「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後… 作:ネマ
実はif√のまふゆ双子で書きたかったものはふたつありまして…
最初はどちらかにしようかって考えてたんです。もしくは両方の要素を取り入れた感じにするか。けどね、私の中の悪魔がこう囁いたんです
両方とも書いたらええやん……ってね。
というわけで今回と次回はまふゆの√について書いていきます。
対戦よろしくお願いします(?)
いつも通り設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定注意です
それでは、どうぞ
薄暗い雲が掛かっていた。
空の輝きを閉ざす様にその場所は、いやそのセカイは晴れた空の青さを知らぬ世界だった。だが完全に光を失ったわけではなく何処からともなく微かな光が差し込む静寂さの裏腹にどこまでも恐ろしい虚無を含んでいるセカイ。
それが今、朝比奈 願がいる場所。
このセカイの導き手たるミクが言うには“誰も、何もいないセカイ”。燃え尽きた後の様な灰色の大地に突き刺さった廃材と鉄骨を彩る様に氷の花と蔓茨が全てを覆い隠す終の大地。
「……………」
「げん……」
そんなセカイの片隅で、その少年が瞳を閉じて横たわっていた。
紫色の緩くカーブした短い髪にわざとらしいまでに前開きなな寝巻きの微かな隙間からは
だがそんな不自然なまでの跡は、まるでマーキングの様に執拗に付けられているくせに肩より上の首筋には付けられていない。明らかに理性と知性を持って彼にまるで刻みつける様につけたのだろう。
そんな願に1人の少女の影が近づく。
まるで汚れなき雪のような真白な銀の髪色に赤と緑のオッドアイの少女。髪型はツインテールだが、その装いはやけに不自然なサスペンダーに素足という些か歪な彼女をかの歌姫、初音ミクだとは一眼見て分からないだろう。
「……ん……いま、きれいにするね?」
どこかの世界ではニーゴミクと称されたミクのあどけない顔に朱の色が浮かぶ。
だがその足取りは迷う事なく願に近づきそのまま優しく倒れ込む。完全に願とミクの距離が限りなくゼロに近くなったところで、ミクの細くか弱い両腕が願の服の内側を弄り上げる。
そのミクの瞳はトロン…とどこか酔っているかのような童顔に似合わぬ華開く蕾のようないじらしさと色を含んだ表情に変わりながら、その口からは真っ赤な舌がチロチロとまるで何かを貪ろうと蠢く。
「…すきだよ。大好きだよ。げん、ずぅっと一緒、ずーっと一緒」
その瞬間だった。ガバリと願の上着を持ち上げたと思ったらミクの口が願につけられた鬱血痕や傷跡に近づく。まるでその痕を癒そうと言わんばかりに舌を走らせて願の身体を貪るその姿はまるでマーキングしかえしている発情した雌犬の様にも見える。
だがこの場にいるのはどこか無反応の願とミクだけである。
つまりどれほど上擦った愛の言葉を必死に紡ぐミクの声も正しく届かないことをミク自身も知っているはずなのにそれが抑えられないとばかりに愛してる、ずぅっと一緒だと呟きながらその全身の痕を上書きする。
「大丈夫。大丈夫…願はここにいるよ」
まるで温もりを共有するかの様に、互いの両手を指の間まで通してまるで繋がるかの様にミクは優しく口にする。温もりさえも、言葉さえも凍ってしまう様なセカイならせめてそれを温めれる人がいるのならと
…どうにか願の服を直してあげたくてもミクは針を持っていない。糸は自分の着てる服でいいのにとミクは歯痒い思いを実感しながらまるで打ち捨てられた人形の様に反応がないままの願の頭を自分の膝に載せる。
「♪〜〜〜♪〜〜」
ミクの歌声が響く。
優しくスローテンポなミクのその歌はセイレーンの如き魔声で、眠りへと導く眠らせ姫の如き真っ白な無垢の歌声。このセカイの想いの歌ではないが、間違いなくその歌はミクが願へと送る贈り物。
決して外の世界では心を休めることのできない願にミクが用意した膝の上だけの揺籃。…せめてこのセカイの中にいる時だけは、全てを忘れて夢に委ねてほしい。その夢が例え、己の◼️だとしても。
『私では願を助けられない、助けられないの!』
『………GUMI』
あの日の記憶を、再生する。あの日の追憶を、再起する。
このセカイには初めての雨…だけど降り注ぐその悲しみは諦めと、絶望の夜来の雨。このセカイを構成した想いさえも朽ちていく全てを、文字通り全てを飲み込み枯らしていこうとする雨。
このセカイを彩る彼岸花が雨に溶けてまるで赤い血の海が広がったセカイの上で、私の目の前でGUMIが膝をつく。頭のゴーグルにはヒビが入り、その瞳の色は燻んでいた。
『お願い、ミク。私の半身、願を止めてっ……!』
GUMIは願の想いから生み出されて、このセカイへとやってきたもう1人のわたしだ。2人の間には確かな“何か”があった様に見えたし、2人とも口に出さずとも通じ合っていたのだろう。彼岸花の花園の奥で今の様に眠る願を守る様にGUMIが静かに膝枕で見守っていたことを覚えている……もう、そんなものどこにもないけど
だからこそ、GUMIは気がついたのだろう。私を構成する想いの先にある結末が救われる未来でない事を知ってしまった。察してしまった。GUMIがいることで願の結末が、未来が定まってしまうのだ。
その絶望は、自身の根底にある“想いを導くもの”としての存在理由を疑い否定しまうには十分な衝撃で。だからGUMIはあの日、わたしに全てを託した。
『……わかった。かならず、願を救うよ』
『ああ………よかった』
バーチャルシンガーのおしまいはセカイの終わりと同一だ。その最期がどうなるかなんて誰も知らないはずだった、けどわたしは見たのだ。私の目の前で確かに微笑んで消えていったGUMIのことを…それはまるで◼️◼️のようで。
それからだった、ミクの左目が緑色になったのは。
セカイを呑み込もうとした嵐は消えて、そこには今の全てを覆い隠すかの様な氷の花と蔓茨が巻きつく今のセカイができた。できてしまった。
誰もいないセカイが誰も、何もいないセカイへとなった。
「……大丈夫。必ず、あの子たちが現れるから」
ミクの呟きに反響する様に氷の花が揺れて、このセカイに軽やかな音が響く。
もしも今回でもうダメだったのなら。ミクは─────そう、覚悟を決めて
◆
「…ん」
目を覚ます。ベッドの横で充電していたスマホを片手に朝比奈願は眠い目を擦る。指だけを動かして丁度アラームが鳴る1分前に解除した時にはもう願の意識は覚醒して目を覚ましている。
願がルーティンの様に服を捲れば、そこには様々な痕が残っている。おそらくこの傷を付けた自身の姉は加減が出来ているだろうから出血まではしていないと思うがと手のひらを体に沿わせて見る。
「まふゆ、まふゆ。起きて、朝だよ」
「……………」
生憎と今の願には痛みも寒温もどこか遠い存在だ。こうして確認しないととセルフチェックをしているとやはりそこにいたのかと足元に何か別のものがある様な反射を感じて、願は布団を捲る。
願よりも長い肩までかかっている紫色の髪を、布団の白いシーツに投げ出したその少女は…願の姉である【朝比奈まふゆ】はそこにいた。いつも通りセカイへと誘拐された後こうして同じ部屋に戻ってきたのだろう。
2人の寝室が離されて久しいが、今までまふゆが願の寝床に来なかったことは一度もない。昔は深夜にドアを開けて潜り込んできたのが今やセカイを悪用して引き摺り込んだ後、
「起きてることわかってる。早く起きて」
「…………おはよう、願」
ただまあまふゆほどではないが、願もなんとなくだがまふゆの考えていることが分かるぐらいには双子の神秘というものがある。おそらく、まふゆはもうすでに起きていて起こされるのを待っているのだろうという事ぐらいは。
「早く戻って。母上が来るよ」
「や。……着替えは、あるよ」
そんな事はどうでも良くて。問題はあと少しで毎朝起こしにくる親が来るということだけだ。そして今のこの現状が見つかる事をあまり良い顔をしないことも知っている。…思春期が始まっても距離が近すぎた自分たちの事を危うんでいるのだろう
だけどそんな願の言葉をまふゆはいつも通り嫌だと願の部屋の壁にあるハンガーラックにいつの間にか掛けられていた宮女の制服を指出し、まふゆはようやくベッドの中から立ち上がる。
「……そろそろ、気にした方がいいと思う」
隠れていたシーツの中から顕になるその姿に願は瞳を細める。
全く昔から変わらないその姿は………
「なんで?」
一眼見てまず目に入るのは緩やかにお椀状を描くハリと潤いがある母性の象徴だろうか。その一番前に突き出す桜色の蕾は、まふゆが一切の布で隠していない証拠になり得る。そこから目を逸らす様にまふゆのくびれのある肌色のその下の毛も生えていない鼠蹊部のその奥まで、隠すところはないと願の前に立つ。
つまりまふゆは今、全裸なのである。
ある時から気がついたら願のベッドに全て脱ぎ捨てた上で入り込むまふゆの姿に願は何度も何度も忠告しているのにテコでも動かない様子を見せる。半分願も諦めているのは内緒だ
「まあ、良いけどさ。他ではしない様にね」
「……………するわけないじゃん」
先に降りてるよと願は着替え終わった制服姿で後ろを振り向くこともなく部屋を出る扉を開く。いくら見慣れている裸だとは言え、何も思わないわけではない。もう少し淑女らしい格好をすればいいのに…と願は思いつつ階段を降りていった。
「おはよう、願。まふゆはまだおやすみかしら?」
「おはよう。多分準備中だよ」
今更の話だが朝比奈家の家族構成は父と母とあと双子の姉弟の4人だ。……あれ?姉弟だっけ兄妹だっけ。まあどうでもいいか、とすでに空いている一席を見る。今日もまたどうやら父は仕事で既に家にいない様だ。
いつも通りの変わらない朝、今世の母が準備してくれた朝食を先に食べ始める。今日の朝は焼き鮭とご飯と味噌汁、それはご機嫌な和の朝食だ。そうして食べ始めているとようやくまふゆが降りてくる。
「おはよう。お母さん」
「あら、おはよう。まふゆ」
…昼の間、太陽が射す時間の間だけは俺たちは距離があるフリをする。
どうやら異性間のきょうだいの距離はこれぐらいが『普通』ならしく『いい子』である俺たちはそうしないといけないらしいと教わった。
「…………」
「…………」
いつも通りの笑顔を浮かべておきながら、まふゆの震える片手は机の下で願の手を決して離さないとばかりに固く指を絡めあって繋がっている。……無理もないのだろう、と願は何も言わぬまま、まふゆが食べ終わるまでの時間を待つ。
「ごちそうさまでした!…今日も美味しかったよ、お母さん」
「ごち。今日はバイトだから晩飯いらない」
「こら、願。キチンと挨拶しなさい」
はいはい。と母からの小言を軽く受け流してカバンを手に取り家を出る。
おそらくその後ろでいつも通り“軽い反抗期の弟を心配する姉”という役で追いかける程でまふゆも抜け出してくるのだろう。……全く、実の母娘だというのにすごくぎこちなく見えるのは俺だけなんだろうか。
或いは本当にぎこちないのは……とそう考えていた時だった。
後ろからまふゆが追いついてきたのは
「………願」
2人はいつも通り寄り添う様にして街影に隠れていく。
空からの日がさしたこの時間、夜の街だったこの場所は信じられないぐらいの静寂と退廃に満ちた場所になる。繁華街だというのに行き交う人は疎で、それでいて街影のベンチで座る2人なんて関係ないかの様に社会は回る。
「…なに?」
まふゆも、願もここから一歩出てしまえばまた『いい子』の自分になる。
文武両道でクラスメイトに分け隔てなく、そして先生にも従順な誰がどう見ても優等生の『いい子』たちに。
不満は…もう、わからない。
大切な『何か』を隠した私たちの間がいつしか鎖にがんじがらめになって重石になってしまったものでも、それだけを抱えてどこまでも2人でいれるのならまふゆは悪い気はしなかった。
「疲れた、ね」
隙間を埋める様に繋いだ手元にも光の指さないこの場所は私たちの関係によく似ている。と、ふとまふゆは思った。本来ならば、『普通』なら許されないはずの片割れへの恋慕と情愛。けどもうまふゆの持ち合わせているもので願を繋ぎ止める鎖になるものはそれしか無かった。
「少し、目を閉じる?」
「……ううん」
いつからだろうか、願とまふゆの歯車がズレていたのは
いつからだろうか、2人の間に埋まらない何かがある事に気がついたのは
いつからだろうか、願が消えたいとずっと思ってるのに気がついたのは
いつからだろうか、願が──────
「手を離さないでね」
きっとそう遠くないうちに、願はまふゆを棄ててしまうのだろう。
何故かその予感と共にその未来がハッキリと分かってきた。どれほど手段を尽くしても、言葉を語り続けても願は1人孤独に、突き進みそして…朽ち果ててしまう。
(……それが、)
そんな事、許さない。私の、私だけの、私だけのたった1人の片割れ。
生まれ落ちてしまったその日から分たれてしまった私その最後に待つものが終わりだけだなんてそんな事決して認めるものか
(願の本当の救済、なの?)
だから朝比奈まふゆは救われてはならないのだ
願を1人で置いていってしまうぐらいなら、願を1人にしてしまうのなら。
(……私は悪魔にだって、魂を売るよ)
「ねぇ、願。」
そのまふゆの瞳にはずっと前から光がない。良く言って威圧感がある…悪く言えば廃人の様な姿に願はなんとも言えぬまま言葉を促し続ける。きっと自分が気がついていないだけで似た様な顔色をしているのは一緒だから。
だから願は見逃した。まふゆの覚悟を、その漆黒の灯火を
「………そろそろ、消えちゃおっか」
「………そ、れは」
それはいつかの約束。
全てを、世界を見切った子どもたちは己の中にある小さな輝きだけを手に星を目指す。その先にあるものが奈落の星だとしてもいつかたどり着く“はず”のその約束の場所だけが2人を今支えていた。
「うん。どこか遠い場所でさミクと3人で、どこまでも」
「…………」
だがそれが死出の旅だということを二人は察していた。
子どもだけで生きていけるほど今の世の中は甘くない。だがあと一年、その一年とちょっとを待てるほどの心がもうまふゆには残っていないことを願は分かっていた。
別に願自身はその結末に不満はない。だけどまふゆまでこの道に来てしまうこと、それだけが唯一願に残った“前”の善性が否定する。……何か、まふゆを止める何かがないか。鏡である己は拠り所には成れても救済者にはなれない。
ふと、脳裏に差し込む光がよぎった
「……そういえば、あの音楽サークルはいいの?」
「ニー、ゴのこと?」
まふゆが少し前から始めていた音楽サークル。横から口を出したことは無いが、まふゆのHN…“雪”の名前を使って作詞をしたり編曲のお手伝いをした事がある。曲の良し悪しはあまり願はわからないが少なからず、まふゆは救われていた気がしたから。
まふゆの心に響く曲を書ける人なら、もしかしたら。
そういう意図が願に無いとは否定できない。今のまふゆの心の柱は我ながら自分だと気がついている。
「Kの曲。俺も嫌いじゃないよ」
「…………そっか」
それに個人的には雪の歌が気に入っている。
あの誰かを救いたいと寄り添うような曲のあり方はどこか無性に笑い出したいような泣き出したいような、夜の身体を通り抜ける冷たい風によく似ていた。
願では気が付かないだろう。そう“雪”の曲について語る時どこか懐かしそうな、どこか遠いところを視ているようなそんな姿に口を少し歪めて、瞳の奥で薄暗い炎を焚べているまふゆの顔に
「なら、消えないとね」
「…まふゆ?」
だからこそ願にとっては想定外だった。
まふゆは今でも少なからずニーゴの事を思っていたはずだろうから、まふゆを引き止めるひとつの理由になり得るかもしれないと信じていた。…だがその結果は、まさかまふゆの背中を押してしまうなんてと願は己の失策を悟る。
「“雪”じゃ救えなかったし救われなかった。もう私は見つけられない見つけられないよ。願、私の半身。あなただけしか私はもう分からないよ……」
「合わせ鏡じゃ、まふゆは見つけられないよ」
まふゆよりも少し高い願の肩を両手で掴んで、まふゆがただひたすらに呟く。
“朝比奈まふゆ”も“雪”も“OWN”もどこにいても何をしてもまふゆは【願の隣】以外の居場所を見つける事が出来なかった。
「なんで?私は、わたしはここにいるのに?」
「……………」
どこからともなく願の嗅覚を刺激する甘く饐えた惑わすかのような臭い。
この臭いを願はよく知っていた。……それは望みを絶たれる時の、誰かが◼️に魅入られた時の、その臭いだと魂に染みて実感しているから。
まふゆの顔を見る。一目見てわかるほど、ひどい顔をしている。
濁りきったその目は、諦めきったその顔はまるでいつかの鏡を見ているようで
「置いていかないで……っ……置いていかないでよ、お兄ちゃん」
「っ……」
いつしか役割が変わる前の呼び方で、まふゆが願に懇願する。
別に他がどうなろうと知ったことではないし、興味もないまふゆにとって唯一恐るべき事があるとするのなら半身である願に置いていかれることだけだ。
いつだってまふゆは“どこか”に向かって歩き続ける願の手に縋り付き、いかないでと幼子のようにその腕にしがみ付いてどこまでも一緒に行くはずだった。…その意味も、その結末も知った上でまふゆは願を縛る鎖になりたかった。
「………分かった。一緒に、いこう」
「!願……」
いつからか。まふゆを芯の部分で拒絶したのは願自身だ。
“前”を切り捨てたあの日から、“前”が無かった全てをその目で見たその時から願は自分自身を【異物】以外の何物にも見えなくなってしまった。崇高なはずの血の繋がりも、この身を取り巻く縁も、自分の血肉も……そして何よりも守るべきと誓った半身でさえも願の世界では凍りついた。
「一緒に、地獄に堕ちようか」
「……っうん!うんっ!約束、やくそくだよ!願!」
願の世界に温もりは無かった。
ああ、けどこんな温もりなら知りたく無かった。泣いている顔で、心底安心したように抱きつくまふゆの温もりは久々に感じてそしてどこかとても痛くて泣いてしまいそうだった。
……美しい光景だった
結びつく2人の小指と小指が、互いの口筋に掛かる唾液の柱が約束になる。死んだ廃魚や孵化する前に朽ち果てた蝶の蛹を美しいと思うだろうか?だがきっとそこにはえも言えぬ退廃に惹かれるのにも似た美しさがここにはあった
だからこそ、その激突はある意味必然だったのだろう
◆
セカイに現れる不粋な3人組。まふゆにとってこの誰も、何もいないセカイは決して誰にも荒らされる事のなき楽園だった。まふゆと願とそして想いから生まれたミクの3人だけのセカイは唯一まふゆの信頼できる“場所”に部外者の声が響く。
今のまふゆの心を表すのなら不快、嫌悪…そして憎悪だろうか。その声にも聞き覚えがあるのが更にまふゆの心を不愉快に掻き立てる。
「ミク、なにしてるの」
「!まふ、ゆ」
この場にはミク以外にセカイに喚べる存在はいない。
バツの悪そうなミクの顔はさておいて、何故ミクはこの人たちを喚んだのだろうか。
「その声…雪!?」
「え?雪…?その声、言われてみれば…」
「でも本当に雪なの?ナイトコードでしゃべってる時と雰囲気違うくない?」
その声色をまふゆは雪として知っていた。
K、えななん、Amiaその声は確かにニーゴで聞いた事のある声で。もうこれから聞くことは無いだろうなと思っていた声に段々と苛立ちが募っていく。
「ミク、なんでここに呼んだの?」
「それは……」
もう“雪”はいない。あの哀れで可哀想な仮面の私は必要ない
従ってもう、この人たちも必要ない。願から
「……うるさい」
「え」
「このセカイから消えて。あなたたちは要らない」
そうして癇癪混じりの拒絶がまふゆから放たれた。
そもそもまふゆ自身このセカイに願以外の存在を入れる事を考えられなかった。ここはたった3人だけの楽園そのつもりだったし、これからもそれは変わらないはずだった。
「……何それ?どういう意味?」
「……今、言ったでしょ。私は1人でいたい、邪魔…しないで」
「………ひと、り?」
まふゆのあまりにもな言い方に絵名が顔を顰める。だが負けじとまふゆも顔を顰めて、3人を見下ろす。
どうやらまふゆと絵名の相性は最悪なのだとこの場に居なくてもよくわかるだろう。何故そこまで互いに喧嘩腰になるのかとAmiaが仲裁するかの様にわざとらしく声を上げた。
「えーっと、もう僕たちと曲を作る気もない…ってことかな?」
「そう、雪はもう居ない。何度もそう言ってるよね?」
再度のAmiaの確認。それにさえもまふゆは肯定する。
早めに話を切り捨てたい。そんな姿勢さえも見える拒絶に瑞希も眉をかすかに顰める。珍しく雪がナイトコードに浮上してない日が続いていると思ったらまさかこんな事になっているなんて、と。
「そんな事急に言われても、奏?」
「……雪」
「なに?」
そんな押し問答に、1人の少女がまふゆの前に立つ。
ニーゴのリーダー、K。その名前も奏が何か決心した様にまふゆに口を開く。
「じゃあもう1人の雪はどこに行ったの?」
「……もう1人の、雪?」
「……………へぇ」
「雪は2人いる。」
「……根拠は?」
それが引き金だったのか或いは地雷だったのか。
雪の声色がより寒々しく、まるで吹雪の如く凍てつく風となって降り注ぐ。
「根拠はない。でも分かる…ニーゴで作ってる時も、雪が別名義でやっている時もその中には2人いた。今、私たちの目の前にいる雪ともう1人。」
「……根拠もないのに、そこまで自分の推理に自信持ってるん────」
だが奏には勝算があった。
救われたい、という声に誰よりも鋭敏でありたかった奏はその声がひとつでないことをよく知っていた。ひとつは目の前にいる雪のモノ、そしてもうひとつ雪よりももっと深刻なあの声は……
そして運命は予定調和の如く、冷徹に回る
「まふゆ、」
「っ!?な、なんで願!?」
後ろから出てくるまふゆ瓜二つの男性。
唯一の違いは髪の長さだろうか。雪とは違うバッサリと切った髪に、そして雪よりも暗い何かを見ている様なそんな瞳。目の前に立っているのに何か別のところにいる様な危うい感じ。
「へ……?」
「え、?」
そしてそんな彼をAmiaは、えななんは知っている。
「「……朝比奈くん(先輩)!?」」
「やぁ、いい夜だね。東雲さん、暁山さん」
変人が多いと話題の神山高校2年生において、良心と名高い男。それが朝比奈願だ。
成績優秀の優等生。かの有名な変人ワンツーにも笑顔で対応し、共に行動していたりすると瑞希はその縁で話したことがあり、絵名は同級生のため会えば話す程度の交友関係があった。
「……な、ど、うやって……?」
「うん。後でね……それと、ミク」
「…………!げ、願……」
だがそんな驚愕が1番大きいのはまふゆだろう。
セカイの中で願は微睡むばかりだった。反応もまばらで、どれほどまふゆが願を刺激しても微かな生理的反応を返すばかり。文字通り揺籠になっていたこのセカイで願が目を覚ましているなんて驚いたから。
「……そっか、じゃあ俺もミクに賭けようかな」
「いい、の?それは……」
しかもその上で願はミクと親しげに、それこそミクの髪を優しく撫でる願の手にミクは最大限懐いた猫の様に体を擦り付けながら成されるがままの姿を見せる。まふゆはそんなミクの姿に、そして瑞希や絵名はそんな願の姿に驚く。
朝比奈願という男は、誰にでもどこか一線を引く様な男だった。
知らず知らずのうちに線が置かれその間を越える事を誰にも許さない様な…瑞希がよく知っている、自分と同じやり方と思う孤独のあり様。だからこそ心を許す願の姿に目を見開く。
「えーっと…つまり、雪は2人いて、そのうちの1人が朝比奈先輩?……あ、ダメだボク、ちょっと頭が混乱してきた……」
「ちょっと!朝比奈くん!?説明が抜けてるわよ説明!!」
「………雪」
だがそれ以上に気になったのはまさかそんな朝比奈先輩の姉?妹?が雪だなんて、しかも朝比奈先輩もその雪の名義を使って曲作りに参加していただなんてつい1時間前の自分に言っても鼻で笑われそうな現状に頭が痛くなってくる。
「なんで、来たの」
「まふゆ」
「諦めるには、まだ早いと思うよ」
「…っ!そんなことっ!認められるはずが」
願自身は最初から救われる事を望んでいない。救われるとは思っていないがまふゆは違うのだと1人用の蜘蛛の糸を探している。それに比べてまふゆは願が救われないのなら救われる必要もないとむしろ共に、地の底まで堕ちていくつもりだった。
「まずは、ありがとうKさん、雪を。……そしてOWNを見つけてくれて」
「ぁ……はい」
だから願は最後に賭けた。自分の全チップをミクにオールインした。
未来を、全てを、想いをミクの賭けたこの子に願も賭けることにした
「けど、雪を救うには足りてなかったみたい」
「……っ!?」
誰かを救う曲を作る。それが奏の行動原理なのだろう。
酷く残酷な話ではあるけれど、この子にまたひとつ大きな呪いを刻んでしまう。その事に願は少しだけ心を痛めてそして踏み抜いてしまう。
願わくば、この子がまふゆの『救い』になってくれることを
まふゆの本当の想いを見つけてくれる人になってくれるのなら
「だから…今日はここまで。ミク」
「……うん。わかった」
願との阿吽の呼吸で、瑞希や絵名がセカイから引き剥がされていく。強制的な送還を前に、抗う術を持たない彼女たちにミクの手を振り払えるわけもなく無数の光のカケラになって消えていく。
最後、Kの番。その瞬間だった、願が希う様に奏の耳元に小さく呟いたのは
「……K。」
「いつか、私を救いにきてね」
朝比奈 願
この世界線では朝比奈家の双子の片割れとして生まれた願。
一応、前世の経験がある故に親の言う事を賢く聞き流して生きてきている
そのため文武両道かつ、好奇心旺盛の自由人である様に育ち、シンセサイザーなどまふゆの私物で破棄されそうなものは基本的に願の部屋に置かれている。
前には尽くせなかった家族との仲は悪くなく、ギクシャク仕掛けている姉のまふゆとの間を取り持つなどおおよそ理想的な『いい子』の願である。
だがその実態は……
ただの破滅主義者である。本来、仰ぎ見るべき1番星たちと出会う事なく『前』との断絶を知ってしまった彼はただ奪われたしゅうまつに焦がれる。皮肉にもそんな彼を留めているのが同じく『いい子』となってしまったまふゆという始末。
もうお察しの方もいるかもしれないがこの世界線で願は【感覚鈍麻】を患っている
極度のストレスか、はたまた現実と『過去』の乖離によるシミュレーテッド・リアリティ故か願の世界に温もりは一切存在しない。
まふゆの存在によって救世主と成り得た可能性は潰えている
朝比奈 まふゆ
この世界線では願の片割れとして産まれてきた少女。
実は自分と同じ片割れであるのに自分よりも自由に気の赴くままに生きている事が妬ましいと思う時がある。
優等生の『よい子』ではあるが願という受け皿があるため、マシであると自認している。
だがその実態は……
どこの世界線よりも深く願との共依存に完全に溺れてしまった少女である
始まりはおそらく願の救いだったのが、いつしか他のあらゆる救いの手を跳ね除けて絶望の底に共に沈もうとする魔女へと成り果ててしまった。
だからなのか自分が思い描いていた姉の姿をしている絵名や雫は無意識下に苦手要素がある。こうでもしなければ家族を、たった1人の片割れを繋ぎ止めることの出来ない自分を恨んでいる
願との絆ランク称号
ランク5「『優等生』の双子」
ランク26「蝶のプリズナー」
ランク55「断ち切るべき鎖楔」
宵崎 奏
ここから救う術ってあるんです??
まずは2人の依存の最初を解き、そして新たに願を繋ぎ止める鎖になり、まふゆの居場所を作らないといけなくなった奏さんの明日はどこだ。…だが、いや必ず宵崎奏なら成し遂げてくれるだろうさ
願との絆ランク称号
ランク5「画面越しの出会い」
ランク26「鏡合わせのふたり」
ランク55「共に朝日へ」
東雲 絵名
会えば話すよ〜ぐらいの距離感。
『いい子』の願と絵名の関係はそれぐらい。ニーゴ編が始まってようやく願にどこか弟味を発揮して姉としてまふゆに発破をかけるイベントがある…のかもしれない。
死ぬほど不器用で、互いに想いあってる姉弟なんだからキチンと話し合えよとは途中から思うかもしれない。朝比奈双子の仲を穏便に戻すためには絶対に欠かすことの出来ないピースではある。
願とのランク称号
ランク5「顔見知り」
ランク26「密かな安堵感」
ランク55「縫われた嘴、折られた翼」
暁山 瑞希
多分最初は屋上組の繋がりがあったんじゃないかなーと期待。
互いによく似た目をしているなとは思っていたが踏み込むことなく今日まで来てしまった。或いはその距離感こそが2人にとってとっても都合が良かったからか
願とのランク称号
ランク5「鏡写しの瞳」
ランク26「空回った歯車」
ランク55「温もりを埋める隙間風」
《b》ニーゴミク
一言で言うのならヒロイン
純粋無垢系母性マシマシ幸薄ロリとかいう性癖破壊爆弾これには流石の願も形無し。まふゆの想い、そして願の想いから生まれた◼️◼️◼️◼️の想いを継いでいる。
それ故に出来ることも多く、現実世界に現れたりセカイを介さずに電子機器の中にいることもできるらしい。
基本的に願とまふゆ以外には興味を示さず、今回まふゆに奏の想いの歌が微かに流れた事に全て賭けた。もしもこれで失敗してしまうのならきっとまふゆは願と共に本当にどこまでも救われずに水底まで堕ちていくだろうと思っている。
その時は、最期まで──────。
願とのランク称号
ランク5「託され紡ぐ想い」
ランク26「オールオアナッシング」
ランク55「“いつか”の殉教者」
感想評価お待ちしてます。
まふゆが重いのか願が重いのかミクが重いのか。是非みなさんの意見を待ってます
次回何書きましょう(最終的に全部書きます)
-
異聞:魔法少女パロ
-
異聞:夜の娘続き
-
もしも冬弥と兄弟だったら…
-
もしも奏と双子だったら…
-
もしもまふゆと双子だったら…
-
TS願
-
配信者願
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幕間1 続きリメイク