月日が経つのは早いもので、11月12日金曜日。文化祭前日の放課後がやってきた。全てのクラスは粛々と準備を進めてきた。今日の放課後は生徒会主導による予行練習の日だ。明日の本番に向けての重要なテストとなる。
「参加せんぞ。わざわざ金にもならん生徒をもてなしてやる必要はない」
「いい予行練習になるんじゃないの?」
「明日最初は失敗してもいい。ドジっ子メイドも確立された属性だ。今日は明日に向けて体調管理も含め鋭気を養ってくれればいい。色々なクラスをまわるのもいいんじゃないか。お客の立場を経験することでみえてくるものもあるかもしれん。設営班だけは今日が仕上げだ。悪いが準備を進めてくれ」
さて、設営に関しては堀北にまかせて問題ないだろう。こちらも最後の仕上げを進めよう。
特別教室の1階、その1つの教室で着々とコンセプトカフェの準備が進められていた。俺達のメイド喫茶と異なり、龍園クラスのコンセプトは『和装』。食事や飲み物に関しても、和菓子やお茶など、全く方向性の異なるものだ。
「よう。ひよりは会計係なのか?」
1人座って読者をしていたひよりに話かける。
「はい。人と対話するのはあまり得意ではないので…動き回るのも得意ではないですし、トレーで食事を運ぶ練習もしましたが、うまくいきませんでした」
「苦手な事をわざわざやる必要はないだろ。ひよりが会計を担当してくれるなら安心できるしな」
「ありがとうございます。今日は偵察ですか?八幡くん」
「ああ、そんな所だ。俺達のメイド喫茶は洋風だからな。上手く対比になっていいんじゃないか。明日の勝負が楽しみだ」
「龍園くんが言ってたのは本当なんですね」
「せっかくのお祭りだ。バトル要素があるほうが盛り上がる。王道だろう?」
「ふふっ。八幡くんに推薦されていくつかライトノベルも読みましたが、確かにこういった展開も記憶にあります。なんだか物語の登場人物になったみたいです」
「ククッ、何の用だ?腐り目」
「明日のライバル候補だからな。敵情視察だよ。それにしても和装の衣装は高くついたんじゃないか?どうせコンセプトカフェで競うなら完全に一緒でも良かっただろ」
「それじゃあ、おもしろくねぇだろ。あとは単純に俺の好みだ。わざわざお前の提案通り企画ぶつけてやったんだ。何かアドバイスでもしていけ」
「堀北に勝負ふっかけたのはお前のアドリブだろ。そこまでしてやる義理はないが…そうだな。せっかく和の雰囲気にひよりがいる。茶を実演でたてたりはせんのか?美少女高校生がたてる茶だ。多少高値でも需要あるんじゃないか?あとは参加料とって子供たちに簡単な体験をしてもらうのもいいだろう。別に場所はこの教室でなくてもいいしな」
「ひより。できるか?」
「はっ…はい。茶道部ですからその程度なら」
(美少女高校生…)
「よしっ。これから一部の予定を変更する。よかったのか?腐り目。敵に塩を贈るような事をして」
「これぐらいで負けるつもりはないぞ」
「クククッ、お前たちは一之瀬を抱き込んだみたいだが、せいぜい共倒れしろ。鈴音に伝えておけ、明日勝つのは俺たちのクラスだってな」
……
その後、色々なクラスをまわりつつ俺は保健室を訪れた。
「八幡くん、今日はどうしたの?」
「星乃宮先生に質問とお願いがあってきました」
「質問なら佐枝ちゃんでもいいんじゃない。ホント佐枝ちゃんあれから変わったよねっ。いまいましいっ」
「本音でてますよ。それに先生が依頼したんでしょ」
「佐枝ちゃんを追い込んで欲しかっただけだよ〜」
「はいはい。そうしておきます。質問ですが、今、茶柱先生に聞くわけにはいきませんので」
「う〜ん…で何かな?お姉さん何でも答えちゃうよ?私のスリーサイズとか?」
「要りません」
「も〜真面目なんだから〜」
「明日の文化祭。先生達にご助力頂くには何ポイント必要になりますか?」
「なるほどね〜。ちょっと待っててね……1時間10万ポイントよ」
「では、ここで2人分お支払いします」
「2人分?」
「茶柱先生と星乃宮先生分ですが?」
「佐枝ちゃんはいいけど、私は他のクラスの担任よ?」
「一之瀬達から聞いているでしょう?何の為に一之瀬巻き込んでると思ってるんですか?」
「えっ…え〜。もしかして、わたしを巻き込むため?」
「それ以外に何かありますか?もちろん一之瀬には星乃宮先生に『俺たちの』クラスで手伝いをしてもらうことは了解とってます」
「でもでも、前例ないしね〜」
「文化祭自体が前例ないのでは?」
「それでも、クラスのみんなに悪いしね〜」
「面倒くさい。知恵、手伝え」
「はいっ♪あっ…あれ…?」
「言質は取りましたからね。星乃宮先生。明日はよろしくお願いします」