「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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純粋に執筆意欲が消え失せてました。
脳内で形は出来てるのに書くという出力できないジレンマもありと色々あったぜ!
多分次回も遅れる。それではどうぞ。


今回からもしもの話。
一応全グループやる予定。


IF話
if・もしも一歌と双子の姉弟だったなら……


 

 

「…………」

 

()()願は目を覚ます。カーテンの隙間から見える外は既に明るくなっているというのに願は身動き1つ取らずに意識だけ開眼した。………いや。あえて言うのならば。動けないだけの話かも知れないが。

 

願の身体に巻きつくかの様に手足は願の体を拘束し、願の胸元には黒い長髪をした少女が抱きつきながら寝ていた。これではまるで抱き枕だが願はまるで慣れたかのように引き剥がしに掛かる。

 

「…………おはよ」

 

「…………はよ」

 

そうしてモゾモゾと動いていると少女は目を覚ましたのか願に上目遣いで見上げおはようと挨拶する。それに気がついたのか願も小さく呟いて、はよどけ。と言わんばかりに半目でその少女を見る。

 

「いや……もうちょっと……」

 

「………………………はぁ………」

 

そう呟き、また顔を願の胸に埋める。そんな姿に願は慣れているのかベットの縁に置いていたスマホを取り、塞がっていない片手でニュースを開き始める。

そうしていると少女は…自分に構ってもらえないのが癪に触ったのか、願に抱きついたまま上にスルスルと伸び上がり首筋に顎を乗せ始めた。

 

「……………邪魔なんだけど()()()

 

「おとーとなら……お姉ちゃんの命令を聞くもの……」

 

少し嫌そうに目を細める願に抱きついたまままた寝始める少女…一歌。

そう。これはまた1つあり得たかも、あり得なかったかも知れない世界線。わかりやすく言うのなら“願が一歌と双子の姉弟だったなら”という日常譚である。

 

 

 

 

「「いってきまーす……」」

 

その後。願と一歌は中々起きないという事で親のお叱りを受けて家を出たのだった。そう。互いに腕を組みながら出ていくその姿はまるで双子というには距離が近すぎるのである。2人とももう高校生だと言うのに同じ部屋で寝ている時点で2人間のパーソナルスペースは皆無と言えるだろう。

 

「あ!いっちゃんとがっくん来たー!」

 

「相変わらず2人とも距離近すぎじゃない?」

 

「まあまあ…おはよう。2人とも」

 

そうして2人とも寝ぼけ眼を擦りながら歩いていると、とある曲がり角に3人の少女が2人に向かって手を振っていた。金色の髪を輝かせながら両手を全力で振り上げる少女…咲希と、手は振らないけどこっちを見て早く来い…的な念を送ってきてる銀髪の少女…志歩。そして小さく手を振っている茶色の髪を風に揺らしている少女…穂波。

 

「おはよー。みんな」

 

「おはよ」

 

示し合わせたかのように手を振り解き、2人ともその少女たちの輪の中に入っていく。この少年少女たちは古くからの幼馴染であり今も尚、その関係が続いていると言う中々稀有な友情関係だった。……まあ中学の際に一度喧嘩はしているし、願は咲希以外と碌に話をしていなかった時はあるが、それでも少年少女たちは互いが大切な親友だと思っている。

 

「願。放課後買い物付き合って」

 

「えー…ちなみに何買うの?志歩」

 

「パーカー。少し解れたから」

 

替えを見繕って欲しいと志歩は願の隣で放課後付き合って欲しいと声をかける。

別にそれに関して願は特に用事があるわけでも無いし付き合う事は簡単だと了承代わりに頷いた。……何処か別の世界線なら日々忙しくバイト戦士として面白おかしく暮らしていた願だが、この世界線では星乃家の長男としてそんなバイトを入れようとすると親と一歌姉の三者面談が始まる。いや始まった事がある。(5敗)

 

と言うわけで今の願のバイトは一歌と同じバーガー店とアパレルショップのバイトの2つだけだ。尚、これでもまだ多いと一歌や幼馴染‘sに言われ続けているが根本が社畜な願はもう少し働けるんだけどなーと末期な社会の歯車的思考をしていたのは内緒だ。(一歌には筒抜けだったが)

 

 

「!がっくんとは今日新しいお店行こうと思ってたのにー!」

 

「………ああ。前、咲希が言ってた店?」

 

そう。と頷く咲希に願は脳内で地図を開き、考える。

わざわざ誘ってくれた以上それを完全に不意にしてしまうのも忍びない。自分も今日を逃せば一週間ぐらいバイトやら色々とあるし幼馴染’sだってバンドの練習や色々とあることを知っている。……となると。

 

「志歩、いい?」

 

「…………………別に、いいけど」

 

幼馴染‘sに優劣を付けることは絶対にしないし出来ない。それが願の個人的に立てた誓い。願は志歩に一言許可を取ると、志歩は不本意だと言いたげにするけど認めないわけにはいかないと消極的に許可を出す。

 

「じゃあ咲希。志歩と一緒でも良い?」

 

「しほちゃんと!?…良いよ!行こ!」

 

願が編み出した解決方法。それは志歩の行きたい所と咲希の行きたい所の距離はそこまで離れているわけでも無いから、志歩のパーカーを見繕った後に咲希の新しいお店に3人で行く。

 

咲希は一瞬考えた直後。願の案に賛成と言わんばかりにOK!と指を象る。

そんな3人の様子と思惑を一歌は微笑みながら見つめる。願は凄い鈍チンだが幼馴染の中で誰かを贔屓することはないからこそこうしてギスギスしていないのだろうと一歌は思っている。お姉ちゃん的には誰が義妹になっても嬉しい話だ。ちなみによくブラコン、ブラコンと言われる一歌だが幼馴染たちを認めているのかと言うと、別に最後に帰ってくるのは自分の所だから大丈夫という事らしい。

 

 

そうして通学路を歩いているとまたとある十字路で別れる事になった。

一歌たちの高校と願の高校は別なのだ。ちなみにこの高校選びの際にも一つ大きな騒動があった事は今も置いておくが……

 

「願〜!!一緒の高校いきたがっよ゛ぉ゛〜」

 

「あーもう…落ち着いて一歌姉。」

 

毎朝やってるよこの流れ…と願は思いながらも、まあそうかと納得する。

願としては一歌姉には是非、自分の行きたい所である“神山高校”ではなく女子校の“宮益坂女子学園”に行って欲しかった。姉が通っているからという理由で行く志歩や新しい場所を欲していた穂波。そして身体が弱く社会にまだ疎い咲希が行くであろう高校だ。…幼馴染全員の仲が悪かった中学時代だが願はそんなの関係ねぇ!と言わんばかりに1人1人と関わっていたからか、心のどこかで仲直りしたいと見破っていたのだろうか。

 

半分騙し討ちみたいな感じで願は一歌を宮女の受験を受けさせた。

(尚、両親はこれで一歌の過度なブラコンが治ればな…という一抹の期待を込めたらしいが結果は日の目を見るより明らかであった。)

 

「まあまあ。これが終わったら会えるんだから、ね?」

 

「そうそう。穂波の言うとおりだから」

 

コアラのように抱きついて離れない一歌に願と穂波の2人がかりで引き剥がしにかかる。毎朝似たようなことになっているがここまで酷いのは久々だと穂波と願は顔を見合わせて苦笑する。

 

今までの境遇がまるで正反対の2人だが逆にそれが願と穂波の関係をまるで親友ではなく相棒レベルまで考えが似通っているのだろう。

 

「………………ふーん」

 

「あはは………………」

 

その横でハイライトが完全に消えた目で三人を見ていた志歩と笑い声を上げながらも表情は一切笑ってない咲希が居たことはここだけの話。

 

 

 

願の神山高校での生活は至って平穏だ。たまに変人ワンツーに巻き込まれて大変な事(大分オブラートに包んで)になる事もあるが、それでも1-Cで出来た同じように歳の近い姉を持った友人…彰人たちと楽しく過ごしているのである。

 

 

 

そして放課後。いつもならバイトか友人たちと遊びに行く所だが今日は予定があるとさっさと校門を出ることにした。(その時多少揶揄われたので彰人の小テストの点数を勉強のできる友人…冬弥にチクっといた)そうして足早く待ち合わせの場所に行くと、そこには特徴的な金色と銀色が立って待っていた。

クールっぽく立ってる志歩だけのその手を見ると忘れられてるのかな…と不安に揺れ動いているし、その隣ですまし顔で立ってる咲希はこれからの時間が楽しみと言わんばかりに内心が浮き上がっているのが見える。

 

(本当に外見の印象と内面って随分違うよなぁ…我が幼馴染ながら)

 

一歌はすまし顔で待つがその内面は事故に遭ったんじゃないか…と心配で揺れ動いているのはしょっちゅうだったし、穂波は心配そうに周囲を見渡すけど内心早く合流して行きたいなーっと内なる幼女が滲み出てている時もある。

そんな幼馴染‘sの小さな違いに願は思い出し笑いを苦笑に込めて咲希と志歩に近づく。

 

「2人とも…待った?」

 

「ううん!行こ!」「待ってた。行こ」

 

手を振り小走りで近づくと、前から2人も早歩きで近づいてくる。

そのまま2人の手を両手でリードし、3人手を繋ぎながら歩き出す。

 

「………相変わらず願、表情一つ変えないね」

 

「ねー?…両手に華なんだから少し慌ててくれてもいいと思うけどー?」

 

まるで社交ダンスを踊るかのように差し出され歩く願の姿には一切の乱れが無い。異性の扱いに慣れているかのような願の態度に志歩も咲希も少しだけモヤモヤする。なんと言うか…こう自分と願との間に想いの差があるみたいで志歩は歩きながらも器用に願の肩に寄りかかり、咲希は繋いでいない片方の指で願の頬をツンツンと突く。

 

「そりゃ。こんな美人2人のエスコート出来るんだから誇るべき事でしょ?」

 

「「………………………」」

 

サラリと凄いことを言った願に志歩も咲希も赤面して俯く事しか出来ない。願はたまにこうして攻めに回ることがあるが今の2人のように一撃で撃沈するほどの威力なのだ。勿論、願自身は自分にスケコマシの気があるとは思ってない。事実これくらいの褒め言葉はコミュニケーションの内の1つとしか捉えてなかった。

ただし周囲に至ってはそうでは無いのだろう。願が決まってそう言う言葉を吐くのは一歌以下幼馴染‘sしか居ないのだから逆説的に願がどれほど幼馴染たちを気に入っているのかどうかわかると言うものだ。

 

「……さ。とりあえず志歩からでいい?」

 

「…………いい、けど………」

 

「うん………」

 

あれ?反応が鈍いなと願は首を傾げ、額と額を軽く合わせに掛かるが熱はない感じだと願はまた首を傾げる。ここまで来てわかると思うが願には断じて不埒な意図があるわけでは無い。……いやだからこそ危険というべきか。その色気に囚われた少女たちはまた願に身も心も任せるのであった。

 

服を選ぶうちに自分たちのテンションも取り戻してきたのか咲希も志歩も楽しくショッピングを進める。志歩のパーカーだけという話であったが次第に咲希がそれ以外の服にも興味を持って、急遽願と咲希による志歩の着せ替えが始まったのだった。

 

「えー!こっちも似合うって!」

 

「咲希。志歩ならこれも良いんじゃない?」

 

「(………どうして、こうなった……)」

 

咲希はそういうのを楽しむし、願はアパレルショップの店員をやっているからか志歩をひたすらにコーディネートを繰り返す。まあその肝心の志歩の目は曇りつつあるが。…志歩としてはいい感じのパーカーを見つけたんだからもう良いじゃないかと考える性であった。

 

 

結局志歩はパーカーだけ買って、店を出ることになった。そんな志歩に咲希はハリセンボンのように頬を膨らませて如何にも遺憾ですと言わんばかりに見ていたが、着せ替え人形にしていたのは自分達だからと願は思わぬところでフォローを入れることになった。

 

そして咲希に引きずられる形で2人は後ろをついて行く。手を繋いだ願を片手に先へ進む咲希とその後ろから願と志歩が声を掛ける。

 

「願!こっちこっち!」

 

「そんな急がなくても逃げないよ」

 

「いや……ああなった咲希はもう止まんないよ」

 

前見て!前!と何度も願と志歩は注意しながら危なっかしい咲希の案内を受けてたどり着いたのは一つのカフェ。中は木張りで優しげなライトで照らされているが人気だということで話し声は絶えないようだ。

 

「ここでは!コーヒーに合うデザートが絶品なんだって」

 

そのまま咲希に手を引かれ店員の案内の元、奥の席に座る事になった。

咲希がいうにはデザートは何にでも合うらしいが一番はコーヒーに合うらしいという事で願はブラック。咲希と志歩はミルクと砂糖でそのデザートをいただく事になった。

 

「わぁ………!」

 

「咲希の店選びで外れた事って中々無いね…」

 

「それは同感」

 

一口食べる事でその美味さがよく分かる。甘すぎず、されど甘さを感じさせるそのデザートは上品な甘さと言うのだろう。そんな美味さに舌鼓を打ちながら互いに食べさせあったりして時間は過ぎ去っていく。……夕方だった日付は、夜に落ちていく。

 

「……今日はこれぐらいでお開きにするか」

 

「えー!?まだ遊んでたいよ!」

 

「咲希…確かにもう良い時間だね」

 

外をふと見ればもう日は落ち街灯だけがポツリと明るく輝かせる。

そんな願の一言に咲希は駄々を捏ねるが願の意見に志歩も賛成らしい。2人がいうのに相応しい時間だと咲希も察したのか駄々を捏ね通すつもりはないらしい。

 

「じゃあまた明日ね!」「おやすみ。願」

 

「ああ。おやすみ。2人とも」

 

カフェを出て3人はまた来た時と同じように手を繋いで歩いて帰った。

勿論、願は2人を家まで送り届けてそしてようやく帰路に着く事になった。

 

 

(…………あ。ここ)

 

その帰り道。願は一つの公園を目にする。それは幼馴染たちと自分の“始まり”の約束の場所。そして過ぎ去った1つの苦い想いの終着点。

星乃願と星乃一歌が自らの信念を掲げて殴り合った場所。

不意に疼くその熱に願はふと過去に目を向ける事になった。

 

 

 

気持ちが悪い。穢わしい。気味が悪い。

輪廻の先に、二回目の俺に与えられた“始まり”はそれだった。

前世は碌でも無い男だった。愛した者も愛された者も全てその手から取り逃がすような救いようの無く、愚かで愚劣な男の最期は下品下生の底であると考えていた、決まっていたはずなのに。

 

『願。頑張ったわね』『願。自分の好きな事して良いんだぞ』

 

与えられた2回目は暖かすぎる地獄だった。

後ろから背中を押すような優しい両親。もしかしたら前世も“そんな親”だったと考えると罪悪感で押しつぶされそうになる。だって…全部無為にしたのは自分だから。

 

『願!行こー!!』

 

与えられた2回目に前と違うのは“双子の姉”の姿。

この子は普通の子どもだった。それに関しては安堵した。前世とかいう業の塊を抱える自分こそ異端であるからこそ。

 

『願!あそぼう!』『げんくん…待ってよー!』『あのえーっとね?』

 

まるで真綿で首を少しずつ絞められるかのような地獄と形容した現状は側から見れば幸せな世界なんだろう。理解ある両親に、強い絆で結ばれた片割れの半身。そして信用できる幼馴染たち。理想的なその現状は俺にとってはまるで地獄だと感じるほどの苦痛だった。

 

だって、これが幸せなら前世は一体なんなのか。最初を間違えなければ前世は何も取りこぼさずにすんだというのだろうか。“識る”過去と、そして“紡いでいく”未来のギャップに自分はもう限界だったのだろう。

 

 

気が狂いそうになる最中。1人だけの時間も、みんなといる時間も、半身と共にいる時間でさえも……いやそもそも生きることさえ苦痛に喘ぐ内心の最中。自分は誰かに絡まれたのだろう。特に治安が悪いからと近づいてはならないと明言されている裏路地だったからだろうか。中学の頃だった。フラフラになりながら視界も閉塞しかけの中で碌でも無い奴にぶつかったのだろう。

 

『おいごらぁ!!だれにあたっとんじゃぼけぇ!!』

 

絡まれ振り上げられる拳に……ついに俺は抑えきれなくなった。

今まで錆びついた鎖で閉じ込められていた“それ”は親孝行者の自分も、半身を慈しむ自分も、幼馴染に好意を抱く自分も全て壊して内側から決壊していく。

まるで雛が孵るような不可逆の“それ”は自分ではもう制御が効かないレベルで素早く堕ちていく。まるで“それ”が産声を上げるかのように繰り出される拳は、手足は、喧嘩殺法はこの喧嘩に慣れていない身体でも少しずつ合っていく。

 

『───────────────────』

 

気がついた自分は手足には殴られた跡の響く痛みを訴えてその場に立っていた。

脳裏に浮かび上がる先程までの情景。凶笑を上げながら殴り合う自分の姿。今世では初めての喧嘩ということで数発貰ってしまったがそれでも喧嘩殺法は忘れていないのかと悲しくなる。

 

何も、なにも変わらなかった。前世の最期に自分は悔いたはずだと言うのに。

自分はその拳を開くことが出来なかった。ずっと、ずっと周囲は願の握る拳に対して、親愛に友愛に家族愛に手を開いて願が繋ぐのを待っていた筈なのに。

 

『ああ…あ……あは……きひっ……』

 

自分にはもう悔いも悲しみも残っていなかった。ただ、ただ暴力という快感に快楽に醜く喘ぐ獣が一匹。そこには歪んだ笑みを浮かべる獣が一匹。

自らの頬を濡らす一粒の涙さえ気にも止めずに願は1人、夜空を彩る星の下で凶笑を上げたのだった。

 

 

堕ちていく願を止める人は誰もいない。

月の少女も、日の少女も、天の少女でさえも願を止めるには事足りない。もし、もしもの話、堕ちていく星の片割れを止めることができると言うのならそれは

願の半身である星の少女たった1人だけ。

 

 

ある日の事だった。いつものようにただ無意味な暴力を携えて、無駄に夜を歩み歩く自分がたどり着いたのは一つの公園だった。真夜中ということもあって静かなその公園で1人願は何かをするわけでもなくただブランコに腰を下ろしフラフラと揺れていた。

何分、あるいは何時間そこに腰掛けていたのだろうか。ふと我に返った時にはもう夜も遅く日付も変わっていた。あの暖かい家庭に帰る気は既に失せ、公園で野宿でもしようかとベンチに向かって歩いたその時だった。

 

 

後ろからかけられたよく知っている声。

 

『願。帰るよ』

 

だけどここにはあってならない声。

幻聴であってほしかったその声は願の魂を身体を動かないようにと引き止めるほどの強さがあった。この声は……この声は……そう。

 

『星乃、一歌』

 

『いつの間にイメチェンしたの?願』

 

あんまり似合って無いね。そう言うその影は願もよく知っている。

星乃一歌。星乃願の半身。双子の…姉がそこに立っていた。まだ中学生である姉がこんな夜更けに1人でここまでやって来てしまったのかと願は戦慄した。自分だって中学生だと言うのに。

 

『それに一体いつから私をそんなフルネームで呼ぶようになったの?……お姉ちゃん悲しい』

 

『戯れ事を。双子にそんな区別は無いでしょう』

 

ヨヨヨ…と泣き真似をする一歌に願は額に分かりやすく皺を寄せる。

余裕が無いのは明らかに願の方だ。…願は今までずっと分かりやすく“理想的な好青年”で通してきた。それが今や目尻は吊り上がり苛立ったように底冷えする程低い声が自分の中から出ていると願はあたかも客観的に認識する。

 

『まあそれはそれとして』

 

『………………!!』

 

遠くからしか見えなかった一歌が近づく。間近になった一歌の頬には涙の跡が残っていて瞳は充血している。明らかに号泣した後の一歌の姿に流石の願も動揺する。

 

『一歌……それは……』

 

『ねえ。願』

 

願は詳細を尋ねようと動揺を隠しながら一歌に聞く。そんな価値など無いくせに。

そんな願に一歌は声を強制的に被せる。まるで怒っているかのように怒気さえも滾らせる一歌の初めて見る姿に願の瞳が小さく細くなる。

 

『そんなに、そんなに私たちが頼りないの?』

 

『……………は?』

 

願にとっては寝耳に水な一歌の言葉に願はついに間抜けに口を開けることしか出来ない。……ただまあ客観的に見るならば星乃願という双子の姉である一歌を大切にし、遠い病院送りになった幼馴染に毎週会いに行き、問題がある幼馴染たちに粘り強く関わり続けていた“好青年”がある日突然夜遊びを覚え、家に帰らなくなったのだ。そりゃ心中穏やかではいられないだろう。

 

『咲希も、志歩も、穂波も。勿論私もみんなみんな願の事を心配してる』

 

『…………………』

 

余計なお世話だ。とは決して願は言えなかった。この行動がどれほど無意味で空虚な事だと知っているからこそ願は一歌のその心配の言葉に反論できる術を持っていなかった。

 

『だから…ね?……帰ろう。願』

 

『………………それだけは、ダメだ』

 

ああ。そうだ。今この時、願は気がついた。怒りに絶望に憎悪に飢えていた筈の“何か”がまるで存在しないかのように沈静化している理由は。それは…ただひたすらに虚しいから、なんだろう。一体私は何をしたらよいのか?一体私はどこへ行けばよいのか?

 

何も分からない。何処かに行く宛さえ無い。だから虚しいのだろう。

 

『なんで?』

 

『…………わから、ない』

 

自分が自分であるというアイデンティティはこの世界に存在せず。ただ過去だけを見て今をそして未来から目を閉ざし続けた結果がこれだ。周りをいたずらに傷付け、悲しませるだけの救いようの無い虫けらで、ボンクラでのろまで腑抜けで役立たず。

 

なあおまえ。なんで産まれてきたんだ?

 

『……………そっか』

 

『……………………』

 

ただ無意味で無価値で、無駄な自問自答を繰り返す願は一歌の動きに見向きもしなかった。……一歌が願のガラ空きのボディーに弱々しくとも拳を構えていると言うのに。

 

『……歯、食いしばりなよ』

 

『へ?…………ぐっ!?』

 

低く小さく呟かれた一歌の声を前に願は無防備のまま、一歌のストレートを受けてしまう。足腰も使わず腕の動きも使わずに振るわれたその拳は素人丸出しで録に威力も乗っていない。本来なら痛くも痒くも無いその拳が今の願には酷く痛む、気がした。

 

『何を、する。星乃一歌』

 

『目。覚めた??』

 

衝撃を逃すように尻餅をついた願は一歌を見上げる。そこには前髪を逆立たせ怒っていると言う風に目も血走っているというのに、涙を流している一歌の姿があった。

 

その一歌の表情に願は絶句する。怒りに、憤怒に覆われている筈なのに悲しみが哀切が交わり…しかしそこには“憎悪”が“恨み”が無いそのいかにも矛盾した一歌の形相に願はただわけが分からないと沈黙する。

 

『なんで、なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでっっっっ!!!!』

 

『………………………』

 

尻餅をつく願に飛び込むかのように一歌が殴りかかる。涙を拭うこともせず、ただがむしゃらに握った拳を願の胸板に振り落とす一歌の拳は願の胸にポカポカと殴りつける。

 

『何も言ってくれないの……っ!!』

 

『…………一歌』

 

願の凍りつく内心とは裏腹に願の口は動く。

こんな事にこんな姿に成り果てていて尚、まだ自分には余裕があるように“虚飾”するらしい。

俺らしいといえばらしいけど。無様で救いようがないにも程があると願は内心自嘲する。

 

『無意味だからだよ』

 

『なに、言って』

 

ただ自分から漏れ出る言葉は、“虚飾”していた理性とは程遠い言葉が口から紡がれる。驚愕が理性の停止の声も振り切り、自分は小さく呟いていく。

 

『こうして馬鹿になって何も考えずに生きるのも。』

 

痴呆みたいに自分の拳を構えてそれでも絡んでくるどうしようもない同類をたまにいなして夜の街で踊り狂う。そんな今の自分と

 

『“優等生”を背負って生きていくのも』

 

“幼馴染を大切にし、家族への親孝行を欠かさず、そして双子の姉を大切に思う成績良好で誰とでも仲良くできる優等生”として生きてきた“星乃 願”という外側を被っていた今までの自分と。

 

今なら言える。なんの差も無いのだと。

それはつまり、等価値なんだ。独りになるのとそれ以外は自分にとって。

じゃあ無意味じゃないか。無価値じゃないか。

 

『一緒だったんだよ。一歌。』

 

『そん…な……』

 

涙は枯れ果て。意志は朽ち果て。最期に願の手に残ったのは虚無だけ。

それでも今まではどうにかどうにか炉に薪を焚べて動いていたのに今の願には薪も火種も残っていなかった。ただそれだけの物語。

 

『……………ねえ。願。』

 

『どうしたの?一歌』

 

全部、全て吐き出した願に今や取り繕うモノは無い。…いや。もう取り繕う事さえも出来なくなったと見るか。その辺りは差異でしか無い。分かることはただ1つ。この愚か者に救いの手は差し伸べられないはず……

 

『じゃあさ願』

 

『………何?』

 

『私が願に意味を教えてあげる』

 

戯言を。だとか無意味だ。とか驕るなとも言えた。事実、言おうと思っていた。だけど顔を上げた先、一歌はいつか見た未来を信じて疑わない強く、そして熱意に満ちた眼差しに願は膝をつく事しか出来なかった。

 

『それは………なぜ??』

 

『だって。』

 

一歌は願の手を取る。両手を合わせ、手のひらを繋げる2人には奇しくも同じように見つめ合っていた。

 

『この世でたった1人だけの魂を分けた姉弟だもん』

 

『………………はは』

 

一歌の強い眼差しの願はついに折れる。その言葉に嘘偽りがない事が分かっていたから。その熱意には自分が失って久しい想いがあるのだと願は認める他無かった。

 

皮肉な事だ。無意味と、無価値と断定したその中に。

願は“与える愛”を尊んだ。それが願の敗因。

 

『じゃあさ、教えてよ。()()()

 

 

──────きっとこれが“星乃 願”のオリジン。

 

 

 

 

 

 

 

 

『いちか。』

 

私には産まれながらの半身がいる。人が言うには双子だ。

その名前は願。まるで私をそのまま生き写しにしたかの様なそんな姿に私は貴方で貴方は私である事を信じて疑わなかった。……そう思っていたのは私だけだったというのに。

 

成長と共に私たちの世界は広がる。それでも根本にはあなたが居て、それは変わらないはずだった。咲希も、穂波も、志歩も。何であっても私たちは変わらない双子だった筈なのに。

 

『……………げ、ん??』

 

中学の時だった。ある日突然、おかしくなってしまった願がそこには居た。

みんなは気がついてないけど私だけは分かる。願の目だ。いつも輝いていた願の目はまるで燃え尽きた様に黒く深く闇に染まったかの様な……

 

『どうしたの?一歌』

 

………笑ってるのに笑ってない。そんな願の行動は日に日に過激化していった。

家に帰らない時間が増えて、私たちと関わらないよな時間が増えて。

独りになったベットは冷たくて、寒くて。それでも願に帰ってきて欲しいとだけ思って。

 

(………願。どうして??)

 

自問自答を繰り返せど分からない願の内心。

あの日、あの時。変わらない筈の半身はまるで私を否定しているみたいで……

夜も遅くまで帰ってこなくなって。願の存在がまるで願の手で消えていく中で。

 

ようやく怯える私の身体は動くことになった。

 

願の後ろをつけて私たちが久々に声を交わせた場所は……私たちにもとても深い思い入れのある公園。みんなで流れ星を見たあの公園に独り願は座っていた。

 

『願。帰るよ』

 

ここからは私と願の一対一だ。

願の本心を引き出して、そして帰らないと同じことを繰り返す事になる。願がたった1人で抱え込むと言うのなら。

 

同じように私も願の抱えているものを共に────

 

 

『無意味だからだよ』

 

『こうして馬鹿になって何も考えずに生きるのも。』

 

『“優等生”を背負って生きていくのも』

 

『一緒だったんだよ。一歌。』

 

 

まるで呪いのように沁みる。目を覚ませようとした拳も何もかも願には届かず。全部、全部無意味だと言われるのなら。

それは、半身である私まで否定されている気がして強く胸を締め付ける。けど…けどっ!!

 

が泣いているのを黙って見過ごすのならそれは私が私でなくなるのと同じだっ!!

 

 

(そう私は…お姉ちゃんだもん)

 

 

今思えば、きっとこれが“星乃 一歌”のオリジンなんだろう。閉じていた未来の先。きっと苦難を乗り越えた先に。私たちという双子鳥は星として輝くその日を。

 

 

私は夢に今日も歌うのだ

 

 

 

 






星乃 願

レオニでたまーにやってるギター兼ボーカル。
その正体は、星乃一歌の双子の弟。ちなみに前世は据え置きです。一歌の双子という事で趣味趣向は似通る所もある。ミク廃とまでは言わないがミクのファンだし、焼きそばは願の得意料理になった。なってしまった。

輪廻の先は新しくも温かい家族でした。という事で簡単に壊れた。何がタチ悪いって一度人生をまっとうしているが故のこの無気力だから難易度は推して図るべき。

ちなみに幼馴染‘s専用脳焼き器としての火力は十分発揮されている。





星乃 一歌

どけ!!私がお姉ちゃんだぞ!!
をやってマジで成功したお姉ちゃん。本来の流れならあの場所では説得し切る事はできなく、レオニの発展と共に願が“意味”を見つけていくストーリーになる筈だった。だというのに一歌は姉であるという精神だけで全部覆した。

弟がいるのでレオニ内でのお姉さん力がアップしてる。姉(一歌、穂波)と妹(咲希と志歩)で綺麗に別れている。レオニストーリでは原作と変わらず。ただ初手で志歩や穂波と絡んでいけるメンタル面の強さが維持されてるかも。

ちなみに弟は最後自分の元に返ってくると信じて疑わない。



幼馴染’s

星乃姉弟に盛大に脳を焼かれている



感想、評価お待ちしてます

次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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