ハロー、ゆかりさん。   作:悪魔の力を身につけたい男


原作:VOICEROID
タグ:オリ主 異世界転移 世界改変
 夢みたいな夢が見たいのはきっと大人も子供も同じで、生きた分だけ現実が身体に纏わりついてくる。

 今日は、せっかくだから現実を脱いで洗濯しちゃおうかって。

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偶然と必然のプロローグ

 ほんの出来心だった。

 そう、本当にそれだけ。

 

 怪しげなメール、ランダム生成したかのようなURL。

 代わり映えしない日常の中、何故か目が離せなかったそれを見た。

 

 『あなたの元へ、本物のボイスロイドが!?』

 

 バカみたいなタイトル、そんなもの、あり得る筈がない。

 人を騙すにしたって、ヘタクソなメールだと思った。

 

 

 ボイスロイド。

 歌を歌う合成音声とは違う、喋る事に特化した合成音声ソフト。

 

 人気はあるが、宗教よりはなさそうだし、こういったソフトを使う人は、騙されにくい人が多いだろう。

 

 

 だから、出来心だった。

 

 URLの先へ飛んで、意図の分からない質問………年齢から、何色が好きかだとか、何の食べ物が好きかだとか、そんな話から、好きな職業、嫌いな職業とか、色々な質問を答えて、最期の確定ボタンを押した。

 

 押したら─────世界が弾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うだつが上がらない毎日。

 

 寝慣れた寝床から身体を起こし、食べ慣れた物を口にし、住み慣れた家から出て、やり慣れた仕事をこなして、そしてまた家に帰る。

 

 休日にやることと言えば、新鮮さのないゲームや、少し出かけてもカラオケだの、やることなど似たようなものだ。

 

 気づけば時間が過ぎていて、老いだけを積み重ねているような感覚。

 

 そんな俺に、非日常は訪れる。

 

 

 

 

 バチンッ!!

 

 

 

 

 そんな音を立てて、1秒、いや、1分、下手をすれば何時間、何日にも感じるような、奇妙な感覚が身体を襲って、そのまま視界がくらくらと明滅して、立っていられなくなる。

 

 胃の中のものを吐き散らしそうな、重力が下じゃなくて、四方八方あちこちにあるような、そんな感覚に耐えながら、ただただ藻掻く。

 

 倒れた気はしたが、倒れているか分からない状態が、またどれだけ続いたか分からないままいると、ふと、身体の気持ち悪さがスッと抜けて、視界が明瞭になる。

 

 

 バッと顔を上げると、知っているようで知らない部屋。

 でも、そこは間違いなく、俺の家、一人暮らしの俺の家、俺の部屋。

 

 細かく違うところはあるが、一番何が変かと言われたら。

 

 

 俺の部屋の壁を、そのまま押して広げたような空間に鎮座する、大きな円柱状の物体。

 前面がガラス張りな、俺の身の丈以上、天井ギリギリな、金属が大部分で出来たそれには、光の反射でよく中身は分からないものの────

 

 ────俺が、知っているような気がする、紫髪の、美しい少女が、入っている……ような気がした。

 

 

 

 よろりと立ち上がり、機械を見つめる。

 

 

 部屋に入る光のせいか、余計に中身が分からなくなる。

 

 俺が近づくと、機械に付いたランプの一つが、緑から青、そして白に色が代わり、点滅を開始する。

 

 

 プシュッ、ガチャン。

 

 ガラス張りのドアが、ゆっくりと開く。

 

 

 

 「────おはようございます、マスター。」

 

 

 見慣れたようで、見たことは無い服装の少女が、まるで生きているかのように歩く。

 

 どこに行ったのか、下にスライドするように消えたガラスが、仕舞われて消えるまで見つめていた俺の視線は、自然とその素足のつま先に。

 

 ふと、可愛い指先だな、なんて。

 足から上へ、茫然と眺めるように目の前の人物を見つめた。

 

 

 そんな俺を見て、不思議がる様子もなく、むしろ面白そうに、俺と同じ様に俺の姿を下から改めた後、透明感を感じる唇を開いた。

 

 

 「ほとんどのセットアップは済んでいますが、最終確認も兼ねて、自己紹介をしましょう。私は結月ゆかりです!マスター、貴方のお名前を教えてください。」

 

 

 柔らかく微笑む姿は、イラストで見た姿とまるで同じで、それでいて感じる音、匂い、感触は、全てが現実を訴えかけてきていた。

 

 いや、正確には姿ももっとリアルさがある。

 でも、その姿は紛れもなく、あのイラストと同じだった。

 

 突然の、理解しきれない現状から、心の声と混ざった言葉が口から抜けていくのを感じる。

 

 普段の俺、そして普通の人間じゃ出てこないようなセリフ。

 

 

 

 

 

 

 世界は変わってしまった。

 

 俺が居た世界は、どこかへ行ってしまって、俺が選んだ彼女が、存在出来る世界が来てしまった。

 

 でも、知っていた誰との関係は変わらず。

 知っている知らない誰かとの関係が増えていく。

 

 

「

 あっ挨拶、自己紹介?

 なんだこの状況、

 

 何……?あ、そう、俺の名前、名前は『────』。

 

 あの……ハロー、ゆかりさん。

               」

 

 俺の常識からかけ離れた状況と存在に、付け焼刃どころではない知識で、外国人と会話を試みる日本人にすらなり切れないような反応が出る。

 

 ぎこちない笑顔と、力の抜けた手で振った手に、笑顔で手を振るのも合わせてくれたゆかりさんとのお決まりのやりとりはここから。

 

 

 

 踏み出したのは何も知らない昔の俺で、今の俺の物語はここから始まった。

 

 

 

 この後、俺はなんだかんだあった末に、アンドロイドたちの人権問題の渦中に、中心的人物として巻き込まれていった上、自分の身体がナノマシンによってサイボーグ化していたり、強化外骨格や銃器で武装した人間や、人間の数倍の膂力を持ち、体内に武器が搭載された戦闘アンドロイドと直接戦う羽目になるのは、この最初の経験からしたら、些細な話だろう。

 

 声が主となる彼女らしく、明朗で耳にやさしい声と、あの煌めくような笑顔より、インパクトが強いものは無かった。

 

 

 

 

 「えへへ、ハロー!マスター。これから宜しくお願いしますね!」










『次回予告』

 ハロー!結月ゆかりです!

 ちょっと違う日常からやってきた私のマスター!
 今日から、そんなマスターの新しい一日が始まります。

 でも、世間では私たちアンドロイドへの風当たりは強くなるばかり。
 だんだんと人により近くなっていくアンドロイドに危機感を持って、最終的には文明レベルも昔まで落とすべきだ、なんて言う『破壊派』と、アンドロイドと共存し、より技術を高めたい『創造派』の戦いに、マスターは巻き込まれてしまうんです。

 なんたって、ゆかりさんは高性能、最新、人間そっくりどころか超えてしまいかねない絶対可憐で美声な天才美少女アンドロイドですから?巻き込まれちゃうのは当然ですよね!

 そんな中、マスターは何も分からない一般人だから………?


 次回、マスター、死す。

 明日はも~っと楽しくしてあげますよ、マスター!



 ※俺たちの冒険はこれからだ!

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