「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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志歩ちゃん可愛い。作者の性癖=銀髪ということが確定したため続き。

男女逆転シチュ。ツンデレ系美少女が押し倒して、綺麗な笑みで非捕食者主人公を食べちゃうシチュエーションとか作者の性癖に合致しますね…

皆さん多くの評価、感想ありがとうございます。作者が考えている以上で嬉しい悲鳴を上げています。
はい。ということで毎度の如く過去改変、キャラ崩壊、独自解釈注意です。



「(幼馴染の姉に)私が貰っちゃおうかしら〜(超美形アイドル)」と言われ「やめてくださいよ〜(笑)」と満更でも無い状態を見た時の幼馴染の脳破壊度を求めよ

 

 

「……今日私の家来て」

 

「うん。ちょっと待って」

 

 早朝。微かに開いたカーテンから朝の日が入っている。快晴だ。

 本来、家には一人で寝ていたはずの願のベッドには居ないはずの志歩が仰向けで寝ていたはずの願の腰辺りに座っていた。

 

「…………あのさ……その……」

 

 願も男だ。朝にはそういう現象だって発生する。いくら気心の知れた幼馴染と言えど、家の鍵を貸し付けておくほどの仲だとしても、流石に羞恥心というものがある。

 

「? 願ならいいけど」

 

志歩は純粋無垢な様に首を傾げる。幼馴染の中でいうならば一番、外にも中にも当たりが厳しい子だ。そんな子が無防備に幼馴染と言えど異性の家に、しかも寝ている所に近づくという意味が分からないほど幼くは無い。

 

「ダメだよ。はい。起きるからどいて。」

 

勿論そういう意味だとも、どういう意図が有るのかが分からないほど願だって子供では無い。…そして更に言うならば、我欲に惑わされるほど願は弱くもなかった。

まあ。そんなんだからこそノーガードで両者共に殴り合うという事が発生してしまっている。

 

(……うゎ頸丸見えじゃん……)

 

志歩は一人起き上がってカーテンを開けたり用意する姿を見て赤面する。

昔から願は寝ている時は軽装が多かったけど、最近では見える様で見えない様な寝間着を着ることが多くなった。だからこそ…チラチラと写るバイトで鍛えられた健康的な頸が酷く扇情的に志歩は見えた。

 

(………っ…恥ずかしがってるの私だけ……)

 

その事実がまた志歩を昂らせる。いくら幼馴染とは言え、異性だ。

確かに今までもこう言う事をしたことはあるけどそれでも流石に一度も素振りがないと言う事実が悔しさになって、そして逆に恥ずかしがらされているのがまたスパイスとなって志歩の一匹狼メンタルを揺らがせる。

 

 

「志歩。朝食べてく?」

 

「……いいの?私の分まで」

 

「いいのいいの。志歩と一緒なら食べる価値だってあるある。」

 

リビングに向かうと、制服に着替えていた願が朝食を食べるかどうか志歩に聞く。

こんな朝早くから来ているから志歩だって朝も取れていない。願の朝一緒にどうかと言うのは志歩にとってもありがたい話だった。

 

「でも珍しいね。願が朝食べるなんて。」

 

「こう見えて最近は食べたりするんだよ?」

 

フライパンや、なにかをかき混ぜる音と共に香ばしい良い匂いが志歩の鼻腔を擽る。願の料理の腕は穂波にも劣ることはない。

でも志歩は少なくとも平日の朝に願がフライパンを持っている姿を見たことは片指にも収まる程度だ。いつもなら家に常備していたゼリーなんかで朝食を終えていたはずなのに。

 

「はい…簡単だけど。」

 

「簡単って……これが……?」

 

トーストと野菜や目玉焼き、ハムが乗ったプレート、更にはヨーグルトまで。

店で出しても文句ない朝食プレートがそこには並べられていた。

 

「なに飲む?紅茶?」

 

「願は?」

 

「コーヒー。」

 

「じゃあ私もそれ。」

 

冷蔵庫を開けて願は志歩に聞く。この家には飲み物が幼馴染の影響で色々と有る。

それこそジュースからコーヒー、更には紅茶まで飲み物と言える物は粗方あると言う願の家の冷蔵庫のドアポケットは一種のガラパゴス状態になっていた。

 

「ブラック……?」

 

「うん。志歩は必要なら。」

 

そうやって願から渡される喫茶店にあるようなガムシロップとミルク。

実を言うと志歩はまだブラックコーヒーは飲めない。でも目の前では何でもない様にブラックコーヒーを啜る願の姿を見て、自分も試してそのまま口にする。

 

(……にが……)

 

飲んでみるとなんとも言えない苦さが口の中に広がる。

口直しする様に目玉焼きを食べる。私の好きな焼き加減に調整されてるのを食感で感じて……そうなんとも言えない照れがまたブラックコーヒーで飲み干そうとする。

 

 

「今日私の家、来て。」

 

食べ終えて、まだ学校に行くまで時間がある。

一服付いた二人に志歩は言う。朝も言ったけど二回目。絶対に来て欲しいから。

 

「俺は良いけど…志歩の家は良いの?」

 

「良いから来て欲しい」

 

志歩の家…ひいては志歩の家族は願もよく知っている。

だからこそ願は家に行くのはどうかと苦言の様に志歩に聞く。そんな事は把握していると言わんばかりに問題ないと切り捨てて、願の反応を待つ。

 

「…………分かった。多分俺の方が早いから迎えに…」

 

「だめ。家に直接来て」

 

まるで餌を待つ子犬の様だ。……そう願は思ってしまった。

志歩は志歩が思う以上に顔が良い。凛々しく釣り上がる翠色の目も光で反射する銀髪も。そんな凛々しい子が願の反応を伺う様に目を潤ませる姿に、願も肯定は出来れど否定は出来なかった。

 

今日は、高校でも放課後には特に用事は入っていなかった。バイトも今日は…定休日だ。そして単発もなかった。フリーだ。

神山高校と宮益坂女子学園なら神山高校の方が終わるのが早い。だからこそ願は迎えに行こうかと聞けば、食い気味に志歩は家に先に来といてと言う。

 

 

 

⦅時は経ち…放課後⦆

 

「疲れた……」

 

「すまん。願。ノート見せてくれ」

 

座っているだけとは言え授業は疲れる物だ。

書き上げたノートを見直し、帰ろうかと席を立ったその時、彰人が現れた。(参照第一話)

 

「お前なぁ…寝てたか?」

 

「授業とか寝る物だろ……」

 

というかよく聞けるぜ。

そんな顔で彰人は願にノートを借りようとする。

願もいつものことだし、友人だからとノートを貸す。サンキュと彰人は借りて、写真に撮り、また返す。

 

「まあ今日もビビバスのあれだろ?頑張れよ。」

 

「ああ。願は?帰りか?」

 

「ああ。また明日な。」

 

「おう」

 

ビビバスも毎日のように練習しているのを願は知っている。

願もバイトや学校での手伝いで忙しいのを彰人は知っている。

そこには確かな親友関係が有ったのだ。

 

願『今日の最後の授業、ノート借りたぞ』

 

冬弥『情報提供感謝する』

 

勿論、それはそれとしてキチンとするべき事はするが。

彰人は成績が優れない。だと言うのにテストでは山勘が効けば高得点を叩き出す。

教科書をそこだけ読み込んだのかと思えば違う。明らかに授業内でしか言われていない事まで解けることが有った。

彰人の勉強の面倒を見ていたビビバスのメンバーにして元祖彰人の相棒の“冬弥”はこの現象を不思議に思っていた。……そして突き止めたのが願から借りたノートだと言う事だ。そのノートのまとめ具合は冬弥で有っても勉強する所が有りこれなら確かに当たれば高得点になるだろうと分かる。

だからこそ、冬弥は願から彰人がノートを借りた日を教えてくれるように頼んだ。

そうすれば勉強が捗るだろうし、何よりその授業を寝ていたことが分かるからだ。

 

 

 

一連の流れをこなして、願は志歩の家に足を向ける。

冬弥にとって彰人の成績なんて関係ないはずだ。だと言うのにわざわざノートの貸し借りをしたかどうかまで教えて欲しいと頭を下げに来ないはずだ。

あの二人にあるのは確かな信頼。その関係は決して大人になっても切れぬ物なのだろうと、願は一人考える。

 

「………あれ?願くん?」

 

「雫さん…お久しぶりです。」

 

志歩の家の前に来て少し待つように立っていたら、今帰りなのか志歩の姉である雫が願の元に現れる。

 

「願くんと会うのも久しぶりね!」

 

志歩との繋がりで一応雫とも面識のある願だが、そこまで深いつながりがある訳でもない。でも雫のこのゆったりとした雰囲気は実は願も少し気に入っていた。

 

「はい。そうですね…その。志歩に呼ばれて」

 

「しぃちゃんから話は聞いてるわ。どうぞ。」

 

「はい。ありがとうございます。」

 

雫の後ろについて行き、願は家に入る。

椅子に案内され、雫からコーヒーが手渡される。

 

「はい。願くんはブラック好きだったわよね?」

 

「よく覚えていましたね」

 

驚いたように、願は目を見開く。

何度も会った訳ではない。事実志歩の手に取られ何度か顔を見合わせた程度だ。

だと言うのに、願のよく飲むブラックコーヒーまで知られているとは考えていなかった。

 

「ええ。よく覚えてるわよ。」

 

雫にとってこれは忘れられない思い出の一つ。

初めて会った時は雫がアイドルに少し失望していた頃。少しずつ妬みや嫉妬が増え、まだ慣れていなかった雫は少し荒れていた時に願と会った。

 

『綺麗な人ですね。』

 

美しいと、綺麗と何度も言われた事はある。でもそれ以上にその言葉には負の思いが込められていて、私は次第にその言葉には裏があるんじゃないかって。

そしてしぃちゃんの幼馴染もそんな感じかと思い始めた時。

 

『何より内面が。』

 

『え?…それって…どう言う事??』

 

『だって凄い努力家で、志歩…妹に優しく、そしていつでもアイドルとしての姿勢を崩さない。……本当に頑張ってるんですね。』

 

そんな口説き文句を目の前で言われて、しぃちゃんには頬をつねられていたけど、私は初めてだった。そんな風に私を見てくれる人なんて。いつでもいつだって私を褒めるのは外面だけ。そんな私に欲しい言葉が初対面の人に━━━━

 

 

「しぃちゃんには用事聞いていないの?」

 

「はい…その今朝来るようにって言われまして。」

 

どうやら雫は自分が思っている以上に妹の幼馴染は進んでいるみたいだ。

確かに、朝早くからしぃちゃんが家を出た事は知っているがまさか願くんの家に行くとは…しかもその肝心の願くんもしぃちゃんに家の鍵を渡してる。

 

(もしかして…すごい進んでるのかしら)

 

今の子ってそんな感じなのかしら?と少し考えてみるけどやっぱりこの幼馴染達の距離感が異常に近いだけなんだろう。そう言うことにしておこう。

 

「それで………」

 

まあそれはそれとして

 

「しぃちゃんとはどこまで進んだのかしら?」

 

気にならないと言う訳ではない。

 

「………いえいえ。そんな俺に志歩は勿体ないぐらいですよ〜」

 

驚いたかのように一瞬願の動きは止まるがすぐさま復帰し、志歩とはそう言う仲では無いと否定する。

雫もその様子を見て、隠している事はあるけど…凄く誤魔化しがうまいわね〜と、どこか遠くから見るように願の反応を見る。

 

「そう…なら……」

 

「私が貰っちゃおうかしら〜?」

 

「あはは。冗談はやめてくださいよ〜」

 

雫は志歩の援護に回ろうとこの膠着状況を崩すような言葉を選ぶ。

まあ。勿論、そこには悪意はない。ただ…選んだ言葉と言った時間が悪かった。

 

「…………ぇ…………え??」

 

「しぃちゃん??」「……志歩?」

 

そしてここで今一度現状を確認してみよう。

アイドルでしかも美貌が誇られる完璧美人の姉と、好意を寄せている幼馴染が“私たち付き合おうか?”に、満更でもない様に聞こえた。聞こえてしまったのだ。

 

「…………………………………」

 

勿論、そんな事許して良いわけがない。こんなのNTRじゃないか。

そんな思いと共に怒りが盛大に込み上げてくる。

もはや志歩は当初の目的である“一緒に勉強しよう”なんて投げ捨てて、怒りだけが頭を支配した。

 

「ねぇ……願?」

 

「なっ…何でしょうか……志歩……さん」

 

志歩から発せられる怒気は誰であっても萎縮するほど強く、強くなっていく。

 

「私の部屋…来て。今すぐ。」

 

良いよね?お姉ちゃん?

その怒気は願も雫も感じたことのないほどで、二人とも首を縦に振ることしか出来なくなっている。

 

「……………行ってきます。すみません…

 

「えっ…ええ。頑張って…

 

まあ端的に言うと志歩の身体からは怒りのオーラが見えるほどだ。

黒く、どす黒くなっていく志歩のオーラには耐え切れず、願も雫もその通りにするしかなかったのだ。

 

「……………………」

 

志歩に腕を掴まれ、今まで考えられたほどのない力で志歩の部屋に押し込まれていく。ただ腕を掴まれているだけだと言うのに願はまるで蛇を前にした蛙の様に、自由に動く事はできない。

 

「……………っ!!志歩!?」

 

「………………………はぁ………」

 

まさかまさか。志歩は願を上手投げの要領で願を志歩のベッドに横倒しにした。

アルバイトで鍛えている男子高校生と、ベース弾きのバンドマン女子高生ならばどちらが力が強いか。それは大多数の人が前者と答えるだろう。それは事実だ。体重、身長どれを取っても、志歩は願に勝てた事はない。……だと言うのに今構えていないとは言え、志歩に投げ飛ばされたのだ。

落下地点がベッドだからか痛みは無かったが、まさか志歩に力加減で負けるとは思っても見なかったのか。願は事実を受け入れるのに少々瞠目する。

 

「ねぇ」

 

「…………なんでしょうか…志歩さん」

 

「据え膳食わぬは女の恥って……知ってる?」

 

「それ逆っ!!」

 

まあ確かにこの世には据え膳食わぬは男の何とやらという言葉はあるが。それをまさか志歩が使って、押し倒されるとは願も思ってもいなかった。勿論、この場合の据え膳は願である。

 

「………私がどれほど怒ってるかわかった?」

 

「…………………ごめん」

 

「何にもわかってないくせに」

 

志歩は憤慨する。どれほど、どこまで行ってもこの男には何も通じていない。

心の壁が分厚いんじゃない。心のドアが鎖でグルグル巻きにされてるんじゃない。

ただ。私たちが掴んだ心の壁がまるで蜃気楼のように消えて、またこの男はなんでもない様に笑っている。……それが、それが酷く気に入らない。

 

「私たちがどう思ってるか分かってるんでしょ?」

 

「………………」

 

ただ願は笑う。倒されているのに、その上で志歩が馬乗りになっているのに。

願はいつものように微笑んで志歩を見ている。

 

「全部、全部分かっててそれでいて、何もしない」

 

志歩は気がついている。でもだからこそ気に入らない。

わたしには、私たちには貴方しかいないと言うのに貴方はまるで違う人が出てくるのを待っているかのように笑っている。そんな事はない。あり得ない。そうだと言うのに、貴方の心には私たちの音楽でさえも響いていない。

それはバンドマンとしての矜持でもあり、日野森志歩という女の矜持でもある。

 

「いつの日か。私を美人だと褒めた事。有ったよね。」

 

「…………?それが……ってまさか?!」

 

志歩が制服のリボンを片手で引き抜く。上のシャツのボタンを外し始めた所で願が何しようとしているか察する。そう。それは……

 

「やっと慌てた。……うん。願の地雷。これだったんだね。」

 

「それだけは……っ!だっ……」

 

「うるさい」

 

いわゆる行為と呼ばれる物。勿論、そう言う知識は有るし志歩だってどう言う危険性が有るか分かってる。……だからこそ願は慌て暴れる。それだけは絶対にダメだと。勿論予想以上の行動のせいかテンパって上手く志歩を退ける事は出来ない。

………いや。もしくは未だに志歩に対して力加減をしていると言う事なのだろうか。

 

「…………っは。二回目。今回は事故じゃないね」

 

「なんでっ!こんな……ことっ……」

 

マウストゥマウス。舌まで入れた濃厚なキスが志歩と願の唇の端から唾液の橋となって掛かる。月明かりだけに照らされた部屋に扇情的なキス。更には赤く火照った男女二人。シチュエーションとしては万全だが願にとっては考えてもいなかった最悪の事実で有る。

 

「うん……更に先行こうか。」

 

「ぃや……ダメだっ……」

 

志歩は唾液の橋を舐めとるように舌を動かし、願の服を脱がそうと手を出す。

その時だった。

 

「ただいまー!!」

 

「…………お母さん?………最悪っ!」

 

「なんで……こんな事………」

 

タイミングがいいことに。志歩から見るなら悪いことに。親が帰ってきたのだ。

志歩が壁掛け時計を見ると確かにそれぐらいの時間。……運が悪い。

 

「帰る…から」

 

「このままだとご飯。うちで食べるように誘われるよ。」

 

「……………っ。」

 

酷く怯えたように、願は帰ろうと鞄に手を伸ばす。

でも志歩は冷静にどうするか声を上げる。そうだ願は基本一人飯だ。それを知ってからか志歩の家に来れば毎回ご飯を一緒にどうかと言われる。……そして雫さんとかの引き留めがあって、毎回断れないのが続いている。

 

「今日はさ。お泊まり会にしよう」

 

「っ!……どの口がっ!」

 

「もう襲わない。……これだけじゃ不満?」

 

「……………………………………」

 

幼馴染にされたことのない愚行。考えてもいなかった暴挙に願の頭はもうパンク寸前だ。いつものような口調を維持することなんて出来ないで志歩に吐き捨てる。

 

「今回。今回だけだから。」

 

もし二回目、同じことをするのならば縁切らせてもらう。

そう願は硬くなった声で志歩に条件を突き出す。

 

「相変わらず優しいね。願は。」

 

さっき見た捕食者の笑みではなく、いつも志歩として見ている笑み。

それがどうしても繋がらなくて…願は末端から冷えるような怯えが走った。

 

 

「なんで……泊まることに………」

 

「いいじゃん。明日の朝、家に行くんだからさ」

 

そうしていつものように、志歩の家でご飯を一緒に取って…寝間着やその他諸々の準備していないからと帰ろうとしたその時。志歩が『鞄見てみたら?』との一声。

その瞬間、願は悟るのだった。“やられた…”とそう。どこで回収したか分からないが、願の洗って干しといた寝間着やその他諸々一式がその鞄に置かれてあった。

 

「電気消すよ」

 

「なんでっ……こっちに……」

 

志歩の強い提案で、同じ部屋で寝るようになってしまった二人。(勿論、親も笑って了承)布団を敷いてもらって、志歩のベッドの下で寝ようと横になったその時。

ベッドに横になっていたはずの志歩が布団に潜り込んできたのだ。

 

「いいでしょ……だめ?」

 

「っ…なにもしないならば」

 

「分かってるって」

 

志歩はそのまま布団の中から顔を出して、ぴったり願と顔合わせの状態に入る。

一瞬、怯えの色を見せた願に志歩は少し目尻を落とす。

 

「………ごめん。なさい。」

 

「……………正直まだ怖い」

 

だろうな。とは志歩も思う。自分に当て嵌めたら最悪だ。異性に、しかもそう言う目で見ていなかった異性に馬乗りにされ犯され掛けた。考えただけでも最悪だ。

吐き気どころか。そんなことをされた時点で舌を噛み切っている。

 

「でも…きっとあれ。なんだろう?」

 

「………………………」

 

「図星か………」

 

願は深呼吸する。志歩をここまで暴挙に走らせた理由。それは雫とのあの会話。

雫の『私が貰っちゃおうかしら〜』に願の『もうやめてくださいよ〜』と満更でもないように居た二人が、志歩にとって盗られると思ったのだろう。

 

「ごめん。ごめんっ!」

 

「………いいよ。悪かった。俺も何も言えないでさ。」

 

そう。全ては入れ違い故に起きてしまった事件。

願にとって志歩とは恋愛感情はないとあの時断言されてしまった。そうして志歩は雫との会話で恐怖を覚えてしまった。“私たちは棄てられるんじゃないかって”

 

「どう思ってるのか分かってるんでしょ?」

 

「…………うん」

 

「…そう。分かった」

 

それでも願は目を塞ぐ。志歩の、咲希の、一歌の、穂波の。全員の好意に気がついておきながら、彼はそれが悪いことだと知りながら目を逸らす。

 

「じゃあ…さ。」

 

「?」

 

「私の…私の力で願を惚れさせる。もうどこにも見向きをさせないように」

 

それは意思。それは誓い。志歩の志歩だけの誓い。

願を、私たちどころか全てに目を、心を閉ざす願を惚れさせると。

志歩は願の真前で誓う。

 

「教えてあげる。…どこまで私たちが願を好きかをさ。」

 

その笑みは……願であっても惚れそうになる程美しい、美しい笑みだった。

 

 

 

 

 

私、日野森志歩は最低だ。

 

わたしには誇るべき幼馴染達がいる。

いつからだろうか?私たちはいつも一緒で家も近かったお陰で会わない時間の方が少なかった。……そう。特に願とは。

幼馴染の中で一番家同士が近いのは願だろう。

そう。だからこそ私は見て見ぬふりなんて出来なかった。

願の家に置いてあるだけのお金。次第に財布に代わり、そして通帳に変わった。

その家には光は無く、声もなく、また歓びもない。幼いわたしはそれがまるで棺桶に見えて酷く怖かった事を覚えている。

 

『ねぇ…げん。辛くないの?』

 

『さぁ。志歩達といる時間の方が楽しいし。』

 

あんなに大きな家だと言うのに、住んでいるのは願一人だけ。

たまにお手伝いさん?らしい人は来ていたけど、それだけ。

……考えることに願は知らないんだと思う。

お金だけ置かれ、あとは好きにするように。そうやってこの世界を生きてきた願だ。そもそも知らない物を“理解”することは出来ないだろう。

 

……だからせめて。わたしだけでも。わたしだけでも。

 

……願を愛し続けよう。名前が示すように夜に溶けて行かぬように。

 

せめて太陽には成れずとも、夜を縛れるような光には。なりたい…と思う。

 

 

 

 

『……ねぇ願』

 

転機が訪れたのは中学生の頃。私たちはバラバラになった。

咲希は病気が悪化して、穂波はクラスで問題が有ったらしい。一歌は分からない。でもバラバラになったことだけは確か。

 

『私は……どうすればよかったのかな』

 

私はそもそもが口下手だった。姉と違い社交性ゼロ。そんな悪口は一度では済まない。何度も言われたし、私自身それでよかった。…何故なら一番通じて欲しい人には分かってくれるから。

 

でも甘かった。人の悪意は止まらなかった。

私の口下手が反感を買い、クラスから排斥された。別にそれは良かった。そもそもに興味を持っていない。どうでもいい烏合の衆には意味も無かったから。

でも奴らは違った。あろう事か私の幼馴染にまで手を出そうとしたのだ。

許していいわけがない。許されるわけがない。……そうだからこそわたしはその縁を自らの手で切り落とした。落としたはずだった。

 

『さぁね。うじうじ俺は言えないよ。……隣には居るから頼ることぐらいはしてくれ』

 

その先は知らない。そう願は私の隣に座ってくれた。

全部全部切ったのに今思い出せば当時の自分を殴りたくなるほど酷い言葉を投げかけたと言うのに、願はそれでも変わらず隣に居てくれた。

 

『志歩。遅かったね。一緒に帰ろ。』『ここのラーメン美味しいらしいよ?晩御飯がわりにしよっか。』『うん…うん。ここ上手くなってる』『流石志歩凄い!』『別に雫さんとかは御免。俺は志歩が美人だと思うから。』『?…俺がやりたい事だから。』

 

……うん。うん。でも私だけじゃ足りなかった。

結論から行くなら願は倒れた。過労と軽度の栄養失調。

今の飽食の時代。どうして願は栄養失調になったのか。その答えは簡単だった。

毎月、願に渡されるお金のその殆どが咲希のお見舞いや、一歌や穂波、私との娯楽費に消えている。……それでもやっぱり残酷なことを言うなら前者の負担が大きかった。

 

『……どうしてそこまでしたの??』

 

『見たの?』

 

『私が質問してる。答えて。』

 

『…………お金の使い所って奴だよ』

 

……っ!!わたしはその瞬間。激情という感情を知った。

相手が弱っているとこ言うこともお構いなしに、私の手は願の襟を掴んで顔を近づける。

 

『ざけないで………』

 

『どうしたの?志歩?』

 

『ふざけないでっ!!……なんで、なんでっ……!!』

 

どうしてそんなに自分を蔑ろにできるの。どうして私たちには何も言わないでいるの。私たちは貴方にとって庇護の対象でしかないのか。

きっと泣いていたのだろう。あの時、願に叩きつけた激情は今どうなっているか定かではない。……でも少なくとも彼の心に残ってくれてると良いとは思う。

 

ああ。だからどうかお願い。

 

一人で、一人で遠くまで行かないで。

 

私を置いて行かないで。

 

 

 

 

それでも願はまるで幻のように。

私たちの想いとは裏腹に。それを裏返すかのように未だ願の心にはLeo/needの歌が響いていない。私たちの想いはまだ願に届いていないのだ。

 

『きっっっっっっっっっついでしょ』

 

……いつの日か言われた、私たちを“そう言う目”では見てくれないという声。

でもきっと彼は気がついていたんだと思う。あの場所に私たちが居るってこと。

だって私が願の現在地ならある程度分かるっていうのに、逆の話が無いわけがない。事実、何度か隠れていてもすぐに見付けられたのが良い例だ。

 

そっか。でも良いよ。私にそう言う目で今は見てなくてもさ。

絶対に絶対に振り向かせてみせるから。…そうだから手始めに……

 

『私が貰っちゃおうかしら〜?』

 

『あはは。冗談はやめてくださいよ〜』

 

は??……は??

え?私たちの事好きじゃ無くて?お姉ちゃんにはそんな顔で??え???

ああ。うん。もう良いや。今まで必死に我慢して、落とそうって躍起になってきたのが馬鹿みたいじゃないか。

今の私が怒ってるからなのか願は簡単に押し倒せた。

本当に…願は昔っから無防備極まりない。一度寝たら耳元で騒ごうが起きないなんて本当に無防備だ。……私たちに鍵を貸しておくなんて更に無防備だ。誰から言い出したか知らないけどこれで勝手に入れるの。みんな勝手に色々しているの知っている。

 

『いつの日か。私を美人だと褒めた事。有ったよね。』

 

リボンを取る。上着を脱ぎ捨てる。シャツのボタンを上から外し始める。

お姉ちゃんと比べれば貧相で恥ずかしい。でもこうでもしないと願は私たちを意識さえしない。

 

あとはもう最悪だ。わたしはあと少しで取り返しのつかない所まで行きつくことになってしまう所だった。

ああでも本当に取り返しのつかない所までしてしまったのは間違いない。

でも、でも何で……まだこの状態になってもなお私の心配をするの?

ねぇ。罵ってよ。恨み事吐いてよ。私たちはまだ貴方にとって庇護の対象なの?

私たちはまだあなたにとって……背中を預けられる存在で居られないの??

 

だからせめて決めたのです。

 

貴方の隣に、そして貴方が背中を預けられるような。

 

貴方がその抱え込んでいる物がいずれ下ろせるように。

 

……だってわたしは、私たちは貴方のことが大好きだから。

うん。今日はさ。ここまでだったけど絶対にあの3人には負けない。

彼の隣は昔から私のだ。その下位なら融通してあげなくもないけど。今更になって彼の隣を恋焦がれるなんて烏滸がましい上に浅ましい。…あんだけ彼を振り回しといてさ。まあ私も人のこと言えないけど。

 

「大好き」

 

本当にさっきまでの加害者の前で呑気に寝るなんて、私じゃなかったら据え膳って考えてもおかしくない。本当に、狼だと分かっておきながら羊が何の害もないと信用し切って寝ている物だ。……うん。少しイラっとは来る。

 

「……大好き、大好き、大好き……」

 

だからこそ私は意趣返しに愛を囁く。どうか。どうか離れないでと。

 

 

 

 

⦅外夜 願side⦆

 

きっと幼馴染という枠の中で挙げるのならば志歩が一番最初に上がるのだろう。

だがその美しい銀髪、そして美貌が自分の苦い苦い過去を想起する。

いや。これはもはや記憶でさえ無い。ただの呪縛。

……ああ。でももし戻れるのならば……

 

朝起きたら、志歩が馬乗りで座っていた。

本当に寝ることに関しては、自分でも億劫になる程だ。一度寝たら一定時間目を覚まさないなんて本当にどうかしている。前世でも…うん。これぐらいは酷くなかった筈。

 

志歩の家に呼ばれて向かう。夕日が降る街を疲労感なく歩ける。

それだけがなぜか懐かしくて、哀愁と共に仄暗い絶望が背中に目をつける。

 

志歩と会う前に、志歩の姉である雫さんと会ってしまった。

やっぱりこの世界はどうもこうも優しい人が多すぎる。

だから本当に…慣れない。優しすぎるから。その優しさに溺れてしまえばきっと…

でもそれは赦されない。薄汚い手で救済を受け入れてはダメだから。

やっぱり、アイドルと素人の自分からしても魔境な所で輝きを維持できる人だ。

意思の格が違う。瞳に宿る炎の熱量が違う。……ああ。でもそんな芯を曲げない意思の強さは本当に志歩との血の繋がりを感じてしまう。

 

あり得ない。あり得ない。志歩との力加減で負けるなど今まで一度もない。

だと言うのに、何故俺は投げ飛ばされている?何故、志歩に馬乗りにされている?

ああ。止めてくれ。後生だ。止めてくれ。こんなところでお前の人生を棒に振らないでくれ。

これから輝き羽ばたいていけるはずのお前が俺なんかに使わないでくれ。

俺が汚れるのはどうでもいい。そもそもが汚れている。でもお前が俺のせいで汚れるのは我慢ならない。

 

止めてくれ。止めて、辞めて、退めて、ヤメテ

そんな目で、そんな輝く目で俺を見ないで。

 

俺を置いて、俺に見向きもしないで何処までも飛び立って。

 

 






外夜 願

幼馴染達が揺らす綱の上でギリギリ綱渡りを続ける被捕食者系オリ主。
ニブニブの実の全身クソボケ人間。幼馴染の良さを素面で言ったり、付き合って見たいな(意訳)と言ってるのに、『こんな自分が烏滸がましいよな…(意訳)』とクソボケムーヴだけは天才。最早天災。
今回危うく美味しくいただかれそうになったところでセーフ。ちなみにここで美味しくいただかれると、実はhappy endだったりする。
前世?過去?……さぁ知らない子ですね。ただ言うならばもし“Leo/need”という物語でラスボスを決めるのならば、この物語では願がラスボス。



日野森 志歩

実は幼馴染で一番正妻に近い子。そして病み度が一番高い子。
まあアイドルやってる姉が居ても、自分が一番だとずっと居てくれる異性の幼馴染とかどう考えても好意不可避。ちなみに原作だとツンデレ系一匹狼のはずが、今作だと、ヤンデレ系(願に)忠犬になってしまった。
まあでも作者的にあれは据え膳だからセーフ()
今回、脳破壊されて衝動的に願を襲ってしまった。まああのまま襲ったのが一番正解ルートに近いとは誰も知らない。


好評であれば続きを。

次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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