「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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あけましておめでとうございます。お久しぶりです。
6ヶ月ぐらい更新できなかった理由は普通にスランプです。前話、前前話辺りから行き詰まってた感があって、今回ようやく更新できる様な意欲とアイデアが産まれて来たので続きです。

それに従って、もしかしたら前話を内容を一新したバージョンを出すかもしれないとだけ言っておきます。
勿論ゲーム本編ではもう進級しましたが生憎とこの小説内では一律してまだ進級してない状態で進んでいきます。
それでも宜しければ楽しんで行ってください。今回はワンダショという事で願もはっちゃけてる感じです。

いつも通り、設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定注意です。


if・もしも類と兄弟だったなら……

 

 

「こらぁ!!神代兄ぃ!!そして天馬ぁ!!止まれっ!!」

 

「くくっ…止まれと言って止まるバカはいませんよ」

 

「うむ……類っ!こっちだっ!!」

 

ここ神山高校ではとある2名の男子生徒を追う教員とその教員から逃げる男子生徒2名と言うのは最早日常の風物詩と化している。むしろこれが無ければ始まらないとまで豪語する生徒がいるぐらいには日常茶飯事になっている。

そんなある意味ではめちゃくちゃ愉快な男子生徒2名…“神代類”と“天馬司”通称変人ワンツーという通り名が通るぐらいには愉快な問題児たちは今日もまた笑いを届けるのだった。

 

まあその笑いも大体は“爆発”という言葉で表せるという意味がどれほどな物か、ある程度想像が付くだろう。今日もまた作る事においては天性の才能を持つ変人…神代類の“実験”と称された奇行に付き合える愉快な変人…天馬司がその“実験”を大きく盛り上げたのだろう。

 

世界的に有名な某逃げ回る鼠と追う猫の如く追いかけっこを続ける2人と先生だが本日は簡単にお縄に付いてくれるだろうと追いかける先生は心の中でほくそ笑む。何故なら…天馬達が逃げたその先は袋小路になっている。“偶然”にも逃げた先の防火扉が閉まっているのだ。しかも今は昼休み。捕まえられたら非常に良い。

 

そう、先生は思っていた。

 

「はぁい。アンパ…じゃなくて類マン!新しい煙幕弾だよ!!」

 

「流石だぁ!!願!!」「逃げられたんだな!流石は我が弟ぉ!!」

 

「待っ!!神代弟!!………わっぶっ……」

 

突然どこからともなく現れた神代類によく似た男子生徒…違う所は瞳の色がスカイブルーな事以外、まるでそのままそっくり神代類なのでは無いかと錯覚するほど瓜二つの少年が真顔のまま片手に野球ボール大の球を持ってもう片手でピースをしながら、そのピースを振っている男子生徒がいた。

 

その男子生徒の名前は“神代 願”…一個下の神代類の弟だ。

変人ワンツーほどでは無いが、他生徒や教師からはこの2人に乗っかる愉快犯(共謀犯)と言う事で知る人ぞ知る変人ワンツーの“スリー”に入るのでは無いかとまで言われている。

まあたまにブレーキになるし、本当に危険な事は止めるか教師の目が行き届く様に話を通したりと何処か憎めない共犯役としても話が通っていたりする。…まあ変人ワンツーが“やらかし過ぎている”からまだまともに見えてるんじゃ無いのかとかは言ってはならない。

 

教師の制止の声も聞こえなかった事にして願は手に持っていた煙幕弾だけでなく、マジックの様に瞬時に取り出した煙幕弾×4を放り投げてこう言った。

 

「えーかの偉人は言いました。芸術は爆発だと」

 

その瞬間、鳴り響くクラッカーが破裂した様な音を大きくした様な音が響いた後その周囲に煙が充満した。勿論、その煙は類謹製の人に害のない煙だが視認性は最悪だ。文字通り煙幕として視界が遮られた後、その場には変人ワンツースリーは影も形も無かった。

 

これは余談だが願だけはちょっと大きめな狸の顔にへのへのもへじを描いた紙を貼り付けたぬいぐるみを置いて逃走した。どうやらなんちゃって身代わりの術らしい…なんともまあ。“ワンダーランズ×ショウタイム”の道化師であり“フェニックスワンダーランド”のマジシャンである願らしい演出だった。

 

 

 


 

 

 

「いやー!流石だ!!願!!」

 

「腕が上がってるね。願」

 

「いや。たまたまだよ…兄さん。司先輩」

 

ふー疲れた。とばかりに腰を下ろす三人は、今回の作戦の成功を喜ぶ様に拳を突き合う。今回の逃走の要は願だったが、願は昼休みでしかも一学年下としかも友人とご飯を食べているだろうから来れないのでは無いかと司と類は覚悟していたのだ。

 

それでも願は現れベストタイミングで煙幕を使い、あろう事か追ってきた教員の横を素通りしながら逃げてきた。まさか自分の真横を通り抜けられたとは思わない教員の顔を想像したらまた笑えてくる物だ。

 

と喜んだのは束の間だった。

 

「願、はいるよね?」

 

「寧々……?」「あっ」「おっ」

 

逃げて授業開始時まで雲隠れしようとしていた空き教室。三人がまた話をしようとした瞬間。横開きの扉を力一杯開ける様な音と共に、おどろおどろしい声が聞こえる。その声は、まるで声だけで美しいと聞こえるのに何処か恐ろしい印象を受ける。

 

その少女の名前は“草薙寧々”…司や類が所属する“ワンダーランズ×ショウタイム”の一員であり神代兄弟の〈幼馴染〉である。灰色がかった緑色の髪を盛大に逆立たせ、いつもは眠そうにトロンとしている紫色の眼差しも何処か鋭く。寧々は扉の縁に立っていた。

 

そんな寧々の様子に類は驚き(何故この場所が分かった!的な驚きだが)、願はその寧々の怒気に覚えがあるのか顔を真っ青にし、そしてそんな願の顔を見ながらおおよそを察した司が面白そうなのを見たと笑った。

 

「えー…その、寧々?……どうしてここが分かったんだい?」

 

「そんな事どうでもいい。それより類の後ろのあんぽんたんを出して」

 

三人の代表にと立ち上がった類が寧々に声をかけるがバッサリと切り捨てられる。もはや願と言う名前ではなく、あんぽんたんとまで言われた願は甚だ不本意だとチベットスナギツネの顔になっている。…勿論今までの空気を読んで司は声も出さず大爆笑をしているが。

 

「出さないと類のお母さんに言う」

 

「悪いね、願。…寧々には、逆らえない」

 

「待て。話をしよう。兄貴よ…ああああああああ」

 

子どもに効く最終奥義“お母さんに言う”を持ち出されたらどうしようもないと類は速攻、寧々に願を売った。もはや刹那の類の身内切りに流石の願も反応しきれなかったのか、そのまま腕を掴まれて寧々に引き渡された。ちなみに司は笑い人形と化している。

 

「ん。ありがとう…私はこれでおしまい…私は、ね?」

 

「天馬、神代兄。職員室のお時間だ」

 

間違いなく力は願の方が強い。だと言うのにこうして寧々に腕を掴まれると絶対振り解けないと願は理解できないと表情だけは不服そうにしながら決して寧々には逆らわない。…逆らったらどうなるか、十分身にしてみるからだ。それはもう身体どころか魂にまで刷り込まれている。

 

まあそんな願の醜態に笑っていられる変人ワンツーではない。寧々(with腕を掴まれた願)の後ろから最初、変人ワンツーを追いかけていた教師が仁王立ちで立ち尽くしていた。

 

「っ!逃げる……てええええええ!!??」

 

「っ!?これは……願!?」

 

そんな教師を目の前にもう一度煙幕弾を使って逃げ出そうとポッケから取り出そうと類が漁った瞬間……無い。類のポッケから残っていたはずの煙幕弾が全部無くなっている。そう、文字通り全て。落とすはずがないとなるとスられたと考える。

 

類と司の目を欺いてポッケから盗み取ることが出来るのは“ワンダーランズ×ショウタイム”の道化師である願だけだ。

 

「ふっ。……死なば諸共よ。兄上」

 

「ふっ。成長したね。弟よ」

 

「やっとる場合か!!」

 

清々しい笑みでサムズアップする(寧々に引き摺られながら)願と同じ様にサムズアップする類。寸劇をする兄弟を尻目に司はツッコむがもう無理だろう。先生は変人ワンツーの目の前にいる。

 

そして2人は授業が始まるまで帰って来れなかった──────

 

 

「あの、さ……」

 

「なに?」

 

そんな先生に連れて行かれた2人は放っておいて願と寧々に視点を合わせよう。

勿論、廊下に出てても寧々に腕を掴まれたまま動いていくその様は誰がどう見ても2人が親密な仲なんだろうと分かるし、何なら微笑ましそうな視線を向けられる。

 

「恥ずかしくないの?これ」

 

「今更言うの?それ」

 

別に願は今更寧々の手を振り切って逃げる理由もないから借りた犬の様に大人しくしているが、いつもは目立ちたがらない寧々が珍しくともこうしてズンズンと進んでいるのを見るとつい願も声をかけてしまう。

 

まあそうやら耳まで真っ赤に染まっているのを見るとめちゃくちゃ恥ずかしいけどここまで来てしまったのだからどうしようもない、という感じなんだろうと願は1人理解していた。

 

「………なんか、ムカつく」

 

「んな無茶な」

 

そんな願の生暖かい視線の意図を察したのか頬までも赤く染めた顔でキッと見上げて睨む。まあ子猫が威圧している様にしか見えないが。

 

「よぉ。願。捕まったのか」

 

「どうせバラしたの手前だろ。彰人」

 

「この前俺を変人ワンツーに売ったからな」

 

前からニヤニヤと笑いながら手を振る男子生徒。彰人と言われたオレンジ髪の少年を恨めしそうに見る願に負け犬の遠吠えとばかりに笑う彰人。

 

「自分は悪くねぇ。あれは逃げるのに丁度良くお前が居たからだ」

 

「おう。大人しく捕まっとけ」

 

そう。2人はクラスメイトのまあ親友と言って良いだろう。その友情関係もこうして互いを売り合うような悪友と言う方が正しい気もするが。

 

いつかの時、類と司に追いかけられた願は丁度良いところに居た彰人を身代わりにした。願が言うには“サイドエフェクトで未来が見えたらしい”ので泣く泣く彰人が犠牲にされた。まあそれはそれは羞恥的な意味で酷いことになったらしい彰人は願に復讐を誓ったらしい。

 

つまり過去の因果が今降りかかってきたことを理解した願は負け犬の遠吠えとばかりに中指を突き立て、彰人は満面の笑みで首を掻っ切るポーズをして願を寧々に売り渡したのだった。

 

「……………………」

 

「えっ?ちょっ!寧々…寧々さん?力強っ!」

 

そんな彰人との戯れの後、相変わらず寧々に引っ張られている願だがさっきよりも引っ張る力が強くなったと驚愕する。さっきよりも大幅に歩く速度が上がっているし、何よりこっちを一瞥することなく進んでいる。

 

何か気分を害することでもしてしまっただろうかと願は考えるが特には問題なかった筈だと変わらず不思議そうに引き摺られる事になった。

 

まあ、どこの世界でもクソボケと名高い願は気が付かないだろう。まさか“今は自分と居るのに自分以外の人と仲良くしている姿を見せられる”という可愛い可愛い独占欲が原因だとは。

 

 


 

 

そしてそんな寧々に引き摺られ、着いた先は裏門の物陰。あまり人気のないこの場所は秘密の話をするのにはもってこいだ。

 

「〜っ。寧々ぇ」

 

「連れてきたよ。えむ」

 

一体こんな所に何の用があるんだと願が口にしようとしたその時。寧々は少し上を向いて1人の少女の名前を呼んだ。その名前は“鳳えむ”…“ワンダーランズ×ショウタイム”の一員であり“フェニックスワンダーランド”の経営者一族の令嬢である。

 

願からすれば雇い主の娘という事でまあ社長令嬢みたいなモノだから関わり方は慎重にしたいが如何せんこの少女は天真爛漫でお転婆であり類の実験にも喜んで協力するのだ。勿論願の胃は痛む。

 

「ほいほ〜い!ありがとね!寧々ちゃん!願くんも…わんだほ〜い!」

 

「いえーい。わんだほーい」

 

飛び込んできたえむを倒かさない様に受け止め願はえむとハイタッチする。真顔でとても面白いことを口にする願は非常にシュールだがこれでもまだマシになった仏頂面である。

 

「………それで?何かあったのか?」

 

「ん〜?あ、うん!そうそう!!」

 

そんな挨拶の後に願は即座に切りかかる。何せ、えむが神高に来ることはほぼ毎日だがそれを差し引いてもわざわざ自分を呼び寄せる理由は無いと考えている。

 

「理由がなくちゃ呼んじゃダメ?」

 

「………ご用件は?」

 

そんなツレない願を前に蠱惑的な笑みで挑発するえむに願の顔は真顔から満面の笑みになって再度強く聞いた。

流石にこれ以上は分が悪いとえむも膨れっ面になりながら隠し持っていたA4大の紙封筒を取り出し、願に手渡した。

 

「はいこれ。お兄ちゃんたちが願くんに〜ってさ!」

 

「りょーかい……ありがとう」

 

手渡された書類を見ると確かに自分宛で間違いないのだろう。とは言え、社長令嬢の手から社長からの重要書類を手渡される現状は考えてはいけない。考えてはいけないのだ。

 

 


 

 

「じゃ。用事あるから。」

 

兄さん達の仕掛けを回収しておかないと…と言い、姿を消していった願を見て寧々はえむに近づき不機嫌そうな顔で迫る。その寧々の不機嫌の理由も分かっているのかいつも通りの天真爛漫な表情でえむはワザとらしく寧々に聞く。

 

「どうしたの?寧々ちゃん」

 

「分かってるくせに…」

 

その寧々の一言にどれほどの想いが込められているのだろうか。

それを推し量れるのはきっとその場にいるえむだけだ。だと言うのにえむは笑みを崩す事もなく続けて呟く。

 

「うん〜?何のことかな?」

 

「惚けるの?」

 

「惚けるも何も。願くんの仕事に寧々ちゃんが入る余地は無いんだよ?」

 

キッと睨む寧々にえむはワザとらしい満面の笑みから変える事もしないで寧々に言う。えむは気がついている。えむは知っている。寧々ちゃんが願くんに重た〜い想いを持っている事を。そしてそれを分かった上でえむはこうして横から声をかけてみたりして2人の関係が進む事を狙っている。……まあやり過ぎると壊れてしまう悪手でもあるが。

 

今日だって願の居場所を言ったのはえむが寧々に吹き込んだのだ。そしてその上であたしの元に連れてきて欲しいって言ったのだ。まあ仕事のことだからと分かっているからか寧々もそこまで気にしてなかったけど流石に“貴方に会いにきた〜”みたいな事を言ったら寧々もキレた。まあ当たり前であるが……それでも。

 

「それでもえむが持ってくる理由にはなってない」

 

「そう?……あたしだって大切なメンバーで“部下”を気遣うのは当たり前にするよ!?」

 

わざわざ社長令嬢が個人に向けて書類を手渡すのはおかしいと追求する寧々にえむは強く〈部下〉を強調して声にする。それもその筈、願は“フェニックスワンダーランド”で働いていると言い、類がショーで機械を使うと言う事もあってか、その内容や詳細を細部までキチンと書くと言う大人顔負けの縁の下の働きが凄まじいという事でえむの父に目が留まり、将来は優秀な部下として密かに外堀を埋められている。そしてその第一歩として願は密かに所属が“フェニックスワンダーランド”の一職員から社長令嬢である“えむ”の1人目の部下として書き換えられているのだ。

 

えむだって願の所属が自分の“部下”になった事はとても喜ばしい事だ。それこそ願が部下になってから一週間ぐらいはしばらくずっと自分の御付きとして近くに置いていた。色々と粗があってもそれでもえむが気にならないほどには言葉遣いも身嗜みもマナーも問題ない願はこのまま自分の御付きとしておいておきたいぐらいだった。

 

それもその筈。えむがショーステージを取り壊させない“約束”のために最初に協力してくれたのは願だ。その時、願はあくまでキャストの1人でしかなかったと言うのに色々と協力したり、えむのお兄ちゃん達にキチンと理由もつけて啖呵を切ってくれたりとえむの“約束”に最大限協力してくれたのが願だ。…こうして“ワンダーランズ×ショウタイム”が結成された後も秘密に協力してくれている事をえむはよく知っている。

 

「なら私は“幼馴染”としてこれ以上は見過ごせない」

 

「あのね……寧々ちゃん」

 

勿論そんな事、寧々は知らないがそれでもこれ以上願をえむとの関係性を深められたらマズいと思っている。それはおそらく女の勘でしか無いがこれに関しては間違っていないと思っている。

 

そんな怒気を露わにする寧々にえむは少しムッとした表情で忠告する。

 

「深掘りする子は……嫌われるよ?」

 

「願が私を?……無いに決まっている」

 

私が人見知りだった時も、私が最初に舞台を目指した時も、私が主役を取れるまで練習していた時も。あの日、大きな失敗をしてしまった時も。そのトラウマで塞ぎ込んでしまった時も。

 

ずっとずっと隣にいてくれたのは願だけだった事を寧々は忘れない。

ただ隣に居てくれる。そばに居て“かけがえのない日常”の陽だまりで居てくれる。それがどれほど寧々と…非常に癪だが類の“光”になった事か。それは決して忘れる事も、消える事の無い“輝かしい記憶”だ。

 

「願から手を引いて、ハートの女王様鳳えむ。」

 

「独占欲が強い子は捨てられるよ?人魚姫草薙寧々。」

 

互いに捨て台詞を吐いて、この話は終わりにする。

これ以上は意味のない諍いになってしまう事を2人とも十分理解していた。

 

「……それで、あのね?司くんたちは何処に行ったの?」

 

「あの2人は今、職員室」

 

大体察してしまったえむは納得した後に、困っちゃうよねーたはーみたいな顔をしておそらく寧々が願を回収する出汁にして売ったなと分かってしまった。諸行無常。まあ今ここで叱られていればおそらく放課後には怒られないだろうからショーの練習が捗るだろうとえむも諦観を決めた。今更どうしようもないと言うのもまた事実である。

 

「……じゃあお昼ご飯食べよっか!」

 

「ちなみに何処で?」

 

「……うーん。寧々ちゃんの教室で!」

 

「……見つからない様にしてよ……」

 

 

 


 

 

 

「おーい!願!一緒に行かないか?」

 

「あっ。奇遇ですね司先輩。ご一緒させていただきます」

 

放課後。昼間こっ酷く絞られた変人ワンツーの内のワンである司はステージに行くまでの道の途中。1人歩いていた願の後ろ姿を見つけた。これ幸いと願に向かって走り声をかける。

 

「あのショーは───」

 

「そうですね。あのキャストのあの動きが─────」

 

2人並んで歩く間に話す話題と言えばショーに関して。司たちが披露するワンダーステージにも他にもキャストが居る。さらに足を伸ばせば他のところで披露する劇団だって俳優たちだって居る。勿論そう言う情報に関して集めたり実際に足を運んで鑑賞する事もある2人が集まるとそう言う話ばかりになるのはおかしい話ではないのだろう。

 

「そう言えば知ってますか?あの公演────」

 

「ああ!それの事だな?!その話にはな?」

 

趣味が合う様に見える2人の仲が良くなる事は簡単だった。それに最初、司が素晴らしいショーを届けるとアルバイトの応募に来た時、自分を選んだえむの背中を押したのが願だと聞いているし、それから類や寧々をこの道に誘う時に“重要な事についてのアドバイス”を分かりにくく、遠回しでも支えてくれたのが願だった。

 

「あの俳優さん────」

 

「ああ!とても素晴らしい舞台だった───」

 

司にとって願は正しく“道化師”。時には一緒に笑わせながらも無神経な王様自分に忠告するその存在は決して得難い一員だ。だからこそ司は分かっている。

 

「ああ。……すみません司先輩。今日実は呼ばれていまして」

 

「うむ?!……そうか!!なら行ってくるといい!!」

 

類の弟。願は非常に礼儀正しいと司は知っている。ああ見えて年上や目上への礼儀は欠かした事は無いし、初めて同じステージに立つ別のグループの名前や挨拶など欠かした事もない。

 

まあそれは置いといて。妹を持つ1人の兄だからこそ分かるのだ。

“願がその実、ワンダーランズ×ショウタイムにそこまで強い想いを抱いていない”事が。

 

「願……おまえは」

 

なら願は“フェニックスワンダーランド”に強い想いを抱いているのか。それも違うだろう。おそらく願にとって“受かった1つのバイト”に過ぎないのだろう。…つまり願にとって現状は、簡単に取り換えの効く現状でしかない認識という事だ。

 

……あまりこう考えたくはないが自分が下の名前+先輩で呼ばれているのは精々兄の親友だからのと、同じ場所で働くアルバイト仲間程度の認識でしかないと考えると中々くる物がある。

 

「一体いつになったら“本当に笑ってくれるんだ”?」

 

なら願は“鳳えむ”に強い想いを抱いているのか。…あまり言いたくはないがきっと上司としか見ていないのだろう。“上司”に睨まれて仕舞えばバイトどころの騒ぎではない。それを司も理解しているからこそ分かる。

 

仕事上の付き合いを許したとしてもプライベートまでは中々踏み込ませてくれないだろう。何処までを仕事の線引きと見るかはまだ分からないがそれでも“この友情”が願にとって“線引いた仕事上の関係と付き合い”であると思われている事が酷く恐ろしい。

 

「まあ考えていても進まないしな!」

 

でもそれは“今まで”の話だ。これからどうなるかはまだ分からない。

そしてこれからを作っていくのは自分たちだと司は知っている。これからのショーで願から本当の笑顔を引き出せるのならきっと世界一のスターに近づける。

 

“親友”1人も笑顔に出来ないで世界一のスターにはなれないだろうから。

 

 

 


 

 

 

「ただいま」

 

「ああ。おかえり」

 

夜遅く。またいつもみたいに夜遅くまで会議に参加させられていた願はそのまま鳳家のえむの兄に連れられディナーまで一緒になり帰ってきた所だ。良いところの家の晩ごはんだから質は良いんだが息が詰まると言うのが願の本心だ。

 

「今日もかい?」

 

「ああ……なんて言ってた?」

 

手慣れた仕草で制服を脱ぎ、そのままハンガーに掛けそして消臭剤を振りかける。その間に聞いてくる類の問いを肯定しながら問い直す。それはつまり鳳家にお世話になっている回数だ。食事1つ取っても相当な値段がかかっているだろうにそれが積み重なると本当にヤバいことになると理解はしているが。

 

「流石にそろそろ苦言が来るだろうね」

 

「ま。そりゃそうだ」

 

流石にそろそろ(親から)苦言が来るだろう。という類の言葉に乾笑い気味に願も肯定する。ただまあそれでも願は逆らえないと弁護する。これこれの褒美を理由に招待するね♡というあくまで名目上であろうとも雇い主、それも社長からの命令に逆らえる様には出来ていない。

 

ただまあそんな事を言ってもこの家からすると本来なら関わりのない様な人たちの中にいる息子というのはとてもハラハラさせられるモノだろうと願も理解している。だからこそこうして忠告してくれているのだろうとは思うが。

 

「………なる様にはなる、か」

 

「そうなったら良いね」

 

最悪、何もかも投げ捨てて逃げてしまえば良いし。とまで考えている願の内心は誰も察することが出来ないが、それでもどうやら何か宛があるのだろうか。それこそ“どん底に落ちたことのある誰かの記憶”とか。

 

まあそんな事勿れ主義。或いは楽観的な願の考えをある程度察した類は半分投げやりに呟く。願は何処か人の考えを蔑ろにする癖がある。共感性が低いということではないのだろうが心の理解が後一歩という所で別解を導き出す癖があると類は密かに思っていた。

 

「流石にバックれたりしたら愛想も尽きるだろ。……まあそれは本当に本当の最終手段だが」

 

「うーん。間違いなく探されると思うよ?」

 

「……ないない。たかがバイトだぜ?」

 

そんなバイトが社長一家から目をかけられている現状についてはどうかと類はその質問を喉の奥で噛み砕いた。間違いなく、バックレなんてすれば鳳家直々に探されるだろうし失踪なんてしようもんなら文字通り草の根掻き分けて探されるだろう。

 

現に今、願が睨めっこしている書類なんてフェニランの経理状態の書類ではないだろうか。たかがバイトがそんなモノを任されている現状に願はそろそろ気がついて欲しいと類は思っている。

 

「大阪冬の陣…だね」

 

「大阪ぁ?……道頓堀とか良いな」

 

類の呟きに書類から目を離した願が声を上げる。そう言えば大阪は“今世では”一度も足を踏み入れた事がないなと願は思った。大阪と言えばたこ焼きだが熱々のたこ焼きを頬張るのは、やはり本場が一番だろう。

 

「………まあ迷惑にならない程度にすれば良いと、思うよ」

 

そんな類の言葉を聞いたら笑いそうな人たちが居るがそれを差し引いても類は願を兄として心配しているのだ。ただでさえ家隣の幼馴染が願に怪しい視線を向けているのや、わざわざネネロボに防犯モードを付け足したのも単に願を思っての事だがそれを口にするほど無粋ではない。

 

「おう…ありがとう。兄さん」

 

そんな類の心配を察してか知らないが、ヒラヒラと手を振りながら立ち上がり下に降りていく。夜も更けてきたという事で流石の願も寝る準備をしに行ったという事だ。

 

「……………はぁ」

 

下から聞こえるシャワーの音に類は机から顔を上げて背もたれに持たれる。

昔から変わらず類が心配することは願の事だ。いつも迷惑をかけているのは兄である自分であることは重々承知しているがそれでも弟の唐変木には一言申し上げたい程だ。

 

まああれは唐変木と言うよりか人誑かしではあるが、その当の本人が何も思っていない事が問題なのだ。或いは好意に関して酷く鈍いと言うべきだろうか。心の殻が分厚いと言うか心の殻が蜃気楼で出来ているのだ。その見えているモノが本当に願の考えなのか、或いは願が口から出まかせた社交辞令なのか分かる必要がある。

とは言ってもその蜃気楼の殻を剥がせる様な人間は願とは酷く相性が悪いんだろうなとも分かる。何となくだがそれが出来る人間はおそらく願と同族…人の心がよく分からない或いは分かっていない人になりそうだ。

 

「まあ俺も、同族か」

 

昔の事に思いを馳せて、そうして思い出すのは中学の時の青い春。

周りに誰も居なかった自分と、皆から人気者の願。どうしてそれ程の差が有るのか、どうして自分には志を同じくする様な仲間が居ないのか。それを思って、憎んで連れない態度を取ったこともある。

 

それでも弟は…願は隣に座っていたのだ。あの時できた友人暁山 瑞希にもそう言えば願はフラットな平等な目だった。まあそこから色々とぶつかって、和解してそして高校生になるぐらいから願が始めた遊園地のキャストのバイトに自分も声をかけられたのだ。

 

『兄さん。あんたの理想。それに共感してくれそうな人が居る』

 

『……どう言うことだい?』

 

きっと願は現状みたいになる様に色々と考えて居たのだろう。兄の孤独が、せめて兄に共感できる人を。幼馴染のトラウマが、癒えてまた進み出せる場所を。バイト先の令嬢の夢に、協力してくれるようなキャスト達を。スターを夢見る王様に自分の理想の形を気づかせた。

 

そう。その働きはまるで冬の海の北極星。海の男たちが頼りにする絶対の道標。

でも忘れてはいけない。その北極星だって人であり僕の弟であると言う事を。

 

だから類は祈っている。

願が心から許せるような仲間を作り、そして自分の道を進める事を

 

 

 

 

 






神代 願

おそらく付けるとしたら二つ名は〈ボラレスの道化師〉
高校生になる春に(時給が)良さげなバイトを見つけて応募したらそのまま受かっちゃった系で物語が始まる。まあここ以外には家事代行や音楽施設のバイト、カフェの店員やアイドルイベントの敷設バイトだったりと色々と道があったりした。

遊園地でのキャストのバイトは前世から学んだ人付き合いのバランスとコミュニケーション能力と今世の手際の良さを活かして何処かの世界線と同じ様に鳳家に目を付けられた。
周りから見た願は好青年として人懐っこく何処か抜けていて、それでいて決める時は決めるし、任された仕事は完璧にこなすと言うある意味超人的である。

ただ願に近い人からすれば、その姿は酷く脆く見える。人の好悪に無頓着で自らの“居場所”に他者を必要としない根無草っぷりは簡単にその環境を捨てられると言う意味でもある。何でも自分でしてしまうと言うのは裏返せば誰も彼も信じていないと言うことなのだから。

もしこの世界線が原作として公開されれば願の事を“北極星面したブラックホール”だとか“やっぱりコイツも屋上組じゃねえか!”とか“人畜無害な顔して裏では一番誰も信じてない哀しきモンスター”とか“お手軽曇らせ生成機”とか言われる。なんならイベントストーリーを少しずつ追う事でしか本心が分からないバグ。




神代 類

お兄ちゃんをやってるお陰か大分原作よりも責任感マシマシ。自分の理想ととても優秀な弟の間に挟まれて中学時代はやぐされていたとか何とか。まあそんなんになっても弟は兄として慕ってくれていたんですよね!兄としての尊厳ボロボロ♡お兄ちゃん面するの辞めたらぁ?(尚、嘘は言ってない)

弟に唆されたとは言え、自分の理想を共有できる様な仲間を見つけていい空気を吸える様にはなったがそれと同時に弟の“歪さ”をようやく理解した痛ましい子。可哀想だね。助けてあげようか?お兄ちゃん?……まあその当の弟は何とも思ってなさげだけどね。

願との絆ランクの称号
ランク5「神代兄弟」
ランク26「仲良し兄弟」
ランク55「隣、屋上で見上げた夜空」



草薙 寧々

トラウマ背負った怪物…そのトラウマは多少軽減されている。これもまた願クオリティー。原作と違って最初、演じることは無理だったが歌声を奏でる事はある程度マシになっている。まあそれでもネネロボに任せきりではあるが。

願がコトコトと煮詰めて寧々の肯定感を熟成させ過ぎたせいで願限定でめちゃくちゃ自己肯定感が上がってる。物心着いた時からずっと隣に自分を肯定してくれる異性が居るとかそりゃそうもなる。…裏を返せば願が寧々から“裏切る様な事”をすれば寧々がどうなるかは想像に容易い。原作ではおそらく“そういうシチュ”の曇らせが流行る(確信)

曇らせたくなってきた…♤

願との絆ランク称号
ランク5「幼馴染」
ランク26「隣で居てくれる」
ランク55「泡にはならない人魚姫」



鳳 えむ

たった1人孤軍奮闘していた時に、あくまで社長令嬢のご機嫌取りだったとは言え自分の夢を否定せず協力してくれる人に強い想いを抱かないはずが無い。司を信じていいのかと言う時に最後に背中を押してくれたのも願である。
勿論、それまでに2人で奮闘している時も願が庇ってくれたり互いにある程度妥協できる所に着地させてくれた事もあり、家族との仲は最初の原作ほど悪くは無い。

願の事は寧々が居るからと始まる前から失恋している物だと理解していると自分の心の中で折り合いは付けているがそれとこれとは別だと隙が出来たらいつでも奪える様にしている。めちゃくちゃ卑しい天真爛漫なお嬢様は好きですか?

願との絆ランク称号
ランク5「上司と部下」
ランク26「夢を共有」
ランク55「これは間違いなく運命的な出会い」


天馬 司

王様に宰相気取りの道化師を付けてみた。
ワンダーランドの扉を開けっ!天馬絶対王政の誕生だっ!!…とまあふざけるのはここまでにしてここの原作では人間関係の潤滑油SSRの願が居るから仲違いする時間が非常に短くなる。それこそ一話も要らないぐらい。流石にメイストでは願が王様に自分の夢の本質を気付かせる為に助言と場を整える程度でしか動かないがそれでも終始和かに始まり終わるというプロセカのメイストに有るまじき和やかさ。

“自分のショーで笑顔にしたい”と言う理想がある司にはやっぱり願の“歪み”を一番最速で気がつく。誇るがいい司。君は血縁の兄が十数年かかった気づきが、物心ついた時からの幼馴染が気づいていない事が僅か数週間余りで気付いたのだから。

願との絆ランク称号
ランク5「王と道化師」
ランク26「託し、託され」
ランク55「必ず、本当の笑顔を」


願は軽いと言ったが周囲の人間関係が重くないとは言ってない。
では感想、評価お待ちしてます。



次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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