「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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公 式 が 最 大 手
いやぁ。まさか与太話程度だったニーゴの奏まふゆ依存問題がイベストで正式に出てくるとは思わないじゃん??…と泣きながらアナザーストーリー描いてました。つまりこれはそういう話です()

遅くなりましたが、どうやら拙作の三次創作を書いていただいたみたいです…!
URLはこちらhttps://syosetu.org/novel/396812/
Aoi2873さま本当にありがとうございます!!いやまさか願がそんなエンドを辿るとは…と筆者もびっくりの結末でした。まだ読んでいらっしゃらない方は是非。おすすめです


それでは朝比奈願のアナザールート、通称side.β
いつも通り設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定注意です




if・もしもまふゆと双子だったのなら…side.β

 

 

1人の男がベッドの上で体を傾けていた。

インテリアのか細く淡い光だけが部屋を照らす薄暗い部屋の中で彼は胸元に何かを抱き締めながら、口角を少しあげて上唇と下唇をほんの少しずらすような微笑み

 

だがよくよく見れば、そんな彼は何か布を纏うわけでもなくベッドのシーツとシーツの間に体を埋めるようにしている。そんな微かな布団の横から飛び出た脚と、片腕から見える彼の体は…一言で言うなら美しかった

 

「…………」

 

まるで芸術品かのような均一に筋肉が躍動する肉体。

だがその見える体は細くスラリと長く暴力的なまでに健康な美を浮かべる血相の良い肌色はそれだけでも喉を鳴らしたくなるような、そんなイロ

 

「…願」

 

「どうしたの?まふゆ」

 

彼の名前を願と呼ぶその少女の声色は甘く蕩けるような、誘うような柔らかい声で彼に伸ばす一対の手。まるで愛撫するかのような願の胸板にベタベタと触れる少女の、まふゆの手に願は少し困ったかのように首を傾げる

 

「……少し、こそばゆいかな」

 

「んゃ……や。もう少し」

 

甘えるように頭を揺らすまふゆの姿に願は苦笑しながらもそのままだ

願にとって…いや。朝比奈願にとってまふゆ、朝比奈まふゆとは双子の姉弟である。同い年の、それでも姉には逆らわないのか願は相変わらず為されるがままの時間が過ぎた。

 

沈黙と微かに揺れるシーツ。互いの人肌の温もりだけがこの小さな世界を満たす。

鏡合わせのような2人。そして今この現状もまるで鏡合わせのようにシーツ一枚剥ぎ取れば肌色が見えるだろう

 

つまりは生まれたままの姿の2人は抱きつきあっている

双子だというのに、まるで濃厚に愛し合う恋人のように。だがそのおかしさを指摘するものも自覚するものもここにはいなかった

 

「願……願、さ(・)ま(・)」

 

「大丈夫。まふゆ、俺はここにいますよ」

 

だがそれだけではない。まるで暗闇の中からか細い光が一筋の狂気を顕にするようにその【告解】は始まった

手と手を固く結び祈りを捧げるかのように跪く五体投地で跪くまふゆに願が変わらぬ微笑みを浮かべたまま、まふゆを抱きしめる。緩やかにカーブを描くまふゆのシミひとつない真っ白な瑞々しい肌を背筋から尾てい骨近くまで撫でていく

 

「許しましょう。まふゆ、あなたの全てを許しましょう。あなたの怒りを、虚無を、劣情を、嘆きを、無為を、愛欲を、肉欲を。遍く全てを許しましょう」

 

「っ!……ありがたき…お言葉です」

 

だがそんな願が撫でる最中まるで刻み込むようにトン…トン…トンとリズムよく揺れる願の指先から伝わる刺激に耐えかねるように何度も何度も小刻みに震えるまふゆの姿はまるで感極まっているかのような、どこか恍惚に身を染めた声色でその刺激を感受する

 

その刺激、いや。もはや魂まで願に心酔しているまふゆにとって願から与えられる全てが快楽だ。まふゆの下に滴る水跡がシーツに広がり模様を広げているのもその証だと胎から疼く熱に震えながらか(・)み(・)さ(・)ま(・)に希う

 

「それでは、まふゆ。あなたは今日誰の救いを見つけましたか?」

 

「は、はい……」

 

そんなまふゆの姿はいつもの事のように願は【告解】を続ける

困っている人を、苦しんでいる人を助ける“救い”になることが願の祈り。その祈りに見つけて貰うようにそっと灯火を差し出すのがまふゆの“救い”である

 

今までもこれからもまふゆは願の1番の信徒であり、信者である

それを示すように今日まで文武両道、才色兼備の生(・)徒(・)会(・)長(・)。誰からも頼られる優等生として迷える全てを願という完璧で絶対的な聖者の“祈り”を広めてきた

 

「わたしは…今日弓道部全員を救い、ました」

 

「まふゆは『良い事』をしたね。これでひとつ、『いい子』に近づいた」

 

そして今日、まふゆはついにその“祈り”を形にしたのだ

分たれてしまった幼馴染たちを、アイドルに焦がれる少女を、アイドルに絶望した少女たちを、自分を変えたいとする少女を、世界中を笑顔にしたい少女を。まふゆはその全てに願という“救い”の糸を垂らした

 

まるで一滴の毒が水源を汚染するかのようにいつしかその教えは学校中に広まった。願の言葉通りに勇気を踏み出した幼馴染たちはまたひとつになり、アイドルに焦がれる少女はその道を歩み、絶望した少女は灯火を手にまた踏み出し始め、変えたかった少女は新たな道を見つけ、笑顔にしたい少女は同じ同志を見つけた

 

全ては必然だろうとも、願は少し背中を押しただけ

それだけで『良い事』をしたのなら。誰にでも利のある事だと願は『いい子』になったまふゆを撫で回す

 

「うん!…ねぇ、願さま」

 

「どうしたの?まふゆ」

 

いつもよりも撫でる回数と濃さが違うと今日は願の気分が良いことに気がついたのだろう。優等生としても『いい子』としても全部の仮面を取り外してあの日、願に手を引かれた幼い頃のままの自分を剥き出しにしてまふゆは願に甘える

昔から変わらない2人だけの儀式。頭を撫でることから始まってハグになりそして口吸いになって……いつしかまふゆの感情は親愛から崇拝に変わったとしてもまふゆはこの時が待ち遠しかった

 

「…………」

 

「いいよ。まふゆ、何が欲しい?」

 

まふゆの上擦った呼吸音と赤く染まった頬に願は誘うように耳元で呟く。

願だって人間だ。どこまで行っても人間にしかなれないと自覚している願は好悪で言うのなら最も好ましい、であるべきの片割れのその欲望さえも救うべきだと見出した

 

「お……」

 

願の笑みの中に蜘蛛のように絡みつき、逃がさないようにと熱で浮かれた眼差しがまふゆに注がれる。

その時を待っていたのだろう。ぐしょぐしょのシーツの上で膝立ちをして差し出したまふゆが震えた声で媚びる

 

「お情けを、ください」

 

「いいよ。まふゆ、それがあなたの救いなら」

 

両の指で捲るように開くように今もシーツを染めるように水滴がまふゆの大腿を伝い屈服するように見せつける姿に願は笑みを浮かべて指を差し出した

 

「……おいで?」

 

許されざる肉欲も禁じられるべき愛欲も願は全てを染めて美しく咲き誇る

それはまるで奈落の花。地の底で暗闇を喰らい芽吹く奈落の花。そんな咲き誇る花を美しいと魅入られたまふゆは……

 

【魔女】なのだという他ないのだろう

 

「あ…あぁ……」

 

淡い影だけが、2つが1つになる瞬間を垣間見る

聖者を堕落させる堕落と快楽を煮詰めて爛れた色を纏う魔女…いやはや果たして最初にこの甘露を教えたのはどちらなのか。もはや部屋に響く微かに軋む音と嬌声がその謎さえも溶かして、解かして貪りそして奈落の花は咲き誇る。

 

悦も、悪も煮詰めて─────

 

 

 

 

◆

 

 

 

朝比奈願は、転生者である

 

一言で分かりやすく願の基底情報を纏めるのならこれ以上これ以下の一文は存在しない。

あり得てはならない輪廻の証明者、摂理に反する死を知覚するものとしてどの世界線にあっても願の本質は断絶と言っても過言ではない

 

だがその根本が幾ら捻じ曲がって歪んでいたとしても本質は善性である。父母を敬い、悪を憎み、家族を慈しみ、進んで善を行おうとするその姿は模範的な『良き人』なのだろう

 

その根源にあるのが罪悪感である、という点を除けば。だが

 

『願』

 

『はい。母さん』

 

かつて願だった誰かは十分に孝行を行うことができなかった

かつて願だった誰かは慈しんだが故に全てを失い、慟哭した

 

“前”は“前”なのだから。そう割り切るにはあまりにも鮮明に焼き付いて願という人格を象った。即ち母と父の言う事をよく聞き、双子である片割れに慈しみを持ち、友情を大切にし、悪い事を咎める……そんな“誰か”の理想を模した願を願自身の手で作り出した。

 

『あなたもとっても良い子に育ったわね。お母さんも鼻が高いわ』

 

『ありがとう。母さん、母さんの教育のおかげだよ』

 

だが理想は、理想だ。

何ひとつ失わず、寸分変わらずに理想を己に憑依させることは裏を返せば何ひとつ手に入れることは出来ないということである。

そしてその事を最初から知っていても尚、その理想に縋った事。それが願の愚かさだった

 

本来の世界線。あるいはどこかの世界線であっても願はその理想を投げ捨てる。それは星々の輝き故だったり、誰かに目を焼かれたりだったり、誰かに受け入れられたりと理由は千差万別あれど、願は夜に帰結する

 

しかし、ここでは違う

願は夜にはなれない。願に曼珠沙華は咲かない

何故なら願は理想に殉じてしまっているから

 

『あなたはとっても良い子ね。願、良い子ならきっと幸せになれるわ』

 

『……幸せ。………ああそれは』

 

本来、その言葉には何の信憑性もない

幸せになれるなど主観性であり何の保証にもならない。だが今の願には、理想で中身が空っぽな願にはその言葉が導きの星になった。なってしまった

 

幸せ。幸福、人それぞれにその言葉はあって、中身がある。

だが“前”のままの願にとってその言葉の先にあるには…

 

 

『とても、素晴らしい…ことですね』

 

 

 

─────とても暗い、奈落の底が見えていただろう

 

 

 

◆

 

 

朝比奈 願は根っからの優等生である

クラスでは委員長を務め、文武両道、才色兼備を地でいくような人。だがそれだけではなく、誰かが困っていたら笑顔で手伝ってくれる人徳も持ち合わせた人。

 

これが大まかな願の神山高校での評価である。

誰も彼もからも目を惹く美貌といい、願と瓜二つの宮益沢に通う双子の生徒会長の存在もいい意味で噂話には事欠かない人物こそが願であった

 

「おはよう!!委員長」

 

「おはようございます。今日は遅刻しなかったみたいで」

 

風紀委員と共に隣に立つ願の姿を神高の生徒は見慣れたものだ

宵の黄昏を、陽射しが翳り丁度夜空になり始めた頃のような艶のある紫色のロンクヘアをハーフアップに纏めて無造作にそれでいて品のある様に束ねたその髪は委員長のトレードマークだと願のクラスメイトが挨拶をする

 

「委員長こそ毎朝早いね〜」

 

「それが仕事ですからね」

 

お堅い〜と言いながら歩いていく間にすれ違うそんな願の横顔は、女性から見ても非常に整っていると言えるだろう。ツンと上向いた鼻、スラリと緩やかなカーブを描く顎線。色気フェイスの中で浮かぶ穏やかな微笑み。

 

そして何よりそのオムファタールの中で輝く朝焼けに浮かぶ透け澄んだ空を映したような薄いライムグリーンのその瞳。

同性にまでも告白されるほどの願の美貌は確かに魔性と呼べるのに相応しくそして性を感じさせない雰囲気と矛盾して、美しい

 

「おはー委員長」

 

「朝練ですか?頑張って」

 

同性さえも息を呑むほどの美貌。そして勉学にも運動にも優れて、それを一切鼻にかけぬ穏やかな気性。クラスのまとめ役として、顔役として成るのは不思議な事ではない

 

クラスメイトの名前だけなく同学年の名前を全員覚えているなど、もはや【完璧超人】と言っても過言ではない願だがお茶目な一面もある、どこか少し天然が入ってる様な抜けている様な彼を嫌う人は少なかった

 

「委員長〜!課題見せて!」

 

「またですか…いいですけどコピーは自分で撮ってくださいね?」

 

いやむしろ殆どいないだろう

それはこうして彼に話しかける登校中の多くの生徒が物語っている。後輩の間ではファンクラブまでが密かに結成されているとは噂話だけではないかもしれない

 

もちろん登校中の生徒だけでなく道を行く園児に顔を見合わせハイタッチをしたり、道を行くご老人を手助けしたりと彼の姿に頬を赤らめる後輩までいる始末、そしてその全てになんの邪気もない笑みを浮かべている願というあまりにも良い意味で人間離れした彼の美貌に全てが虜だった

 

「おはよう!!!!願!!!!」

 

「おはようございます。天馬くん、良い朝ですね」

 

魔性の男。そんな願に真っ向から立ち、真っ正面から見る男が今願の目の前に立つ彼こそ天馬司であった。人呼んで変人ワンと言えば伝わるだろうか、癖者ではあるが願は司のことを『司』だと認識できている数少ない“友人”であった

 

「うむ!!今日も絶好のショー日和だな!!」

 

「天馬くんの声で起こされる気分です」

 

そんな願の“友人”はかねてからの想いであったショーで人々を笑顔にするという夢の一歩を踏み出し、今やフェニックスワンダーランドでショーを盛り上げるスターになっているのだから驚きだ。

 

何度か願も見に行ったことがあるがやはり司は司である。どれほど願が導いたとしても、彼だけが不変にただ直向きに夢へと足掻き続ける。所詮、偽りの光では太陽の輝きの前には薄れてしまうは当たり前の摂理であるからこそ願は納得している

 

「ならよかった!!」

 

「………………」

 

ああ、ほんとうにかわらないなぁ

 

「ああ!!そうだ!!願、今日の昼は暇か?」

 

「昼ですか?……何か手伝いが無ければ、暇ですよ」

 

先生からの信頼も厚い願は、基本的に誰かの助けになる事を拒否することはできない。それが願のたったひとつの尊ぶべき法であるが故に。基本的に委員長としての仕事はないに等しく願は暇だと口にする

 

「ならよかった!!新しいショーでも考えようかと思ってな!!!」

 

「毎回思うんですが、なんで俺を誘うんです?」

 

全くもってわからない。昔ならショーの話ができるのが限られていたにしても今では神代くんや草薙さんがいる。むしろ同じショーバンドを組んでいるそちらと話を合わせるべきだと願はふと分からないと言うように首を傾げる

 

「オレたちは親友だろう?…願は嫌だったか?」

 

「なんだそれ、はぁ…」

 

答えにもなってないような司の答えに、それが正しいのだと真っ直ぐなまでの視線に願の威勢が落ちる。そうそう、こういうやつだ。天馬司っていう男は願の完全に破綻している『それ』を知った上で尚、願を親友だと思ってくれている

 

ほんとうに、ばかな親友だ

もっとはやくお前と会っていればと何度思ったか

 

「また後でな。司(・)」

 

「!おうっ!!!」

 

少し力が抜け落ちたように脱力した後いつもよりも少し『笑顔』な願が司に向かって手を振る。珍しい願の名前呼びに司は少し驚いたように目を見開いて、拳と拳をぶつけ合い2人はまた違う道を歩む

 

「やぁおはよう願くん」

 

「お、おはようございます…!朝比奈先輩」

 

「はい。おはようございます神代くん、草薙さん」

 

それは決して混じり合わぬように光司と闇願を隔てるかの如く、残酷にも距離は離れていく

まるで決して2人は真に分かり合えぬ事ができないかのように、あるいはその発想さえも願は最初から何もなかったかのように微笑んだ

 

 

◇

 

 

……天馬司にとって朝比奈願という親友は、どこか放って置けない親友だった

それはどうしてだとか何故?だとかに答えることはできない。ただ司にとって願は自分でも分からないような琴線に触れるような友人だった

 

『は(・)じ(・)め(・)ま(・)し(・)て(・)、(・)天(・)馬(・)く(・)ん(・)』

 

出会いは当初、一年生の同じクラス。互いに入学したての願と隣の席になったところから交流が始まった。ニコニコと誰の話も楽しそうに合いの手を入れながら聞く願はすぐさまクラスの中心となって人気者になった。

 

だがショーについての話題も2人は良い友であった。司が演者や表現の分野から切り込むのに対し、願はどこから身につけた知識なのかそのショーに込められた暗喩や細かいオマージュなど脚本の分野から切り込み2人は話せば話すほど仲良くなった

 

そして司は忘れられないあの日のことを思い出す

 

『笑顔になれる、ショーか』

 

『?どうかしたか?願』

 

いつものようにクラスの仕事を片付けていた願とその横から手伝いながらショーの話をしていたある日だった。司は自分がショーを目指すきっかけになった“子供のときに妹と見たあの劇団”の話になった時だった

 

ちょうど、日が暮れる黄昏時だったのだろう。

願の顔を覆い隠すように教室の大きな窓から差し込む光が逆光となり暗く、見えなくなったその声色はどこか低く聞こえた

 

『……いえ、妹と仲いいんですね』

 

『そうだな!…そういえば願も兄妹がいたんじゃないか?』

 

だが気のせいだったのだろう。いつも通りに笑みを浮かべている願に司が何かを思い出したように口にする。一応司も聞いたことのある願の噂…それは願と瓜二つの双子が近くのお嬢さま校である宮益沢に通っているという噂

 

『そうですよ。双子の妹がいます』

 

『おお!………もしかして仲、あまり良くないのか?』

 

それは真実なのだと願が肯定する。だがそんな願の声色はどこか憂いでいるようにも聞こえ、司はおずおずとまさかと思い踏み込んでみる。噂が流れるぐらいには瓜二つだというのに今まで願からそれを公表したところを無いに仲があまり良くないのかもしれないと辺りをつけた

 

まさか、それが半分正解で半分は想像もできなかった事になったが

 

『…どう、なんだろうな。恨まれてもおかしくないだろう、とは思うが』

 

『恨まれても…?』

 

憂いだけではなくどこか失意と諦めが混じった願の呟きに司が首を傾げる。

恨む、とは穏やかではない表現だ。少なくとも司が知る中では願という人間はその言葉とは全く似ても似つかわない様な人也をしているのに

 

どういうことか、或いは勘違いでもあるのではないだろうか。

聞いた噂によれば宮女に通う願によく似た何某は願の事を嬉々として語っているという。ブラコンではないか?という邪推がされているほどだというのに願はまるで恨まれている、と言う

 

『………なぁ、司。』

 

『?どうしたんだ?』

 

もしかしたら、本当に入れ違いがあるのではないか。そう司が口を開こうとした瞬間だった。それを遮るように憂鬱げに願が司の顔を見てこう言った

 

『もしも俺が悪いやつになったら……』

 

一拍。その顔が露わになる。

逆光を浴びて、どこか涙を流しているかのような

 

『司は、止めてくれるか?』

 

その時、オレはなんて答えたのだっけ

ただ記憶には薄氷が割れる寸前のような儚い笑みを浮かべた願の顔だけが残っていた

 

 

 

◆

 

 

 

『よい子』とはなにか?

つまり『よい事』をする子だ

 

ならば『良い事』とは?

────その答えは、目の前の画面が嗤っていた

 

【お悩みをお聞きします。困っていること、苦しんでいること、誰にも溢せないその言葉を匿名の“誰か”に伝えてみませんか?】

 

意外にも、願はこういう事に“向いていた”

無駄にある人生経験のおかげか或いはその気質のせいか願は誰かの心の声に寄り添い、救うことに向いていた。いつしか願のハンドルネームである“アートマン”の名前は知らず知らずのうちに広まっていた

 

もちろんネットの匿名性という悪意が願を襲わなかったとは言わない

だがそれ以上に……

 

「…………」

 

ひとつ、救うごとに

 

「…………ぁ」

 

ひとつ、幸せになるごとに

 

「…………ぁあ」

 

願(・)は(・)ひ(・)と(・)つ(・)自(・)分(・)が(・)一(・)番(・)不(・)幸(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)く(・)

 

「『良い事』をする『いい子』になれば…」

 

誰かを救えば自分はその誰かよりも不幸である。

ならいつか、いつか全てを救うなんて『いい事』をする『いい子』になれば

 

「『しあわせ』になれるんですね。お母様……」

 

願は『しあわせ』に、そう。『死合わせ』になれるのだと

今度こそ誰にも、何にも侵されない本当に下品下生の底におちる

南無阿弥陀仏は必要ない。救いの手なんて、さんかいめなんて必要じゃない

 

「あぁ!しあわせに!そう今度こそ!」

夜空に満点の星空が煌めくように

 

「おれは、しねる!!」

種撒かれた花が開くように

 

「この世界で、この世で、この全てで最も出来損ないになって!最も穢らわしい生き物として!」

時が満ち足りたように

 

「おれは、最高にしあわせに、死ねるのか!!」

………そのあり方が、その想いが華開く

 

「ありがとう!お母さん!ありがとう!お父さん!ありがとう!まふゆ!ありがとう!この世界!」

この瞬間、願の世界に光が宿った。色付いた。

初めて、この世界を美しいと思ったのだ

自分が、初めて自分を許せるような初めて“生まれてきてよかった”と

 

「俺は!!『しあわせ』になりまぁす!!」

 

願はこの時、産声を上げた。

生誕の喜びを最大限に謳うように。満ち足りた笑みで涙を流して──────

 

 

 

◆

 

 

 

「や、お疲れ様。か(・)み(・)さ(・)ま(・)」

 

学業が終わり、1日の大半が終わった夜空。

もう学校に生徒は願以外いないんじゃ無いかという時間を見計らって校門前に1人の少女が立っていた。願よりも一回りも二回りも小さい影が街頭に照らされる

 

体躯は華奢で触れれば折れてしまいそうなほど。だがそんな影は羽織ったジャージのフードを深く被りその相貌が簡単には分からないだろう。微かにジャージの隙間から見える銀糸のような細い髪がその少女の正体を願に知らせる

 

「奏……どうして、ここに?」

 

その本名を宵崎奏…願が初(・)め(・)て(・)『(・)良(・)い(・)事(・)』(・)を(・)し(・)た(・)相(・)手(・)というべきだろうか

一番の使徒を自称するのがまふゆだとするのなら、一番最初の女…願にとってのイヴこそが奏であった。

 

「たまには会いたかったから……だめ?」

 

「ダメ、ではないけど……」

 

自らの破滅のために全てを救いたい願、己の才知が誰かを壊してしまった事の逃避のため誰かを救う歌を作り続ける奏

2人の行動と理念は恐ろしいほど似通って相容れることは絶対にない。

どう足掻いても互いの存在が目障りになる。それを同族嫌悪と言うが…そうは、ならなかった。あまりにも願の想いが強すぎた

 

「俺、奏にどこの学校に通ってるとか言った覚えない」

 

「そうだよ?……けど忘れたの?」

 

その結果がこれだった。

願の腕に抱きつき頬擦りをする奏の姿。腕と腕を絡めるその姿を見れば心底仲の良い恋人同士にも見えるだろう。だがそんな奏の瞳には仄暗い危なげな蠱惑的な光が宿り、願を絡め取ろうとゾッとするほど美しい笑みを浮かべる

 

そもそも願と奏の出会いから色々と異質だったのだ。

初めて願が『良い事』をした相手とだけあって、願が開いたお悩み相談チャットの一番最初にやってきたのが奏…いや、Kだったのだ

 

「わたしは、最初に願の場所を見つけたよ」

 

互いに話せば話すほど仲良くなり三日三晩話し続けた後、奏はその会話の中からの微かな手がかりを元に現実の願を見つけ出した。

ただしく正気ではないと言えるだろう。だがある分野の天才が三日三晩それだけの事を考え行動したのならこれほどの成果を上げる事ができるのだ。

 

これが天才の恐ろしさだと願は苦々しくとも認めていた。

文字通り神に愛されている存在だと言うのにその翼を雁字搦めにされている哀れな子ども。…願はその痛ましさを拒絶できなかった

 

『願、あなたがわたしを許してくれたように。わたしがあなたを許すよ』

 

それは依存だ。互いに救いという鎖を繋いで落ちていくだけの最悪の結末

それを知っていても尚願に『良い事』に背く道はもう残されていなかった。何故ならもう願が慈しむべき片割れを【告解】してしまっていたから。

 

「それは…そうだな」

 

「うん。さ、今日はこれ聞いてみてよ」

 

いつしか願の中でこの世界を自分の生きている世界と認識できなくなった。“前”との完全な断絶…その証明に“前”生きた証も、記録も、そして記憶でさえもこの世界には何もなくて『何も起きていなかった』

 

即ち、異物であるという自覚が彼の中から全ての価値を奪ったのだ

文字通り心も体も…この想いさえも。誰も覚えてない、知らないものは存在しないモノと同義だ。

 

「────♪」

 

「……うん、いい曲だね」

 

願の世界を満たすものはなにひとつない。それこそ『しあわせ』以外に

恋慕を、執着を、愛を、恋を、情を、欲を込めた奏の歌も願にはただ同じようにしか聞こえない。どこかの世界のまふゆのように奏の歌を聴いて胸が温かくなることなんて、ない

 

「うそつき。思ってもない癖に」

 

「……………」

 

そんな願に奏はわかっていた事だと笑みを浮かべる。

だがその笑みは喜びの感情だけがそこ抜けた様な一切の翳りもない満面の笑み。奏が血肉をこめて作った曲でさえも願を救うにも足りなかったのに、何故奏はそんな清々しい笑みを浮かべているのか

 

「そんな悲しそうな顔しないでよ。願、分(・)か(・)ら(・)な(・)く(・)て(・)い(・)い(・)ん(・)だ(・)か(・)ら(・)」

 

「…分からなくて、いい?」

 

「そう。だって願は全てを救うためにそうなっちゃったんでしょ?」

 

「どうだろうね」

 

手放してはならないものさえも焚べて願は進む。

それが良い事なのか、奏といる時間は何故かそんなことまで考えてしまう

 

「ううん。願の中では違っても、わたしが願を救世主だと思うなら願はやっぱりわたしの救世主なの」

 

「……身勝手だね」

 

奏のキラキラと輝く目で見られるからだろうか。或いは自分が奏を歪な合わせ鏡だと思っているからだろうか。奏の言葉に願は顔を背けたくなる様などこか泣きたくなる様な気がして顔を少し、顰める。

 

「うん。そうだよ。わたしはわたしの身勝手であなたを救う」

 

「奏、奏は……」

 

俺みたいになるなよ。と口から漏れた言葉は風に攫われて消えていく。

何もかも間違えて、そして間違えたと分かっていてももう戻れない自分に比べてまだ奏には残されているものがあると願は思っている。

 

最もそれは願の独りよがりなのだけど

 

「なるよ。わたしは願、あなたと一緒にいきたい」

 

何故そんな清々しい笑みを奏は浮かべるのか?簡単な事だ。

奏の歌で救われて一緒に生きるのならそれは最も嬉しい結末だが、それとは正反対に救われずにひとりで『死合わせ』になるのなら奏は一緒に共にするつもりだった

 

どちらに転んでも奏は願といられる。

それだけで幸せなのだ。それだけでよいのだ、と

 

「どうかわたしを殺して連れて行ってね」

 

一歩踏み出し奏が笑う

シルクの様な髪が風に揺れて彼女を人ならざるものの様に見せる

 

「わたしの…わたしだけの」

 

願に似た空色の瞳が願を奪う

夜に染まったその色は、美しすぎるが故におそろしい

 

「『灰色の男サリエリ』」

 

それはまるで『死神』のようだと願は思ったのだ

 

 






外夜 願

数多ある世界線の中で一番救われない願がこれ。破綻していると自覚しながらも自壊し続ける救済人形。それはまるで復讐者にも似て、もっとも似つかわない

容姿はまふゆそっくりに穂波の髪型。
雰囲気や諸々を足していけば桐谷願にも引けを取らぬ立派なAPP18オーバーの人間味が薄れた魔性の男の出来上がり

救うと言っておきながらその根底にあるのが自滅願望のため、割ともうダメ。
全員の脳を焼いている自覚はあるのに「あっ、俺は死にたいだけだから…もう関係ないでやんス」って捨てていく。流石のこれにはクソボケがー!と叩きつけるべき

ちなみに自分は異物だと思わないと今までしてきた事に願は耐えられない


天馬 司

次はまふゆの記載だと思った??
残念。現状、一番願に近くて遠いのはこの光のスターである。
割と願の内面に気がついている節と言い、その上で笑顔にして見せると意気込む姿は願もびっくり満面の笑み「見なよ…このスターを」状態である

今の願もやろうと思えば司を大衆的なスターにすることは可能だが、司はそんな事願ってないだろうし、もしも祭り上げられたとしてもきっと彼は自分の力でスターになるんだろうなぁ!と願は司の強火ファンである

「いつか俺を殺してくれるのは 天馬司 あのスターなのかもしれない」とは願談。
ちなみにそれを聞いたまふゆや奏は……まあうんお察しの通りになる


朝比奈 まふゆ

原作よりもマシなのが、『いい子』の自分という仮面を被らずに生きてること
原作よりも酷いのは、願にめちゃくちゃにされていること

幼い頃から願とかいう人でなしのカスが近くに居たせいで脳焼きヴェルダン!されちゃった。ある意味被害者まあ別ルートではまふゆが願の脳を焼いているからおあいこって事でひとつ……

めちゃくちゃ純愛ではあるが歪んでいる。願のその救いは素晴らしいモノだと思い、良かれと思い信仰を広める魔女。願の対極にして、願を変生させてしまいかねない奏に関しては願を連れて行ってしまうのではないかと恐れている

故に『死神』が気に入らない。会えば一触即発もあり得る


宵崎 奏

おそらく一番歪められた人物。ダウナー系崇拝型ヤンデレは好きですか?
ネットという匿名の場でありながら願を騙し抜いてプライベートを丸裸にした天才。部屋にある裏紙という裏紙に願の情報を集めて纏めてプロファイリングし願を割り出した狂人

めちゃくちゃ歪んではいるが純愛ではある。願のその救いの結末が死だという事を知って尚、その道に付き合おうとする死神。願の半身にして、明確な弱味であるまふゆに関しては奏以外と共にするのではないかと警戒している

故に『魔女』が気に入らない。会えば一触即発もあり得る



『両親』

褒美として一度だけ頭を撫でて丁寧に『良い事』をした
嗤えるぐらい容易く狂って『よい人』になった


感想評価お待ちしてます
ソワカ…ソワカ……

次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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