「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後… 作:ネマ
力尽きた。頑張った。完結編これで架空イベントも、願の前世の悩みも終わりです。
どうか少女達の手が届いたのかどうか。その目で確かめて祝福してあげてください。
いつも通り、設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定注意です。
女の子の泣き顔もいいと思うけど、苦難ながら上手く行ったハッピーエンドも良いよね。
第七話 果てしない場所で何か見つかりましたか?
「願っ!!!」
声が静寂を切り裂いた。想像さえも、いや想定さえしていなかった自分を呼ぶ声に意識が持っていかれる。何故ならばその声は…願が今まで一番聞いていた声たちだったから。
━━━ああ。本当に、本当に最悪だな。
話を一時間ほど前、Leo/needたちに視点を合わせよう。
最初に願の姿を捉えたのは志歩だった。
願の現在地が思わぬ形で分かったのはよかったものの、その距離は馬鹿にならないほどであり公共交通機関を使って数時間、さらには不規則に動き回る願ということもあって完全に捕捉できたのは彼が駅の構内から出て切符を通した所だった。
『……!がっ………』
『咲希ちゃん。今はダメ』
勿論、その時点で声を掛けて静止をしたかった。だが勿論それに待ったを掛けたのは穂波だった。曰く、今声を掛けて仕舞えば私たちが追っている事がわかってしまう。それは唯一の利点である願の場所がわかって私たちの現在地がわかってないこと。…もし願が逃げ出せば、私たちが最短距離で追える事が向こうもわかってしまう。そしてもし、スマホをデコイにされたら見失ってしまうということ。
『だから今は……逃げられない場所に行ったら捕まえよう?』
『………うん。そうしよう』
かと言って誘導の方法なんて知らないし、もしできても気がつく。
距離は確実に詰められているのだ。何処かで必ず逃げられない場所に行くはず。
そう、そしてついにその時が来る。
『………………………』
『っ…まずいんじゃないの?!』
『たしかに…変なことしないよね……?』
その場所は━━海。荒れているわけでもなくただ人気のない海辺。
どこかに行くわけでもなく、何かするわけでもなく、ただ静かに人気のない海辺にたどり着いてしまった。勿論、岩陰さえあれど砂浜だ。四人全員が隠れられる場所となると…少し離れてしまったのだ。
だけど…一歌たちの希望とは裏腹に、願は靴を脱ぎ靴下のまま海に近づく。
『………もっ…もう……!!』
『まだっ…もう少しっ……』
正直、少女たちは海に足を入れた時にはもう飛び出して確保してもいいんじゃないかと思っていた。だがそれでもまだ何か違うと思いたかった。想っていた。
『………本当に、いい日だ』
でも願の一言はその全てを打ち砕いた。
笑っていた。微笑んでいた。聞いたことのない清々しい声で、笑っていたのだ。
私たちが今までに知らない様な、聞いたことのない様な声で彼は嘯くのだ。
どう見えたのだろうか。とある少女は、それを寿命間近の老いた人の様な。とある少女は、蝋燭が消えるほんの一瞬燃え上がる炎の様な。少女は、音が消えるほんの一瞬の残響の様な。少女は、静寂な水に出来上がった一瞬の波紋の様な。
何故かとても物悲しく、それでも何処か期待をしている相反する声に、少女たちは走りだしたのだった。
「…………………みんな?どうしたの??」
その登場に願は一瞬驚きさえしたがやはり年の功とは馬鹿にならないものだ。
すぐにその感情を隠し、いつものように微笑んでいる。今のそして昨日の惨状さえ知らなければいつもの様に話し込んでいたのだろう。だからこそその異質さが少女たちの心に寒い空気と、緊張感が流れ込んでくる。
「……願こそだよ。どうしたの?学校休んで。」
呑まれかけた。誰よりも早く、願に問い返せたのは一歌だった。
咲希も志歩も穂波も、戻るのに時間が掛かった。そう、願はただ“いつもの様に”聞いただけなのだ。だからこそ少女たちは混乱した。今までのセカイでの出来事も、今願が海に沈もうと動いていることも、まるで全てが何でも無かった様に、私たちが勘違いしていたかの様に思えてきてしまうから。
「そっちこそ」
「私たちはいいよって言って貰ってる」
暗に願は?と問うと、一瞬苦虫を噛み潰したかの様に表情が動いた。
そう。願は休む時はいつも必ず私たちに電話でもメールでも何か入れている。
だと言うのに、今回は失踪したかと言わんばかりに何もなかった。
色んな人を心配させているということは願も分かっている。
「………ああ。うん悪かったよスマホ充電出来てなかったから」
「それは昨日も帰って無かったらでしょ。」
「…………………………………」
願はスマホに充電が無いのだと、黒く光らないスマホを掲げて見せる。
でもそんなこと関係ない。そもそも昨日、家に居ないことは確定している事実だ。
そう志歩は願のアドリブを潰す。そう返されるのは予想外だったのか願の顔に少し驚愕が浮かんだ。
「何故……そうと?」
「げんくん、冷蔵庫の中、ご飯一つ多かったよ?」
「咲希………いや。穂波か。」
咲希が穂波の予想を声に出す。
思わぬ追撃に願は表情を変えるが、すぐに誰か推理する。願の食事情を一番よく知っているのは穂波の可能性が一番高い。
「……バイトの賄いが有ったからな。」
「ううん。無かったよね。」
「……………………………………」
「だって、その日のバイトは賄いが出ない所だもん。」
そうして、穂波はさらに願の嘘を切り捨てる。
願だってバイトの賄いがどうかとか口に出した覚えなどない。だと言うのにそれは真実だと、なんの迷いもない瞳で願を貫く。
「それにスマホ、電源無いってことも嘘でしょ。」
「…………志歩…何を言って………」
スマホに充電が無い。…ならばどうして位置情報が分かるのか。
単純で明快だ。願のスマホの充電が無いと言うことが嘘になる。
そして今でも、願の位置情報は今私たちの場所を示している。
「………位置情報」
「は?…………ああ。嗚呼成る程……っ!」
志歩がスマホを掲げて見せる。表示されているのは地図アプリ。そしてその地図に刺されている一本のピン。願は愚か者であろうとも痴呆ではない。
だけど疑問が残る。位置情報サービスと言えど誰にもそう言うのを送った覚えはない。……だが、願のスマホには一つ干渉する存在がある。
「…………ミク達か……」
そう。その存在とはセカイ。現実世界のスマホを媒体にこちら側に姿を見せることも出来る摩訶不思議な物。それがセカイ。現実離れしたホログラムのように姿を表せるのならば、スマホの一機能を利用することが出来ないとは考えにくい。
━━よくもまあ。やってくれたな。
願は基本的に感情を大きく怒りや悲しみに振る事は少ない。
表面上、喜怒哀楽と動かす事はあれど内心は水面の様に何処までも平坦であった。
だが、そんな彼であっても今回の一件は少し癇に障ったのだろう。
尾けられた挙句、これからのお楽しみという時に邪魔まで入ったのだ。激怒、憤怒まではいかないが、少しばかり願は怒りの感情に触れていたのは間違いないのだろう。
(ここからが正念場だ……)
誰とも言わず、少女たちは各自覚悟を固める。
初めてだった。願がそんなゾッとするほど冷たい目で見るのは。
初めてだった。願が怒るところなんて見るのは。
そういえば、と誰かが思い返す。喧嘩らしい喧嘩どころか口論だってしてこなかったな。と。
「それで、何が言いたい??」
「わかってるんじゃないの?願。」
微かに眉間に皺を寄せている願に対して、少女たちは不敵な笑みを崩さない。
少女たちにとって、これはほんの微かな対抗。
怒らない人が怒ると怖いとはよく聞く。今まさに少女たちが感じている事実であった。少女たちの体感温度はみるみる内に下がっていき、願の眼差しは新しい扉を開きかけるほど冷徹な物であった。こんな感じの願も凛々しくて良い…ではなく、今はそう言うことではない。
何も信じられない。何も信じたくない。
普段とは考えられないほど想いを剥き出しにした願が立っていた。
そこにあるのは怒りでも悲しみでもなく、ただ拒絶している。ただ、一人になりたいと泣いている。………ああ。ふざけるな。私たちを一人にさせまいと尽くしてきた貴方が一人で泣くことなんて許せない。隣でも良いからいさせて。
「セカイの様子。見たよ。」
「……そうかい。」
まあなんともセカイというのは便利であり忌まわしい仕掛けだとわかる。
セカイを持っている人間が大きな感情を発せばそのまま真っ直ぐセカイに伝わる。
5人で夢見たセカイと言えどそのセカイの空を、最も深い思い出の一つを絶望に染め上げるほどの願の負の感情の大きさは察して余るレベルである。
そしてそれが分からないほど願が慈しんだ少女たちは愚かではない。
「嘘は付かないで……願。死にたいんだね?」
「いっちゃん。ちょっと違うかも。」
正確には、消えてしまえればいい。
その方法に生死はそもそも前提にさえ無いという破滅願望。自滅願望。
誰よりも置いていかれたく無いのに、置いていかれてしまった少女が願が纏う孤独感を悟る。
「…………………………」
「更に言うと。私たちを愛してはいるけど愛されるとは思っていないよね。」
「穂波に付け足すならば、そもそもどう思われているかさえ分かってない。」
更に、願の殻を壊す。そう。願は愛してはいるが愛されるとは思っていない。
例え話だが、自分が作った泥人形を愛したとしても、愛され返されるとは考えてもいないのだろう。泥を捏ねて作った“何か”が動き出そうともそれが自分と同格だとは思わないだろう。極論を言えばそうだ。
愛にだけは、不感症を患わせるこの幼馴染を今こそその扉を壊すのだ。
扉が消えてしまうのならば、扉自体を壊せば良い。
誰よりも愛し愛されたがり屋の少女が願の輪郭を穿つ
一人を好んで、それでも慈しんだ少女が願の本質を見破る。
「…………………………………」
「願はさ。自分の生き死に興味を持っていない。むしろ自分が存在しない方が良いんじゃ無いかって思ってない……??」
そしてついに願の底が明かされる。誰よりも深いはずの絶望、その形は“自棄”。
自分がどうなろうと知ったことでは無い。いや苦しめば苦しむほどそれがマトモだと思ってしまうほど捻れた精神性。
だからこそどうでもよかった。自分に渡されるお金全てをお見舞いや幼馴染にその他諸々に費やして倒れたとしても、悪い噂を呼んでいた時の穂波や志歩に交流を深められたのは。だと言うのに、その全てが自分の自慰としか思っていない願も。
誰よりも平穏に近く、そして幼馴染の手を引いた少女が願の姿に触れる。
「……はぁ。本当に失敗した。」
願から、今までに聞いたことのないほど無機質で冷たい呟きが聞こえる。
願のオモイが自暴自棄の果ての破滅願望だとするならば、Leo/needの少女たちは差し詰め“自滅因子”と言うのだろう。願が育て上げた願の闇を祓う。その願の手を引き上げる破滅願望の天敵をこの手で育成していたとは、本当につくづく運の悪いことだと願は思う。
「正解だよ。まさかここまで明かされるとは思わなかった。」
願は少女たちを褒める。本来ならば願の本性は明かされることなく願が命を経った後であろうとも気が付かれず、そのまま風化するはずだった。でも献身的な少女たちは運命を覆した。そしてそれは好転に向かう。
「うん。間違い無いよ。死のうとした。」
「………………っ………なんでっ……!!」
まるで今日の晩御飯を告げるかの様に願はその事実を口に出す。
もう取り繕う必要も、今更偽る理由さえもないのだろう。
自分で自分の命を絶つこと。それは前世では出来なかった事。今世では前世の悲願を知っていたが故に、その絶望を伝えるメッセンジャーが自分だと思っていた。
その実、前世なんて痕跡は何処にもなく有ったのは多々ひたすらに広がるだけの空虚な未来。大人になって、老爺まで生きてきた知識が訴えるのだ。“なんの価値もなかっただろう?”と。前世数えて九十年。得ること出来ず失うだけ。実に実にくだらない演劇だった。それを繰り返すのならばいっそ
「俺はさ。たった一つだけ譲れない物があった…と思うんだ。」
「……………………」
きっと。取りこぼした人生の中にたった一つだけ忘れない物があると言うならば嘘になるのだろう。たった一つだけだとしてもその全てに捧げても良いと思った。
「うん。でももういいかな。満足した。」
少し考えればわかる話なのだろう。前世の痕跡その全てが無くなっているのならば、願の人生の起点である物は消えていると見るのが良いのだろう。
例え存在したとしても、同じような道に向かっていくのは見るに堪えないだろう。
誰であろうとも、自分と親しい人の死に様なんて見たくも無い。
「『サヨウナラ』しようか」
宵闇に揺られて願はとても優しげに微笑んだ。
「………………ふざけないでっ!!」
そんな事は許さないと。宵闇を星が貫いた。
「……………一歌??」
願は呆然と呟く。そうそれは失意を砕く一撃。由緒正しい平手打ち。
願の頬に一歌の平手打ちが炸裂する。願の呆然とした顔とと対照的に、一歌はまるで泣き出しそうに、願の服の襟を掴んで顔面を近づけ合う。
「なんで勝手に一人で決めるのっ…なんで勝手に満足したって、」
その声は次第に震え、嗚咽が混じり、涙がこぼれ落ちる。
こればかりは願も困ったと困惑顔で一歌の目元を拭う。
そんな優しさに一歌は溺れそうになるが、それは違うだろうと歯を食い縛って目尻を上げる。そう虚栄でも良い。願を繋ぎ止める鎖を。
「私たちが…私たちがどれだけ願の手を煩わせていても、嫌われていても、」
ずっとそうだったのだろう
願が何に悩んでいるのか。そもそも悩んでいるのかさえ知らなかった。
だって、どうして私たちに優しい言葉をかけてくれ続けたのかさえわからない。
一度はバラバラになった幼馴染。一度は仲違いをした私たち。
それでも私たちはみんな願の事が大好きなのです。
ずっと手を引いてくれたアナタ。
正解みたいな一番星。遠い遠い空で輝いていたアナタ。
「でもそれでも━━━━っ!!」
今必要なのは、どれほど気取ったコトバでも情動を揺らすようなコトバでも無い。
ありふれた言葉で、盗んだ言葉で。ヒトから見ればとるに足らない陳腐なコトバで
私たちの愛を、私たちの恋を余すことなく声に乗せる。
「私たちは、私たちはずっと━━」
今なら言える気がする。今言わないと分からないだろう。
なにひとつ、誇れるような自分ではないけど。
なにひとつ、劇的な詩ではないけど。
「願が大好きなんだよっ!!」
願に抱きつく。そんな一歌に、先越されたねと言わんばかりに咲希たちが近づいて思い思いに願へ抱きつく。まるで信じられないものを見たと言わんばかりに願の意識は空になり、一歌たちを受け入れる。
「ぁ………………」
この世界に真に願の同族となる存在は存在しない。
誰も、願を愛さない。誰も、願を受け入れない。
誰も、願を理解しない。誰も、願の手を繋がない。
報いる者も、同行する者も、讃える者も、同感する者も、同情する者も。
その全ては存在しないのだと。一人、誰にも共感されないのだと。
そもそもこの世界自体を見切っていたのだと、願は理解していた。
「ぃゃ…違う…俺は愛されるなんて…愛する資格なんて」
もはや願自体なにを言っているのか定かではない。
愛し愛されることに資格など必要がないことなど自分がよく知っていた。
でも、それでも願は温かい幸せではなく、寒い不幸を望んだ。
誰も彼も、願がそんな不幸を背負わせることなんてさせないのだと想って手を引いてくれる存在さえも要らなくなったものだと捨てようとしたのに。
「愛に資格なんていらない。」
「隣に居るだけで温かい」
「これは私たちの“したいこと”だよ。」
「ねぇ。全部願が教えてくれた事だよ。…忘れちゃった?」
そう、何事にも報いを。
始まりが、始点がどれほど醜く穢れた物だとしても、その外夜 願の旅路は間違いなく四人の少女を救ったのだ。そしてその分は願の救いとなって願にも降り注ぐ。
「…………ぁぁ……そうか…そうだったんだな。」
結局のところ。前世という物は願にとって小説程度のものにしかならないのだ。
一束三文程度の喜劇で終わるような三流小説で売れる代物を大切に大切に抱きこんでいたからこその今までの苦悩。
そもそも、大まかの道筋までが老爺と外夜 願は同じなのだろうか?
いや。否である。あの日、少女たちにとっては新しい友を見つけたと無垢に手を引いた時点で“老爺”と外夜 願の道は大きくかけ離れるものとなった。
“老爺”が悪の道に染まった少年期と。
“外夜 願”が少女たちに尽くした少年期が。
同じものであると、誰がどう見ても否と言わざるおえない。
その時点で、もう前世とは似ても似つかないと願は今更気がついたのだ。
…なんとも遠回りをしたものだった。
「結局、独りよがりだったんだな……」
もはや願としては笑うしか他ない。
長年独りで悩み込み、死こそ救いだと言うところまで迷走したというのにそれがまさか“大好き”という度直球の愛の言葉で救われるなど、興も覚めるというものだ。
絶望の諦観が一番楽だとは知っている。だけど、こうも言われたのならば…全く。
「でも、嬉しかったよ。初めて喧嘩らしいことしたし。」
「うん!だってこれでもっと仲良くなれた気がしたもん。」
大人気なかったのは自分の方か。そう笑みを浮かべ、願は一歌の差し伸べる手を取る。その動作に、少女たちは少し驚いた後、何がおかしいのかクスクスと笑う。
「…さ。帰ろ。今日練習できなかったから明日付き合ってもらうよ。」
「お腹空かない…?美味しいもの食べて帰ってもいいんじゃないかなって。」
それ賛成ー!と声が上がる。
たしかにもう晩御飯の時間だ。昨日の夜から碌に食べていない願のお腹は空腹を訴えている。良さげな店を探して、少年少女は浜を去っていく。
その姿にはもう迷いなんて無かったかのように。
最終話 セカイを紡ぐ
これはその後の話だ。
結局、補導されるギリギリまで遊び倒したLeo/need達は責任を持って願が一人一人送り届ける事になった。蛇足ではあるが、司先輩と雫さんには微笑ましい物を見たかのように笑顔だったのが少し恥ずかしいような清々しいような。
「………………さてと……」
後ひとつだけ、願が片付けないといけない物がある。
こればかりは少女たちを巻き込めないと、深夜わざわざ確実に寝ているであろう時間に“untitled”を起動した。
“untitled”は教室のセカイの屋上直通の鍵。だからこそ、今は非常にありがたかった。こればかりはバーチャルシンガーたちにも出来る限り秘密にしたかった。
「居るんだろう。GUMI」
「正解。おかえりなさい願。」
コンクリートの地面だった屋上は、黒い彼岸花達が未だに咲き誇る花園となっている。それでもその彼岸花の黒い色が、前見た時と比べて悍ましさが無くなっている気はするが。
「後片付けに、しようか。」
「…………うん。」
セカイをこのままにしては置けない。暗幕が降りたかのような闇には、星や月が浮かんでいるが、それでもまだ数は少なくなったとはいえ燃え盛る星が落ちるのが見える。
もう絶望していないとはいえど、この彼岸花も放置することはしたくない。
「でも本当に良いの?」
「うん……答え…らしい物はあんまりだけど。」
苦笑しながら願は答える。
まだまだ答えらしい物は最初から無かって前世と今の自分は違うって認めたせいで漠然とした不安も生まれてくる。
でも、まあ失ったものだけじゃない。自分には信頼できるそんな幼馴染達がいる。
愛しているか、と言われれば愛している。それは胸を張って言えるだろう。
「………よかった。」
「GUMI?」
震える声を抑えて、GUMIが願を見る。
その顔は何処か喜ばしい物を見るかのように、何処か嬉しい物を見るように。
とても優しげに微笑んでいるGUMIがいた。
「そっか…そうだもんな。ありがとう。」
「うん……うんっ!!」
よくよく考えればGUMIが願の本心を無理矢理にでも明かさなければ、きっと何処かで限界を迎えた願がそれこそ何も知らせないうちに消えていた可能性が高い。
イフの世界ではあるが、願自身でも容易に想像できるあたりそれは筋金入りと言うことなのだろう。
さぁ話はここまでだ。歩いているうちに、願が初め暴走した中心にたどり着いた。
どちらかがどちらと言う前に、GUMIと願は片手を合わせ合う。
━━━━━お前は愛せない。お前は何も思えない。
心の中で黒い嵐が吹き荒れる。
━━━━━お前に共感は無く、また理解もされない
悲願、絶望、憤怒
━━━━━お前は苦しんでいる事でしか生を実感できない
ああ。お前の怒りは正しい。お前の嘆きは正しい。
愛したが故に全てを失った。愛したが故に絶望した。
━━━━━諦めろ。お前はお前には手を繋ぐ価値さえもない
お前のことは正直に言うと正しいとは思う。
だって、最初から理解さえしなければ悲しむことも嘆くこともなかったから。
━━━━━永遠に、永遠に。
お前は俺を呪っているわけでも、俺を恨んでいるわけでもない。
…そう。お前はずっと『責任感』で俺に言っているだけだ。
━━━━━独りっきりがお似合いだろう
あの喪失感に喘ぐ日々も、失った廃人のように生きる日々も。
俺がいや。二度とそんなことをさせないと。
お前はずっと“人生の先導者”として俺に忠告していたのだろう?
━━━━━………ならば何故。何故愛するのか。今更信じるのか
決まっている。俺が外夜願として、あの子達を愛しているからだ。
━━━━━そんな物。まやかしに過ぎない
まやかしだろうと。それでもこの胸に抱いた星空は、嘘偽りない物だ。
━━━━━………つくづく度し難い
それでもこれは俺の選択だ。自分が選んだ道なのだ。
━━━━━悍ましい。悍ましい。悍ましい!!お前は何を見てきたと言うのだ
━━━━━悲劇だ。全ては悲劇なのだ。我らは愛することで破滅する!!それが分からないお前ではないはずだ!?
俺とお前は違う。俺はそれでも、そうなろうともこの選択を間違えたのだとは思わない。思うわけがない。
━━━━━理解出来ない。もはやそれは理知的でさえない。
知っている。
━━━━━お前は狂っている。お前は破綻しているっ!!
逆に問うが、お前は前世で愛したことが間違いだったのか。
━━━━━ぁ。……ああ。そうか。
そうだ。それだけだ。文字にするならば男の…いや。外夜 願の矜持だ。
━━━━━………ならば勝手にするが良い。大馬鹿者め。
ああ。精々幸せだと胸を張れるようにするさ
━━━━━つくづく忌々しい。…………弟よな。
弟……か。さぞかし出来の悪い弟だろうな。なあ。兄貴。
セカイに降りていた暗黒の帳も屋上に咲き誇っていた彼岸花も。
その全てが、願とGUMIの中心に黒い球体となって集まる。
そしてその球体は次第に空に、空に浮き始め見えるギリギリの範囲で破裂する。
「花びら……?」
とても細長い花びららしい何かが、破裂した黒い球体の後からセカイに降り注ぐ。
色まではよく見えないが、夜空を写したかのようなとても美しい青と紫に彩られた花びらだった。
「ガーベラ………そう。うまく行ったのね。」
教室のセカイのどこかで、MEIKOは花びらを拾った。
そう。その花びらの形は“ガーベラ”。花言葉は『希望』、『前進』
「…………お疲れ様。」
「見てたよ!お疲れ様!」
「彼岸花も良かったけどね。」
「まあまあ。星空が見えるようになっていつものように…ね。」
後片付けも終わり後日談も夜遅いからと、最後教室のセカイに戻ろうと屋上を繋ぐドアを潜るとそこにはいつもの四人が待っていた。
「みんな………??」
そう。少女たちはきっと今日中に全部終わらせると見て、願がセカイに入ってきたタイミングでミクに伝えてもらうとしてたのだ。
「そっか………」
願は緊張の糸が解けたかのように微笑む。それを見て少女たちも微笑む。
今ここに、ようやく全てが元通りに解決したのだった。
そしてそれをセカイは優しく、そして少年少女達の未来を祝福するかのように夜空は瞬いていたのだった。
「……………………………うん。これでいいか。」
これは本当の蛇足。語られるべきではない幕の終わるほんの一瞬。
願は一人、家でペンを動かしていた。ノート一枚程度の紙に必死に書き上げていた。
そう。それは手紙。前世の、願が兄貴と呼んだ前世に向けての手紙。
どこかに届かなくとも、いや届かなくても今思うその全てを書き上げた。
勿論、これは然るべき時に燃やしてそれで終わりだ。
だけど、それでもこれは願にとっての一つの折り合い。ケジメ。
過去に縋ることも、過去に囚われることもやめた願の想いの一つ。
………だからこそこの手紙の書き初めにはこう書こう。
『拝啓、曼珠沙華の君へ』
あ゛あ゛終わったっ!!!簡潔っ!!これでイチャイチャが書ける(本音)
長きにわたる願くんの苦悩をどうもありがとうございました。
あっ。ちなみに第7話のタイトルにはレオニの曲の歌詞から頂いていたりします。良いよねこの曲。
頑張ったんでお情けでどうか感想ください(乞食)
あっ。untitledに合いそうな音楽でも良いですよ。それだけは正直作者も決まらなかったんで
外夜 願
幼馴染?大好きだよ、とあからさまに好意を隠さなくなった進化した主人公。
なおクソボケ度は上がっているのでまあお察しの通りで。
色々と苦悩はあるけど、色々と不安はあるけど、それでも未来を歩こうと決めた。
前世のことは言えてないけど、もうそれは完結したのだから。
俺の人生は、きっとそれとは違うのだろう。
Leo/need
頑張った。めっちゃ頑張った。
バットエンドルートの方が多いはずなのにその中で奇跡的にハッピーエンドを手繰り寄せた生粋の主人公達。
誰か一人でも願の本性を暴かなければ失敗していたとか言う裏話は封印で。
なお、今まで一方通行だった好意がクソデカ矢印をぶつけ合うせいで悶々とした日々を過ごすことになるとは今はまだ知らない。
GUMI
裏設定に願の破滅願望と、願の“幼馴染の成長を見たい”という未来への思いが混ざってセカイに顕現したというのがあった。
だけど、それはあまりに無粋だからとカット。ここで公表します。
見たい未来が見えて、幸せ。どうかこの日々が続きますように。
架空ガチャ:夜空のColeostephus myconisガチャ
白菊の聖者:外夜 願
強化前: 砂浜に靴を並べており、靴下のまま海らしき水の中に少しずつ進んでいる願。その表情には憂いなど一切ない微笑みのままである。
強化後:光差し込む十字架の下で祈りを捧げる神父服の願。その頭には荊の冠。地面にはIch brauche keine Erlösungと赤文字で書かれている
双月のグレートヒェン:星乃一歌
特訓前: 朝霧が立ち込める中、家に鍵を差し込もうと鬼気迫っている一歌。
着ている服にも何処か皺が有って、非常に急いでいる事が伺える。
特訓後:こちらを瞳を閉じながら微笑むシスター服の一歌。両手で抱えている天秤は壊れて、そこにアイビーの花と蔓が巻きついてる
真打登場!:GUMI
強化前: 教室のセカイのドアの縁に仁王立ちし、満面の笑みのGUMI。
その背にはベースを背負っている。ちなみにルカの制服の色違い。
強化後:彼岸花の花園に一人スーツを着ている無機質な眼差しのGUMI。その手に持つガヘルは振り落とさんと頭上に構えている。
《アイテムが解放されました》
名称:彼岸花のブーケ(レベル.10)
効果:外夜願の総合力を20%アップ。
詳細:ミク達が摘んでいた彼岸花をブーケにした物。そのブーケにはいつも誰かが水をやったりとお世話している。だけど忘れてはならない。このブーケは願の負の感情から生まれたことを。これが“彼岸花”になるか“曼珠沙華”になるか。或いは……
次回何書きましょう(最終的に全部書きます)
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