「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後… 作:ネマ
兄弟の話も、映画の話もかけずこんな未来の話を書いてしまったんだよね。怖くない?今回はその中でも特にありえなさそうだけど文字に書いてみたら完成してしまった異聞として書いていきます。もしかしたら騎士パロとか異種族パロとか書くとなったら多分異聞として書くつもりです。なんて与太話は置いておいて。
今回はなんというか試合に負けて勝負に勝った?みたいな未来の話です。
間違えて、間違えて、間違え続けて最後に残った一粒。それでもそれもまた青春の形。ですもんね
いつも通り設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定注意です
それではどうぞ。
異聞・夜の娘たち
「パパ、起きて〜!」
「父さん…あ、朝ですよー……?」
朝のひばりが鳴く頃。願の耳元でふたつの幼い少女の声色が響く。右耳から聞こえる活発そうな声。とそしてもう片方から聞こえる少し控えめな、それでもよく響くその声たちに導かれて願は目を覚ます。
願の身体に馬乗りになってこちらを見ているまだ小学生だと言ってもおかしくない2人の幼女の姿。先程まで右耳に近付いていたであろう黄色の花柄のパジャマ姿の子はその綺麗なまでの金髪に微かな藍色の光沢が混じった髪に、真っ赤なまるでルビーをそのまま目に入れたかのように輝く瞳に満面の笑みを浮かべてこちらを見ている。
「起きた〜!ぎゅー!」
「はいはい……おはよう、咲耶ぎゅー」
そんな金髪の幼女は起きた願に気がついたのか、馬乗りになったまま願に倒れかかる形で抱きつき始める。そんな
「果穂もおはよう」
「あぅ……おはよう」
まあ父さんが置いていくわけないし?でもそれでも抱きしめてくれてようやくフニャリといつも通りの安心したかのような甘えた表情を浮かべた咲耶と同い年ぐらいの幼女。ピンク色の花柄のパジャマに身を包んだその子はベージュの甘いような印象を覚える髪色に願と同じ、いやそれ以上に澄んだ快晴のようなスカイブルーの瞳で見上げているその子の名前を果穂と言った。
そう今や願もいい歳したおじさんであると咲耶と果穂を抱えて起き上がり、部屋に備え付けの鏡に目を向ける。ボサついた純黒の髪に、少し燻んだスカイブルーの瞳。もうこの姿に二十五年も付き合っていたのなら慣れるモノだと顔を洗い、眠気を吹き飛ばした後、リビングに座っている2人の娘を見る。
「あ、おはよう。お父さん」
「……おはようございます。父さま」
雛鳥のように後ろを付いて歩く咲耶と果穂に願から見て呆れ顔を浮かべるリビングにいた2人。かつては一歌が座っていた椅子で今はこうして娘が椅子に座って、願のギターを弾いているその娘…千歌は願の黒髪に夜と星々を閉じ込めたかのようなブルーブラックの髪色にまるでサファイアのような輝く藍色を閉じ込めたか瞳をしている。
そんな千歌は目の前に願のスマホ。そこから浮かび上がるホログラムの幾分か成長したGUMIが先生役となりながらギターを習っている。その腕前は親の贔屓目で見ても既にもういつかの願を超えるのじゃないかと思わせるほどだ。
「おはよう。千歌も、志帆も朝ごはんにするよ」
そうしてキッチンに立つ願の横に誰よりも早く、素早く現れたのはさっきまでリビングのソファーで横になって本を読んでいたはずの娘。光を反射して輝くその銀髪に、青緑色の瞳を輝かせて願をムフーと自慢げに見上げる志帆の姿があった。
「……勘違いしにゃいで、おなかすいたの」
「はいはい…じゃ、志帆には手伝って貰おうかな」
そんな自慢げな様子に願が微笑ましいものを見る目で見ていたことに志帆が気がついたのだろうか。一瞬!?みたいな表情を浮かべた後に顔を背けてわざとらしく手伝う理由を口にする。だがそんな背けた志帆の顔は耳まで真っ赤だし、言い訳も噛んでいる。
そんな照れ隠しでさえもオーバーリアクションで可愛い娘に願は微笑ましい顔で後ろから抱き上げて、冷蔵庫の上の方にしまっていた食材を取るように志帆に頼む。そんな高い高いされた志帆に羨ましそうに見つめる雛鳥のように後ろをずっと付いてきている3人に願はお皿の準備して欲しいと伝えると、ドタドタと音を立てながらリビングの上のモノを片付けて、お皿を並べ始めた。
「パ…父さま、今日はどうするの?」
「んー…買い物とかかな?色々と補充しないと」
3人がわーきゃー言いながらお皿の準備しているのを見ながら、願は手慣れたようにフライパンを動かす。目の前のリビングでお皿を割って怪我しないか気にしながら脚元で抱きついたまま離れないいつもの甘えん坊な志帆の頭を撫でる。
いつもは父さまとかしこまった言い方をするしほだが本来ならば、誰よりも甘えん坊だ。だというのに姉妹の前では一番甘え下手で、そっけない態度を取ってしまうのが実は一番気に悩んでいるのが志帆なのだからこうして出来た2人だけの時間の時は志帆は全く願から離れようとしないのだ。
「ん……ぜったい、ついてく」
「はいはい。大丈夫。置いていかないから」
今更の話だが、この四児の娘たちと願の間には血は繋がっていない。
そして千歌、咲耶、志帆、果穂という名前でさえも願が付けたものではない。
では何故そんなすれ違う4人と1人で出来た家族が始まったのか。それはおそらく4人娘が産まれた刻、七年前にも遡る。
─────七年前。
それは高校卒業というある一種の契機の時であった。そしてそれ以上に願は大分前から考えていたおしまいの時だった。そのおしまいとはまるで天翔して行く幼馴染である一歌たちがもう願を必要としなくなること。或いはもう願から見て大丈夫なのだと安堵できたその時こそ、願は自分の首に刃を振り下ろす事だった。
それを確信したのはその七年間の最後。或いはLeo/needの半年ぶりのライブ。
プロの道を歩み始めたあの子たちに、もう願が出来ることは少ない。毎日のように会っていた彼女たちも日々の忙しさに、数日になり、数週間になり、数ヶ月になり、そしてこのライブでの主役と観客という全く混じり合わない立場を隔ててようやく願は自身に死刑宣告を振り落とした。
(ああ……いい、良い、ライブじゃないか)
星は満ちていた。月は翳りなく輝いていた。
日は大輪を咲かせた。天は今空高くに煌めいた。
もう、夜は必要ない。もう、願はこれ以上生きる理由も、指針もない。
そう思えば願の足取りは軽かった。あまり趣味らしい趣味もなく、家にあるモノといえば願が最低限生活できる家財道具たちと残っている幾つかの幼馴染たちのモノぐらい。ほとんど綺麗さっぱりな願の周囲にはもう願の歩む道を止めることは出来ない。
そう思っていたし、そうなるはずだった。
「………ん?なんだ、これ」
願が帰ってきた家。1人でいるのにはやはり大きいといわざるをえない一軒家。だはそんな謎ももはや今となってはどうでも良い事だと、玄関に立ったその時だった。家の目の前に置かれている大きな段ボール箱だろうか?そう考えるが願は最近近頃通販を利用した覚えはない。更には違和感として宛名があるはずの伝票も貼られていない。
一体なんなのだろうかと願はその箱を手に取る。大きさの割には少々少なすぎるのではないかと思う重さ。誰かが間違えてここに置いてきたのだろうか。だが、伝票がない以上、中身を見なくては分からないと願は蓋を開ける。
「………は?」
その中に入っていた物を見て、願の思考は完全に停止してしまった。
何故ならその中身に入っていたのは4人の赤ちゃんだった。まだおそらく産まれて間もない、生後数ヶ月にもなっていないだろう新生児レベルの子。そんなまだよく目も見えていないはずの赤ちゃんが願に小さな、小さな手を伸ばして笑っていた。
そこにいたのはあまりにも儚い、それでも力強い熱を持った赤子だった。
だが一目見て願は気が付く。赤子と赤子の間を仕切るように入っていた母子手帳。そして一目見て質の良い布に身を包んだこの4人の赤子たち。間違いなく愛されているというのに何故、この家の前に置いて行ったのか。
「……この子たちを頼みます、か」
そうして全員を抱き上げて部屋に敷いた毛布の上に移して行くと、その赤ちゃんたちを守るようにあったシーツと衝撃吸収マットの間に挟まった一枚のコピー紙に書かれてある“この子たちを、頼みます”というパソコンで打って印刷したのだろう文字。
願に赤子特有の単語単位の発音であるクーイングが聞こえそれにあやすように構っていると構いつつ、願はこの赤子の母子手帳を開く。そこには間違いなく子どもの成長が欠ける事なく記されている手帳のあと。
「千歌に、咲耶、果穂に志帆。か」
首が座りつつあるその姿を見るとまだ3ヶ月に入ったか入っていないのか。手帳を見ればこの4人全員が一、二週間程度のズレはあるがそれでも同じ時ぐらいに産まれている。そうなると姉妹なのだろうか。どことなく全員の顔立ちが似ているようなそんな気もしなくはない。
そうなれば、願はこの娘たち(一応性別の確認はしている。まさか全員娘だとは思っていなかったため驚愕したが)をどうするべきか。或いはこの子たちに願はどう言った事をすれば良いのだろうか。もはや願に正解は分からなくなっていた。
(………孤児にするのか、この子たちを?)
いや最もわかりやすく単純で、簡潔な方法はこの子たちを然るべき場所へと連れて行く事だ。これから苦労する事もあるだろう。これから多くの苦難を迎えるだろう。だがそれでも少なくとも今から死のうとする男の元に居るよりはマシだろうとそう願の思考はそういう決断を下していた。
「あー」「うー」
声が、きこえた
「うーうー」「あー?」
声が、聞こえたのだ。
小さくても、それでも力強い声が願の足元よりも下からよっつも聞こえる。聞こえたのだ。その時の衝撃を願はなんと言おうか。いや、分かっている分かっているとも。まだ目が見えていないこの赤子たちが発する言葉にはただ機嫌が良い時に出てくる現象に過ぎない。そう理解している、しているつもりだったのだ。
「………………」
抱き上げる。抱き上げる。一人一人抱き上げる。捨てたはずの、捨て置いたはずの涙が何故か願の頬を伝う。まだ無垢な、まだ罪も穢れも知らないこの赤子を、願は何故だろうか手放すべきでは無いのだと心が、想いが叫んで訴える。
だがそれでも、と頭は冷酷に判決を下す。単に願が今まで1人で生きてきたのはあくまで願に“前”の“誰か”の記憶があったからに過ぎない。普通の赤子は、子どもは生きていけない。それを分かっているからこそ、願は目の前の娘たちを手放すべきだと───────
『願は、どうしたいの?』
「……な、んで。ここに……」
その瞬間だった。もうとっくに失ったはずの想いから産まれたGUMIが放り投げたスマホから姿を現していた。いつしか願の元から消えていた想いの現像と、セカイ。いつしかそれが思い出になっていたところにその姿は現れた。あの日と同じように黄緑色をたなびかせてGUMIはゴーグル片手に、そこに立っていた。
『もう、決まってるんでしょ。願の心は』
「GUMI……」
この想いからはセカイは産まれない。セカイが産まれない以上、セカイに属するはずのバーチャルシンガーの1人であるGUMIも存在できない。だがその道理を覆してここにGUMIは現れた。
たった1人の背中を押すためだけに、GUMIはここに今産まれたのだ。
「いいのか……この俺が、親になっても」
『なるんでしょ。この子たちのために』
なっても良いではない。ならなくてはならない。誰から頼まれたその頼みをこなす為に願はまた必死に、次は篝火も道標もない道行を進まなくてはならない。その道を行く覚悟は、もう願の胸にあった。
それから願は早かった。願に両親はいないし頼れる親戚もいない。だが、それでも願が今まで紡いだ絆はここで強い力となった。一番親交があった志歩の両親からは家が近いからと言って何度も助けて貰った。願が娘4人出来たからと言う話を聞きつけて今も世界に飛び出すストリートミュージックで有名なビビバスのメンバーも子守りを手伝ってくれたり話を聞いたニーゴの面々が手伝ってくれたりして…そして今までもこれからも使わないと決めていた毎年振り込まれるお金を使って、そうして必死に走り続けて、七年の時が過ぎた。
「父さん!いこー!」
「パパーおそーい!」
そうして気がつけばいつの間にか娘たちは7歳になったと願は玄関で待つ娘たちを追いかける。長かったような、短かったような。色々とトラブルもあったけど今思えば笑い話にもできると、いつの間にか消えていた祈念死慮を忘れて今はこの子たちがどう成長するのかが楽しみだと手を繋いだ。
この手を繋ぐのも毎回娘たちはじゃんけんをして決める。勝った順番からこうして手を繋いで、どうやら今日は千歌と志帆が勝ったらしい。そうして歩き出す事少し、どうやら一番ストリートミュージックに興味を持ってるであろう果穂が鼻歌を歌い出すのに釣られて、志帆たちも歌を歌う。
「♪〜♪」
時が経とうともミクの歌は健在で今もよく娘たちと一緒に聞いている。何度もかつて幼馴染たちと一緒に弾いたりした曲だと思い返す事もあるが、いまはそんな記憶も娘たちが歌っていたり、千歌と志帆が弾くのを教えたりしてそして記憶は少しずつ新しく、美しい物で埋まって行く。
この子たちが一体何を知って、何を感じていくのか。それは親でありたい願にはわからないモノだがだがそれでもこの娘たちにとって輝かしい何かであったというのなら嬉しいなと、ふと春の陽気に、桜が舞い散る花びらに踊る娘たちを見て願はまた歩きだしたのだった。
そうして辿り着くのはデパート。少し大きめの商業施設であるこの場所でなら娘たちも暇しないという願の目論見は見事成功している。してはいるのだが、こうして買い物をしていると疲れてもないのに抱っこして欲しいから疲れているフリをする志帆や咲耶の姿に、ずるーいと下で騒ぐ千歌や果穂の姿があった。
そうしているところだった。
「久しぶりね。願くんにおチビちゃんたち」
「あ!愛莉ちゃん!」
「こんにちは。あいりおねえさん」
目の前に立つ春コートにサングラスといった身を変装するための装備に身を包んだ愛莉さんの姿があった。桃井愛莉。その名前は今や全国で知らぬほうが少ないだろうアイドルグループ。MORE MORE JUMP!のメンバーである彼女は、その姉貴肌故に何度か助けてもらったこともあり、娘たちの中で一番咲耶が懐いている。
そんな願と親しい誰かの姿を見つけて、私たちに良くしてくれるお姉さんの1人である愛莉ちゃんであると分かったら真っ先に飛び込んだのは咲耶だった。そんな猛ダッシュ、まるで頭突きロケットでも言わんばかりの咲耶に愛莉は腰を落として咲耶を抱きしめて抱っこする。
「愛莉さんもお久しぶりです。本日はオフですか?」
「ええ、久しぶりにね。あとで雫たちも来るけど、一緒にどう?」
そうして近づいてきた愛莉に願は親しげに話しかける。高校時代までなら幼馴染の姉である雫さんと同じグループを組んでいるという友人の友人程度の距離だったが願がこうして4人娘を子育てする時雫さんから話が入ったのか、或いは彰人が姉経由で話が行ったのか。
暇さえあればうちに来てくれて、睡眠も栄養も倒れる寸前を見計らう様に動いていた願の代わりに娘を見ていてくれた恩人の1人である。最初の方は泣いてばかりいた娘たちも次第に慣れていき、今ではこうして特に咲耶が愛莉に懐いており、将来は愛莉の様な大人のレディーになりたいと言っているほどだ。
「いいですね。この子たちも休ませたいですし」
「み、みのりおねえちゃんとも会えるかなぁ……?」
買い物のために歩き続けたため、流石にそろそろ果穂や千歌が限界だろうと理解している願はそろそろ一旦休憩しようかと考えていたところにこうした愛莉からの提案に迷うことなく乗る。そんな父である願の雰囲気を読み取ったのか久々におねえちゃんたちに会えるのだと顔を輝かせて、今願の腕の中にいる果穂が願に顔を寄せて小さく聞いた。
「ああ、会えるだろうさ」
「今日はみんな勢揃いね。…まあ、雫が迷わないことを祈るしかないけど」
「や、やったぁ……」
フニャリと願の腕の中で微笑む4人娘の中で1人際立って小さい果穂に頬を緩ませ、願たちは歩き出す。抱っこされたままの果穂と腕にしがみつく志帆を願が、両手に千歌と咲耶と手を繋いで愛莉が歩き出す。向かうべき先は少し先にある喫茶店に辿り着く。
歩いた時間を入れれば十分ぐらいだろうか。既にそこにはサングラスをかけてマスクまでしている遥やみのりの姿が見える。既に2人には連絡していたのかどうやら願たちが来ても驚くことはなく、手を振って迎えてくれた
「願くん、お久しぶりー!」
「ああ、みのりに遥さんも。元気そうでなにより」
側から見れば気がつかないかもしれないが、願は非常に若いシングルファザーだと言えるだろう。或いはそうやって歩いてるだけでは年の離れた兄妹の様にも見えなくはない。…まあ何が言いたいかというと、そう願の友人となると願と同年代が必然と多く占める。しかも願の友人となると幼馴染から縁が繋がってが殆ど。
だからこそだろう。子どもの成長は早いことだと言うが色んな音楽のトップクラスに触れて、密かに娘たちの中で音楽の才知が芽生えてきている。嬉しいことだが、非常に嬉しいことだが娘たちに独自レッスンをしている友人たちに関してはやりすぎるなよとしか言えないのである。
「あれ、千歌ちゃんたち連れてくるのはいいけど…雫は?」
「え?遥たちが連れてきたんじゃないの?」
瞬間、沈黙。どうやら成長しても治らなかった雫の方向音痴は今も絶好調の様で、願含めた愛莉たちはみのりたちと一緒に来ているものだと思い、みのりたちも愛莉たちと一緒に来ているものだと思っていたのだ。まあ簡単にいうとよくあるすれ違いである。
だが流石に手慣れた様子で、ここに着くまで最後に雫と出会った場所。そして雫が辿り着きそうな場所を即座に上げていく。あまりにも濃厚な時間をグループとして過ごしてきたこの3人だから出来ることだと願は側から、娘たちも抱き上げられながら愛莉たちの雫捜索を見守っていたその時だった。
「はるかさん、こっち」
「え?志帆ちゃん?」
遥に抱えられていた志帆が遥を見上げてある方向を指差した。まるで丁度今話していた雫の場所がわかっているかの様な反応に、遥は更に志帆が嘘ついている様には全く見えないのも理解していた。……やはり、この子は。という思考を打ち切って、遥たちはそっちの方向に進み始める。
だがやはりというべきか。志帆の案内とともに辿り着くところにはスマホを片手に彷徨っている雫の姿があった。これで確定するわけにはいかないし、断言するわけでもない。だがこうして今まで百発百中で志帆は雫の場所を当てている。志帆が言うにはなんとなく分かるらしい。
「……やっぱり、そうだよね」
「みのり」
だが偶然と思わしき要因がここまで積み重なるとそれは正しく必然だと言わざるをえない。ある日から半年ほど殆ど音信不通と言っていい状態になっていた願の幼馴染であるLeo/needたち。そしてまるで見計らったかの様に願の手元に届いた4人の娘たち。そしてその娘はどう見てもあの子たちと願の血を引いているかの様な贔屓目で見なくてもそう見える確実に繋がりがある様にしか見えないあの家族。
ぶっちゃけ気がついていない。いや、気がつかないフリをしているのは願だけで薄々気がついているのだろう。だれも確証に踏み込めないだけで間違いなく繋がりがあるのだろうと誰も彼もが複雑そうにこの歪な家族を見る。
「……雫、あなた何か知っているでしょう」
「んー……そうね」
そうなるとやはり踏み込むべきは周囲。見て見ぬフリをしているとしても兄妹、姉妹までが何も知らないとは思えないし、仲の良い姿を見てきたからこそあり得ないと愛莉は雫へと追求する。
確かにその何か知っているか。という問いならば是としか答えようがない。あの日、願の丁度帰る時間に合致する様にあの子達が腹を痛めて産んだ娘たちを届けたのは雫たちの行動だ。
「知っているけど、何も言えないわ」
「……そう、ならひとつだけ教えてちょうだい」
どうやって事に及んだのか。誰があの娘たちの両親なのかはもう語る必要もないしわざわざ推理する必要もない。だがこの場で必要になってくるのは
「あの子達を、願を不幸にするわけではないのよね」
「ええ、それだけは。間違いなく」
現状だけを見れば、千歌たちは願を父親として幸せに5人で暮らしている。だがそれはあくまで現状だけを見て大きな不幸が無いだけだ。一歩間違えれば誰も幸せにならなかった未来があったとしか言いようがないとあの時よりも大人になったみのりたちは苦々しい顔で思案する。
本当に何考えてんだあの子らはという呆れが何度脳内をよぎったか。
そしてその呆れを追求できずに遂に七年もの時が過ぎてしまった。何度も何度も願の家で顔を合わせる機会があったと言うのにあの娘ちゃんたちの前で醜い言い争いをしたくなったからから故か。
「………分かったわ。今はここまでにしとく」
「そうね。ありがとう。愛莉」
向こうで娘たちと楽しげに話している願の姿を見る。そこにいるのはとても妹たちと仲の良い兄だろうか。真相は父親分と娘なのだが、更に踏み入ったところまで知っている雫は口を閉ざす。そう。あの日、彼は死ぬつもりでいただなんて。…何があろうとも口を閉ざすのだ。
──────外夜 千歌は覚えている。
そう。外夜千歌は覚えているのだ。例えその時何が起きて、何が託されたのか知らずとも。それでも千歌という娘は言葉にさえならない微かな記憶であろうとも覚えている。そうそれはまるで何度も見る夢の様に、千歌は理由も意味も分からずともそれでも覚えている。
覚えている事はそんなにもう思い出せないと千歌は思う。ただ誰かがまだ今よりももっと幼かった私をお父さんにしてもらうみたいに抱っこされてまるで何かを頼む様に喋っていた事。最もそれは全て都合のいい夢なのかもしれない。だけど何故だからそれを都合のいい夢だとは千歌は言えなかった。
『いいのか、この俺が、親になっても』
もうひとつ覚えていることといえば、パパ…お父さんの事だろうか。何を言っているのかは分からない。ここがどこなのかは分からない。でも、お父さんは私をいつもしてくれるみたいに抱っこしながら泣いている。
(泣かないで、パパ)
なんでパパは泣いているのか。何かつらいことや、悲しいことがあったのだろうか。いつもそうして泣いているパパが嫌で必死に手を伸ばすのに、なんでかどうしてかパパには手が届かない。
だから手を伸ばさないと。パパが泣いていると私も悲しいから
『ああ、そうだな…俺が父親だ』
届いたのだろうか。分からないけど。それでもパパは泣きながら笑っていた。いつもの優しい私たちのお父さんは笑っていた。よかったと、よかったと私はとてもポカポカした気持ちになった。
「ぅ……パ、パ……」
「ああ、おやすみ千歌」
何かとても心地よくて暖かいものに包まれて、千歌の意識はもっと落ちていく。
……教え方が良かったのか。或いは成長が早かったのか。なんとなくだが、千歌も咲耶も果穂も志帆も気がついている。この家は他の家とは大きく違うと。だってもっと前の時から私たちにはお姉ちゃんやお兄ちゃんはいたがお父さんと呼べるのはお父さんたった1人だけだから。
だからといって何かこう寂しいとか、何かどよーんとする事はない。姉妹だからと言って全てがわかるわけではないが互いに互いの考えていることぐらいは簡単に分かってる気がする。だからこそ、何となくこの人たちは嫌だという人は分かる。
それがあの人たちだった。
『
いちかさんと名乗ったあのお姉さんたち。私は特にいちかさんが嫌だけど、咲耶はさきさんが、志帆ちゃんはしほさんが、果穂はほなみさんが何でか分からないけど嫌な気がする。
どうしてだか分からない。でもパパとこの人たちが仲良くしているのを見ると何でか知らないけど嫌な気がする。それはどうしてか分からないけど、この人たちといる時のお父さんがいつものお父さんじゃないような気がするから。
(………けど)
それでもふと思う事は一緒だと千歌は思うのだ。
今更だが、千歌はお父さんが押し入れの中に閉まっていた綺麗に整えられているギターを見つけて以来、音の鳴らし方を初めて教えてもらったその日からずっと、ずっと千歌の宝物になって受け継がれている。
お父さんに教えてもらいながら音の出し方を知って、少しずつ出せる音が増えていって、そしてその音はひとつの曲になって今となっては千歌の手足のように自由にギターを弾けるぐらいにはなった。
『千歌、ここはこうしてな』
けど、お父さんやいちかさんにはまだまだ届かないと分かっている。そりゃそうだとお父さんは苦笑するけど、それでも私はお父さんに、いちかさんを目標に今日も頑張る。もちろん時間があるときにお父さんは教えてくれるけど、たまにいちかさんが教えてくれる時もある。……けどやっぱり一番はふたり一緒に教えてくれるあの時間。
『千歌ちゃん、私たちと合わせてみよっか』
それがずっと続けばいいのにな。と思うぐらいには、嫌いじゃないのだ。
外夜 願
己へ下す処刑場を登り切ったそこには、4人の赤ん坊が待っていた。
お察しの通り、四女の父。お相手たちはもはや語る必要もなく。気がついているのか気がついていないのか。どちらも美味しい展開ではある。ちなみにあの日確実に終わらせるつもりなのだと彼の家に入れるほど親密な仲なら一発で気がつくほど態度が露骨だったらしい。今はそんなことも考えていられないほど忙しない日々を送っているが、相変わらず暴走列車気味なのは変わっていない。
ちなみに今の職は心理系の仕事をしているとか。ある意味天職。
Leo/need
何かを致命的に間違えた。
だが最悪なことは何を間違えたか、どこで間違えたか分からない事である。
それでも分かることはただひとつ。
このままでは私たちが想像する最悪よりも悲惨な事が待っているという事実
それを前に、少女たちは手を止められなかった。そしてそのよっつの命は実を結んだ。
外夜 千歌
外夜願と星乃一歌の間にできた正真正銘の娘
非常に2人によく似ている容姿といい、天性の音楽への適性が見え隠れしているのは単に願のなんでも卒となく熟せる才知ともう1人をちょうど半分づつ継いでいるのかもしれない。それゆえに見る人が見れば非常にわかりやすいとのこと。
もしかしたらこの先、痴情の絡れに巻き込まれた願が刺されて死亡し、残された娘たちがその音楽の才知で界隈を上り詰め、自分と最愛の父を捨てた実の母を探す『夜の子』展開が待っているのかもしれない。
感想、評価お待ちしてます。
次回何書きましょう(最終的に全部書きます)
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異聞:魔法少女パロ
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異聞:夜の娘続き
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もしも冬弥と兄弟だったら…
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もしも奏と双子だったら…
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もしもまふゆと双子だったら…
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TS願
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配信者願
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幕間1 続きリメイク