俺は基本ソロの剣士なんだが、自称凄腕の盗賊とバディを組まされている。~お兄さんってぇ、陰キャのぼっちですよねぇ~   作:これ書いてるの知られたら終わるナリ

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小鬼駆除4

――小鬼殲滅

 

 支部のない小規模な村落で、小鬼の被害が大きいため、駆除を行った。

 小鬼の巣は目測では小規模程度だったが、調査を行うと中規模Ⅱ相当に発展しており、内部には雌小鬼の発生も確認した。

 白金等級白閃は銀等級シエルと共に、案内役ロットを護衛しつつ巣の殲滅を行い。ギルドへ報告を行う。

 以上のことを加味して、報酬額の査定を要請する。

 

 なお、集落の位置はヴァントハイム北東の――

 

 

 

 歩きながら報告書の文面を確認して、俺は魔導文を飛ばす。

 

 村まで帰ると、入り口でヴァレリィ達が村長と共に出迎えてくれた。午前中に出かけた依頼だったが、幸い場所が近いこともあって日没前にはかえって来れたのはありがたい。

 

「白閃、お疲れ様です。首尾はどうでした?」

「巣の中で雌小鬼が発生していた。セオリー通りに低級の冒険者に任せていたら問題が起きていたかもしれない」

「雌小鬼!? 見たかったなぁ! ついて行けば良かった!」

 

 変異体の存在に興奮を隠せないヴァレリィは放っておいて、俺は村長に向き直る。

 

「依頼はこなした。小鬼がここをうろつくこともないだろう」

「ありがとうございます……それで、報酬なのですが……」

「既にギルドへ魔導文を飛ばしている。後片付けの部隊が確認次第請求されるはずだが……まあ、今回はそこまで高額な請求はされないだろう」

 

 今回の依頼は変則的だった。

 

 本来ならばギルドを通して行われる依頼が、ギルドを通さず行われた。その原因はロットの意見を汲んで依頼せずに村だけで何とかしようとしていたから、と言うものと、そもそも依頼を出来るほどの金額を村が集め切れていなかったという部分もある。

 

 元々こういう場合に備えて、ギルドが依頼金を割り引いたり、助成金を出したりもするのだが、この村はその制度をフルに活用しても、依頼をするには足りない金額しか用意できていなかった。

 

 そこで、依頼をギルドに出すよりも早く、俺たちが解決したことにして、俺たちの方から事後報告の形で依頼をこなした報告をするという体裁を取って、正式な依頼の形に押し込んだのだった。

 

「ギルド支部の職員さん達、事実確認とかで大変でしょうねぇ、お兄さん。タダでやってあげれば良かったんじゃないですかぁ?」

「確認や手続きは支部の仕事だ。仕事をさせなければならない」

 

 慈善事業というのは聞こえはいいが、対価のない働きは、最初はどうあれ最終的には「して貰って当然」になる。それはギルドとしても人員の安売りに繋がることだ。

 

 ましてや俺たちのような白金等級のパーティは、簡単な仕事や安い報酬で働くこと自体が醜聞となりかねない。今回は「通りがかりで依頼を受けた」ということと「内部には銀等級以上の魔物が居た」事から、これらのハードルは低くなるが、それでも無料というわけには行かない。

 

 村の規模や緊急性、難易度を加味した私見だが、恐らくギリギリ村が払える限界の請求額が設定されるはずだ。

 

「えぇ~お兄さんがめつーい! お金に困ってるわけじゃないのにこんな村からお金取るなんてドケチにもほどが――」

 

 キサラの脳天を勢いよく弾く。非情にいい音が鳴った。

 

「いったああああああああああ!? ドケチの上に暴力振るうなんてサイテーですよ!!」

「いややって欲しそうだったから」

「デコピンしてほしい女の子ってなんなんですか!??!!!??!?!?」

 

 お前はギルドの事情を知ってるだろうが、とは言わなかった。

 

「なんにしても、今回俺が立ち寄って良かったな。雌小鬼は初心者には手に余る。ましてや普通の一般人の手には負えない」

「は、はい……よく言っておきます」

 

 村長は俺がロットのことを指して言っていることを察すると、深く頭を下げた。脅すようなことを言うが、それは哀れな犠牲者を出さないための事だ。

 

 

――

 

 

 夕方と言うこともあり、俺たちはこの村でもう一泊だけしてからヴァントハイムへ向かうことにした。

 

 宿は昨日に引き続き、村長が用意してくれたもので、集落の中にある空き家を使っていいことになっていた。

 

「うーん、二日目ともなると掃除をしなくて寝っ転がれるのがいいですよねえ」

 

 そういって、ベッドに寝そべるキサラを横目に、俺は道具の手入れを行う。いつも通りナイフの研ぎと消費アイテムの使用期限と在庫管理だ。

 

 今の在庫を考えると、ヴァントハイムではすこしばかり大々的に補給をしなければならなそうだ。保存食はともかく、革鎧のバックルや収納袋のリジットが緩んでいる。まだ壊れたり底が抜けたりということはなさそうだが、これを放置して底が抜けるようなことがあれば、目も当てられない。

 

「あ、白閃も道具の手入れですか? 私も丁度収納袋を交換しようと思ってたところなんですよぉー」

 

 ヴァントハイムでの補給予定を考えていると、レンが縫い目のほつれた収納袋を手に話しかけてきた。

 

「ああ、それならヴァントハイムの革職人を紹介してやる。そこで修繕なり新しく仕立てて貰うといい」

「え、いいんですか? じゃあお言葉に甘えて……おそろいの物を作って貰っちゃおうかなー……なんて」

「ああ、良いんじゃないか」

 

 何か思わせぶりな視線を向けて来るレンに、素直な感想を返すと、彼女は我が意を得たりという風に満面の笑みになり、キサラの方へ顔を向けた。

 

「ふふふ、これでふさわしい装いに近づくというわけですね! あんなちんちくりんには負けませんよ!」

「……」

 

 一方のキサラは興味なさそうにルクサスブルグで買っておいたらしい飴玉を舐めている。嗜好品である菓子だが、実はそれなりに保存の利く栄養源としての役割もあるのだ。もっとも、湿気は大敵だが。

 

「シエルー、あなたお子様だから宝石飴欲しいでしょ。あなたも食べるの手伝いなさいよ」

「えっ!? いいの!?」

「村に来る前の雨で湿気っちゃった奴を捨てるのもったいないからあげるー」

「聞いてますか? キサラ!」

 

 歯牙にも掛けない。と言う態度のキサラが癇に障ったのか、レンは一際大きな声を上げた。

 

「聞いてますよぉ、ていうかそもそもワタシは最初から、お兄さんと同じデザインの収納袋使ってるんですけど?」

 

 めんどくさい。とでも言うようにキサラは自分の収納袋を持ち上げる。それは俺とキサラが以前ヴァントハイムに滞在していたときに仕立てた物だった。

 

「なっ!? ぐ、ぐぅっ……!!」

「そもそもぉ、おそろいの物を仕立てたいとかめちゃくちゃおこちゃまじゃないですかぁ? 恥ずかしくないんですかぁ?」

 

 その辺りにしておけ。そう口にしようとしたところで、玄関のドアがノックされる。

 

「……誰だ?」

 

 現在は夜も更けてきた頃だ。村長やギルド職員なら日を改めるはずで、ということはそれ以外の客人ということだった。

 

「えっと、俺――ロットだ」

 

 想定していなかったわけではない名前だ。俺は小さくため息をついて玄関を開ける。

 

「どうした? 連れて行ってほしいっていうなら、その頼みは聞けないが」

「別にそんなんじゃねえよ、ただ、礼くらいは言っておくべきだって思っただけだ」

 

 それをわざわざこんな時間に? とは言わなかった。思い立ったときに行動しなければ、永遠に機会が失われる。そういうことも生きていればあるだろう。

 

「なんつうか、俺が軽率すぎた……ってのは、よく分かった。村長とかおやっさんからはすげえ怒られたけど」

「そうか」

「お、おい――」

 

 短くそう答えて俺は会話を切り上げようとする。ロットはまだ何か話したそうだったが、それ以上の言葉は俺ではなく、周囲の見守ってきていた人に向けるべきだろう。

 

「俺は仕事をしただけだ。お前も早く日常に戻るんだな」

 

 それだけ言って、俺は扉を閉めた。

 

 

――

 

 

 翌朝、朝日が差すかどうかのうちに俺たちは村を発っていた。

 

 別れの挨拶は昨日済ませていたし、変に名残惜しむこともないだろう。

 

「ヴァントハイムまではどのくらいでしょうか」

 

 寝不足なのか、少し青い顔をしたヴァレリィがつぶやくように話す。

 

「今日一日歩けば城壁が見える場所まで到着するはずだ。そこで野営して、明日入る」

 

 少々無理をすれば今日中に到着することも出来るが、それは俺とキサラの二人だった場合だ。無理に長い距離を移動して体調を崩してしまっては元も子もない。

 

「とうさま、楽しみだね」

「ああ」

 

 シエルの言葉に同意する。彼女に普通の生活を見せてやるのも必要だろう、あの村だけでは不十分だったろうが……ヴァントハイムで補給をしている間、少しは都市部の暮らしを見せてやるのも悪くないな。

 

「ええぇー、お兄さん闘技大会が楽しみとかどこのお上りさんなんですかぁ? そろそろ落ち着きって言うものを――」

 

 キサラの脳天を勢いよく弾く。非情にいい音が鳴った。

 

「いったああああああああああ!? だから口で勝てないからって手を出さないでくださいよ!!」

「いや、お前は楽しみじゃないのかって気になってな」

「まあこの生活してたら娯楽に飢えてますけど!!! ちょっと楽しみですけど!!!!」

 

 じゃあお前もお上りさんじゃないか、とは言わなかった。

 

「それ以外にも、やることは色々ありますよね! 私と白閃がおそろいの収納袋を買うとか!」

「ああ、そうだな」

 

 レンの言葉に適当に頷きつつ道を進む。一昨日の雨から天候はずいぶん変わって、今は初夏らしい日差しの強い太陽が顔を出していた。

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