ようこそ絶対選択肢に逆らえない教室へ   作:球磨川善吉

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測量の単位がピンチだったので、二ヶ月位更新できませんでした(´・ω・`)
あと少しで冬休みなので待っていてください。


密室で二人きり。何も起こらない筈もなく・・・

 そんなこんなでやってきた指導室。案外職員室の近くにあって驚いた。まあ、この2つの教室が近くにあるのは教師にとって便利だからかもしれない。今の俺たちを指導するときみたいに。

 

「で・・・何なんですか? 俺たちを呼んだ理由って」

「うむ、それなんだが・・・ 話をする前にちょっとこっちに来てくれ」

 

 

 壁に掛けられた時計をチラチラ見ながら指導室の中にあるドアを開く茶柱。そこは給湯室のようでコンロの上にはヤカンが置かれていた。

 

 ピロン!

 

【『紅茶でも湧かせば良いですか?』】

 

【『アイスミルクティーでも湧かせば良いですか?』】

 

 いやアイスミルクティー湧かしたらアイスじゃなくなるじゃん。

 

「紅茶でも湧かせば良いですか?」

 

「余計なことはしなくていい。黙ってここに入っていろ。私が出てきていいというまでここで物音を立てずに静かにしてるんだ。特に春秋冬。破ったら退学にする」

 

 は? なんでや。しかも俺名指しされてるし。そんなに信用無いのか・・・?

 

「は? 言ってる意味が全く―」

 

 綾小路がそう言い終える前に、給湯室の扉が閉められた。何もない部屋で二人きり。何も起こらない筈がなく・・・

 

 ピロン!

 

【≪茶柱に言われた通り息を止める≫】

 

【≪茶柱に言われた通り息の根を止める≫】

 

 おいおいおい。ちょっと待て。誰もそんなこと言ってねえだろ! 鼻と口を通る空気を止めるか心臓を止めるかじゃねえか。今の内に深呼吸しておくか・・・って、そういえば選択肢が出てる間は動けなかったんだ。これって時が止まってるのか? でも時が止まってたら光の粒子が目まで届かないから真っ暗になるはず・・・だけど。メタい事には突っ込まないでおくか。

 

≪茶柱に言われた通り息を止める≫

 

 程なくして指導室のドアが開く音がした。息が・・・

 

「まあ入ってくれ。それで私に話とは何だ? 堀北」

 

 堀北と俺たち・・・ 席が近いことしか共通点ないよな? もしかして俺と綾小路を孤独な堀北の友達にしたいのか?

 

「素直にお聞きします。何故私がDクラスに配属されたのでしょうか」

「本当に素直だな」

 

「先生は本日、クラスは優秀な人間から順にAクラスに選ばれたと仰いました。

 そしてDクラスは学校の落ちこぼれが集まる最後の砦だと」

 

「私が言ったことは事実だ。どうやらお前は自分が優秀な人間だと思っているようだな」

「入学試験の問題はほとんど解けたと自負していますし、

 面接でも大きなミスをした記憶はありません。少なくともDクラスになるとは思えないんです」

 

 そういうところじゃないのか? まあ、小テストで90点を取ってクラス内で同率一位なのは普通にすごいけどさぁ。俺だって選択を間違えなかったら80点くらいは取れたし! 多分。

 

 

 

「入試問題はほとんど解けた、か。

 本来なら入試問題の結果など個人的に見せないが、お前には特別に見せてやろう。そう、偶然ここにお前の答案用紙がある」

「随分と用意周到ですね。まるで私が抗議のためにくる・・・と分かっていたようです」

 

「これでも教師なんでな。生徒の性格はある程度理解している。

 堀北鈴音。入試の結果は、今年の一年の中で同率三位の成績を収めている。

 一位二位とも僅差。十分すぎる出来だ。面接でも特別注視される問題点は見つかっていない。むしろ高評価だったと思われる」

 

「ありがとうございます。では――何故?」

「その前に、お前はどうしてDクラスであることが不服なんだ?」

 

「正当に評価されない状況を喜ぶ者などいません。ましてこの学校はクラスによって大きく将来が左右されます」

 

 ア、アカン。息が・・・

 

「正当な評価? お前は随分と自己評価が高いんだな」

 

「お前の学力が優れている点は認めよう。確かにお前は頭が良い。

 だけどな、学力に優れたものが優秀なクラスに入れると誰が決めた? 我々はそんなことを言った覚えはない」

「それは――世の中の常識の話です」

 

「常識? その常識とやらが今のダメな日本を作ったんじゃないか? ただテストの点数だけで人間を評価し優劣を決めていた。

 その結果、無能な人間が上の位につき、優秀な者を蹴落とそうと躍起になる。そうして最終的には世襲制に行きつく」

 

 綾小路が苦しそうな顔をしてるな・・・ もしかしてお前も息を止めているのか? てかこの体、光がほとんど入ってこないところでも、表情が分かるくらいにクリアに見えるぞ。この体の持ち主は本当に人間なのか?

 

「確かに勉強ができることはステータスの一つだ。それを否定するつもりはない。

 しかしこの学校は本当の意味で優秀な人間を生み出す為の学校だ。これを一番最初に説明しているはずだがな。

 冷静に考えて、学力だけで優劣をつけていたら須藤たちは入学できないだろう?」

 

「っ・・・・・・」

 

 やっぱりか。ということは、この体の持ち主は頭が超絶悪いからこの学校のDクラスに入った可能性が高そうだな。 体の主導権が俺に移ってから、体が頑丈になったり日々のトレーニングで伸びただけかもしれないが、入学初日からトレーニングに耐えていた。加えて前世は金槌だった俺が少し動画をみるだけで50メートルを25秒で泳ぎ切っていた。ただ謎なのは、俺が小テストの最後の問題を解けたということだ。いくら絶対選択肢のサポートがあったとしても、初めて見る公式を複数使って解いたのが今でも信じられない。生憎(あいにく)、俺は前世での頭の良さは覚えてないから、俺が賢いだけっていうのもあるかもしれないけどな!

 

 あとそろそろ息が・・・

 

「それに正当に評価されない状況を喜ぶ者はいない、という決めつけた発言をするのも早計だな。Aクラスともなれば学校からのプレッシャーや下位クラスからの妬みも強い。中には正当に評価されないことを良しとするものもいる」

 

「冗談ですよね? そのような人間がいるなんて私には理解できません」

「そうか? Dクラスにもいると思うがな。低いレベルのクラスに割り当てられて喜んでいる変わり者の存在が」

 

 アカン。逝く・・・

 

「説明になっていません。私がDクラスに配属されたこと、採点基準が間違っていないか再度、確認をお願いします」

「残念だがDクラスに配属されたことはこちらのミスではない。お前はDクラスになるべくしてなった、それだけの生徒だ」

 

「・・・そうですか。改めて学校側に聞くことにします」

「上に掛け合っても結果は同じだ。それに悲観する必要はない。

 朝も話したが出来不出来でクラスは上下する。卒業までにAクラスへと上がれる可能性は残されている」

 

「それは無理じゃないでしょうか。未熟なものが集まるDクラスがAクラスよりも優れたポイントがとれるとは思いません」

 

 ・・・

 

「それは私の知ったことじゃない。その無謀な道のりを目指すか目指さないのかはお前の自由だ。それともAクラスにならなければならない特別な理由でもあるのか?」

 

「・・・今日のところはこれで失礼します。ですが私が納得していないことだけは覚えておいてください」

「分かった」

 

 シ・・・ヌ

 

「あぁそうだった。あと二人指導室に呼んでいたんだった。お前にも関係ある人物だぞ」

「・・・?」

 

「出てこい綾小路、春秋冬」

 

 茶柱がそう言い終えた瞬間、俺は勢いよくドアを開き、空っぽの肺に空気を流し込む。まじでアカン。一瞬、天国が見えたぞ。絶対選択肢、お前頭おかしいぞ。

 

「ハア、ハア、ハア、ハア・・・」

「「「・・・」」」

 

「おい。何でそんなに息が切れてるんだ? 春秋冬」

「先ハァ、生が動ハァ、くなって言ったハァから、息を止めてました」

 

「お前は小学生か。春秋冬」

「・・・それで、そこの小学生と綾小路君が私に関係のある人物なんですか?」

「そうだ」

 

いや違うし。

 

「・・・何故このようなことを?」

「必要なことだと判断したからだ。さて綾小路、春秋冬。お前たちを指導室に呼んだ訳を話そう」

 

「私には先生の意図が全く分かりません」

 

 俺と堀北は席が近いこと以外、特に接点ないんだよな。なんで俺呼び出されたの?

 

「最後まで話を聞いた方がお前の為になる、と前もって言っておこう。それがAクラスに上がるためのヒントかもしれないぞ」

「手短にお願いします」

 

 茶柱はクリップボードに視線を落とし、ニヤニヤと笑った。何見てんだ? 誰かの変顔の写真でも挟めてるのか?

 

「お前はおもしろい生徒だな。綾小路」

「先生みたいに常時胸元を露出してる行き遅れほど、俺は面白い生徒じゃありませんよ」

 

 プフッ・・・

 

「・・・・・・随分と口が達者なんだな。綾小路。さっきの言葉をもう一度言ったが最後、セクハラとして上に報告するぞ」

「肝に銘じます」

 

「入試の結果を元に個別の指導方法を思案していたんだが、お前のテスト結果を見て興味深いことに気がついたんだ。

 最初は心底驚いたぞ」

 

 クリップボードから全く見覚えのない解答用紙が並べられていく。え? こんなテスト受けたっけ?

 

「これはお前の入試の結果だ。国語50点、数学50点、英語50点、社会50点、理科50点・・・おまけに今回の小テストの結果も50点。

 これが意味するものが何か分かるか?」

 

 ファ!? こんなことがあり得るのか・・・ いやあり得るわけない!

 

 ピロン!

 

【『偶然・・・』】

 

【『必然・・・』】

 

 これは偶然とは思えないな。全部50点って逆に難しくないか? しかも解答用紙に配点が全く書いてないぞ。なんか怪しい匂いがプンプンするな。

 

「必然・・・」

「違うぞ。ただの偶然だ」

 

「ほう? あくまでも偶然全てのテストの結果が50点になったと? 笑わせるな」

「偶然です。証拠なんて何も無いですよね? 

 第一、俺には点数を操作するメリットがありませんよ。もし俺に高得点をとれる頭があるなら満点を狙います」

 

 嘘つけ。絶対違うゾ。

 

「いいか? この数学の問い5、この問題の正答率は学年で3%だった。こっちの数学の問い6は学年で3人しか解けていない。が、

 お前は間の複雑な証明式も含め完璧に解いている。一方、こっちの問い10は正解率は76%。それを間違うか?」

「世間の常識なんて知りませんよ。何千人も受験生が居たら、一人くらいはこんなのが居ても不思議じゃありません」

 

 コイツ化け物じゃねえか。水泳ヤバくて、顔も整ってて、頭も良くて彼女も居る。ウッ・・・ 目から水滴が・・・

 

「あなたは・・・どうしてこんな訳の分からないことをしたの?」

「だから、偶然に決まってるだろ。隠れた天才とか、そういう設定はないぞ」

「どうだかなぁ。ひょっとしたらお前よりも頭脳明晰かもしれないぞ。堀北」

 

 ファ!? マジで!?

 

「違います。特に頑張る気もないからこんな点数なんです」

 

「少なくともこの学校を選んだ生徒が言う言葉じゃないな。

 もっともお前には高円寺のようにAでもBでもいい理由があるのかもしれないが」

「その異なる理由って何ですか?」

「詳しく聞きたいか?」

 

 聞きたいです!

 

「やめておきます。聞くと突然発狂して校舎中にある監視カメラを手当たり次第壊しそうです」

 

 いや、どうしたらそうなるんだよ。

 

「そうか、残念だ。さて、次はお前だ。春秋冬」

 

 え? 俺もあるの? てっきり綾小路のサポート役で呼ばれたと思ったんだけど・・・

 

 

「お前は随分面白い生徒だな。春秋冬」

 

 ピロン!

 

【『先生みたいに常時胸元を露出してる行き遅れほど、俺は面白い生徒じゃありませんよ』】

 

【『先生みたいに過去に縛り付けられてる行き遅れほど、俺は面白い生徒じゃありませんよ』】

 

 お前、さっき次はないって言われたばっかだろ⁉ なに言ってんの? 消去法で下なんだけど・・・ なんか地雷臭いぞ。大丈夫かな。

 

「先生みたいに過去に縛り付けられてる行き遅れほど、俺は面白い生徒じゃありませんよ」

「―――二度はないと言ったはずだぞ」

 

 ヒェッ。結構怒ってるな。これでもダメだったか。

 

「まあいい。綾小路と同じく、お前の入試のテスト結果も同等・・・いや、それ以上に興味深い」

 

 全教科50点よりも興味深いってどういうこと? もしかして全教科100点とかか⁉ でも春秋冬君は落ちこぼれのDクラス・・・

これもう分かんねえな。

 

「全教科5点・・・おまけに今回の小テストも5点。いくらDクラスとはいえ、この結果には正直驚いたぞ」

 

 ・・・・・・え?

 

「お前が解いた問題は極めて正答率が低い問題ばかりだ。正答率3%の数学の問い5。学年で3人しか解けなかった数学の問い6。減点されずに点数を得た生徒が一人しかいない国語の文章記述。ここまで難しい問題を解けるなら最初の問題が解けないのは異常だ」

 

 ファ⁉ めっちゃ頭いいのになんでこんな舐めプみたいなことしてるんだよ⁉ 

 

 ピロン!

 

【『偶然って怖いですね』】

 

【『なんとかして解答欄は埋めたんですけどね』】

 

 さすがに国語の文章記述は偶然って誤魔化せないよな。どうすればいいんだ・・・てか下は簡単な問題を解けなかった理由になってないよな。う~ん。上だと綾小路の二の舞になりそうだから下にするか。

 

「なんとかして解答欄は埋めたんですけどね」

「ほう・・・? お前の解答欄は正解したところ以外、一切手をつけた形跡がない空欄だが?」

 

 そう言いながら、見覚えのない真っ白な解答用紙を見せる茶柱。

 

 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛。墓穴掘った・・・ でも、さすがにこれくらいの事じゃ何も変わんないだろ。多分。

 

「そうでしたっけ? 忘れてました」

「人生で数回しかない受験で、ほとんど解答用紙が空欄なことを忘れるのか? 一体どんな生活を送ったら忘れられるのか教えてほしいものだな」

 

 そうだよなぁ。受験で解答欄が空白ばっかだったら、焦ったり不安になるよな・・・ なんで春秋冬君はこんなことしたんだ・・・もうダメだこりゃ。さっきから墓穴しか掘ってない。ちょっと口数抑えるか。

 

 ピロン!

 

【≪息を止める≫】

 

【≪息を止めない≫】

 

 止めるわけねえだろ!

 

 ≪息を止めない≫

 

「・・・凄いな」

「一体どうしたら、こんなことをしようと思うのか、頭の構造が知りたいわね」

 

 ピロン!

 

【『入試で何点取ろうが関係ないだろ』】

 

【『まあ、凡人とは違うからな』】

 

 なんだこれは・・・ 上はそんなわけないし、下は煽りか・・・ どっちにするべきだ? ・・・煽ったら刺してきそうだから上で・・・いいか?

 

「入試で何点取ろうが関係ないだろ」

「はぁ? 貴方は何を言っているの? 

 入試でどんな点数をとっても入学できるならば、入試をやる必要がないでしょう?」

「仰るとおりです」

 

 いや、そうだよな。選択ミスったか?

 

「・・・そして入試と同様、小テストも正解したところ以外は全て空欄だ。

 正解した箇所は最後の数学の問題。あれを解けたのはこの学年で二人だけだ」

 

 アカン。全てが奇跡的にかみ合ってる。

 

「貴方はあの問題を解けたの? 

 正直言ってあの問題は入学したての高校一年生が解くのは到底不可能よ」

 

 ピロン!

 

【『才能さえあればなんでも出来るぞ』】

 

【『努力さえすれば何でも出来るぞ』】

 

 ここは・・・下か?

 

「努力さえすれば何でも出来るぞ」

「・・・」

 

「ちなみに春秋冬は面接の評価はトップレベルだったぞ。少なくともお前よりは上だ」

「冗談でしょう? 彼みたいな変人で孤立している人が、面接の場で私より評価が高いことはありえません」

 

 

 ボロクソじゃねえか。孤立してるのはお前もだろ。まあ、確かに入試前に転生してたら面接で100%絶対選択肢が暴走するから、否定できないな。

 

「春秋冬を担当した面接官の中には、春秋冬の言葉を聞いて涙を流す者も居たらしい」

 

 えぇ・・・ 面接で泣くってあり得るのか? こいつ宗教開く才能あるぞ。

 

「私はもう行く。そろそろ職員会議の時間だ。ここは閉めるから3人とも出ろ」

 

 背中を押されて3人は廊下に放り出される。

 

 ・・・結局、謎しか残らなかったな。入試で舐めプした挙げ句、面接は高評価。おまけに天性の肉体も持ってる。もし俺に体の主導権が渡ってなかったら、チートじゃん。俺が憑依したことで上手い具合に相殺されてるのかもな。悲しいけど・・・ ただ、なんで春秋冬君がDクラスなのかが理解できない。Aクラス・・・は無理かもしれないけどBとか。最低でもCじゃないか? う~ん。これもう分かんねえな。

 

 

「とりあえず・・・帰るか」

「待って」

 

綾小路を呼び止める堀北。てか綾小路、入試の点数暴露されてる間、一切表情が変わらなかったんだけど... こいつポーカーフェイス過ぎないか?

 

「さっきの点数・・・本当に偶然なの?」

「当事者がそう言ってるだろ。偶然っていう証拠でもあるのか?」

「根拠がないけれど・・・。綾小路くん、少し分からないところがあるし。

 事なかれ主義って言ってるからAクラスにも興味なさそうだし」

 

 まあ、言いたいことは分かる。綾小路の友人第一号の俺でも綾小路の考えてることは半分くらいしか分からない。喜怒哀楽がなさすぎる。最近は少しだけ表に出てくるようになったけど。

 

「貴方はもっと分からないわ。春秋冬くん」

 

 え、俺?

 

「入試で点数をそろえる意味も分からないし、難易度が高い問題以外を解かないのも分からない。放課後に逆立ちで徘徊してるのも分からない。なにより私が解けなかった問題をあなたが解けるのかが分からない。」

 

 俺もなんで解けるのか分からない・・・ なんか正面から奇行のことを言われると少し傷つくな。てか、最後のは確実に私怨だろ。

 

「お前こそAクラスには並ならない思いがありそうだな」

 

 そうなんだよな。綾小路の言うとおりだ。これだけボロクソに言われても諦めないってのは何か引っかかる。こいつのメンタルが強いだけかもしれないけどな。

 

「―いけない? 貴方は進学や就職を有利にしたいとは思わないの?」

「生憎、俺の目的はこの学校に入学出来た時点で完遂されつつある。

 ただ堀北の言う通り進学や就職を有利にしたいのは自然なことだ」

 

「私はこの学校に入学して、ただ卒業すればそれがゴールだと思っていた。

 でも現実は違った。まだスタートラインにすら立っていなかった」

 

 ピロン!

 

【『その先は地獄だぞ』】

 

【『一体いつから卒業がゴールだと錯覚していた?』】

 

 どっちも堀北の意見を肯定するものじゃないのか・・・ まあ、上かな

 

「その先は地獄だぞ」

「ええ、並大抵の努力じゃAクラスになれないことは、おろかCクラスにすら届かないことも分かっているわ。それでも諦められない

理由があるの」

 

「じゃあお前は、本気でAクラスを目指すんだな」

 

う~ん。とてもじゃないけど今のクラスがAクラスになるのは夢のまた夢だよな・・・

 

「私がDクラスに所属されたことが間違いであると思いたいけど、きっとうまくいかない。そこで貴方たちに力を貸してほしいの」

「協力?」

 

 あの堀北が他人に協力を仰いだのか。思わず、綾小路も聞き返したけどそりゃ、驚くよな。

 

「今朝平田に断りを入れるお前を見たし、同じように断ってもいいよな?」

「断りたいの?」

「なんで俺が協力すると思うんだ・・・」

 

「私が誠心誠意、貴方にお願いをしているのに綾小路君は断るのね。じゃあ、春秋冬君はどう?」

 

 ピロン!

 

【『今のお前には協力する気になれない』】

 

【『やりますねぇ!』】

 

 やるかやらないか。ここは、かなり重要そうだ。もしもAクラスに行くための手助けをしたらクラスの皆からの評価も上がるかもしれないし、下手に動くと絶対選択肢の餌食になるかもしれない・・・・・・いや、でも普通にお金欲しいし、授業態度で評価するって言われた直後に遅れてきたし・・・ これから来るかもしれない絶対選択の奇行でマイナスにならない位の好感度は確保しときたい。俺が協力してAクラスに上がれるかどうかは分からんが、こっちには良い意味でも悪い意味でも絶対選択肢がついてる。最悪何もしなくても、堀北の功績にあやかれるかもしれない。

 

 

 

「やりますねぇ!」

「・・・春秋冬君ならそう言ってくれると信じていたわ。 綾小路君はどう?」

 

「俺は―――――」

 

いいよ来いよ! 俺と一緒に天下取ろうぜ!!

 

「少しだけだったら協力しても良いぞ」

「・・・少しだけ?」

 

「春秋冬と違って目立つことは嫌いなんだ」

 

 はぁ? 俺だって別に目立つの好きじゃないし。

 

「そう言いつつ、入学から少しして彼女を作っていたじゃない?」

「もしかして俺に嫉tt」

「はあ? あなた、頭の中が沸いてるんじゃないの?」

「そうですよね。すいません」

 

 綾小路、カウンター食らってて草。

 

「目立つことが嫌いだったら、彼女を作れないのか?」

「いいえ。そうは言っていないわ。ただ見せつけるように腕を組んだり公衆の面前で抱き着くのはどうかと思うわ」

 

 許せねぇ・・・

 

「いや、それは仕方なく・・・」

「どうかしらね」

 

「まあ、そういうことで俺はもう行くぞ。軽井沢と平田グループと待ち合わせしてるからな」

 

 小走りで俺たちから離れていく綾小路。堀北もある程度の結果に満足したからか、もう帰るみたいだ。俺もそろそろ行くか。

 

 

 


 

 

 ピロン!

 

【脚力こそ正義 ≪逆立ち歩き2時間≫】

 

【腕力こそ正義 ≪感謝の正拳突き≫】

 

 畜生。せっかく仮眠してて気持ちよかったのに・・・ こうして寝てるときに選択肢が来ることも珍しくないんだよな。ただ仮眠してるときだけだけど。

今日の選択肢は逆立ち歩きと・・・感謝の正拳突き? いつもはもっと突拍子のないやつが来るんだけどな。やっと解放されるのか・・・? 正直一か月も同じのやってたら飽きるんだよな。よし! 決めたぞ。正拳突きだ!

 

【腕力こそ正義 ≪感謝の正拳突き≫】

 

 ピロン!

 

【≪感謝の正拳突き一万回!≫】

 

【≪感謝の正拳突き一京回!≫】

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は? え、嘘でしょ!? 一京回って・・・ 10の何乗だっけ? 億の次の位だよな・・・ 必然的に上しかないんだけど一万回・・・?

もうダメだ。お終いだ・・・

 

 

 

 

 

 




一応、いつか書きたいことのためにタグを追加しました。
皆さんから受け入れられるかどうか不安ですが、方向性は変えないです。構想はほとんど完成しているので行かせて貰います。

 :おまけ:

 高度育成高等学校データベース 3/31 時点

氏名:春秋冬 風
クラス:1年D組
学籍番号:??????????
誕生日:11月11日

評価

学力:B+ 
知性:E
判断力:E
身体能力:C
協調性:B

学校の評価

入学試験で全科目5点、正解した問題はどれも正答率3%を切る問題ばかりで謎が多い生徒である。さらに自分が正解した問題の解答欄以外は筆跡や消しゴム等で消した跡もなく、体調不良で途中退室したなどの備考もない。入試という人生の一大イベントで全力を出し切らないことから、知性、判断力は最低レベル、学力は解いた問題の難易度、試験の点数を加味して上の下と判断する。しかし、彼を担当した面接官からの評価はとても高く、将来への展望を熱く語っていたなどの情報もある。これらの事から、面接では見抜けなかった彼の人間としての本質の改善、実力の発揮を希望する。当初はCクラスが妥当と判断されたが、理事長の進言よりDクラスへの配属とする。

担任からのコメント

この学校での彼の成長を期待しています。
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