃないか?」

 

これはただの前哨戦だ。投票先を京都で一致させる。それぐらいはこなしてみせないと本来の目的は達成できん。

 

「では、京都派の意見を聞かせてもらえないかしら?」

 

北海道で決定と思った直後、主張を始める俺に北海道派から少なからず批判の声があがる。反対に清隆と啓誠は期待の目をこちらにむけてくる。なお、桔梗は呆れている模様。

 

「みんなはなにか勘違いをしてないか?」

 

そういって俺は演説を始める。

 

「今回の選択は修学旅行の旅行先を決めるものだ。決して遊びに行く先を決めるものではない。修学旅行は広義では校外学習の場だ。旅行先でなんらかの特別試験が用意されている。そんな可能性もあるんじゃないか?まず沖縄だが代表とされるのはやはり海だ。本島の近くには無人島だってあるだろう。みんな思い出さないか?バカンスといって連れて行かれた無人島でのサバイバル生活を。俺はもうこりごりだ。自分から進んでもう一度味わいたいとは思わない」

 

直近で行われた無人島サバイバルを思い出したのか、沖縄を希望する生徒のトーンが下がる。

 

「じゃあ、北海道でいいじゃない」

 

北海道を最初から選択していた前園から声があがる。

 

「確か前園は北海道でスキーする事を主張していたな」

 

「そうよ。文句あるわけ?」

 

「修学旅行は11月下旬に予定されている。一般的に北海道のスキー場が開くのは12月になってからだ。北海道を選択したところでスキーができる可能性は大きくない。それに仮にスキーが可能だったとしてもだ、10月に体育祭が終わったばかりだ。そこに身体能力を問われる特別試験が行われるかもしれない。それは運動が苦手な生徒にとって不利になるんじゃないか」

 

啓誠を始め、運動が得意ではない生徒は耳を傾け始める。

 

「そろそろ時間よ」

 

「次の投票。今、話した内容を検討して、もう一度自分が良いと思う所に投票してくれ」

 

『第4回目投票結果』

 

北海道 15票

京都  16票

沖縄   8票

 

「なっ」

 

「さて、2回目の投票で京都に投票したのは5人だ。差し支えがなければ投票した人は手を上げてくれないか?」

 

そこで手をあげたのは啓誠を始め、堀北、綾小路の3人だ。予想はしていたが、勝ったな。

 

「須藤、軽井沢それに佐藤もだ」

 

「なんだ」

「なによ」

 

「『堀北』と『清隆』は京都に行きたいらしいぞっ」

 

その時、クラスメイトは声には出さなかったが一同こう思う。

 

(ずるっ)

 

「そうは言ってもよう…」

 

「明人、波瑠加、愛理。俺と啓誠、それに清隆は京都を希望する。特にこだわりがなければ協力してもらえないか?」

 

「別にいいよ〜」

 

波瑠加が代表して応えてくれる。

 

「そうだねっ。うん。

 京都の紅葉見たくなってきたかもっ」

 

ここで桔梗が賛意を示してくれる。

 

 

『第5回目投票結果』

 

北海道 12票

京都  22票

沖縄   5票

 

「さて、ここまで付き合わせてすまない。できれば次の投票で最後にしたい。11月の北海道は札幌で平均気温は5℃を下回る。関東に住んでいる俺たちからすると真冬の気温だ。北海道に旅行をするなら涼しい夏か、雪の降り積もる年明けがいいんじゃないか?時期が中途半端なんだ。さらに札幌・小樽・函館・旭川と言った観光をイメージする都市までどれくらいかかると思う?」

 

「1時間ぐらいじゃないのか?」

 

そんな声がちらほらあがる。

 

「片道で札幌と小樽でも1時間。函館だと4時間だ。北海道は俺達が思っているより遥かに広い。それに比べ京都はほぼ市内で完結できる。当然、修学旅行は限られた日程だ。与えられる自由時間。どちらを選択すれば、より多くなるか考えればわかるんじゃないか。みんな一度想像してみてくれ。紅葉に彩られた古都京都を親しい人と散策する。京都も決して沖縄や北海道に劣るものではないだろう?」

 

「堀北。俺は以上により京都を選択する事を主張する」

 

「そ…そうね。Bクラスは京都を選択する。他に意見がある人はいるかしら?」

 

『第6回目投票結果』

 

北海道  0票

京都  39票

沖縄   0票

 

引き延ばせた時間は約1時間弱か。まずは及第点だな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。