護法戦記   作:ほすほす

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私は平安。璃月のしがない物書きだ。
目が覚めると、そこは棺桶の仲だった。
ああ、落ち着く……。
私は夢の余韻に酔いながら、様々なできごとを思い出す。
でも、そろそろ棺桶から出ないとな……。

――これは層岩巨淵のイベントストーリーの裏側で巻き起こる、もう一つの護法夜叉の話。


護法戦記 20話 思いがけない刺客

 あまりの衝撃を受けると人は涙すら流すことができない。

 

 それを今、私は実感していた。

 

 

 夢で見たありとあらゆる光景が、目に焼き付いて離れない。

 

 そもそも、今まで見てきた夢の数々は、あまりにリアルすぎたのだ。

 

 まるでほんの少し前に、本当に目の前で起こった出来事のようにさえ感じられる。

 

 普通の夢のように、目が覚めてから記憶がぼやけることもない。

 

 むしろ頭がさえてくればくるほど、余計に情景がはっきりとしてくる。

 

 

 

 もう辛くて仕方がなかった。

 

 

 

 いくつか前の夢では弥怒と同調するようなこともあったが、もし今回がそうであったなら私が正気を保てていたかどうかすら危うい。

 

 胸が張り裂けそうなこの思いを、叫び声にして吐き出せたらどれだけ楽だろうか。

 

 だがそんなことをしても、意味がないことは自分でもよくわかっていた。

 

 

 私はぼーっとしながら、体の脇に寄せていた鞄の中より札の入っていた木箱を取り出す。

 

 固くて乾いた木の感触が、手から伝わってくる。

 

 たとえ闇の中で、その色や形がわからずとも問題はない。

 

 私の網膜には初めてこの箱と出会った時の映像が、色褪せることなく残っているのだから。

 

 手で輪郭を確かめれば、箱の姿が浮かび上がる。

 

 

 古ぼけた木箱。

 

 残っていた血痕。

 

 箱を開ければ、中には鮮やかな血がそのまま残る札がある。

 

 

 恐らく、札についていたのはあの時の弥怒の血だ。

 

 箱についていた血は、急いで札を収めた王深のものか、あるいはふたりの血が混じったものか。

 

 外側までは封印が届いていなかったのであろう。

 

 だから、箱の血痕だけが黒い染みとなっていたのだ。

 

 そして、札の封印はまだ生きている。

 

 封印が解けない限り、どれだけの年月を経たとしても当時と同じ状態を保ち続けるのだ。

 

 私は手探りのままふたを開け、中をのぞいてみる。

 

 もう札は最初に見た時のように黄金色に光ってはいない。

 

 少し埃っぽい匂いが、私の鼻孔をくすぐった。

 

 

「お前の、記憶だったんだな……」

 

 

 札を前にすれば、蘇る。

 

 今まで繰り返し見て来た、護法夜叉たちの姿。

 

 それはきっと、大地の記憶。

 

 あるいは弥怒の服についていた、たった一粒の砂粒だったのかもしれない。

 

 岩元素は常に心猿大将と共にあり、共に生き、その最期でさえも札に形を変えて見守り続けた。

 

 なぜ私にあのような夢をこの札が見せたのかは、いまだにわからない。

 

 もしかするとただ私がこの札を肌身離さず持っていたから、影響を受けただけなのかもしれない。

 

 

 たとえ、たとえそうだったとしても。

 

 

 この札は幾星霜の時を超えて、弥怒の魂と夜叉たちの物語を私の元まで運んでくれた。

 

 そう思うと、何か熱いものが胸からこみあげてくる。

 

 この札や箱が、とてつもなく大切なもののように感じられた。

 

 私は札を箱に戻すと、そっと胸元に抱き寄せる。

 

 

 呼吸をするたびに、肺が震えた。

 

 そうすることでやっと、私は自分が今どんな感情をもちあわせているのかをおぼろげに理解することができたのである。

 

 

 ――わたしは、怖かったのだ。

 

 

 何もかもが。

 

 

 夜叉の戦いも、業障も、妖魔の死骸も、誰かの死も。

 

 

 どれも私の日常からはかけ離れており、刺激があまりに強すぎた。

 

 夢の中でなければ、卒倒していたに違いない。

 

 ひとつの感情を整理すると、私は自分の中にまた別の感情があることに気が付く。

 

 嬉しさと、切なさである。

 

 この札に出会い、弥怒と、伐難と、夜叉たちを知ることができた、喜び。

 

 同時にその物語が、変えることのできない惨劇であった、悲しみ。

 

 私はその一つ一つを、ゆっくり、ゆっくりと噛み締めていく。

 

 

 そして最後に、私は思い至る。

 

 

 どれほど感情を揺さぶられようと、脳が焼ききれるほどの思いがあふれようと。

 

 夢で見た世界の美しさと、残酷さと、夜叉たちのまぶしいほどの生きざまに、私がどうしようもなく心惹かれてしまっているという事実に。

 

 

 私はしばらくの間、棺桶の中から出ることもせず、そのままじっと暗闇を見つめていた。

 

 

 

 

 

『末期だな』

 

 

「ああ」

 

 

 私は頭に響いてきた弥怒の声に生返事を返す。

 

 

『とうとう心細さのあまり、ただの木箱にすらすがるとは』

 

 

「ああ」

 

 

『幽霊が急に現れたとしても、その箱は穂をむしり取られた馬尾ほども役に立たぬぞ』

 

 

「ああ」

 

 

『おい、聞いておるのか? お主は!』

 

 

「ああ」

 

 

『おい! 平安っ‼』

 

 

「うわっ!?」

 

 

 名前を呼ばれて私は我に返った。

 

 

「な、なんだ、こっちの弥怒か……」

 

 

『あっちもこっちもないわ! いつまでお主は寝ぼけておるのだ! だいたい、人の話の途中で寝てしまいおって! 失礼にもほどがあると思わぬのか?』

 

 

 弥怒がぎゃんぎゃんと頭の中で騒ぎ立てる。

 

 いつもなら、「うるさい!」とか、「わかった、わかった!」と聞き流すのだが、この時の私は弥怒の小言が妙に心に沁みてきて、思わず涙ぐむ。

 

 

「あぁ、弥怒だなぁ……」

 

 

 胸がジーンと熱くなり、私はもう一度、箱を抱きしめる。

 

 

『気色悪いっ‼ やめろっ‼ 己れの名を呼びながら箱を抱きしめるな! 鳥肌が立つ‼』

 

 

「そんなこと言うなよ弥怒。私と弥怒の仲だろう?」

 

 

『し、信じられん……。己れは今心の底から、お主の頭から出られぬことを後悔しているぞ……』

 

 

 珍しくも今回、私は弥怒に言い負けなかった。

 

 このような勝利の仕方は、本望ではなかったが。

 

 

「なあ弥怒」

 

 

『なんだ』

 

 

 私はずびっと鼻をすすって、弥怒に尋ねた。

 

 

「寝る前の話の続きだが、ここに来た目的はその、伐難に会うためなんだよな」

 

 

『……そうだ。まあ、そればかしではないがな。他の夜叉たちにも、もしかしたら会えるかもしれぬと思ったのだ。己れが戦火の中無責任にも交わした約束を、今もなお待ち続けている者がいるのであれば、謝りたくてな』

 

 

 弥怒は小さくため息をつく。

 

 

「弥怒は、悪くないよ」

 

 

 自然とそんな言葉が私の口をついて出る。

 

 夜叉たちはそれぞれが必死に戦っていた。

 

 弥怒も、伐難も、王深も。

 

 夢で見なかった場所にいた、顔も名前も知らない夜叉たちだって、きっと。

 

 

『なんだ、知ったような口を利くではないか』

 

 

 鼻で笑いながらも、弥怒はちょっぴり嬉しそうだった。

 

 私は心の中でこの大男もかわいいところがあるじゃないか、とほっこりしつつ胸の奥にチクリと小さな痛みを覚える。

 

 あの時代、彼らを心の底から褒め称えるものはどれほどいたのだろうなどと、余計な考えが頭をよぎったせいだ。

 

 

 私は自分に言い聞かせる。

 

 弥怒たちは、そんなもののために戦っていたわけではないと。

 

 英雄でさえ手の届かぬその崇高な精神をもってして、夜叉たちはこの愛すべき大地を守り抜いたのだ。

 

 彼らが歩いた道は決して日の当たる道ではなかったが、その足跡は私の心と体を震わせる。

 

 

「ははっ、何でも知っているぞ。私は。なんてったって、璃月一の護法夜叉ファンを自負しているからな。文献だって、たくさんあるんだ」

 

 

『その割には、お主の書いた小説はかなりお粗末なできだったがな』

 

 

「むっ。あれはその、私の技量の問題だ」

 

 

『物は言いようだな』

 

 

 私はいつものように弥怒と軽口をたたき合いながら、心では別のことを考えていた。

 

 思い返せば子供のころ、私はよく護法夜叉の真似をして広場を駆けまわった。

 

 祖父の聞かせてくれる夜叉たちの話に目を輝かせ、心はもう彼らになり切っていた。

 

 そんな子供の夢から覚めきれぬまま、大人になったのが今の私だ。

 

 挙句の果てに降魔大聖にまで迷惑をかけ、醜態をさらした。

 

 

(敵わないな、彼らには。護法夜叉は私のような者が、出来心で真似していいような存在ではない。過去の私の考えがいかに間違っていたか、つくづく実感させられるよ、弥怒……)

 

 

 そもそもこうやって弥怒と普通に会話をすることすら、おこがましいというものだ。

 

 

「ふふっ」

 

 

『なんだ、急に笑いおって。罵倒されるのが癖にでもなったのか? そうなったらいよいよ末期だぞ』

 

 

「いいや、なんでもない、なんでも」

 

 

 私は胸元の木箱を鞄の中へと戻しながら、妄想する。

 

 弥怒は私の頭の中で、今どんな顔をしているのだろう、と。

 

 また気色悪いと思って眉間にしわを寄せているのだろうか。

 

 それとも、私の心情をはかりかねて怪訝な面持ちをしているのだろうか。

 

 いいや、違うな。

 

 きっと弥怒のことだ。

 

 なんだかんだ言って、私のことを心配しているのだろう。

 

 こんな私に、気を使う価値などないというのに。

 

 

 

「もう外は、夜だろうか?」

 

 

 

 そう口にしながら、私は棺桶の通気口をのぞきこむ。

 

 外はうっすらと月明かりに照らされていた。

 

 

『恐らくな。そろそろ、出てもよいのではないか?』

 

 

 私は手をぐっと伸ばし、棺桶の蓋を押し上げる。

 

 蝶番がギギギと、後を引くようなおどろおどろしい鳴き声を上げた。

 

 この棺桶、ベッドとしてもちゃんとしているが、しっかりとそういうところだけは棺桶なのである。

 往生堂の謎のこだわりに、私は感動すら覚えた。

 

 

 私は身を起こすと久しぶりに外の空気を、胸いっぱいに吸い込む。

 

 夜の森を通り抜けるしっとりとした風が心地いい。

 

 空を見上げれば、薄く張った障子紙のような雲の奥に月が朧げに輝いている。

 

 普段であれば気にも留めないような景色だったが、あんな夢を見た後だ。

 

 そのどれもが美しく感じられてしまう。

 

 私はだいぶ感傷的になっていた。

 

 

 本当は一日中布団をかぶって寝ていたい。

 

 心はとうに疲れ切っていた。

 

 だが、そうも言ってられないだろう。

 

 私の意思なんかより、弥怒が優先だ。

 

 生前は言葉通り身を粉にして璃月に尽くしてきたのだから、少しぐらいのわがまま、私が聞かずしてどうする。

 

 

「えーっと、胡桃は起きているか……?」

 

 

 私は首を振り、道の向こう側へと目線を送った。

 

 しかしそこには、蓋が開いた棺桶がひとつだけ。

 

 胡桃の姿は見当たらない。

 

 

「あれ、もう起きていたのか。一体どこに――」

 

 

 私はそこで口をつぐむ。

 

 厳密には、そこから先を口にすることができなかったのだ。

 

 理由は簡単だ。

 

 私の首筋に、ひやりとするなにかがそっと押しあてられていたのだから。

 

 実際にこのような場面に出くわしたことは一回もなかったが、私の置かれていた状況は小説で何度も見たことのあるものだった。

 

 だからだろうか。

 

 首にあてられた何かを、私が理解するまでさほど時間はかからなかった。

 

 

『……やられたな』

 

 

 弥怒が、軽く舌打ちをする。

 

 今自分が置かれている状況を説明するのは簡単だ。

 

 だが、決して受け入れたくはなかった。

 

 

「どういうことだ、胡桃……!」

 

 

 私の肩口には真っ赤な槍の穂先が、静かに添えられていた。

 

 

 

 

 

「おはよう、平安さん」

 

 

 

 

 

 背後から聞こえる、聞き覚えのある少女の声。

 

 一か八かでその名を呼んだが、まさか本当に槍を押し当てているのが胡桃だと知り、私は動揺を隠せない。

 

 野党か何かであればよかったのに、と思った。

 

 いやそれもだいぶ困った状況には変わりないのだが。

 

 それでもこの場所で唯一頼れる存在の胡桃に、裏切られるよりかはましと言えるだろう。

 

 

 胡桃が返してきた声は平たんで、まるで感情というものがこもっていなかった。

 

 彼女の中身が別人にすり替わったのかと、疑ってしまうほどに。

 

 

 私は自分の身に降りかかった不幸を呪った。

 

 なぜこうも、私の心に追い打ちをかけるようにトラブルは重なってくるのだろうと。

 

 そう思わずにはいられなかったのだ。

 

 夜叉たちの衝撃的な夢を見たせいで、すでに私の心はぼろぼろだったのだから。

 

 

「……その、胡桃。これがツアーの演出なら、心臓に悪いからやめてもらえないか? 私はお化けを見に来たのであって、お化けになるつもりはさらさらないのだから」

 

 

「ふふふっ、あはははははっ」

 

 

 胡桃が声を上げて笑う。

 

 それでも、槍の切っ先は微動だにしない。

 

 

「な、何が可笑しかったんだ? そんな変なこと、私は言ったか?」

 

 

 そう尋ねると胡桃はからかうような口調で、信じられないことを口走ったのだった。

 

 

「そりゃあ、おかしいよ。だってまるで、平安さんみたいなことを言うんだもの」

 

 

「は……? なにを、私は平安だぞ……?」

 

 

 呆けた声を上げると、頭の中で弥怒が緊張した様子で私にささやく。

 

 

『気をつけろ、恐らく彼女はもう……』

 

 

 弥怒をまるでさえぎるように、胡桃が言葉を重ねた。

 

 

「もう、そんな演技しなくていいんだよ、平安さんにとり憑いた、弥怒さん……?」

 

 

 胡桃の口から出てくるはずもないその名前に私は驚き、つい余計な一言を漏らしてしまう。

 

 

「な、なぜそれを!?」

 

 

『馬鹿者ッ!』

 

 

 弥怒に怒鳴られ、私ははっとする。

 

 

 

 

 まずい。

 

 まずすぎる。

 

 

 

 すべての歯車が、ぴったりとはまり、私の意図せぬ方向へ向かって回り始めている気がした。

 

 私は槍で首筋を切らぬよう、気を付けながらゆっくりと後ろを振り向く。

 

 そこには、口の端を舌でぺろりと舐める漆黒の少女がいた。

 

 

「えへへへっ、大正解って顔、してるね……?」

 

 

 いや、してない。

 

 絶対してないぞ、私は。

 

 この顔は、この子は一体何を言ってるのだろうって顔だ。

 

 

 だが、そんなことを彼女に言ったところでどうなるのだろう。

 

 私は今、刃物で脅されているのだ。

 

 この状況を変えなければ、私は逃げることも身動きすることさえできない。

 

 

『なんとか、彼女を説得するのだ!』

 

 

(そんな無茶な!)

 

 

 そう弥怒に頭の中で言い返したところで、私は自分の大きな過ちにやっと気が付いた。

 

 

(あれ? 私は、いつから弥怒と普通に会話をしていた……?)

 

 

 そうだ。

 

 なにをしていたのだ、私は。

 

 

 弥怒と会話をするときは今もそうしているように、頭の中に言葉を文字で思い浮かべて会話をしていたではないか。

 

 

(なぜ、私は先ほどまで声に出して弥怒と会話をしてしまっていたのだ……!)

 

 

 それはつまり、棺桶の外まで私の声が丸聞こえだったということ。

 

 私は想像する。

 

 暗い森の中、棺桶から響き続ける男の独り言。

 

 

 

 不審だ。

 

 不審すぎる。

 

 

 

 私が胡桃であっても、同じ行動をとったかもしれない。

 

 しかし、そんなことは今どうでもいい。

 

 目下の問題として、何とかして胡桃の誤解を解かなければ。

 

 私は胡桃を説得しようと試みた。

 

 

「胡桃、君は誤解している。私はその、恥ずかしながら、ひとりごとをいう癖があってだな。弥怒と言うのは、私が考えた空想上の存在なんだ。そう、私は本を書いているから、なかなかその癖が外でも抜けなくってな、あはは。そ、そうだ、璃月の私の家に、書きかけの小説があるんだ。それを見てもらえれば、私が言っていることが嘘ではないと証明できるはずだ。だから、胡桃、そのおっかない槍をどうか下ろしてはくれないだろうか?」

 

 

 ここまで来れば恥も外聞も関係ない。

 

 ありとあらゆるものを使って、胡桃の警戒を解くしかないのだ。

 

 

 

(どうだ……?)

 

 

 私は胡桃の顔色を窺う。

 

 胡桃は私の言葉を聞いて少しの間きょとんとしていたが、にやりといたずらっぽい笑みを浮かべる。

 

 

「今は、平安さん? それとも、まだまだ弥怒さん? まあ、どっちでもいいや。ちょっと行き違いがあったみたいだから正しておくね」

 

 

 胡桃は腰をかがめると、私の前に顔を持ってくる。

 

 そして槍を持つ手と反対の手を口元に当てながら、今までとは比べ物にならない爆弾発言を繰り出したのだった。

 

 

「実はね、ずっと前から私、平安さんのことも、その鞄に隠し持ってるお札のことも、ぜんぶぜーんぶ知ってたんだ」

 

 

「はぇ……?」

 

 

 あまりの驚きに変な声が出てしまった。

 

 

「ま、まさか、ここに来る途中で……? それとも望舒旅館で私の荷物を漁ったのか……?」

 

 

 胡桃はゆっくりと首を横に振る。

 

 

「いやいやいやいや。もっと、も~っと前だよ。教えてほしい? じゃあ、教えてあげるね。そ・れ・は――」

 

 

 耳元で、胡桃がささやく。

 

 

 もったいつけたように、今まで隠していた秘密を打ち明けたくて仕方がないように。

 

 

 私はそれを聞くやいなや戦慄が走り、背筋が凍りついた。

 

 

 同時に、文字通り心臓が一気に縮みあがる。

 

 

 

 

 

「……平安さんが、七七ちゃんにお札を見せた時から、だよ」

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