「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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いやぁもうはい。大体察したと思いますが今回はかの有名な嫌われ薬シチュです。
大体ここのレオニを知っているのなら嫌な予感しかしないでしょうがまあ曇らせです。

しかもただの曇らせじゃねえぞ……超ド級の曇らせ。ド曇らせだっ!!

とまあ冗談は置いといてこういうシチュ書くの初めてなんで、なんか違うな…と思われればブラバしてください。
いつも通り、設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定注意です。


願「嫌われ薬……?」

 

 

その日は、朝から不思議な違和感に襲われていた。

まるでボタンを一つ付け間違えたかの様な違和感。何も違わない、何も変わらない静かな朝の目覚めに自分は不思議と“物足りなさ”を感じてしまっていた。

 

(…………………??)

 

寝ぼけ眼を擦りいつもの様に朝の準備を終えてリビングに入ってきた時、その理由が何となく理解できた。……そう。いつも朝には家に居る筈の幼馴染たちが居ないのだ。勝手に上がっているだとか今更だし、何かと言いながら幼馴染たちに心を許している願にとって今日の様な誰も居ない伽藍堂な家というのは中々久しぶりで珍しいモノであった。

 

「なら、まあ良いか」

 

別にこういう日もあるさ。そう呑気に考えた願は手慣れた仕草でお湯を沸かしてそのままソファーに座り込んだ。“前の自分”は平日の朝に朝食はあまり取らない男だった。その代わりにこうしてホットコーヒー1杯とニュースを見てから動く。それがかつてのルーティーン。インスタントしか無いがこの静寂な空気とほのかに香るコーヒーの匂い。そして窓から入ってくる朝日に願は、久々の1人を満喫してしまっていた。

 

「………ん?あれ、もうこんな時間か」

 

ニュースを読んでコーヒーを飲んで終わらせる筈だった朝の時間は誰もいない事をいい事に、願は今まで積むだけ積んでいた本を開いて朝の読書タイムになっていた。制服だけは皺にならない様にとだけ気をつけているが、こうして脚を投げ出している姿なんて人には見せられないと苦笑する。

 

「間に合うかな……」

 

本を元の位置に戻し、願は立ち上がる。想像以上に読書に時間を割いてしまったらしい。今から向かってギリギリだろうか。走って行くべきだろうかなんて考えながら願は足早に家から出て、走りだしたのだった。

 

 

 

 

「……はぁ、はぁ……」

 

心臓に悪い。生憎とこの身体はピッチピチ(死語)の十何歳だが、もう心はおじさんだ。幾ら若いからと言っても朝から全力疾走は死ねるとショートタイムが始まるギリギリに滑り込んだ願は過呼吸になりながら机に伏せる事になった。

 

「おい…大丈夫かよ……?」

 

「だいじょばない……おえっ……」

 

ショートタイムが終わり、いつもなら余裕を持って来てるはずの願がギリギリに滑り込んだ事に心配した彰人が心配そうに近づいてくる。まあ勿論、グロッキーになってる願は胃からコーヒーが逆流しそうになってると腕枕で机に伏したまま答える以外無かったが。

 

「一体何で遅れたんだよ?……ああ。いつもの、か?」

 

「いや。むしろ逆だ」

 

願の周囲には願にガチでほの字である幼馴染が4人いる事は彰人がよく知っているというかむしろ怖いぐらいに知っている。今日は本格的に修羅場になったのか、同人誌的展開が発生したのか出亀歯気分で願に聞いたのだった。

 

そんな彰人の下世話な笑みとは対照的に青ざめた顔で解説をする。

今日はどうやら全員の用事が絡んで、朝は1人だったからか読書していたら時間を忘れて全力疾走して来てしまったとの事である。

 

「いや……うん。まあ……」

 

「?どうかしたか?彰人」

 

特に何も無かった事を安堵してやれば良いのか、それとも何か嫌な予感がするのを伝えたほうがいいのか。歯切れの悪い返事を返すのを願が見過ごす訳がない。……そう、彰人はそんな願の話を聞いて嫌な予感がしているのだ。或いは虫の知らせというべきか。

 

今までずっと続いた事が今日だけ突然無くなる。

日の巡りと言われればそこまでだが、何故か彰人はそれだけでない気がした。

 

「……それ、本当に───────」

 

「外夜君はいるかい!?」

 

重々しく口を開こうとしたその時、教室に雪崩れ込んできた三人が居た。文字通り血相を変えて飛び込んできたのは変人ワンツーと草薙さん。いわゆる神高に在籍しているワンダーランズ×ショウタイムのメンバーがこの教室に雪崩れ込んで来たのだ。

 

「良かった無事か!!!」

 

「司くん!待てっ!!身体は大丈夫でも心がどうかまでは……!」

 

「そんなことより急いで土下座でしょ!!早くっ!!」

 

「何なに何なに何なに??」

 

一カメ。滑り込んで来た司先輩が肩を掴みかかる感じで飛び込んでくる

ニカメ。その後ろから類先輩が司を静止する様に吠える

三カメ。いつもなら物静かな草薙さんが2人に怒気を露わにしながら頭を叩く

四カメ。混乱する願

とまあ一瞬で混沌と化した周囲に流石について行けないのか願も混乱を隠せないで話を聞いて行く。どうやらワンダショのメンバーが朝一番に願に会いに来た理由はずばり“体か心を痛め付けられていないか”という心配らしい。

 

この人たちの中で自分は強盗にでも遭ったというのだろうか。

朝イチから非常に不穏な事を言うものだと流石の願も眉を顰めてワンダショ…もとい変人ワンツーの話を聞く事にした。

 

「……“好意増強薬”と“好意反転薬”ですか」

 

「………バカじゃねぇの?」

 

「今回ばかりは同意」

 

どうやら変人ワンツーが言うには変人ツーである神代類の発明品である二つの試験薬が原因だと言う。理論は長くなるため省略するがその薬は読んで字の如く、飲んだ人の好意を増強する薬とその好意を悪意に反転させてしまう薬を製薬してしまったのが始まりである。

 

聞き慣れない薬(当たり前だが)を前に媚薬みたいなもんだろうか?と全く別の思考に飛んでいる願とそんないかにもな“お約束”になりそうな薬で大体の事態を察してしまった彰人が一言呟くと、まさに正論とばかりに処置なしとお手上げのポーズをする寧々。

 

「で、本来なら前者の薬を飲む筈だったあの子達が手違いで後者の薬を飲んでしまった、と」

 

「薬の効果じゃなくて………オレが悪いんだよ。間違えた薬を手渡したのはオレのせいだ!!」

 

「流石に今回ばかりはどう弁解しようもないよ…好きにしてくれ。全ての原因は俺にある」

 

本来、類自身も治験は前者の薬だけを使用するつもりだった。前者の薬はあくまで“増強”だ。酷い言い方をするならば50程の好意(上限100)を51か52程度に増幅する代物。だが後者の薬は50ほどの好意を-50に文字通り“反転”してしまう。そこから導き出される人間関係の崩壊などの被害を考えたら世には出しては行けない薬。生憎とこの薬たちは表裏一体の薬だったため、片方の結果さえ取れれば成功か失敗か分かる。

 

そしてそんな薬ができた事はまるで伝言ゲームかの様に類→司→咲希→レオニという風に伝わった。伝わってしまった。本来なら前者の薬を渡すはずが何かの手違いで後者の薬を渡してしまった。そしてそれをしてしまったのは兄である司。某〈戦士〉の様に泣き崩れる司と、五体投地の土下座から決して頭を上げようとしない類に願もどうすれば良いか頭を抱えた。しかもこの騒ぎを聞きつけて人も集まり始めている。最悪だ。

 

(どうしてそんな薬を作ってしまったの?という観点では類先輩が悪いし、よく確認しなかった司先輩も悪い、そしてそんな薬に頼るという意味では一歌たちも同罪と)

 

「……ちなみに薬の効果は何日で消えるんですか?」

 

「あ、あ……おそらく、1日と少しくらいで消えるとは思うよ」

 

願としては全員に責任があるし誰か1人が特定で悪いとも言えない始末、責めることも出来ず薬の効力が効く時間だけを聞いて、どうにか全員を立たせて解散させる。

 

「まあ…なんだ。オレの家、泊まるか?」

 

「まあ戸締りキチンとすれば大丈夫だろ」

 

流石に嫌っている相手の家まで来ようとは考えられない。と願は哀れみか同情かを含めた声で泊まるか聞いてくる彰人に答える。……ということはだ。今日は絶対に1人である事。不思議と願はそちらの方に惹かれてしまっていた。

 

 

 

「きりーつ。気をつけ。礼!」

 

「「「「ありがとうございました」」」」

 

その後は難なく時間は経ち…ああ。朝にこんな事があったからか今日の変人ワンツーの騒ぎは少なかったが、それを差し引いても至って変わらない日常だった。願としてもこれからバイトがある事実と晩御飯の準備を考えていたら、いつの間にかそんな薬の存在なんて忘れてしまっていた。

 

「おい。本当に大丈夫かよ……」

 

「流石に心配性すぎだって彰人。」

 

片付けを終えて足早に去って行こうとする願に彰人が朝と変わらない不安そうな顔に、当人以外が1番神妙な顔しているなと何故かおかしな笑みが浮かんでくる。話を大体聞いたのか傷ましそうにチラチラと見る草薙さんや白石さん、冬弥の顔を思い出せば本当におかしな事を言い続けるなと首を傾げる。

 

高々1日だけなら酒に悪酔いしているのと大して変わらない。

感情が逆になるなら、しばらく親しい自分は近づかなければいい話だ。

 

 

「おつかれっしたー」

 

そうしてバイトを終えていつもならセカイか練習場所にいる幼馴染を迎えに行くが今日はしなくていいと思い出し、取り出したスマホをしまったその時だった。スマホからホログラムが浮き出てそこからミクとGUMIが顔を出したのは

 

「……どうかしたの?」

 

『それはこっちのセリフだよー!』

 

『大丈夫かどうか聞きに来たの』

 

出て来たるは幼馴染たちと創り上げたるセカイ。教室のセカイのミクとGUMI。バーチャルシンガーたる彼女たちは基本的に現実に顕現することは出来ないが、こうして端末を媒介に姿を現す事が出来る。そうして現れた2人は、心底慌てた様に現れる。

 

曰くセカイの基盤が揺れているせいで、一時的に各端末に身を潜める事にしたらしい。その中で1番空き容量が大きいのは願のスマホ。というわけで2人が身を潜めていたのだが、願がスマホを開くのは朝とこの時間のみ。どうしてこうなったのか事情を調査するために姿を現したというのだ。

 

『セカイって言うのは想いのカタチ。それが揺れているとなると私たちの存在さえも危うくなってしまう。』

 

「なるほど……でその想いと言うのが……」

 

『そう。みんなでもう一度一緒に居たいという想い』

 

なるほどと願は理解した。まさか好意反転薬と言うのがこう言うのにも影響してくるとはと願は興味深そうに事態を説明する。その“みんな”の中に願自身が含まれている事で発生したロジックエラーみたいなものだ。一緒に居たいという想いは互いの好意がなくては産まれないから

 

『………なるほど。1日ぐらいで治ると』

 

「ああ。だから心配しなくていい」

 

『………………………分かった』

 

事態を把握した2人は頷くが事態を把握して納得したミクとは違い、GUMIはとても歯噛みの悪い返事をした後に姿を消していった。一体どうしたのだろうか。そう考えるも分からない物は今は考えるべきではないとスマホを仕舞い、歩いて行くのだった。

 

 

「ただいま、っと」

 

誰もいない静かな家に帰り、買ってきた食材を広げる。

誰もいないという事は自分を見る目は無いということ。詰まるところ、好き勝手するには丁度いい日なのだ。普段なら買わない様な竹輪、イカ、キムチなどなどをドサリと置き、鍵とチェーンを完全に掛けカーテンも閉め切って、わざわざ私服にまで着替えて買いに行ったら“ブツ”を取り出す。

 

冷蔵庫に残っている食材を適当に辛めに和えたり火を通したりしてソファーに座り、テレビを付けて動画配信サイトから手頃に楽しめる映画を観て“ブツ”を氷を入れたガラスの中に投入して割って行く。

 

カシュッ!!トクトクトク………

カラカラカラ……

 

「ジュースの出来上がりってな」

 

火を近づけたら火が付くかもしれない独特な匂いのするジュースだが、これは願から言わせれば度数が低いからまだジュースの範囲であると自己弁護してつまみをジュースで流し込む。(※未成年飲酒は絶対に止めましょう)

間違いなく火のつく烏龍茶でも良かったが流石にこの身体がどれぐらい酒に強いのか限界を知らない以上、色々と問題になると自重した上でこれなのだ。どう考えてもアウトである。

 

そこから先は語ることの出来ない醜態だ。久しぶり(尚、この体では初めて)に飲んだということで酔いの回りが想像以上に早く買って来た分を開け切る前にダウンし始めている。これ以上飲むのは不味いなという時点で願はソファーで横になり微睡み始めた。

 

(あ……皿とか片付けてない……)

 

まあ、ええか。

奇しくもそれが願の寝る前に思った考えである。だが願は寝る前に少しばかりスマホを見るべきだった。寝息を立てている願から少し離れた所に伏せて置かれてあったスマホには数十件以上の電話の着信履歴とメッセージが入っていたのだから。

 

 

[翌朝]

 

 

「…………ひえっ」

 

翌朝。少し早めに目が覚めたとして片付け、証拠隠滅と臭い消しの風呂と換気を終えてスマホを見ればなんとそこには300を超える着信履歴と800を超えるメッセージが入っていたのだった。

 

 

 

 

 

 


 

 

「………あぁ………あ」

 

嗚咽が漏れ出る/そんな事許されて良いはずがないのに

ただ涙が浮かんでくる/そんな資格あるはずないのに

後悔だけが胸を締め上げる/ごめんなさいごめんなさい

 

絶望と憤怒と嘆き、後悔だけが胸を締め上げる。吐きあがってくるこの苦しみをどうにか噛み締めて飲み込む。私に、私たちにそれを吐き出す許しなんて存在しないと分かっているから。

 

「ちがう、なんで……私は、わたし、は」

 

出てくる涙を拭うことも出来ず、ただ倒れ伏す。頭を抱えて耳を塞いで。それでも消えない願を嘲笑った自分の声がずっと鳴り止まない。ずっと、ずっとずっと聴こえる声にこの耳を壊せばきこえなくなるのだろうか。

 

「ちがう、ちがう、ちがうっ!!」

 

それは許されない。それは逃げだ。それは今の私以上に罪深い行いだ。

何もかも自分で、自分の手で捨てたくせに今更になって許しを乞うのか。今更になって自分の想いを自覚したのか。もし戻れるのなら、あの時の自分は自分の手でバラバラにしてやりたい。

 

「なんで……私は……」

 

分からない。訳がわからない。幸せな日常の1ページになる筈だったのに。

無残にバラバラになった、バラバラにしてしまった。わたしたちが、私がこの手で全部砕いてしまった。おかしな事をしてしまったと分かっている。どうしてあんな事をしてしまったのだろうか。

 

「残ってる……良かった……残ってる…!!」

 

ただ喜べるのは一枚。間違えてしまわない様に、絶対に消えない様に隠して残していたのはあの日撮った一枚だけ。それだけが救いだった。それが呪いだった。

 

「あはは…あは……はは……」

 

バラバラにしてしまった写真。ぐちゃぐちゃにしてしまったノート。

本当に無くなってしまいそうになったモノをどうにかかき集めて、涙で揺れて見えない視界でゴミの山になってしまったモノを見上げる。今の、私にそれを見る資格がないと知りながら。

 

「…………………」

 

謝りたい/そんな資格はない

どうかもう一度私と…/自分から切ったのに?

どうやって説明するの?/自分がやった事なのに?

カッターで切りそうになる自分を腕を、肌に触れた刃の冷たい感覚で我に帰る。会いたい。そんな資格は無いのに会いたい。私をどうか罰して欲しい。なんでも良い。もう顔を見たく無いと言われても、会いたい。

 

「…………あわ、ないと」

「ぜんぶ、ぜんぶ。せつめいしないと」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめん、なさい……」

「ゆるして…ゆるさないで。ゆる、して」

 

天に召しますかみさま

私はどうしてこんな事をしてしまったのですか?

 

 

 


 

 

 

 

「ひゅっ…!!」

 

また咳き込む自分の喉を締め上げる様に、首を絞める様に喉を圧迫する。

死ね、死ね、死ね、死ね、死ね。死んで、しまえ。こんな恩知らずな、こんなバカなアタシは最も惨たらしくどうしようもなく死んでしまえばいい。

 

「…………うっ……」

 

喉奥から上ってくる酸っぱいモノを袋に吐き捨てる。

もう出てくるモノなんて無いのにアタシの身体は、心は悲鳴を絶叫を上げる。

 

「……はぁぁ……ふぅぅ…はぁ……」

 

そんな事許されないのに。私たちは許されていけない事をしてしまったのに。

耳の奥でずっと鳴り止まないげんくんを嘲笑うアタシのアタシたちの声を前に抗う様にベットに、布団に爪を立てる。刺さらなくて、力が掛かってもアタシの力じゃシーツなんて破れなくて、なんの意味もないままベットを掻くかの様にもがき続ける。

 

「……………あ、ぁ」

 

遠くから聞こえるお兄ちゃんの心配する声。今だけは、今日だけは部屋に入ってこないその優しさが酷く暖かくて、自分の醜さが浮き彫りになってくる。1人の寂しさは分かっていた筈なのに。私のために多くの時間も、多くのモノも全部げんくんの無償の愛だった事を知っていたのに。

 

私はそれ時間を嘲笑った。

私はそれモノを唾棄した。

私はそれ無償の愛を冷笑の的にしてしまった。

 

「しねよ……しんで、しまえ……」

 

なんて恩知らずで恥知らずなアタシなんだろうか。

虚ろに過呼吸になる自分の息も絶え絶えに立ち上がる。やってしまった罪は罰がないと。罰がないとアタシはげんくんと一緒にいる資格なんて、ない。

 

「………いかないと」

 

なんでも良い。どうなっても良い。

やってしまったこと、全部、全て、全部許しを乞わないと。

許されなくても、アタシは行かなくてはならない。

 

「いかない、と」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「わたしは、わたしは……」

 

 

 


 

 

 

「……………………」

 

昨日の自分はずっと思考にモヤが掛かっているみたいだった。

嫌いたく無いのに“何故か”私は願への悪感情が消せなくなってしまった。ずっと一緒に居てくれたのに、ずっと私の隣に座っていてくれたのに。何故か私は昨日だけそれを“余計なお世話”だとか“特に何もしてくれなかったくせに”とか。全く見当違いの怒りと憎悪が胸の中を支配していた。

 

勿論そんな感じでまともにベースの音が出る訳がない。

隣に誰もいない。隣に温もりがない。それだけ、ただそれだけだと言うのに私の手は動かなくなってしまった。私のベースはまるでそんな状態で弾くことは許さないとばかりに碌な音が出ないまま時間が過ぎていった。

 

『…………ふぅ』

 

“何か”が欠けている。“何か”が今の自分に無いのだ。

この想いのせいで、私の手は動かない。でも不思議とこの“何か”を捨てたいとは思えなかった。だけど怒りと憎悪だけが募って行く。それだけが苦しい。それだけが悲しい。だから、これはせめてもの抵抗。

 

『おねえちゃん。今日だけ一緒に寝てくれない?』

 

『あら!…ええ。おいで!しぃちゃん』

 

願への想いを、願との思い出ばかりある自分の部屋には帰らないで一晩お姉ちゃんと過ごす。それが今の私に出来る最低限の抵抗。今日は誰とも会う気にもなれなかったからレオニの練習自体無かった。

 

これで良い。何も間違えてない筈。

そしてその答えは───────今日、答え合わせが出来た。

 

「………はぁ、はぁ……はぁ……」

 

まるで悪夢。悪い夢、というより悪い現実だったからタチが悪い。

昨日の自分を客観視すると気持ちの悪い怒りを願に押し付け、勝手に怒っていた本格的にヤバい人だ。救える救えないでは無い。アレが自分だとは認めたく無い。

 

「ふぅぅぅぅぅ…はぁぁぁぁぁぁ」

 

何もしてない、何もしない事を抵抗にした私だからまだこれぐらいで済んでいるとなると他の幼馴染の被害が凄そうだと死にたくなるほど自分に向かっている憎悪を噛み砕き目の前においていた鏡に拳を叩きつけ、深く息を吐く。

 

「…………よし」

 

謝ろう。全部、全部、全部。昨日浮かんでしまった怒りも全部。

願に言って、罰を下してもらおう。きっとそうしないと私は私でいられる自信がない。そうやって立ち上がり私から出た涙を拭って歩き出した。

 

「行かないと、行かなくては」

「だって、だってそうしないと。」

「私は、願と合わせる顔が、ない」

 

 

 


 

 

 

「ふーふ、ふーん」

 

結構ザックリ切り落としてしまった髪の後を見て、これぐらいで足りるだろうかという気が出てくる。代わりにわたしはベリーショートぐらいになってしまったけど別にこれぐらいで済むのなら問題はない。

 

変わってしまった頭の軽さに少しだけ過去への未練に想いを馳せながら、私はそれを封じ込める。1つの箱に集める様に集めた恋慕を縄でグルグル巻きにして、その上からさらにチェーンと大きな南京錠で封じ込める様に。そこまで縛るイメージをして、その上でまだこの感情が湧き出てくる。

 

「……………ガリッ………」

 

はしたないと分かりながら爪を噛む。

私は絶対に裏切ってはいけない人を裏切ったのだ。裏切られる辛さも、周り全てが敵になる苦しさも知っていた私が、あろう事かそれをずっと、ずっとずーっと味方でいてくれた人にしてしまったのだ。

 

「……………………」

 

頭を抱える。狂いそうになる。

1日。されど1日。24時間、1440分、86400秒。もし戻れると言うのならこの時間の私を◼️してしまいたい。ぐちゃぐちゃに、ぐちゃぐちゃにそれでようやく私は私である事を許せる。

 

でも、時間なんて巻き戻らない。

 

「分かってる……分かってる。けど……っ!!」

 

嗚咽と共に苦し紛れの言葉が出てくる。

それはあり得ない。時間が巻き戻るなんて奇跡は無い。あの日、あの時、間違いなくわたしは願を裏切った事。それが変わることはないからだ。

 

だから、せめて償いを

 

「ふふ……銀貨、三十枚だもんね」

 

私の髪で銀貨何枚分だろうか。二十とまではいかなくても十ぐらいの値打ちになってくれないかなと切った髪を見て考える。……足りない分は血や目で足りるだろうか。

 

「ねえ、願?」

 

なんでも良い。わたしに貴方にとって値段がつくモノであるのなら、なんだって。

 

 

 

「あなたはわたしにどれほどの値打ちを付けてくれますか?」

 

 

 

 





もれなく、全員ハイライトバイバイ。
嫌われていると言う事でどうなるか心配した電話が一向に掛からないしメッセージにひとつも既読が付かないとなった時、心配されるべき事項を挙げろ。……まあその当人は楽しそうに晩酌してたんスけどね。


[プチセカの調査記録]

File-2
学名:レオニミクスキー
セカイ目プチセカ科レオニ属ギタボ種

解説…
セカイ目プチセカ科…通称プチセカの中のレオニ属が暮らす“セカイ”のリーダーではないかと言われて来たのがこのレオニミクスキーである。生息域は各個体の“セカイ”中心だが、他の属のプチセカとも活発的に交流する事が確認されている。

その姿は黒髪黒目の雌。青を基調とした様相が最も多く確認されている。

その性格は長くクール系ではないかと言われていたが、最近の研究によってどちらかと言えば内気でシャイであるが大事な仲間であるレオニ種の危険を察知すれば誰よりも勇敢に前に立つと言った二面性から、非常に仲間想いの種では無いかと言う研究結果が出ている。

ミクスキーと学名にもある様に、バチャシン属ミク種に強い好意を抱いている事が確認されている。どうしてバチャシン属ミク種にだけ強い好意を抱くのか。それはしばらく長い間研究されていたが、最近ではその行動が推しを前にしたオタクに近いことから、重度のミク種のファンでは無いかという説が最も有力である。

好物は焼きそばパン。レオニミクスキーを飼うのならば安心できる場所に焼きそばパンを置いておけば簡単に釣れるとまで言われている。そして忘れていけないのはバチャシン属ミク種の歌である。CDなんかを渡してあげるとより効果的である。

そしてこれはあくまで通説だがレオニ種の中で特にミクスキーがクソボケトウヘンボクと最初に会えるのではないかと言われている。それは一体どう言う理屈なのかこれまで数々の研究者がこの謎を解き明かそうとし、敗れている。そのためこの出会いは星の巡り合わせという運命では無いかとまで言われる。
レオニ属とクソボケトウヘンボクが心から通じ合った時、決して色褪せず心を離さない誰もが感涙する様な音楽を奏でるとも言われている。

ちなみにだが亜種としてクソボケトウヘンボクを愛して病まない状態になってしまったレオニヤンデレクソボケスキーという種も存在していたりする。


感想、評価お待ちしてます。


次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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