「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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全員が全員矢印の重さグラビティって大好きですか?
勿論、私はめちゃくちゃ好きです。特に好意と憎悪が入り混じった感情とかゾクゾクしますよ、ね


if・もしも遥と双子だったなら……

 

 

この世に星は数多あれど、一番目立つ星に名前を付けるのならきっと“一番星”が相応しい言葉になるだろう。ならば多くのアイドルの頂点に立つ彼にこそ────

 

“一番星”の称号は輝く。

そう…それこそ絶対的なカリスマ性と美貌を兼ね揃える彼、“桐谷 願”。

双子の妹である“桐谷 遥”と男女の人気を二分にして奪い去ってしまうその姿はまさにアイドルの頂点。国民的アイドルと讃えられるのに相応しい。

 

 

………そんな彼の1日は早い。まるで精密機械の様に決まった時間、それはまだ日が出るか出ないかの時間帯に彼は目を覚ます。眠りが極端に深い願はこうして起きる時間を生活習慣として焼き付けておかないと幾らでも寝続ける事が出来る。…まあそう言うのもロケの空き時間に取る睡眠の質の高さに繋がるのだがそれは置いといて。

 

「…………………」

 

朝、目を覚ました願は寝ぼけ眼のままクローゼットからスポーツウェアを取り出す。双子の妹である遥と色違い(願は青色で遥はピンク色)のそのウェアは一番着慣れていて昔からの愛用である。

 

朝の準備を済ませて、軽くストレッチをした後に部屋から出る。そうすると丁度その時、寝ぼけ眼を擦りながら起きてきた遥の姿があった。丁度入れ違いになりながらもシンクロしたこの時間が無くては始まらないと実は2人とも思っている。

 

「おはよう。」

 

「おはよう。…先行ってる」

 

「うん。後で合流する」

 

言葉少なめだがそれでも2人とも理解している。いつもの時間に起きて、いつものスポーツウェアを着て、いつものルートでジョギングをして、2人並んで帰ってくる。それが桐谷兄妹の毎朝の決して変わることのない2人だけのルーティン。

 

「ん」

 

「はい」

 

願が丁度一周を走り終えた頃その後ろから遥が走ってくる。特に何か言葉を交わすこともせずに隣、肩を並べて走り出すその姿は後ろから見ても前から見てもドッペルゲンガーか分身が肩を並べて走っているようにしか見えない。ちなみにこれは余談だが昔、双子出演ということでバラエティに参加した結果。入れ替わって居ても入れ替わって居なくても見分けられるのが殆ど居なかったと言えるほど2人はそっくりなのだ。

 

「ん」

 

「はいよ」

 

毎朝走る分を走り終えてのマッサージに手を貸す。互いの背中を押し合い、互いの腕を引っ張り1人では出来ない本格的なストレッチに精を出す。その後、朝焼けの街をまた今度は早歩きの速度で帰っていく。これが桐谷双子の毎朝のルーティン。基本的に毎日変わらずに行い続けるその行動は少なくとも年単位で続けられている。

 

 

帰ってきたら用意されていた朝ごはんに一度着替え直して遥は制服で、願は身体つきを表に出さないような緩やかな上とお気に入りのジーパンで降りてきた。今日の朝食は所謂、日本の伝統的な和食だ。

 

綺麗に取り除かれた焼き鮭の骨。米粒一つ残さず食べる願の食べ方は見ていて気持ちの良いものだ。そんな願の横に遥はずっと座っていたからかかつての同じグループの子にも“食べ方が綺麗”だとか“育ちの良さが伺える”と言われるが、それも全て願を真似ているに過ぎないと、いつもの願の姿を見て遥は歯噛みする。

 

「願は今日何個撮影?」

 

「んー?……朝に2個、昼に3個かな?」

 

まあそんな事、今言っても仕方ない。と遥は今日の願の予定を聞く。()()()()()()()()()()()()()()遥が聞くのはおかしな話だが、それでも互いの予定は聞いている方が良いと考えている。今も尚、栄華を誇る願は売れっ子アイドル兼俳優として日々、忙しい毎日を送っている。それこそロケで数週間家を空けることもあれば、夜遅くまで帰ってこないのはザラだ。

 

そんな願と一緒に居れる時間は貴重なのだ。だからこそ必ず顔を合わせる朝食の時間には絶対、遥は予定を聞くのだ。周りから見ればその行動はまるで束縛している様にも見えなくはないが、そんな意図は無いだろうと願は笑い飛ばすだろう。

 

「分かった……あのさ」

 

「うん?」

 

「今日、放課後会ってほしい人たちがいるんだ」

 

宮益沢女子高の授業が終わる時間と自分の仕事の空きのスケジュールを頭の中で擦り合わせる。…問題ないだろう。だが自分が女子高に会いにいくことはできないし、下手に自分たちが適当な店に行けば間違いなく面倒な事になることが確定しているから代わりとばかりに願は場所の指定だけしようとする。

 

「いいけど……どれぐらいの年齢層?」

 

「私と同じぐらい三人」

 

「……じゃあ堅苦しい料亭とかはマズイか」

 

芸能人とだけあって店は知っているが願のよく知っているのは大人たちが…というより大人でも通だと言われる様な店ばかりだ。今時の女子高生が好みそうなモノなんて知らない。

 

「分かった。じゃあ“あそこ”連れてきて」

 

「………遠いんだけど」

 

「電車賃くらいは出すから」

 

とは言っても願も一世を風靡する国民的スター。堅苦しく無くそれでいて、ある程度華やかでそして個室がある所に宛が無いわけではないと遥に持ちかける。そんな願の提案に理解は示しても距離的な意味で難色を示す。

 

「………分かった」

 

「じゃあよろしく」

 

でも理解できない訳じゃないと遥は肩を下ろす。願の言う“あそこ”とは元より願と遥だけの穴場の喫茶店である。それがまさか願と縁がある()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に紹介しなくてはいけないと考えると、マナーが悪くとも机に頭を叩きつけたくなるのもよく分かるモノだ。

 

 

 


 

 

 

「じゃ。行ってきます。」

 

「じゃあまた後でね」

 

願は車に乗り撮影へ、遥は普通に学校へ行く。この時点でもう察せるものがあるかもしれないが、願は定時制の高校にも単位制にも入っていない。芸能人にも対応しているタイプの通信制で勉強しているのだ。

 

「じゃあ。すみません。今日もよろしくお願いしますね」

 

「はい。願さん」

 

片手を振り遥を見送った後、願は今日の送迎を担当してくれる運転手さんに声をかける。ここだけの話、運転手にとって願の担当と言うのは相当に当たりなのだ。その理由として運転手にはあまり干渉しない上に、冷暖房もおかしくなければ文句1つも付けない。つまりはめちゃくちゃマナーの良い客。これが幼少期からなのだから相当に礼儀の正しい子どもだと思われているのだ。

 

そんな国民的アイドルは人徳もあるんだな…と言う感嘆の視線を他所にボーッと半分瞑想しながら車の中で揺られていく。いつもなら勉強の教材か次の舞台の台本を開いているかイヤホンで音楽を聴きながら寝ているかの二択だがどうも今日はそれらをする気分でもなかった。

 

「…………?」

 

『……………っ』

 

物思い顔で外を眺めているとすれ違うかの如く、窓の鏡越しに記憶の中から見覚えのある顔があった気がする。と言うのも間違いなく向こうが自分に気がついた後に早歩きで去っていったからだ。……誰だっただろうか?いつもなら簡単に記憶の奥底に埋没してしまう様な言葉さえない一瞬の会合に何故か自分は記憶の中から合う顔を探していた。

 

黒髪に青色のグラのロング。女性…姿からして女子高生?だろうか。アイドル系列の中で考えたが似た様な顔付きは居なかった気がする。後の知り合いと言えば大体年上ばかり……そんな事を考えていたらふと脳内を過ぎった記憶。

 

「ああ。白石さんか」

 

「……どうかしました?」

 

思い出した呟きに運転手さんが反応してくれるのを何でもないと微笑み首を横に振る。……ああ。そうだ、そうだった。“白石杏”それは古い、旧い遥の幼馴染。願自身も昔は親交があったが、年齢と共に加速度的に増えていく仕事を前に次第に自分とは関わりが無くなった。それもその筈、大人受けする良識とマナーの良さ。そしてまるで歴戦の社会人の様な要領の良さと空気の読み具合は、非常に大人たちからも好感的に見られトラブルは避けたいのは当たり前だ。

 

言うならそれだけだ。容姿と名前が出てきて、関係が出てきた後に全く別の人との関係性が頭に浮かんで“白石杏”という情報は頭から流れ消えゆく。かつて交わした言葉が有ったのに、かつて共に笑い合った思い出が有っただろうに。無情にも忘れて消えていく。

 

「……………………」

 

 

 

 

 

「…………っ」

 

ふと見てしまった横顔から逃げる様に立ち去る。魅力的で華麗なその横顔だけでも“格”が違うと錯覚してしまいそうになる美貌だった。遥と同じで違う願だけが持つその顔の中に含まれる退廃的な雰囲気が多くの人間を狂わせる。誰が言ったか桐谷双子のファンは同性ほどヤバいとまで言われる所以がよく分かる。

 

「……………願」

 

桐谷願。その名前を一日も聞かない日が有るのだろうか?それほど国民的アイドルな彼は多くのドラマにもバラエティにもその顔を見せるまさにマルチタレント。歌や踊りだけで無く、一挙手一投足全ての動きに目を奪われ魅了させる。

 

そんな彼のプライベートは多くが秘密のヴェールに覆われている。幼少期から芸能人として生き続けた願のその素は多くの人にとって気になるもの。そしてその中で彼の素を知るのは

 

彼の妹である遥とその幼馴染であった自分だけ

 

「なんて誇れたら良いよね〜」

 

と言ってみたものの別にそれだけだ。まだ幼い頃に遊んだと言うだけ。遥の様に今も連絡を取り合って、一緒に遊んだりすることは無い。ただ、願の昔の姿を知っているだけ。でもそれがどれほどの価値があるのかよく知っているから杏は口を閉ざす。

 

「捨てられた、か」

 

嫌な事を思い出したとばかりに顰める。別に何か願に反目する事があるわけじゃ無い。昔恋人だったとかでも無い。惹かれてなかったと言われると嘘になるけど。

 

そんな昔馴染みと仲が悪くなったとかは無い。ただいつの間にか会わなくなって、話さなくなってそのままだ。今でも遥と話す分、願には薄情者と言いたくなるだろう。

 

「ま。元気にやってそうだし!いっか!」

 

でもそれぐらいだ。昔から願はそうだった。聞かれなければ言わないし、何かあれば言ってくるけど何もなければ言わない様なそんな自分に芯がある人間。そんな願が同い年なのに兄に見えて、まあそんな姿がカリスマ性と言われるのかもしれないが。ああ、でも

 

「願って……あんな笑みだっけ?」

 

貼られたポスターにふと思い出した昔の願の笑みとポスターの笑み。作り物だから違うと言われればそれまでなんだけどそれでも違和感が拭えない。そう、それはまるで近くにあった筈の目的地が想像よりも遠かった様なそんな脱力感。

 

「おーい!杏ー!!」

 

「あっ!やっほー!」

 

言葉にならない、想いにもなり得ないそんな小さな違和感。

一瞬でも浮かんだ“それ”は誰に触れられる事もなく泡沫に消えて無くなっていく。

 

 

 

 

 

「はいオッケーでーす!」

 

「お疲れさまでしたー!」

 

昼までの仕事を終え、夕方。外に出れば日は半分地平線の向こうに消え真っ赤に染まった空と伸びる影を前に1人、願は眼鏡と帽子を掛けて駅に向かっていた。まだ人波が多い時間帯ではないがそれでもすれ違う人はいる。意外とキチンと見れば国民的アイドルである桐谷願である事が分かりそうだがすれ違うだけでは意外と分かりにくいモノなのだろう。事実、1人でいる時は大体眼鏡と帽子だけで誰にもバレた事は無いのだ。

 

「いらっしゃいませー」

 

「すみません個室で4名。後から来ます」

 

電車に揺られ数十分。願が着いた先は都会から離れた昔ながらの喫茶店。昔ながらと言っても中は綺麗にされており、入った途端から濃厚なコーヒーの匂いがするのも願の気に入っている点なのだ。そして何よりこの店には外から見えなくしている個室がある。おそらく遥が連れてくるとなるとアイドルだろうか?…どうであれ、国民的アイドルの双子が誰かと会っていると言うのは良いネタになりかねない。

 

「こちらです。ごゆっくりー」

 

「ありがとうございます」

 

名前だけ伝えて店員に案内され着いたのは引き戸式の個室。後は何処の店にもある様な机と椅子。とりあえずどれぐらい待つことになるか分からない為、願は先にブラックを頼み次に出演する台本読みを始めたのだった。

 

 

──────数十分後

 

 

「ごめーん。待った?」

 

「大丈夫……ってああ」

 

店員に案内されたのかようやく来た遥の後ろに居る見知った顔の2人と初めての子の合わせて4人。見知った顔との関係性に察したと同時に見知った顔1は願の顔を見た瞬間露骨に表情を歪めて、見知った顔2は願の顔を見た瞬間瞳を輝かせる。

 

「なんであんたがっ…ってそれもそうか」

 

「お久しぶりね!願くん!」

 

見知った顔その1…ピンク髪とピンク目をした少女或いはアイドルと言うべきだろうか。その子とは共演時間で言うのなら一番ずば抜けて長いだろう。それもその筈、バラエティーとして旅行とかがあれば大体相方がこの見知った顔だからだ。

 

見知った顔その2…水色の髪に青色の瞳をした少女或いはアイドル。その子とは共演回数で言うのなら一、二に多いだろう。それもその筈、どちらも顔が整っており年齢も近いという事がウケる要素でありツインとして売り出すのなら売れたと言う過去がある。

 

「や。元気そうで何より愛莉に雫……そして始めましてかな?」

 

見知った顔その1名前は“桃井愛莉”、見知った顔その2名前は“日野森雫”そのどちらも願とは交流があり互いに互いがよく知っている相手だ。そしてその後ろから明るい茶色の髪と灰色の瞳をした間違いなく初めて会った子が居た。

 

そう初めて、間違いなくそのヒトは初めて見た。

だと言うのにその姿は願の瞳の中に簡単に入り込んだ。

そんな事今まで無かった筈なのに。まるで、火花が散った様な自分が気がつくよりも先に頭にその姿が焼き付いた。焼き付けられた。

 

「はっはい!!花里…みのりでっす!!」

 

「花里みのり...ね?みのりでいい?」

 

感極まったみのりと微笑みながら握手する願。側から見ていれば推しに会ったオタクの様にしか見えないが、遥たちは気がついていた。間違いなくこの出会いにおいて明確に変わったのは…願の方であると

 

「願、あなたまさか……」

 

「……………ちっ」

 

「……まぁ!」

 

おそらく初めて見るであろう願の姿に遥は驚愕し、愛莉は忌々しげに顔を顰め小さく舌打ちをする。雫は気がついているのかいないのか願とみのりが仲良くなっているのを純粋に喜んでいる様だ。

 

「はっ…はひっ!!」

 

「あはは、いいね…好きに頼みなよ。奢ってあげるから」

 

メニューを回しニコニコと笑う願。一体、願はみのりの何処を気に入ったのだろうか?それはおそらく願にしか分からないだろう。…だが今ひとつ分かる事があるとするのなら願は一目見ただけのみのりをものの数十秒で気に入ったと言う事だ。

 

勿論、そんな願の様子に流石の遥も驚愕を超えて絶句する。確かに遥にしてもみのりはアイドルについて、そして自分についてもう一度なりたかったモノを思い出させてくれた大事な子だが、まさか願がそれ以上に気にいるとは思っていなかったと考える。……いつもの願なら間違いなく名前を聞いて終わりにしていただろうに。

 

「……わ、わぁ……」

 

「値段については気にしなくて良いよ…そっちもね」

 

「はぁ……ま。ありがたくいただくわ」

 

「じゃあ私はこれにしようかしら!」

 

明らかに上機嫌が丸見えな願に、想像していた値段よりも高かったみのり。後で話を絶対に聞かせて貰おうと心の中で誓った愛莉にこれにしよ〜と決めていた雫が混じり合い、話が始まる。

 

「……それで、一体何の集まりで?」

 

遥たちのオーダーを聞き扉が閉じられた瞬間。真っ先に口を開いたのは願だった。超国民的アイドルにバラドル寄りのアイドル、そしてモデル兼アイドルに“いまは”一般人の超カオスな集まり。めちゃくちゃ関係性が気になるメンバーが揃っていた。

 

「えーっとね。……私たちでアイドルグループを作る事にしたの」

 

「へー。良いんじゃない?」

 

そんな願の問いに逡巡した後に、一世一代の告白とばかりに遥が言う。元のアイドルグループから脱退して、私たち4人で新しいアイドルグループとして活動すると言う事。そんな遥の言葉に願はコーヒーを一口飲んだ後、想像していたよりも相当軽く受け入れた。

 

「ちなみにもうユニット名とか決まっている感じ?」

 

「それは…ね」

 

「はい!MOREMOREJUMP!で、す!!」

 

ユニット名は非常に大事だ。多くの人に分かりやすく、それでいてそのグループらしい名前である方が良い。願は基本的にソロが多い(と言うか下手にグループに入れてしまえば他のメンバーが霞むという事務所の判断である)中でそう言うグループというのは気になっているのもあるのか。遥が譲ったみのりが声を上げる。

 

MOREMOREJUMP!。それはみのりの口癖である“もっと、もっと”という自己研鑽の言葉に一度は折れてしまったこの道をこの4人で手を伸ばすという意味を込めた言葉。そんな名前を誇らしそうにする4人を見て願は眩しそうに小さく目を細める。

 

「なるほどね。応援と根回しぐらいはするよ」

 

「「「………………」」」

 

「あ、ありがとうございます!……ってあれ?」

 

フリーのグループとして活動するにも、みのり以外は元々所属していた事務所がある筈だ。愛莉や雫の事務所は何も言えないかもしれないが万が一という事もあるしこういう世界に生き続ける大人というのは総じて狡猾である事を“大人であった記憶を持つ”願は十分よく知っている。

 

そんなヤケに協力的な願の姿に、いつもの願を知っている遥たち3人は何か言いたげに沈黙しただ1人みのりだけが嬉しそうに頭を下げて何か言いたげな残りのメンバーに首を傾げていた。

 

「……どうかした?」

 

「ううん。願、変わったね」

 

「そう?」

 

そんな不思議な空気に流石の願も違和感を感じたのか聞く。それでようやく復帰したのだろう。3人の意見の総括として遥が願に言う。果たしてその意味は良い悪いどちらなのかは聞くよりも先に忘却したのだった。

 

その後、終始和やかに進んだ(内心はさておき)話し合いはモアジャン結成の理由にまで及びみのりの活躍を願は全く口を挟む事なく聞き続けたり、逆に願と愛莉や雫との共演の記憶を語ったりと至って友好的に進んで行った。

 

「……ああ。生憎とそろそろ仕事に戻らないと」

 

「……夜はどうするの?」

 

「多分食べて帰るかな」

 

みんなは好きな様にして欲しいと、願は伝票を持って立ち上がる。相当に稼いでいる願だ。この店で出すくらいは造作でも無いと去って行こうとしたその時だった。

 

みのりの肩に顔を近づけてこう呟いたのは

 

「どうかここまでおいで“花里みのり”」

 

「………ふぇ?」

 

おそらく今まで誰も見た事も聞いた事もない願の本心からの激励。むしろ“花里みのり”という個人に向けてまでの応援に願自身が立つ“国民的アイドル”の座まで来いと言う対等な眼差し。……間違いなく願というアイドルは“花里みのり”と言う未だアイドル未満の蕾に惚れ込んだ。つまりはみのりの推しになったと言うのだ。

 

「これID。気が向いたら登録してね」

 

サラリと書き上げた半紙には願の通話アプリのID。そんな願の今までに見た事も無い行動に唖然・愕然として硬直する三人と目を輝かせるみのりに片手を振り立ち去っていく。

 

 


 

 

「………行った?」

 

「え、ええ…行った、わね」

 

最後の最後に嵐をぶち撒けて行った願の衝撃からようやく戻ってきた愛莉と雫は言葉少なげに呟く。遥はまだこの衝撃から戻ってこれない様で沈黙を続ける。まあ無理もないかと愛莉は今さっき起きた間違いなく歴史が動いたレベルの事を呑気に嬉しそうに紙を胸に抱えて小躍りでもしそうな喜びを全身から発しているみのりを見てため息を吐いた。

 

「みのり。ちょっとアンタ、その紙見せてちょうだい」

 

「えっ。流石の愛莉ちゃんでも……」

 

「流石に何度も共演してるんだから願のIDくらい知ってるわよ」

 

とは言っても愛莉が願とIDを交換できたのは共演4、5回目ぐらいだったが。そう言う事は言わず、みのりから差し出された紙と自分のスマホと睨めっこして“これ”が間違いなく願のプライベート用のIDである事が事実となった。

 

空を仰いで呆然とする愛莉に“それ”が間違いなく願のモノである事に気がついたらしい雫も流石に表情を驚きに歪める。何度も共演すれば縁が出来て話す様になる。逆に裏を返せばこの業界であろうとも出会いは一期一会。だがそれでもこのみのりと言う少女はたった数十分にも満たない時間で、しかも初めてなのに願の関心と興味と好感を引いたのだ。

 

「め、珍しいね……願があそこまで積極的になるなんて」

 

「珍しいどころじゃ無いわ……」

 

「ええ全く。間違いなく初めてでしょ」

 

どうにか現状を飲み込んだ遥が絞り出した言葉に、雫と愛莉はバッサリ否定する。自分の双子だと言うのにここまで漕ぎ下される姿だがそれが事実であるためか遥も否定できず苦笑いするほかない。……だって事実なのだ。願が積極性どころか“誰か一個人”に入れ込む姿は見た事がない。

 

「ま。でも良かったんじゃない?」

 

「何が?」

 

「私たちが選んだ子は、あの“1番星”様にも認められる逸材って事がさ」

 

「えへへ……願さま……えへ、えへへ……」

 

とまあ個人的な感傷を抜いたら国民的アイドルそれも誰よりも鮮烈に舞台の上に立つ1番星のお墨付きがみのりに与えられたのだ。それはつまり私たちが選んだみのりがそこまで行けるかもしれない逸材であると言う事。悔しいがそんなの願は誰にも、私たちにも言った事が無かったのだから、

 

そんな当の本人は、未だに願から貰ったIDの紙を抱えてトリップしているがまあ無理もないだろう。願の気質的に自分のプライベートは明かさないし、逆に極限まで秘められた秘密がミステリアスに見えて多くの人を惹きつける。まあそういう風に売り出していると言われれば元も子もないが……

 

「そう、かもね……」

 

「何?妬いてるの?」

 

「あら…!」

 

「そんなんじゃない。雫も目を輝かせないで」

 

それに逆に今1番妬いているのは愛梨の方だろうと言いたいのを飲み込み、遥はツッコミを回す。今からまだ帰ってこないみのりまで手を焼く遥は人知れず楽しそうに、誇らしそうにため息を吐いた。

 

 

 


 

 

 

「今日は良かったわね〜」

 

「ええ。まさか願君があそこまでみのりちゃんに惚れ込むとは思わなかったわ」

 

その後、解散した4人は各自帰路へと向かって行った。4人が3人になり3人が2人になり最後まで残ったのは愛莉と雫の2人だった。そこでもやはり話す事と言えば今日のことだろうと愛莉が先に口を開く。勿論、雫もそれに同意するしかない。想定外の願の反応にわざわざここで愛莉がその話を蒸し返したと言うことを雫はお姉ちゃんだからよく分かっていた。

 

「愛莉ちゃん……悔しい?」

 

「………………そう、ね」

 

今となっては何についてだとか、誰に対してかは無粋だろう。ただ“そう”思う理由も意味も雫は解っている…だって同じだからだ。届かない星を見た、その星に向かって走り出した事のある私たちだから。

 

あの人桐谷願は輝ける“1番星”だ。

正しく完璧で無敵で究極なのだ。輝く空の星だから、誰にも撃ち落とせない私たち全ての“理想にして至高”。虚構アイドルの神様なのだ。

 

「あの人に、“それ”は無いと思っていたのよ」

 

「………ええ」

 

神様が誰か1人を特別にすることはない。神様桐谷願に対等なのは同じ世界で輝くモノ桐谷遥だけ。それなら、まだ納得できた。極論、ヒトと蟻が対等ではないのと同じだから。

 

「どうして、どうして」

 

「……………」

 

願の輝きは決してステージの上だけではない。愛莉にとって多くのバラエティーで共演し、旅行までしてきた願の素顔らしいモノを知った上で断言する。桐谷願というアイドルはその全てが輝く星であり、完璧で無敵で究極で絶対なアイドルなのだ。

 

「“それ”は私じゃ無かったの?…無いと思っていたから探していたのに─────!」

 

「…………………」

 

唯一無二で、絶対で誰にも穢せない星だから。

そうだった筈なのに。そうで“あるべき”星だったのに。

だって“それ”は誰でもない愛莉が1番よく知っている。

 

「別に、みのりに何か思っているわけじゃないわ……そこを履き違えると私は“獣”になってしまう」

 

「…………否定は、しないわ」

 

私たちの神様は、誰にも穢せない星は“あの瞬間”ヒトに撃ち落とされた。

誰にも固執しない、真の意味で誰も願の“特別”にはなれはしないのに高々アイドル未満の何処にでもいる様な平凡な少女が“特別”だなんて認めない。

 

「……無様、ね」

 

「……………………」

 

だって“この事実”を認めてしまえば私たちの数年間が、私たちの挑戦より数十分だけの会話の方が願の心に響いたと言う事になってしまうのだから。巫山戯るな、と言ってやりたい理由も分かる。

 

だって経緯は違えど雫も同じ考えだから。

 

「………私は“憧れ”なのよね」

 

「知っているわ………」

 

雫が呟いたその言葉。それには多くの感情があった。

それもそうだろう。雫は“容姿が良い”という理由でグループのセンターをしていた様なモノだと雫自身が思っている。自分より踊りが上手い子も、歌が上手い子も居た。だと言うのに自分が最も容姿端麗で“ミステリアス”に見えるから、その虚構は願と並び立った。

 

だから雫はずっと憧れていた。自分を“誇っている”願を。

決して日野森雫には出せない本当のミステリアスとカリスマを。

自分もこうなれたら良いなという羨望だった。

 

「ただ、一度でも良いから。願の瞳に映りたかった」

 

「まだ、これからが有るわよ」

 

結局言いたいことはそれ。負けたわけじゃない。勝手にライバル意識を持って、それはあくまで独りよがりの一人相撲だと知った上での行動だ。……それでも何も思わないほど愛莉も雫も心がないわけじゃ無かった。

 

 

 


 

 

 

私は知っている。桐谷遥は解っている。

だって同じ胎から生まれた、たった一人だけの“自分”だから。

血を分けた所ではない。私たちは最初ひとつだったのだ。それがふたつに別れてしまったとしても大本は、根元は繋がっているのだから分からない訳がない。

 

「まさか、願がみのりに惚れ込むなんてね」

 

まあでも十分あり得る話だと遥は微笑む。他ならぬ遥自身がみのりの輝きに魅了されたのだから十分、願もその輝きに惚れ込まない理由がない。分かっているからこそ今日のうちに愛莉と雫に会わせたんだ。

 

「雫はあくまでアイドルに向ける視線だから良いけれど」

 

天下のアイドル兼モデルが同業者をそんな目で見るのは向上心的にどうかと思うがそれはそれ。願に引っ付く雛鳥は親を“そういう目”では見ないと知っているからこそ認められる。……だけど愛莉は少しマズい。

 

「愛莉は間違いなく願を“そういう目”で見ていた…或いは今も、かな?」

 

桐谷遥は知っている。私は解っている。

愛莉が1番拗らせている事を。おそらく私を除けば願と最も一緒にいたであろうは愛莉だろう。相当な強さで目を眩ませていてもおかしくはないし事実、願を襲おうとした事ぐらいはありそうだ。

 

「でも、願は止めるだけで何もしなかった。」

 

ベットに押し倒した所で気がつきそうだ。願はその時点で誘っている目でも嫌がっている目でもなく“ただその事実をありのままに見ている”だけなのだろうし。

それはまるで盤面をそのまま俯瞰した様な眼差しで見ているだろう。だって事実、“願にとって他人事”だから。

 

おかしいだろう。理解できないだろう。

自分の身の危機になっても桐谷願という存在はあくまで他人事。まるで第三者視点のままで終わってしまう。間違いなく壊れていると言ってもおかしくはない。

 

「…………………」

 

アイドルという仕事を今も続けているのはそれが丁度良い“殻”になっているからだろう。自分の虚無を埋めるだけの上っ面のウソ。ウソの中にウソがある方がウソの中に何もないよりずっとマシだ。…とまあそれだけだ。そこに矜持だとか誇りとか無い。

 

みのりに目移りするのは許そう。それは私も変わらないから。

でも願の孔を埋められるのは命を分けた私だけだ。私だけが願を理解してあげられる。……だから

 

「だからずっと私のそばに居てね。願」

 

 

 






桐谷 願

君は完璧で無敵で究極で絶対なアイドル。誰よりも輝く1番星。
間違いなくAPP18オーバーあるしカリスマスキルも持っている。
この世界の願はぶっちゃけ周りが勝手に拗らせ、狂っていってる感じ。
言うほど願に孔がある訳でもないし、誰も見てないって訳ではないけどアイドルをやってるのに“理由”が無いのは間違いでは無い。“桐谷願”というアイドルを育成しているゲームをしている感じ。俯瞰性のバケモン。その上で自分に酔える演技ができるから普通にバケモン。

1番星と呼ばれる所以も、神様である理由も分かりやすい神秘性だが、何故か最近はそうありながら人間臭さが産まれてきた。…差し詰めそれは人にバグった人外みたいな感じでもある。

─────その日、彼は運命に出会う。



桃井 愛莉

ずっと願の輝きを浴び続けたせいで目が灼かれ切った可哀想な子。
文中でもよく分かるがおそらく1番拗らせている。自分を見てくれる願は解釈違いだがそれはそれとして他の“誰か”1人を見る願も気に食わないとか言う面倒くさ過ぎる子。でもその“誰か”をどうであれ嫌えないのは愛莉の人間としての強さが垣間見える。

バラエティーを共演していたお陰でそこまでこの仕事を嫌えなかったがそれでも自分が目指したアイドルがやりたいって言うのは変わらなかった。ちなみに文中に語られた愛莉の暴挙は実際あった事なのかどうかは両者とも口を閉ざしているから分からない。



日野森 雫

超美形ツインアイドルの片割れだった子。互いにミステリアスな雰囲気と年齢も近い事が相まって、共演する回数が多いのも事実。願に向ける視線はあくまで憧れだが、それが今後変化するかは当人が知るばかり。

自分の美が正当な評価を遮っているのでは無いかと言う問いは願という圧倒的な存在の前に無力になった。まあ陰口とかは願との共演の嫉みもあったからかその辺りは変わらず、みのりと出会った。




花里 みのり

一般人だった将来のアイドル。知らぬは当人ばかり。
この世界のみのりは桐谷双子のファンであり推し。
これからの道は祝福された苦難の道になることが確定している。ただしそれでもみのりならきっと乗り越えてくれるだろう。

ただの人であるからこそ絶対的な輝きの目を奪ってしまった子。
まるで某型月の主人公みたいだなぁ……(直喩)



桐谷 遥

最後の最後に分かってしまったクソやば双子の片割れ。
願がどこかしら壊れている事を知りながら、それを放置しておけば最後に願に残るのは自分だけだからOK!って本気で思ってるヤバさ。広義的な意味でのヤンデレ。

まあ1番高濃度で願の輝きを浴び続けたからこうなったとも言える。
片割れが運命を感じた様に遥もみのりに運命を感じた。みのりなら間に挟まっても良いと考えている。ここでのアイドル休止はおそらく運命に出会ったからだろう。最も近くにいれば動きやすいしね!


今回絆ランクを書かなかった理由……?
互いに重たい感情を抱きすぎだからだよ!!どうしてこうなった……(頭抱え)

次回はおそらくifや幕間ではなく、短編みたな感じの奴書きます。
勿論めちゃくちゃギャグ。
感想、評価お待ちしてます。

次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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