俺は基本ソロの剣士なんだが、自称凄腕の盗賊とバディを組まされている。~お兄さんってぇ、陰キャのぼっちですよねぇ~   作:これ書いてるの知られたら終わるナリ

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決闘代行8

 シエルとキサラを宿へ返して、俺は殿下とヴァレリィの待つ部屋へと向かった。向かう途中で何人かの近衛兵が忙しそうにすれ違っていった。

 

「仕事は終わらせたぞ」

 

 扉を開けると同時にそう言って、殿下に確認を取る。彼女はソファに腰掛けて何かの書類を確認していた。

 

「白閃! ……すまない。僕が余計なことを」

「いや、いい。結局いつかはバレる事だった」

 

 ヴァレリィは頭を下げるが、正直なところ「どうでもいい」という感情が強かった。彼は俺を心配しての言動だったし、シエルは許すとも違うが、理解する姿勢を見せてくれた。俺にはそれで十分だった。

 

 むしろ、俺としては気になる事は別の所にあった。

 

「ヴィクトリア殿下、説明はしてもらえるんだよな?」

「ええ、勿論です」

 

 今回の奇妙な依頼と、エリーとの確執、気になる事はいくらでもあった。

 

「まず、今回の依頼については、本当に勝敗はどうでもよかった。という答えになるでしょうか」

 

 殿下は静かに手に持った資料を机に並べた。それにはいくつもの人名とその役職、そして不正の証拠が書かれていた。

 

「国を二分するような大立ち回りをして、決闘で雌雄を決する。そういう派手な展開でこそ、国賊は尻尾を出しやすい……という事です」

 

 つまり、赤派と青派で互いに代理を立て、決闘を行うという大きなイベントの裏で、敵対する勢力をあぶりだして処罰していたという事か。来る途中にすれ違った近衛兵は、つまりはそういう事なのだろう。

 

「実の姉を慕う貴族たちを処罰するとは、苛烈な事をするな」

 

 俺がそう返すと、彼女は首を横にふった。

 

「まさか、そんな理由でこのリストを作っていません。ここに載っているのは、姉さんに群がる獣たちです」

 

 殿下の言葉は穏やかで、敵対する相手への言葉には聞こえなかった。つまり――

 

「ビッキー!!」

 

 そこまで考えたタイミングで、部屋の扉が勢いよく開かれる。開いた主は、エリーだった。

 

「姉さん!?」

「もういいでしょ!? 貴方が勝ったんだし変な意地張ってないで仲直りしようよ!」

 

 エリーは真剣な顔でそう訴える。一方でヴィクトリア殿下は頭を抱えてため息をついた。

 

「ええ、そうね……」

「やったぁ! これからも一緒に頑張ろうね! ビッキー!」

 

 二人の様子を見て、ヴァレリィの方へ視線を向けると、彼はやれやれと言った具合に首を振った。つまり、そういう事らしい。

 

 姉妹の不仲はただの演出で、情勢が乱れることによって台頭する不穏分子をあぶりだす作戦だったのだ。

 

 二人の性格と周囲の評価を見るに、人としての評判はエリー、政治手腕としてはヴィクトリア殿下に軍配が上がるのだろう。

 

 ということはつまり、不正をする貴族たちにとって、殿下には失脚してもらった方が都合がよく、エリーが女王となれば動きやすくなる。という事だろう。それを見越して、ヴィクトリア殿下は罠を張ったという訳だ。

 

「こうやって話すのも久しぶりだね! 今日は晩餐会をひらこっか!」

「ちょ、姉さん……くるし……」

 

 顔色がどんどん悪くなっていく殿下を見て、俺とヴァレリィは慌てて二人を引き離すのだった。

 

 

――

 

 

「ふーん、じゃあただの茶番に付き合わされたって事ですか?」

 

 次の街へ向かう道中、シュバルツブルグの門から出て一時間ほど歩いたあたりで、キサラに事の顛末を話すと、そんな答えが返ってきた。

 

 表情は随分不機嫌そうだったが、頭を小突くと仕方ないといった感じに表情を緩める。当事者である俺が満足しているのだから、そんなに怒る必要も無いだろう。

 

「まあ、実際そうなんだが、加工賃の割引額を考えれば実入りのいい仕事だった」

 

 なんせ報酬は驚異の八割引きだ。足が出た分はギルドから借金をしたが、本来するべきだった金額を考えれば安いものだった。

 

「それに、シエルも成長できたようだしな」

 

 キサラの後ろに隠れているシエルも、今回の事で少し大人びたような感じがする。ある程度の人格までは、神竜種の成長は早い。それは時間よりも、起こった出来事に対して成長していくからだ。

 

「……とうさま」

 

 シエルが警戒心をむき出しにしてこちらを睨む。まだ俺を許してくれていないのだろうか。

 

「なんでこいつがいるの?」

「こいつとは酷いなぁシエルちゃん!」

 

 シエルの言葉に応えるように、俺の反対側で声が上がった。

 

「僕にはヴァレリィって名前があるんだよ? 親しみを込めてヴァっくんって呼んでほしいなぁ!」

 

 髪を掻き上げて、芝居がかった調子でヴァレリィは話す。彼はこのままついていきたいと言い出したので、仕方なく連れてきたのだった。

 

「まあまあ、荷物持ちか肉壁にはなるかもしれないですし」

「わたしちゃんと荷物持つし攻撃防ぐもん!」

「そんな! 僕は魔法研の元職員だよ? 回復属性は使えないけど、基本六属性はちょっとしたものさ!」

 

 キサラがなだめようとするが、シエルが反発し、ヴァレリィが芝居がかった様子で反論する。なんか……随分騒がしくなったな。

 

「悪いなシエル。置いて行こうと思ったんだが、勝手にでもついて来ると言い出して、連れて来ざるを得なかった」

 

 やろうと思えば、夜明け前に発って置き去りにすることもできたが、その場合こいつが大陸中を探し回ってのたれ死ぬ可能性があった。なんだかんだ俺たちに配慮していろいろしてくれた相手に、その仕打ちは酷いような気がして、俺はこいつと一緒に旅をすることに決めたのだ。

 

「……まあ、とうさまが言うなら我慢しますけど」

「ああーっ、シエルちゃんのすねたお顔可愛いっ! もっと僕に良く見せて! お父さんの言う事だから仕方なく、本当は嫌だけどしたがっちゃうときの顔かわいいよぉ!」

「でもわたしこいつ嫌い!!」

 

 媚びるように、舐めまわすようにシエルを観察するヴァレリィに、俺は頭を小突いてやめさせる。

 

「いやあ、ありがとうございますお義父さん! これでもっと彼女を見ていられる!」

「そうか」

 

 お前のおとうさんになった覚えはない。と言いそうになったが、言っても効かないだろうなと思いなおしたので、適当に流した。

 

 ……しかし、どうやらこいつの神竜種好きは演技ではないらしい。

 

「それにしても、最初はワタシとお兄さんだけだったのに随分にぎやかになりましたねぇ」

 

 キサラが唐突にそう言って俺の方を見る。

 

「陰キャのお兄さんにはちょっとキツいんじゃないですかぁ? 大丈夫です? 一言も発しない日が――」

 

 ビキニトップのひもを引っ張る。簡単にズレた。

 

「ぎゃああああああああああああああああ!!!! 口で勝てないからって手を出さないでくださいよ!!!!」

「いや、やってほしいのかなと」

「おっぱい世間様に見せたがる美少女なんています!!!????」

 

 実際、俺自身は楽しいけどな。とは言わないでおいた。




ここまでお読みいただきありがとうございます。

皆様の応援のおかげで赤評価、5000ブックマークを達成して感無量です。感想もなかなか返せませんが、全て目を通しております。

さて、ここも割と重めのお話をしましたが、次回も軽くはないお話が続きます。というのも、次話で一区切りという構造を取るからです。

これから先もどうかお付き合いいただければと思います。私の連載は皆様の応援に支えられています。

最後になりますが、面白いと思っていただけたら高評価を、続きが気になると思っていただけたらブックマークを、まだの方はよろしくお願いします。
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