「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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遅れてすまねぇ……
はい。というわけで前回のコメント見てると、モアジャンはもう少し後かとって多かったんですけど、残念ながら脳破壊の深度が高いのはビビバス編だったり。

はい。ビビバス編。どうやらそこまで酷いことには……なります。
というかラストを除いて一番酷いかも。どうしてこうなった。
やっぱり作者は愉悦部員なのか。どうでしょうね?
簡単に視点が変わるのは注意です。

いつも通り、設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定・脳大爆破要素注意です。

WSSなのか分からない程度の地獄って本当愉悦。





if・伝説の道筋に目を触れて

 

 

「━━━━━━!!!」

 

「!!!━━━━━━」

 

感情と感情が歌という形を得て互いにぶつかり合う。マイクを握りしめ、互いを互いに煽り合う様に少年二人は歌に歌を重ねる。

 

「━━━!!━━━━━!!」

 

右手でマイクを持ち、何処までも声高らかに負の感情を乗せて歌い上げるその男の名前は“外夜 願”

スポットライトの光に照らされて夜空をそのまま髪に宿した様な髪が星空の様に煌めいているのに、歌声は何処までも心を闇の底まで引き摺り込もうとする魔の声。知らず知らずのうちに聞いている人に悲しみという感情を覚えさせるその技はまさに魔声というのに等しい声に間違いない。

 

「━!!!━━━━━━━!!」

 

その人を闇に引きずり込もうとする魔声に対抗するかの様に声高らかに男は歌う。左手でマイクを持ち、願を煽る様に身振り手振りで歌い上げるその男の名前は“東雲 彰人”。

一重、二重、幾重にも重なったスポットライトの直光は彰人のオレンジ色の髪を反射させ、日の光が反射しているようでどこか眩しい。

二人の声が混ざり合い、一つの音楽となっていく。盛り上がり方は一つの熱狂を生み出し、音楽という熱の大きさをその身で感じるのは願にとっても知らない事であった。

 

そう。ここは音楽に夢を預ける夢想者が自分の音をぶつけ合うストリート。そしてその無数の輝く星の中で一つ。“BAD DOGS”…最高の相棒だと拳を突き上げた少年3人が“ViVids”というライバルと出会い、何の因果か混合ユニットとして組む事になり、“ViVid BAD SQUAD”とストリートミュージック界の一世を風靡する存在になるとはまだ知らぬお話。

 

 

 

 

 

「外夜えもーん……」

 

「あえて聞こう……なんだい。彰人くん。」

 

ここは神山高校、その中の1-Cでの出来事。

先程まで生徒の中ではよく寝れると評判の授業が終わり、休み時間誰も彼もが思うがままに首を回したり欠伸をし身体を伸ばすと思うがままに眠気を飛ばしている。

 

「ノート見ーせて」

 

「わしも寝ていた。」

 

ダメじゃねぇか。と笑い合う二人に険悪な空気はなくどちらかと言えば相棒の様な、親友だと笑い合える空気がそこには有った。

猫撫で声で椅子に座っている願に話しかける彰人は、まだ寝ぼけているのか半目開きの願を見て授業中に願が寝るのは珍しいなと内心驚いていた。

彰人は一瞬、驚いたがすぐに原因を思い出す。そういえば…昨晩というか朝まで盛大に電話で騒いでいたのは俺たちだったな。と。

 

「でも今日の範囲はここだから……」

 

「マジか。流石。」

 

「お前マジで冬弥に感謝しとけ。」

 

えっ。これ冬弥製…マジだ。と隣で彰人が呟く。

そう。今日の授業を寝ていられる理由は親友で相棒の一人。青柳冬弥のお陰だ。

別クラスとあり今日の授業は冬弥のクラスでは終わっているのだ。どうせ彰人は寝るだろうから…と願に貸し出されたのが先程の休憩時間だったという事だ。

ちなみに、若きといえど徹夜は堪えたのか願もノートをちゃっかり写してから仮眠に入ったとか言う話は願の中で消えた。

 

「そういや…今日も行けるのか?」

 

「あ〜………」

 

わざとらしく小声になった彰人の願に対する質問に願は露骨に顔を顰める。

願にとってどう返答するべきかでメンバーからだけで無く、親父さんからも怒られる羽目になる。……それは“労働”。本質的にワーカーホーリックである願はバイトを多く入れてしまう癖がある。事実、一度働き過ぎだと同じメンバーの冬弥・こはね・杏・杏の父親に取り囲まれて白状した時には盛大な怒号が飛んだのは彰人も記憶に新しい。

だが、ただの怒号では無い。願がこのままだと過労死するかも知れないというレベルで身体を痛め付けているのだから願の自業自得という側面も有る。

 

「問題なし。そろそろ休まないと怒られる」

 

「…はは。そうだな。特に杏とかこえーもんな。」

 

これまでなら、願はきっと行けないか遅れるか早く帰るかと言っていた筈だ。

そんな願が。今はどうだ。休まないとと言う名目で“自分たち”を優先した。それが、それは今日一番嬉しい事だと彰人は思ったのだった。

 

 

 

『━━━━━━』

 

死にそうな、陰気くさい顔をしていた。音楽に熱くなるわけでもなく、スカしてクダラナイと見下してるわけでもなく、まるで幽霊の様にそこに立って聴いていた。

 

『………あいつ』

 

いつもなら、気にならない。

いや。アイツには注意していないと気が付かない影の薄さだというのに、何故かオレは興味が湧いてしまった。

その日は特別人が多く、歌う人も熱中する人も多い中でのソイツはそこにいる様で居ない奴だった。まさに、幽霊。まるで幽霊の様だった。

オレはあの日以降、アイツをよくイベントハウスの目立たないところで息を潜めて見ていることを知っていた。日に日にその眼差しが熱を帯びる様にスポットライトの当たる一点、ただ舞台の上を眺めていた。

 

『お前、歌えるのか?』

 

オレは覚悟のない奴が嫌いだ。たった一つに“熱”を掛けられない奴が嫌いだ。

だが熱も覚悟もあると言うのに、足踏みする人間を見るのは……いや。足踏みするアイツを見るのは違うだろうとオレはアイツに近づいた。

 

『……………古い歌でいいならば。』

 

近づいて理由も訳も忘れてしまった。いやそもそも理由なんて無かったのだろうか。ただなんとなく、アイツは歌えるんだろうと直感が訴えていた。

オレの予想通りにアイツは少し一巡した後マイクを受け取り、野次馬に乗せられ舞台上に乗せられた。その日のイベントハウスは小さい所だがオレの常連の所で気前の良い人が多く、その日も好奇心混じりでアイツが何を歌うのか見ていた。

 

『━━━━━━━━!!!!━━━━━━━!!』

 

オレは知らない歌だった。オレの聴いたことのない歌だった。

だけど、そんな素人なオレでさえもアイツの歌に込められた感情は伝わってくる。

涙を歌に、嘆きを声にしているかの様なそのアイツの歌は上手いと言えば平々凡々だ。だけど、それを有り余るほどの感情移入が、人を引き込む歌声がアイツがこのストリートにやってきたのはありきたりだが運命なのだと思った。

 

『………オレの名前は東雲彰人。お前は?』

 

『俺の名前は━━━』

 

外夜 願。それがアイツの名前。同い年だと言うのに、その歌声は感情そのもの。

その後冬弥とは少し一悶着あった様で、だけどその後仲良くなっているのだからそれを突くのは野暮というのだろう。…こうしてオレたち新生“BAD DOGS”が始まった。

 

 

『...半端な覚悟で言って良いことじゃない。あいつらは、オレ達の歌でぶっ潰す』

 

高校生に入ってからだ。オレたちBADDOGSはいい意味でも悪い意味でも注目されることになった。願の歌も負だけでなく人を煽れるように、冬弥ともオレともマッチしてさらに身体も成長して声の張りが一年前と比べ迫力が出る様になった。

きっと、丁度その時からだろうか。…お世話になっているカフェ&バー『WEEKEND GARAGE』の一人娘にして、中学の時見た伝説のイベント『RAD WEEKEND』のメンバーの娘。“白石杏”…そして杏が組んだ“ViVids”という半端者のメンバー。

あの日、迷い込んできた願とは大違いの何の覚悟も熱もない奴を杏は選んだのだ。

その瞬間オレは不思議とした失望が浮かんだ。ただオレが勝手に期待しただけなのだと言うのに、オレは失望以外の何物も浮かばなかった。

それはそうだろう?伝説のイベント『RAD WEEKEND』を超える。それは杏も目指していた極点。同い年というだけあって密かに競い合っていた。

 

『……………………………なるほど』

 

『?どうした願?』

 

苛立ちと怒りを上手いこと裏手に隠しながらViVidsの対応をするオレの裏腹に、願はいつか見た観察する様なな眼差しで、杏が組んだ相手…名前を“小豆沢こはね”を見ていた。

 

『ありゃ化けるタチだな』

 

『あんな奴が?』

 

ViVidsが去った直後。願は一言小豆沢こはねを化ける奴だと称した。

オレも冬弥もその発言に訝しんだが、その後の願の説明によってオレ達はViVidsの評価を改める必要があると思った。

 

『こと、歌うということの才はもはや天賦の域だ…ただあの感じだと化ける確率は低い様にも見えるけど、もし』

 

それこそ彰人並みの図太い精神を手に入れたら、手に負えん怪物になるだろうと願はオレにクソ余計な一言と共に小豆沢こはねを評した。

願の人を見る目というのは事、荒事が多いストリートミュージックでは十分信頼できる才能だった。願のいう関わってならない人と言うのは大体当たるのだから筋金入りだ。

 

『化けたな』

 

『願、お前の悪い勘は本当によく当たる。』

 

幾つか、イベントをこなした。その間に“ストリートのセカイ”などバーチャルシンガー達が居るよく分からない空間が有ったりしたがそれは割愛させて貰おう。

オレ達の想像を超えて小豆沢は“覚悟”…願はこれを“意思”だと言ったが、その熱は想像していた以上の物だった。イメチェンと言わんばかりに髪型も雰囲気も変え、その姿は前と比べ幾らか好感が持てた。

 

『どうだ。彰人。まだ認めてないか?』

 

『……………分かりきった事聞くなよ』

 

願の忠告はある意味で正しく、ある意味で間違っていた。

小豆沢には有ったのだ。最初からオレ並みの図太い物が。それに真っ先に気がついてたのが願で、その願の言葉で冬弥は推理して結論を出していた。結局意地になっていたのはオレだけだったと言う事なのだ。

 

『………オレ達はお前らを超えるぞ。ViVids』

 

『!そ。折れないでね。BAD DOGS』

 

ViVidsはオレ達、BADDOGSのライバルだと啖呵を切った翌日だった。

 

 

『俺はもう。お前らとは歌わない』

 

『は!?……何を言ってっ!!』

 

冬弥が突然、オレたちとは歌わない。歌えないとBADDOGSから消えたのだ。

そこから先は思い出したくもないほどオレたちの道は途切れる様に消えた。

 

『一度頭を冷やせ彰人。』

 

今のお前は正しい判断をすることが出来ていない。

そう願は冷静に、いや当時のオレからしたら冷酷に願は忠告する。

 

『願っ!お前そんなっ!!』

 

『落ち着けと言っている。原因が分からぬ以上どう動くかに掛かっているだろう。』

 

……たしかに冬弥は歌わないと言った時、哀しんでいた…?

その後は語るに及ばず。まるで予定調和だと言わんばかりに彼らの仲は途切れることなく…ただ一つ相違点を挙げるとするならば、彰人は迷走することなく冬弥とBADDOGSを続ける覚悟を決めていた。そしてその覚悟は……

 

『想いの歌……そうかこれが……』

 

『……!ねえ私たちでもう一つ作らない?!』

 

そう。その形こそオレたちの想いのカタチ。『Vivid BAD SQUAD』

 

 

 

 

 

 

「………過去を振り返る電波を拾った気がする。」

 

「待て落ち着け願。お前までボケると収集が付かなくなる」

 

急に電波を拾ったと、願はハッとした顔で空を見ながら呟く。

そんな願の横で冬弥は非常に焦った様に願を正気に戻そうと肩を掴み揺らす。

基本的に、Vivid BAD SQUAD…通称ビビバス内での力関係は、常識人である願と冬弥、そしてこはねがストッパーとして動くことが多い。

 

「いや。イデアが囁いたんだ」

 

「イデアは囁かない。正気に戻ってくれ」

 

……だが、冬弥は少なからず知っている。願というのは結構愉快な性格をしていることを。悪い意味ではないが一度、彰人や杏と同じ側…つまりボケる側に回ると俺たちでは止め切れることが出来ないという事。

 

「嘘嘘。大丈夫問題ないさ」

 

「……願の嘘は本当に心臓に悪い」

 

どうやら揶揄われた事を分かっていたのか。〆として冬弥も願も手を引いた。

そして何より冬弥は願が暴走し、自分で勝手に走っていってしまう事を危惧している。そんな事あり得ないだろうとビビバスの他のメンバーは思うだろうが、冬弥だけは“その可能性が一番高い事”を知っている。

 

 

 

『………何故お前がここに居る……願っ!?』

 

『居て悪いか?青柳くん?』

 

始まりは最悪だった。彰人に新しく仲間として勧誘しようかと、3人目である彼を埋めればオレたちはもっと行けると彰人の熱心なオリエンテーションに俺は彰人にそこまで言わせる奴に興味が湧いた。

 

そしてそこにいたのは、誰でもない“天馬 咲希”の想い人。

俺の今を作った恩人の天馬司先輩の妹。顔見知りで昔からの付き合いだったが咲希さんの身体が弱い事を知っていて、尚且つ病院に入院している事を知っておきながら俺は一度もお見舞いに行ったことはない。

その間、咲希さんを支え続けてくれていたのがその咲希さんを含む5人の幼馴染の内の一人が彼だった。

 

『何で……願。幼馴染は?』

 

『ああ。………いたなそんな奴ら』

 

俺たちの間にはあまり関わりがない。でも咲希さんの語る願と願の幼馴染を語る温かい眼差しは、非常に仲の良いだけでは表せないほどの関係なんだなと羨んだりしたというのに。……今、彰人との新しい仲間だと勧誘している願の幼馴染を語る眼差しは非常に無機質な、本当に興味を無くした様な目をしていた。

 

『落ち着けよ。冬弥くん。』

 

『落ち着いていられるか……!!あれほど大切にしていた、それをお前はっ!』

 

俺の中にあったのは、怒りじゃない。なんとも言えないやるせなさだった。

あれほど宝物だと、最高の友達だと誇っていた願はまるでゴミを捨てる様に簡単に幼馴染を捨ててしまったのだ。何が有ったかはまだ分からない。でも願にとってその程度なのかとは思ってしまう事を止められなかった。

 

『捨てたわけじゃない。』

 

『………どういう事だ??』

 

要は親離れと同じ要領さ。そう願は語る。

翼を使わなくなった鳥が飛べなくなる様に、何もかも“介護”されている状態では何も変われない、何も変わらない謂わば…永遠の停滞だ。

苦しみを吐き出すかのように、願は言葉を紡ぐ。

勿論俺にとっても苦しい結論だが…あの子達が成長するのに俺が離れるのは必須だったという事さ。

 

『……悲しませたわけでも、仲違いしたわけでも無いんだな?』

 

『勿論。それは保証する。』

 

後に聞いた話だが、願の幼馴染達は願から見ると依存しかけていたそうだ。

ありとあらゆる判断を願に任せて、願と同じことをする。

流石に、おかしいと考え始めた願は強硬策ではあるが離れるという手段しか取れなかったのだと聞いた。

 

勿論その後、願の感情移入させる歌い方は確かにいい意味で俺たちの新しい域に行くためには必要な物だと思う代物だった。

願も新しい趣味がほしいし、何よりあの伝説のイベント『RAD WEEKEND』を見てから本気になる価値がある物だと熱を上げたというのだ。…彰人が勧誘してそしてその実力も、熱も問題ないならば俺も賛成だった。

そう。その時からBADDOGSは産まれたのだから。

 

『俺はもう。お前らとは歌わない』

 

転機が現れたのは、ある日の事だった。

結局俺は何も変わってなくて中途半端で親父の言う通りにする事でしか生きられないのだと、でもそれは嫌だとBADDOGSの青柳冬弥は言っていて━━

 

『よ。隣いいか?』

 

『お前…願……っ。俺は戻らないぞ。』

 

『ああ。良いさ。元よりそれは俺の役割じゃない。』

 

もう歌わないと決別して、数日も経っていない時だった。

俺ももうどうすることもなく、無為に座り込んでいる時に願は現れた。

その片手に、缶コーヒーを持ちながら。

 

『分かってんだろ?』

 

『………………………………』

 

今だけは、願の人を見る才が憎たらしかった。

願の中では既に決まっているのだろう。彰人が俺の手を引くことぐらい。

俺たちを集めたのは彰人だ。そして…こんな俺たちを率いたのも彰人だ。

 

『………どうすれば良いと思う。』

 

『さぁな。』

 

俺たちには家庭を語る資格はない。

干渉されすぎる俺と、干渉され無さすぎる願。それはあまりにも対極で持ち得ない物。隣の青い芝生は眺めているだけで十分なのだから。

 

『ただ後悔はしない様に、な』

 

『それは…………』

 

俺はその時不思議なものを見た。

願が、願だけでないまた別の誰かと重なって見えたのだ。渡された缶コーヒーの湯気のせいだろうか。まるでこの世全てに絶望するとはこう言うことなのだろうと言う誰かが願と重なって見えてしまったのだ。

自分がそんな泡沫から覚めた頃にはもう願の姿は見えなくなっていた。

 

『お前の経験からか?願』

 

俺は言えなかった言葉を呟く。

そう俺が願の憂いを聞いたのはそれが最初で最後だった。

 

そこからは何も変わらない。やっぱり俺たちのリーダーは彰人だという事を再認識した程度に違いない.。彰人のお前以外と歌うつもりはないと冬弥自体も、そのつもりだったのか話は早かった。

 

「……仲間か。」

 

あの後、どうやら彰人はViVidsの二人にも心配を掛けていたらしい。

想いのカタチは歌となり、5人全ての歌となった。

誰から言い出したかは定かではないがその時の歌は俺たちを新しく繋ぐ力になった。…曰く名前を、ViVid BAD SQUAD。

 

「良いものだな」

 

先に集まっていた杏達が手を振っている。それに向かって俺たちは走り出した━━

 

 

 

 

 

「こちら。コーヒーになります」

 

「ありがとー……やっぱり似合ってんじゃん!」

 

ここはカフェ&バー『WEEKEND GARAGE』。杏の父親が経営するカフェで、願は辱められた様に顔を赤らめながらその手付きに乱れは無く、コーヒーのドリップを行っている。既に気がついていると思うが、願はここWEEKEND GARAGEでアルバイトとして働いている。

何故、親友とも呼べる杏の家のカフェで働くことになったのか。挙句、杏とこはねの悪ノリによって願は執事服のコスプレで働いているというのだ。

 

「それはどっちが!?」

 

「あはは………どっちも」

 

本当に、願というのは恐ろしいほど真っ直ぐだ。そう杏は一人、願の入れたコーヒーを啜る。真っ直ぐで正直と言うのは間違いなく美徳であることには違いないのだが、願の場合その真っ直ぐの中に裏の裏まで意味の違う想像していない意味を込められている時の方が多い。

 

「………うん。コーヒー、上手くなったね。」

 

最初ここで働かせた時、願の入れたコーヒーはドブか何かかと言う酷さだったのに今ではお父さんがコーヒーを入れるのを許すレベルで上手くなった。

ここで働く事。それは意外にも杏から言い出した話ではない。杏の父親“白石謙”が直々に働かないかと勧誘したのだ。

 

「………はい。付け合わせのクッキー」

 

サービス。そう言って簡単に盛り合わせているクッキーも映える様に盛られている。そう言うサービスもお父さんの気に入ってる所だ。そう杏は思案する。

色んな所でバイトしてた経験故か掃除や食品の扱い、並びに客との付き合い方。

皮肉なことに、それはWEEKEND GARAGEで即戦力とも言える程だった。

 

「………惜しいね。」

 

杏は今まで考えていた次回のパフォーマンスを一旦頭に仕舞い込んで、少し過去に思いを寄せた。

 

『…………………あれ?』

 

始まりは、小さな紙切れ達だった。

ViVid BAD SQUADが結成されてまもない頃、いつものようにWEEKEND GARAGEに集まった5人は、次のパフォーマンスや曲を考えていた最中だった。願がアルバイトが有ると去った直後。杏は願の座っていた椅子の上に小さな紙切れがいくつか重なって置かれているのを見た。…いや置かれていると言うより落としたのだろうか。

 

『願の?』

 

『多分……??』

 

誰も彼もが首を捻る中。少し席を外していた彰人が帰ってきて早々願の紙切れを見て、こう呟いた。

 

『願の勤務表じゃねーか?』

 

『勤務表??』

 

『そそ。バイトの。』

 

色々と種類の違うバイトを掛け持ちしている願は、その日のバイトがいつ、何なのかとたまにごっちゃになる時があるらしい。変な所でアナログな願はこうしてスマホの情報を見るより紙の情報を見る方が好みらしいのだ。

 

『…………開いてみる?』

 

実はビビバスの中で一番、プライベートが分かってないのは誰かと聞かれると満場一致で願だと答えられるほどに願には秘密が多い。バイトは色々と掛け持ち、そして昔四人の異性の幼馴染がいた程度ぐらいの情報しかない。家族や過去そしてその幼馴染達の情報その全てに謎が敷かれている。

今回の、バイトの勤務表は実は渡りに船と言えるだろう。願のプライベートの一片それに対して興味を持っていないわけがなかったのだから。

 

『……………あれ。』

 

代表して、紙を見えるように開いたのは冬弥だった。

数枚の紙が束になっていた様で、一週間に5回・6回程度だろうか仕事がほぼ毎日入っている様だった。…そうその中でビビバスの練習したり学校の授業の勉強までしているのだから末恐ろしい。

 

『………ちょっ!おとーさん!!』

 

そうだと分かった瞬間、全員の背中に薄寒いものが走った。

全員の頭に“過労死”という単語が浮かんだ瞬間杏は、年甲斐も無く奥でカップを磨いていた父親を呼びにいった。

 

『どうしたんだい?』

 

『謙さん…その見ていただけませんか?』

 

只事では無いと娘の呼ぶ声に謙は飛び込んでくる。

その直後何も言われるまでもなく彰人から手渡された紙を見て…それが何か悟った瞬間、顔を顰めるしか無かった。

 

『おいおい…自殺願望でもあるのか?』

 

『無い…と言いたいんですけどね……』

 

謙はこの節操のない願の労働環境を見て、控えめに言って正気ではないし死ぬつもりなのかと思うほどだ。しかもまだ身体も出来上がって間もない高校生になるかならない程度だ。今の時期からそんなに身体を酷使していれば、簡単に身体を痛めつけてしまう。監督責任者…親は何をしているのかと娘を育てる親としても人生の先駆者としても願とその家族に怒りを向ける。

 

『一度、話をした方が良さそうだな…』

 

謙にとっての願の第一印象は、“何処か幸薄そうな至って普通の子”だった。

少なくとも、こういうストリート系の音楽ではなく…バンド系の方が合っているのではないか?と疑っていた。その直後、願の歌声を聞いてその考えは霧散したが。

……話が逸れたが一癖も二癖もある人間が揃っているのがストリート音楽の道だ。その中で、最も誰よりも一般人だと言えるのが願だった。だからこそ謙も注意して願のことは気にかけていたつもりだったんだが……

 

『……ねーえ?願ー?』

 

『どうかした?杏?』

 

翌日。また同じようにWEEKEND GARAGEに集まったビビバスは願が逃げないように真ん中に座らせその空気は今からまさに裁判でも始まるのかと思うほど張り詰めた空気となった。

 

『…このバイトの量おかしくない?』

 

『どこが?』

 

『そのね……少し働きすぎなんじゃないかなぁって』

 

単刀直入に杏が切り込んだ。そしてその直後、何処がおかしいのかと聞き返す願に声を控えめに上げたのはこはねだった。

実はこの中で一番願の身を心配しているのはこはねだったりする。

昨日、色々とボカした状態で(それでもある程度把握はされてるが)願の取り巻く環境について聞いたところ“社会人であっても狂う”と言われるほどの生活を続けていると言うことだ。“狂う”とまで言われたそれがこはねにとって恐怖に値するのは想像に難しくない。

 

『…………何で?』

 

『なんでって…お前。そんなに金要るのかよ』

 

彰人は今までの願を見て、お金に困っているから仕事を入れ続けているわけではないと推理していた。どちらかと言えばお金なんて後回しで、本当の目的があるのではないかと疑っていた。

 

『特に。……でも暇してる時間こそ無駄だろう』

 

『無駄って……願。それは違うだろう』

 

願の断定するまでの口調に、最初黙り込んでいた冬弥まで口を挟むことにした。

たしかに願は何処か忙しそうにしていることが多かった。でもそこに意味があるのだと思っていた…だがそれに意味があるのではなく、“暇な時間”に意味を見出していないのではないか。もしそうならば、俺たちの時間でさえその無駄に入るかもしれない。新しい居場所を気に入ってた冬弥にとってそれは許せなかった。

 

だからこそ、願の闇の鱗片を掘り起こしてしまうのだ。

 

『願。少なくともその生き方は“マトモ”じゃ無いぞ。』

 

『マ…………トモじゃ……ない??』

 

誓って言うが、冬弥にとってその言葉はあくまで忠言の一つでしかなかった。

今の願は危うい。何処かまた何か本当にとんでも無いことを起こす気がしたのだ。それは、昔からの付き合いがあった冬弥だけがなんとなく察していたのだ。

だが、その言葉は願の“何か”に触れてしまうのだ。

 

『マトモ………じゃないか………』

 

枯れたような忍び笑いを漏らす願に冬弥はようやく失言に気がついた。

違う。そんなつもりは無いと言葉を紡ごうとする冬弥の姿を見て、杏はなんとなく気がついてしまった。

 

『まあまあ。今はそれじゃないじゃん?!』

 

手を叩き、負の空気になっていた二人と止まっていた彰人とこはねを呼び覚ます。

……まあなんと言うことだろうか。ミュージシャンの娘として日頃多くの感情の叫びとも言える歌を聞いていた杏は願の“虚ろ”なまでの想いをある程度感じ取った。

 

願は恐ろしいまでに内面が“虚無”なんだと。

まるで機械が、自立人形が動いてるだけなんだ。悪く言うならば、ある一定のシュチュエーションで感情を出力するように決められた人形みたいなある意味人間離れしたのが願の根底にある。

 

(あー……やらかしたねこれ。)

 

どうしたらこう育つのか。奇しくも、それは父娘が同じように抱いた感想だ。

娘である杏は、願自身の過去に。父である謙は育った環境を。

表像は明らかに好青年だと言うのに、その本質がこんなのに育つのは生半可な歪みだけではこうはなし得ない。

 

『とりあえず!願は今日からここでバイトね?!』

 

『は?』

 

『お父さんもそれでいいでしょ!?』

 

『……え?』

 

『おう。問題ないぞ。バイト辞めるとだけいっとけよ』

 

『……うん?』

 

『じゃあ!決まりね!!願っ!!』

 

ほぼゴリ押しで決めたような感じで願の労働環境を変えた。

大分無茶苦茶言っているのは杏も自覚しているが、今はそれさえも惜しい。

このまま放っておくと取り返しのつかない事になる。そんな想いが杏を暴挙に走らせた。……ただ、言うならばその行動に間違いがなかったと知るのは数カ月後の話である。

 

 

「でも、似合ってんじゃん。やっぱり」

 

願の過去に何があったとかはもう聞かない。

そんな事、今の願にも必要ないモノなんだろうなと私は思っている。当の本人が必要ないと言うのならば私たちがわざわざ掘り返すまでも無いものだ。

 

「やっぱりアンタはそうしてるのが似合ってる。」

 

誰かの幸福のために尽くすんじゃなくて、小さな幸せを少しずつ拾い上げて自分の幸福にする。そんなありきたりの“日常”が誰も侵せない“平穏”が願をもっと魅力的に育てる事だと杏はプロデュースしているのだから。

 

 

 

 

 

「…………どうして……」

 

「………………………………」

 

こんにちは。小豆沢こはねです。えーただ今現在明らかに修羅場と呼ばれるものに巻き込まれてます……そう脳内でアナウンスが流れているこはねであった。何があったかは少し前に遡る。

 

『私に…!?』

 

『そう。手伝ってほしい』

 

それはある日の事だった。願からこはねについてきて欲しいと声が掛けられた。

曰く、WEEKEND GARAGEにて女性受けも良いようなカップを買ってきて欲しいと言われたそうだ。勿論、値段は気にせず後払いで出してくれるとは聞いているが願にはどんな物が良いとか分からない。頼りになる筈の彰人はバイト、冬弥は家の用事。更に杏も別件でいないと言う事だ。

 

『いいよ。何処から見ていく?』

 

『逆に何処がありそう?』

 

となると消去法でこはねだった。たしかに暇をしていたのは事実だ。

それじゃ今日の何時に何処集合とだけ合わせて別れたのだった。

 

『お待たせ。待った?』

 

『大丈夫。行こうか』

 

待ち合わせの5分前。こはねが着いた頃には、願はもうそこに立っていた。

少しずつ少しずつ説明しながら歩くこはねに一つ一つコップを吟味する願とで別れ、ある意味では仲が合うのだろう。

 

そしてそんな空気をぶち壊すのも、ある意味お約束だった。

 

『…………げ………ん…?』

 

『一歌か………』

 

ある店の陳列を見ているところだった。今回も同じように二人肩を並べて吟味しようと陳列棚の海を潜っている所に運悪く一歌と再開してしまった。

こはねからすると誰?この人程度の認識だろう。もしかしたらクラスメイトである日野森志歩の友人として見たことがあったとしても話したことなんてありはしない。

だがこはねがその隣である願の顔を見ると、そこには予想外の人にあったと言うふうに少し驚愕に表情が歪んでいた。

 

『あはは。その…ひ、久しぶり……だね。』

 

『ああ。そうだな元気していたか?一歌。』

 

顔馴染みか。そう口にしようとしたこはねは一つ大きな違和感を感じた。

明らかに温度差が違う。そうこはねは直感的に感じ取った。願くんは至ってフラットないつものような笑みを隠すことなく一歌?さんを見ているのに対し、一歌?さんは何処か…そうだ見たことある。一歌さんの姿はまさに迷子になった子供みたいな。目の前に有るのに、絶対触れられないもどかしさというようなそんな空気差。

 

『…………その……新しい……仲間。?』

 

『………?ああ。うん。“仲間”だよ。』

 

『……………ぁ…………』

 

その瞬間こはねは何処からともなく何かが爆発するような音を聞いた。

願くんの顔は逆光でよく見えない。でも一歌さんの顔はまるで本当に心の底から恐怖したかのように顔は青褪め、後退り始めている。

 

『……あのさ。私たちのこと嫌になった?』

 

『嫌になる?』

 

『うん。………寂しかったんだよ?ねぇ。なんで?』

 

でもそんな素振りは一瞬で立ち直り、一歌さんは願くんに近寄り厳しく糾弾する。

話を聞いているとどうやら喧嘩別れ?…それもしかも願くんが殆ど一方的に?振ったのだろうか。なら元は男女の関係も有ったのだろうか。

そう邪推するこはねを横に、願と一歌の口論は活発化していく。

 

『おかしな話だな一歌。そもそも“所詮”幼馴染でしか無い。』

 

『違うよ………』

 

『たしかに。昔馴染みの義理として咲希の面倒は見ていたが』

 

『…………おかしいよ……もうやめ……』

 

『咲希も元気になった。ならばもう関係は有るのか?』

 

『そんなの………違うよ……違う。違うんだよ……』

 

もう聞きたく無いと涙目になりながら首を振る一歌に対して、何処までも冷酷に事実だけを積み重ねる。ここだけ聴くと願が最低にしか思えないが、願にも一歌達を慈しむ形がこれだったと言う話だ。誰よりも幼馴染たちに飛び立っていって欲しいと思っている願にとって、高校生と言う節目はあまりにグットタイミング過ぎた。

 

『………そろそろ俺たちも前をむかないと。』

 

「…………どうして」

 

暗にいつまでも互いだけを見続ける小さな箱庭は終わりを迎えないと、と忠告する。

“何処かの世界線”ならば◼️◼️が自分が悪であろうとも楔となり繋ぎ止める覚悟を成して、その数年後救われる愛と希望の物語となるがそもそもの根底が交わらぬ様になった以上。双方の意思は平行線で交わらない。

一言で言うならば時間切れ。周回遅れだった。という事だ。

 

「…………認めない。」

 

「?」

 

「なんでも無いよ………また今度ね。」

 

ただ一言。一歌は呟き、その直後にはもう微笑みを浮かべ去っていく。

その姿にこはねは何処か背筋を凍らすほどの威圧感を感じてしまう。

目の前に猛獣?いやそんな生優しいものではない。今の一歌は触れたら殺すと言わんばかりの覇気を纏い去っていく。

 

「………ねっ、ねぇ。さっきの人は……?」

 

「??ああ。昔馴染みの一歌。星乃一歌。」

 

多分同じ学校だと思うけどと呑気に言う願にこはねはこのクソボケが━!って言って持っているコップを願の頭に叩きつけたくなった。

明らかに好意が有っただろお前。もはやニブニブどころか釣った魚に餌をやって無い実験でもしてるのかと本気でこはねは考える。

もしそんなギャグがまかり通るのならば、一連の流れはただのイチャイチャで済む。でもどうやらそんな事は無く…

 

「それは良いんだけどさ…その。彼女さんじゃないの?」

 

「一歌が………?違うけど」

 

お前そこは嘘でも良いから好意がある様にしといてくれ。私が何とかフォロー入れられただろうがとこはねの心の中はヤンキーが植え付けられていた。

 

「で、でも星乃さん…願くんの事好きなんじゃ無いかなぁ……??」

 

「はは。無い無い。」

 

お前明らか好意が憎悪か何かに反転したの見えてないんか??見えてないんか??

こはねは本気でキレかけていた。流石にこの私の隣にいる男マジで刺されるぞと呆れ始める。

こはねは今ようやく初めて一歌さんを見た時の、迷子みたいという意味が自分の中で消化できた。そりゃ恋してきた人が突然離れ想像もしていない所で再会したのならばどんな顔で会えば良いか分からなくもなるだろう。仕舞いには相手が自分が嫌っているかどうかでさえ分からないと言う状態。

そしてそんな中、人の心とか無さそうな事言ってしまった願くん……

 

「後ろから刺されない様にね……」

 

いや。ほんとマジで。そうこはねは呟くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「………………………」

 

万の、億の、那由多にも越える想いが有った。でもその一つも彼に届いていないと言うのならばそのどれもが無為にされると言うのならばそんな未来は認めない。認めたくない。

 

「…………………」

 

ずっと、ずっと好きだったのだ。私たちはずっと好きだった。

その感情に理由なんて要らないで、ただ燃える様な恋が燻っていた。

風に揺れながら夜をそのまま閉じ込めた黒の髪も、何処か憂いを閉じ込めた温もりも。髪の夜とは対象的に、青空を閉じ込めたスカイブルーの眼差しも。願の全ては私たちだけが知っている宝物で、それは永遠に続く物だと考えていた。

 

でもそんなお菓子の様な甘い夢は、まるで蟲の一噛みで崩れ落ちていった。

私も、咲希も、志歩も、穂波も全員が仲違いしていて唯一受け入れられたのが願だけだった。願だけが私たち一人一人に向き合って、愛してくれていた筈なのだ。

 

『一歌。大丈夫?無理だけはしないでね。』

 

貴方は私にとって光なんだ。これからもずっと。

貴方が声を掛けてくれるだけで、貴方がその目で私を見てくれるだけで私はまだ“星乃一歌”として貴方の幼馴染だと胸を張って生きていけた。それは三人全員変わらない意見なんだから間違いなかった。

 

『…………あっ…願……』

 

『一歌?ごめん。後で。』

 

でもそんな光は、まるで夜よりも深い闇に堕ちていった。

日に日に薄くなっていく関係。まるで錆びた鎖が折れる様に私たちは引き裂かれた。私たちが気がついた時にはもう遅かった。遅すぎたのだ。

あれほど強固なリボンで結ばれた関係は、いつの間にか擦り切れた糸の様に細い細い関係にしか残らなかった。

 

『……………返ってこない。』

 

高校生になると、もう糸さえも繋がっていないのではないかと思えるほどだった。

どれほど電話しても、どれほど連絡しても、昔の様な“何か”は得られなかった。でも、未だに貴方に縋ってしまう。

いっそ、いっそ嫌いって絶縁してくれれば良かった。いっそ、いっそ二度と関わるなと拒絶してくれればよかった。

 

 

一歌も高校生になって色々と違うだろうけど頑張って

 

 

私はそんな社交辞令でさえ嬉しいと、まだまだ仲良しで、これから親密になることもできるんだって。

 

『願………願………』

 

本当にバカみたいな話。願の想いなんて、もう私たちから“無い”なんて分かってた筈なのに。

 

『━━━━━━━━!!━━━━━━!!』

 

『……………え?………願??』

 

ある日の事。私はいつものように歩いて帰っていた。

貴方は、そこでなにも無いような顔して歌ってた。

 

『え………あ………』

 

私は貴方の“その姿”を見た時、頭も心もぐちゃぐちゃになって全部が壊れるような音がした。そう。そこにいたのは……私たちと一緒にいた時より楽しそうな願だった。心の底から楽しそうに、全身全てを使って楽しそうに貴方は歌っていた。

 

後に、私はストリートミュージックの一つだと知った。

色々な手段ストーカー染みた行為を使って願を調べ上げた結果、願は“BAD DOGS”という男性だけのメンバーで日々研鑽を続けているらしい。(何故か咲希はキレ散らかしていたが)勿論その様々な手段の合間に曰く、“脳破壊”という物を起こしたのは数知れない。願がどんな風に歌うかなんて、願がどんな顔で今の仲間と笑い合っているのか、願がどんな風で日々を送っているのか。それは私たちが知っていた筈のモノで今の私たちには遠い、遠い物だった。

 

『………は、“Vivid BAD SQUAD”??』

 

まだ、私たちは希望を持っていた。

何故ならば、BAD DOGSが“男性だけ”だったから異性との関わりがない以上、私たち以上の仲になる人なんてあり得るはずがないと思っていた…いや。思い込んでいた。そんな物簡単に覆すほど、願は社交性に溢れていると言うのに。

 

その油断と怠慢がこの結果だ。男女混合ユニットVivid BAD SQUAD。

私たちが嘗て居た隣で、今の私たちが求めてやまない隣が埋まってしまった。

手を伸ばしても、手を伸ばしても届かない。まるで届かない天国を目指して身体を裂かれる亡者だ。それでも私たちはまだ諦めきれない。

 

『………?ああ。うん。“仲間”だよ。』

 

照れ臭そうに、でも貴方は胸を張ってその子達を仲間だと心の底から愛おしそうに言った。やめて、やめて、やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて。その“熱”は私たちの物だったのに。その“眼差し”はわたしたちだけのものだったのに。

 

『おかしな話だな一歌。そもそも“所詮”幼馴染でしか無い。』

 

ちがう。ちがうそんなことない。わたしたちはいつもいっしょで、ずっといっしょでむかしからしょうらいのやくそくもしてたのになんで。

 

『………そろそろ俺たちも前をむかないと。』

 

……大丈夫分かってるもん。外夜願って言う私たちの幼馴染はね。私たちを嫌うわけなんてないし、他の女なんかに目向きもしないし、やること全部が私たちの“光”でなきゃダメなの………ヨシ。

 

「…………認めない。」

 

認めない。お前ら風情が…私たちの幼馴染を奪うなど、赦して良いものか。

憎悪と、怒りと、絶望が胸の中を満たす。許さない。許さない。決して許してなるものか。

 

星の歌は夜に触れる事無く。

 

 

 

 






外夜 願

万とあるルートの中でいちばん社交性の高いのはこのルートの願。
親友と本気で打ち込めるモノを共有し合い、時には喧嘩を時には拳をぶつけ合い時には馬鹿笑いする。そんな最も平穏で“高校生らしい”日常を謳歌するのはこの願。

ただし、その裏で幼馴染に一番残酷なのもこの願。今までのifと明確に違い“過去の物だとしても幼馴染を認識している”という一点が本編より幼馴染を苦しめる原因の一つになっているのは皮肉だとしか言いようがない。
勿論、“認識”しているだけで、共感も理解も寄り添うことなどもっての外。
自分が幼馴染から離れるのが最適解であることを疑っていない。

このルートは願が中学後期。穂波が願に踏み込み、繋ぎ止めなければ分岐する。

与えられる咎は「強欲」




東雲彰人

願の相棒その1。
願の手を引いた奇しくも、十数年前にとある少女と同じように願の因果を変えてしまった張本人。
本編では、Leo/needに恐怖してた彰人が見られたがこの世界線では、関わりがないもしくは奪った元凶としてLeo/needから憎悪にも似た感情をぶつけられる…かも。
でもぶっちゃけ現状、彰人には願との関係で敵う筈もないので歯噛みするしかない。
冬弥とギスった時は手助けしてもらった恩がある。


青柳冬弥

願の相棒その2。
ビビバス内で唯一願の過去の姿を知るキーパーソン。
この世界線で願の過去に関係するイベントが発生すれば冬弥から聞き出すのが一番速いと思います。(RTA脳)
苦渋の決断(冬弥視点)で幼馴染達から離れざる負えなく、自分が悪である覚悟を持った(冬弥視点)願の事は少し尊敬している。物は言いよう。
勿論、自分が悩んでいた際に助言やアシストしてくれたお陰で恩がある。



白石 杏

この世界線での一番の苦労人
下手に願の内面を“共感”してしまったが故に、その例の幼馴染と何があったのかも次第に分かって自分達が泥棒猫なのでは(冷や汗)と真っ先に気がつくのがここの杏。
そのお陰で願が無理をすることなくなっていくのは杏のファインプレーである。


小豆沢こはね

修羅場に巻き込まれたハムスター。
願のクソボケ度に一番脳内でツッコミを入れる常識人。
尚、こはねは“日野森志歩”とクラスメイトである。
もう嫌な予感しかしないが、きっとこはねなら強く生きるでしょう。強く生きてくれ。



星乃一歌

一体誰がこんなのになるまで放って置いたんですか??
今回のビビバス編で一番脳破壊しているのは一歌。自分達といた時より楽しそうな姿を見たって時点でもう色々と拗らせる。拗らせた。
さらには恋焦がれている人に“所詮”幼馴染ともう地雷の上でタップダンスされて…うん。脳どころか情緒まで破壊された悲しき主人公。

やめて!願のビビバスに見せる笑顔で、一歌の心、情緒、脳を爆破されたら、願に恋焦がれている一歌の精神まで燃え尽きちゃう!

お願い、死なないで一歌!
あんたが今ここで倒れたら、ビビバスに願を全部奪われちゃう!
ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、願を取り戻せるんだから!

次回「一歌死す」デュエルスタンバイ!


日野森志歩

志歩ちゃんが何をしたって言うんですか!?(2回目)
こはねと同じクラス…うーん。修羅場の匂いがしますね。凄く香ばしいです。
やっぱり作者の一推しはきっぱり曇らせておかないとね(ハート)
ちなみにこはねからビビバスひいては願の事を聞いて毎日のように脳破壊を起こしているのは余談。


天馬咲希

冬弥くんは目が節穴なのかな?かな?
ちなみに冬弥くんとは全然話しておらず(願を奪い取った怨敵だから)、冬弥くんと色々と入れ違いが起きてるのは誰も知らないし、気がつかない。
まあ。気がついた所でレオニのこの始末を見て、願の行いが正しいと冬弥が判断を下す確率が高まる(相棒補正)だけだが。


望月穂波

許さない。決して許してなるものか。
願は……願は私のモノだ。


Leo/need達が何をしたって言うんですかと言う人は感想を。
それ以外も感想頂けると執筆の手が進みます。




次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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