俺は基本ソロの剣士なんだが、自称凄腕の盗賊とバディを組まされている。~お兄さんってぇ、陰キャのぼっちですよねぇ~   作:これ書いてるの知られたら終わるナリ

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お久^^


小鬼駆除1

「おい! 納屋の掃除は終わったのか!?」

「ちっ……」

 

 面倒だ。

 

 河原に座り込んでちりちりと頭を焼く太陽の熱を感じていると、おやっさんの野太い声が聞こえてきた。この小さな村で生まれ、そして死んでいく。ただそれだけの生活に何の意味があるのだろうか。

 

 例えば、首都のヴァントハイムに行って、闘技大会に出て、決勝の御前試合で皇帝に見初められて騎士になることだって出来るだろうし、エルキ共和国に行って商人の小間使いから成り上がることだって出来る。

 

 少なくともこんな片田舎の僻地でおやっさんにドヤされながら仕事をしているよりも有意義で、俺にとってふさわしいはずだ。

 

「どうなんだ? さっきからそこに座り込んでるが――」

「あーうるせえうるせえ! やりゃあいいんだろ!」

 

 おやっさんの言葉を遮るように立ち上がると、俺は納屋の方へ足を向ける。

 

 このままで俺の人生が終わって良いはずがない。きっといつか、この村を抜け出せるようなことが起こって、俺は実力でのし上がっていけるはずだ。

 

 納屋の扉を蹴り開けると、中に積もっていた埃が舞い上がり、光の粒達が緩やかにうねる。

 

 日が当たる部分を踏みつけながら内部に入ると、徐々に目が慣れてきて古ぼけた鍬や鋤、干し草を運ぶフォークなどが並んでいた。

 

「くそっ」

 

 掃除を始めるにしても、物が多くてほうきで掃くことも出来ない。仕方なく俺は農具をいくつかまとめて担ぎ、外に運び出していく。

 

「……これは冒険者ギルドに依頼するしかないか」

「いや、そうは言ってもこの村で報酬なんて用意できるはずが……」

 

 いくつか農具を運んで、ほうきを手に取ったところで村長のじいさん達の声が聞こえてきた。

 

「じいさん! その話詳しく聞かせてくれよ!」

「なっ!? お前は仕事をしていろ!」

 

 思わず話には言ってきた俺に対して、じいさんは声を上げる。しかし俺は止まらない。なにせようやく舞い込んだ俺が活躍できそうな事なのだ。絶対に逃すわけには行かない。

 

「なあなあ、教えてくれよ! 冒険者に頼まなけりゃいけない事ってなんなんだ!?」

 

 村長は嫌そうな顔をしていたが、そのくらいで俺は諦めるつもりはない。俺は話し合っていた二人につかみかかるようにして説明を頼み込んだ。

 

 

――

 

 

 ベルメイで一泊した俺たちは、エルキ=アバル国境を抜けて、アバル帝国の首都、ヴァントハイムを目指していた。

 

「そういえばヴァントハイムまでって……何をするんすか?」

 

 灰色に淀んだ曇り空の下、道を歩いているとレンが話しかけてきた。

 

「はぁー、金等級は世間知らずで困りますねえ、この時期にヴァントハイムに行くとしたら、闘技大会しかありませんよぉ?」

 

 俺が質問に答えるより早く、キサラが大げさにため息をつきつつ目的を話す。

 

「……まあ、そういうことだな」

「あ、じゃあ白閃も出場するんすね?」

「当然ですよぉ、これで賞金をがっぽり手に入れてアバル帝室とのつながりも作れるってもんですよ」

 

「いや、出るつもりはない」

 

 キサラが調子に乗って話を展開させ始めたので早めに否定する。

 

「え、嘘でしょ? ……あー、もしかして負けちゃうのが怖くて参加しないんですかぁ? 時々お兄さんチキンなところありますからねえ、そもそも――」

 

 キサラの脳天を勢いよく弾く。非情にいい音が鳴った。

 

「いったああああああああ!? なんですか!? いきなり!?」

「いや話が終わりそうになかったから」

「暴力で黙らせるのやめません!?!???!?」

 

 お前これやらないと黙らないだろうが、とは言わなかった。

 

「なんにしても、今回の目的は単純な観光だ。無駄に戦うこともない」

 

 俺の持っている両手剣にはイクス王国が独占して居るであろう最新鋭のダマスカス加工が施されている。そんな武器を使って目立てば、間違いなく何かしらのまずいことになる。

 

「闘技大会?」

 

 シエルが首をかしげて問いかけて来たので、俺は説明してやろうと口を開いた。

 

「ああ、闘技――」

「闘技大会って言うのはですね! アバル帝国建国一〇〇年を記念して始まったのが起源の伝統的な行事でですね! 人類圏全域から集まった猛者達がしのぎを削る大規模なイベントですよ! きっとシエルちゃんも楽しめるんじゃないかなあ!」

 

 ……が、ヴァレリィに遮られてしまう。まあ別に情報さえ伝わればいいか。彼の方が知識は上だろうし。

 

「ヴァレリィ、うるさい」

「んんー、すねてるシエルちゃんかわいいなあ! 時間があれば素描スケッチに残しておきたいくらいだ!」

 

 機嫌の悪そうなシエルと相変わらず折れないヴァレリィに、思わず口が綻ぶのを感じる。さて、空は曇っているが、日も高いはずだ。このまま順調に行けば今日中にヴァントハイムまで――

 

「っ? あ、お兄さん。降り始めちゃいましたね」

 

 ポツポツと、思考の途中で雨粒が頬を叩く。

 

 その雨脚は瞬く間に激しくなり、俺たちの身体を強く打つ。遠くの景色は鈍色に煙ってしまった。

 

 このまま雨に濡れてヴァントハイムを目指してもいいが、そこまで急ぐ旅でもないな、雨宿りできる洞窟でも見つけてそこで雨上がりを待つのも手だが……

 

「どうします? お兄さん」

 

 そこまで考えたところで、キサラが外套の裾を引く。恐らく俺と同じことをかんがえているはずだが、彼女はちらりとヴァレリィ達の方を見た。確かに、俺とこいつだけの旅ならまだしも、今は大所帯だったな。俺は片腕で雨を避けつつ、全員に聞こえるような声で宣言する。

 

「一旦雨をしのげる場所を探してやり過ごすぞ」

 

 

――

 

 

 しのげる場所を探す間にも雨は降り続き、徐々に地面はぬかるみ、水を吸った外套は重さに加えて身体に張り付いてくる。

 

 これ以上時間を掛けると旅慣れていないヴァレリィには辛い状況になるな。そう考えていたところで、木々の間に立つ狩人小屋を見つけた。

 

 そこは近隣の村に住む狩人や冒険者が一時的に拠点にするためのセーフハウスのような物で、基本的に誰が使っても構わない決まりになっている。五人という少々大所帯だが、雨が上がるまでは滞在させて貰おう。

 

「うひゃー、結構濡れちゃいましたね、タオルタオル……」

 

 小屋の扉を開いて開口一番、キサラは雨に濡れた身体を拭くためのタオルを探して部屋の中へ遠慮なく踏み込んでいく。シエルやレンがそれに続き、ヴァレリィを先に行かせて俺は部屋を見回しながら扉を閉めた。

 

「思ったよりも広いな」

 

 天井が高いからだろうか、部屋は最低限の家具と一人用のベッドが置いてあるだけで、暖炉には燃えさしがそのまま放置されている。どうやら冬期に誰かが利用して、それ以降は人が寄りついていないらしい。

 

 高い天井を見上げると、地階からはしごが伸びている。どうやらロフトもあるようだ。衣服を乾かすならその手すりを使わせて貰おう。

 

「着ていた上着を脱いでおけ、ロフトである程度乾かす」

 

 慣れているキサラとレンは各々備え付けの椅子や暖炉の角を使って外套を干していたので、旅慣れていないシエルとヴァレリィの上着を受け取ってから俺ははしごに脚を掛ける。

 

「……ん、先客か」

 

 微かな軋み音と共にロフトを登ると、ほこりっぽい板張りの床と、こちらに背を向けて横たわる青年がいた。背格好からして、俺よりも年上か同じくらいの年齢だろう。

 

「お兄さん。どうしました?」

 

 遠慮なく声を掛けてくるキサラに目配せをして先客がいることを伝えつつ、俺は外套をロフトの手すりから三つ吊り下げた。

 

 先客がいることに驚きはない。背中を見るに普通の呼吸もしていたので怪我や病気というわけでもなさそうだ。恐らく山菜採りか何かだろう。彼が起きて雨が上がったら近くの村まで送り届けてもいい。

 

「雨が上がったらすぐにヴァントハイムまで進むっすか?」

「時間によるな……西日が差すようならここで一晩過ごすことも考えるべきだ」

 

 はしごを下りたところでレンにそう聞かれて、俺はヴァレリィの方を見ながら答える。彼女にはそれだけで「ああ、確かにそうっすね」と納得してくれた。

 

「ところで白閃、観光目的でヴァントハイムに行くとはどういうことなんです?」

 

 ヴァレリィとそのまま目が合い。彼はかねてよりの疑問だったらしい事を口にした。そういえば、話していなかったな。

 

「白金等級二人と金等級が一人編成されたパーティが物見遊山に放浪するのは中々リスクが高いと思うのですが」

「ああ、まあそうではあるんだが、俺たちにはしっかりとした役割がある――シエル」

「なに? とうさま」

 

 彼女の名前を呼ぶと、シエルは雨で湿り気を帯びた銀色の髪を揺らして俺の手に飛び込んでくる。それを優しく受け止めて、俺は言葉を続ける。

 

「新たな神竜に人類圏を見せてやる。そういう役割だ」

 

 神竜種は既存の六個体とシエルを合わせて七個体。エルキ共和国とオース皇国の北、人類とも魔物とも関わりを持たない個体の他にも、各国と建前上は友好条約を締結している個体が各々四体、そして決まった土地を持たず、人類圏と魔物圏を行き来しては災厄を振りまく個体が一体存在している。

 

 シエルは人類全体に対して、建前ではなく真に友好的な神竜の誕生を期待できる存在だった。だからこそ、人類圏の様々な風土を見せ、人類に好意的な感情を持って貰おう。というのがスオウ――冒険者ギルドの判断だった。

 

「なるほど、ではアバル帝国の神竜にも挨拶した方がいいかもしれませんね」

「ああ、そうだな。闘技大会が終われば――」

「ふぁ……あぁ」

 

 俺がそこまで話したところで、ロフトの方から大きなあくびが聞こえてきた。




コンプラ的にまずいとのことでデコピンになりました。
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