「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

35 / 52


お久しぶりです。
リアルで忙しく、執筆意欲がガクッと落ちたり、某オープンワールド系ソシャゲに浮気したり、最後のマスターとしてイベントこなしてたり、プロセカのイベントしてたりしたら時間が経ってました…不思議〜

はい。最後のif。ニーゴ編です。
先にネタバレしておくとこのルートでは誰もブレーキ居ないんで、どのifよりも地獄に拵えました。褒めてください

いつも通り、設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定・脳大爆破要素注意です。

多分、今までで一番性癖詰め込んだんじゃね……??







if・夜直に目を眩んで

 

 

「皆さん。生きてますか?」

 

ピロン。ナイトコードに誰かが入ってきた音がする。

ナイトコードとは匿名性に優れた通話アプリで、HNでも活動することができると色々な人から好評なこのアプリで、とある一団が動き出す。

 

『生きてるよ……』

 

「声が死んでますよK。お水、飲んできたらどうですか?」

 

枯れている声。と言う訳ではないが明らかに生気を感じない女声を前に、何処か無機質で機械音声じみた男声が先程から無音だったナイトコードの会話の先頭に立つ。

 

『おかえり。wish。』

 

「ただいまです。雪」

 

合いの手を合わせるように先ほどの無機質じみた男声に似た女声…“雪”が、男声の持ち主…“wish”の帰りを喜ぶ。

 

『おつかれ。……たまには身体を休めなさいよ』

 

『明日、遊びに行こーよ。久々にね!』

 

「ありがとうございます。えななん。……そうですね。久々に行きましょうか。Amia。」

 

静かな、されど何処か安心し合う雪とwishの会話は、その横からマイクを切っていたはずの二人の声……ハキハキとした声と、何処か弾んでいる二つの声が割り込んでくる。

 

『……Amiaもwishも明日学校……』

 

『うっ………』「…………まあまだ余裕あるので大丈夫でしょう。」

 

遊びに行かないかと言うAmiaの誘いに、すぐ乗ってしまうwish…願。

それでも忘れてならないのが、明日も普通の平日だと言う事だ。夜遅くまで活動する彼らであろうとも日中は高校生をやっている。

勿論それを知っている雪は、Amiaとwishを咎めるがそこら辺はwishの方が上手だったようだ。休んでいい日数ぐらいは把握している。その上で休んだりサボったりしているのは狡猾だと言うべきなのか。

 

『……どこ行くの?』

 

『そーだね……どうする?wish』

 

「どうしましょうかね。」

 

言っても止まらないことを察したのか、雪は何処に行くのか興味を示した。

とは言ってもだ。基本的に行き当たりばったりという側面で気が合うAmiaと wishは何処かに行こうとも、何処に行こうとは考えていなかった。

 

『二人とも。手は動かしてるの?』

 

「……こっちは問題なし。」

 

『ボクも順調〜』

 

wishの意見を聞いて水を飲んできたKが戻ってきた。

作業の合間に雑談を話すことは自分も良い気分転換になるが、やらないことをやらないでそうし続けるのは違うだろう。それを分かっているのか、wishもAmiaも軽口を叩きながらも手は休める様子は無いようだ。

 

『……全くあんた達はラフ出来たから、なんか意見ちょうだい。』

 

そこに混ざり合うようにえななんが先程までの作業がうまく行ったのか、書き上げたラフを共有する。残りの四人は特に何か言う訳でもなくそのラフを開く。

 

『………良いと、思う。』

 

「ええ。全体的に前より良いと思います。」

 

とくにこことか。と具体的に言うwishの批評といつも酷評する雪からも中々好感覚だったのか分かったのか、えななんは分かりやすく声を弾ませる。

 

『そ。じゃあ色入れていくから少し切るわよ。』

 

『私も、少し集中したい。』

 

『じゃ。ボクも〜何か良い素材が有れば頂戴ね。』

 

えななん。雪。そしてAmiaもマイクを切る。基本的に話し込んでしまうえななんとAmiaはいつもこうやって集中する時はマイクを切って作業する。特に話すことをしないKとwishは付けっぱなしも多いが雪はなんとなく。らしい。

 

「それじゃ、もう少し音響いじってきますね」

 

『……うん。じゃあ始めようか。』

 

時刻は25時。午前1時。日付が変わり夜が深まるとともに動き出す。

夜の神秘をそのまま纏ったかの集まりは、一つの音楽サークル。

作詞、作曲、イラスト、動画の全てをこなし、楽曲を制作するそのサークルの名前は25時、ナイトコードで。ニーゴと称されるそのサークルは知る人ぞ知る有名な音楽サークルである。……そして今はまだ━━

 

 

 

 

「おーい!願ー!!こっちこっち!」

 

「そんな騒がなくても分かってますよ。」

 

次の日。いつものように学校をサボった願は昨晩の約束通りにAmia…暁山瑞希と会っていた。問題ない程度におサボりを繰り返す二人はよく平日のこう言った何気ないサボりにもよく会っていた。……まあ。あまり褒められた行為ではないが。

 

「今日は久々に買い物、付き合ってよ。」

 

いっぱい新しいもの出てるんだ〜と、瑞希は願の手を引く。

強引にも腕を組み願の手を引く瑞希は楽しそうに笑いながら、店に入っていく。

まるでその距離感は友人と言うには近く、恋人…というにはあまりにも違うナチュラルな距離感が有った。

 

 

 

「いや〜遊んだね〜……」

 

「本当に……それな」

 

時間は夕方。燦々と輝く太陽も今や夕焼けになって夜になり始めている。

本当に今日は多く動いた1日だった。瑞希に連れられまずはファッションに声を交わし合い(瑞希の教えによって願もある一定以上にファッションには詳しい)、昼にはフードコートで食べさせ合い、その後は少し遠いところの大型複合施設で気が済むまで身体を動かした。人並み以上には動くことができる(ニーゴ比)二人にとっては汗を流すと言うのは一種のコミュニケーションになっているのだ。

 

そんなこんなでおサボりの1日は非常に疲れた帰路となった。

瑞希も願も全身にダルみを感じながら帰宅する帰り道となった。ちなみに荷物は最初合流したまま、意外と手ぶらに近い。その理由は買ったものを大体全てセカイに置いてきて、家で回収するつもりだからである。セカイ様様だ。

 

「それはそうとさ…」

 

「?」

 

暁山瑞希はピンク目ピンク髪。そしていつも着てくる服も華やかでカワイイものが多い。だが、本当に見分けがつかない。更には…奏やまふゆ達とは違い声質もそれ相応のものとはかけ離れている。願にとって見分けがつかないと言うのは、それ相応に内面だけがかけ離れている結果とも言える。一度“老爺”にまで至った精神は並大抵の事では揺れない。……ならば声がかけ離れていると言う事は……

 

「ボクに、何も聞かないんだね。」

 

日暮れ。駅で待つ人も疎になり、互いの顔の表情が分からなくなるほどに闇が掛かる。

瑞希にとって、今の自分は非常に奇異なモノに映るのだと自覚している。そしてその上で願は何も変わらず、自分が最も喜ぶ接し方をしてくれる。……それが酷く暖かくてそして怖い。

 

「…………ふん。」

 

願は一度瑞希の顔を一瞥した直後。また前に向いて声を紡ぐ。

 

「何故、お前の決断に俺が口を出さなくてはならない?」

 

「………はは。」

 

非常に冷たい願の意見。それは瑞希にとって最も恐れる物にして、なによりも暖かい救いの言葉。暁山瑞希という存在を寸分変わらず“そう言う物”だと理解し、そのままありのままの自分を受け入れてくれる。

それは瑞希にとって今まで求めていたヒカリでありながら、なによりも恐ろしい意見だった。

 

「そもそも、それら全てを受け入れて暁山瑞希という奴と親友になっているんだ」

 

見くびるなと願は暗に瑞希に伝える。

電車が派手な音を立てながら駅に入ってくる。最前列に並んでいた二人はその音は声を遮断してしまう。その後、瑞希が口を開いていようと願は聞くことが出来なかった。

 

「帰るぞ。今日もニーゴあるし」

 

「………!!そうだよね!」

 

今度は、願から手を出して瑞希を引っ張る。

そんなぶっきらぼうながらもささやかな願の背の優しさに、瑞希はそれはとても美しい、満開の花が咲き誇るように笑っていた。

 

 

 

「あはは…っ!!」

 

一人になった途端。ボクの口からは呆れるほどの笑みが漏れ出る。

あいも変わらず優しい願は家までエスコートしようとしてくれるけど、それをボクは断るしか出来なかった…もし、もしも願が呑気にボクの居城とも言える家に来てしまったのならばどうなるか、どう転がるかボクでさえも想像がつかないだろう。

 

「………ホントに、最高。」

 

外夜願。同じ音楽サークル“ニーゴ”に集まった仲間にして、ボク達の篝火。

暗い、暗い夜の中でただ一つ届かない空にて優しくニーゴを照らす光。

……ううん。その光がボク達に降り注ぐことなんて本来あり得ない話なんだろう。事実、雪が…まふゆが彼を堕とさなければボク達の関係は大きく違うことになっていたのだろう。まあその間に巻き込まれた願の幼馴染ちゃんにはご愁傷様としか言いようが無いが。

 

ボク達ニーゴは、最初ネットの海で集まった集団だった。

事実上のリーダーを務めるK…奏も、Kがこの人とならと集めてきたのがボク達でその集まりの時間と場所を“25時、ナイトコードで”という名前にした。

ボク達の間に最初、ナイトコードという通話アプリを繋いでいても話す事は無かったし、事実誰もリアルには興味が無かったのだろう。事実、ボク自身もそんな関係を気に入っていた。

そんなある日だった。ニーゴという存在が有名になって、雪が突然こう言ったのだ。

 

『私の知り合いで口が硬くて、音楽に明るい子がいるんだけど…』

 

雪自身も作詞と編曲の両刀を熟すのには時間がいるとの事だ。

多くの人から注目を獲始めたボク達ニーゴも、正直目につかなくは無いが反感を買うことも少なく無かった。そんなある日の事。雪がある提案を…それは新しい人を入れるとの事だった。雪が言うにはその人はよく知る親友で、音楽にもある程度センスを持っていてとの事だった。今までは特に何か作る感じでは無かったけど、見るセンスもあるからどうかとの事だった。

 

『わたしは…良いと思う。』

 

『Kが言うなら私も。』

 

『じゃあボクも〜』

 

その時から新しい編曲担当。そして意外にもニーゴの歌を知名度を広げる広報にも適正があったみたいでwishは精力的に活動を進め、ボク達も最初から居たような仲間のように接することが出来続けたある日の事だった。

 

『雪がいなくなった…?』

 

『…………………………』

 

いつもなら、来るはずの時間に雪だけが来ないことが数日間続いた。

1日目は何か用事があったのだと誰もがする事をした。だけどそれが数日続きとなり、そしてついに一度もナイトコードへのログインが無いまま一週間経ちそうになっていた。

 

『………こっちに、来て』

 

『…………………ミク………』

 

そしてそんな中、見つけた誰も見覚えのないはずのファイル。ニーゴの共有メモリに保存されていた“untitled”誰が保管したのかも覚えてない。それでも雪を探すために開いた直後の話だった。突然モニターから光が溢れて…そう。wishだけがそれをこう呼んだのだ。ミク……と。

 

『そうですね……wish。本名を外夜願と言います。』

 

目を開くと、そこは灰色で彩られたセカイと呼ばれる空間に立っていた。

そう。ボク達はそこで初めてリアルの姿を見ることになる。wishの夜に似た髪色は何処か苗字に似ているな〜なんて。

そこで知った事実。雪は最近歌をネットに投稿している何処か物悲しい音楽を作る音楽家“own”だという事実が発覚した。まあ音楽とその人の姿を見てownが雪だと断定出来てしまったK…奏も中々だけど。やっぱりその後の雪…まふゆはボク達を厳しく糾弾した。消えたいのだと…そんな事自分が一番知っているのに。

 

『願……願、願、願、願、願。貴方だけは、今の私を受け入れてくれるよね?』

 

『………………ミク。』

 

『うん』

 

その直後の話だった。まるで人が変わったかのようにまふゆは願に声を掛ける。

まるで狂気的に、縋り付くその姿とそれを当たり前だと言うように微笑んで抱きしめるその姿は端的にイカれていると思った。

……まあ。その後わかった事なんだけど、どう考えてもイカれているのはまふゆだった。正直言ってあれほどの執念で、あれほどの邪悪でよく上手くいったものだ。

 

正直に言おう。ボクが雪に手向ける言葉は一つ。“度し難い”だけだ。

まあそんな雪の作った揺籠に縋り付いているボク達も非常に度し難いのだけど。

でも仕方のない事じゃないか。あれほどの温かなヒカリはボク達にとってもう無くてはならないモノだ。そうそれが願を傷つけることになろうとも。

 

「ああ……本当に」

 

「………………」

 

その瑞希の呟きは家の扉を開ける音にかき消され、消えたのだった。

 

 

 

 

『wish…いる?』

 

願と瑞希がサボって遊び尽くした日でもニーゴの動きは止まらない。

いつものようにナイトコードの通話を開いて、揃うのを作業しながら待つ。

大体最後になる雪が来た時点でニーゴの動きは活性化する。それまでに作業したモノを共有して更なる進化を促す。

そしてそんな今日も、願にえななんから声が掛けられる。

 

『どうしましたか?』

 

『下絵、出来たから見て。』

 

そう一言言われ、願のデスクトップに一つのファイルが開かれる。

そこに映っているのは一つの絵の下書き。まだ色どころか線でさえも色々と引き直された跡がある一枚絵。

 

『そうですね………』

 

願にとって、えななん…引いては東雲絵名には色々と借りがある。

だが、そのえななんがそんな騙し騙しの言葉を好むわけがないと知っている。酷評されれば凹むがすぐに奮起する。そんな不屈の精神の持ち主が東雲絵名だと知っている。

 

『ここと、ここ。変ですね』

 

『あ。やっぱりそう思う?』

 

『ええ。少し変だと思います。』

 

そ、ありがとう。少し考え直してみるわ。その一言の後にナイトコードのえななんの欄からマイクを切っている表示が出てきた。基本的に集中するときはマイクを切って電話だけ繋がっている様にしているが願は繋げている方が集中できるとして、よく他のメンバーからどっちが良い?などと聞かれることも少なくない様だ。

 

 

『私、明日学校だから一旦寝るね。』

 

『了解。おやすみ雪』

 

夜からもう朝になりかけとなった午前3時ぐらい。雪が明日も学校ということで一旦寝ることにしたらしい。K…奏は通信教育だし、えななん…絵名は深夜制、瑞希と願はそもそも適当な時間に学校に行くサボり魔だ。ここでは“優等生”は雪だけとかいう凄まじいニーゴの内部事情があったりする。

 

『あ。そうそう。』

 

『何?えななん。』

 

『これ。仕上げ。……KもAmiaも確認してほしい』

 

あの後どうやらえななんはいつも以上に筆が載ったらしく、いつもとは考えられない速度で色まで入れられている絵があった。そこには願が指摘した点の感じはどこにも無く、綺麗な一枚に仕上がっていた。

 

『……良いと思う。』

 

『へぇ。良いじゃん』

 

『そうですね。…言いにくいですけど、前回より遥かに。』

 

上から順に奏・瑞希そして願、全員が絵名の絵に強い好感を抱いた。

そんな三人の姿を見てえななんは嬉しそうに、次の絵の下書きにはどんなモノを入れたらいいのか聞き出し始める。

 

えななん『いつも、ありがと。』

 

基本的に、願は出来上がったモノを合わせるのが願の仕事にして最終チェック以外では中々ニーゴの案には触れないことが多い。いつものように作曲担当のKと話し込んでいたえななんを横目に自分の作業に集中する。瑞希もどうやらそのつもりらしい。次、願がふとナイトコードを見ると個人チャットに何か来ているようだとカーソルを合わせる。

 

(……えななんからだ。)

 

そこには一つのファイルと、不器用な感謝の言葉。

えななんらしいな。と願は微笑を浮かべ、ファイルを開く。一体何が入っているのか少し楽しみに表示されるまでを待つ。

 

「……………………いいじゃん。」

 

そこは微笑んでいる願の絵。その似顔絵には、周囲に色んな花びらが舞っている。

基本的に、自分がどう見られているかそれに興味を抱かない願にとって、そう自分の顔をこう言う形で見るとは想像していなかったらしい。

えななんの絵の中の自分は本当に昔の自分を思い出させるようなそんな絵だ。

……何故か知らないが願はこの絵をすぐに保管してしまったのだった。

 

wish『似顔絵、ありがとう』

 

 

 

「………………そ。」

 

視点は先程、願からチャットが来て赤面するえななん…絵名は昔を想起する。

私、東雲絵名に絵の才能がないことなんて薄々気がついていた。でも、それでも絵というのは私の唯一無二と言っていいもので。

 

『お前に、画家になれるほどの才能はない。』

 

クソみたいな親父だけど絵の事に関しては、信用できるような奴だった。

自分の絵は上手いなんて錯覚して、高校受験にも失敗して…絵を見てもらうだけだったsnsは別のアカウントで始めた自撮りの方が多く反応を貰えて。

次第に腐っていくだろう私を救ってくれたのが今のニーゴで、奏…Kだった。

 

その人は、私の絵を評価してくれた。私の絵を認めてくれた。私の絵が、ニーゴに必要なんだって言ってくれた。それだけでも私がニーゴに加入するのに喜んで入って行った程だ。

でも、そこにも薄々気がついていたけど“才能”に溢れている人しか居なかった。

私は怖かった。いつかKに私の無才がバレて、ゴミのように捨てられる…そんなことが怖かった。勿論、今思えばそんな事は杞憂だったと笑えるが当時はまだ、全員との関わりが薄かった時期だ。

 

或るときだった。雪がとある人をニーゴに入れないかという話をした。確かに編曲に作詞と雪のやることは多い。ここまで一人でこなせていたのは逆に驚くほどだ。

逆に今まで卒なくこなせて来ていた雪の能力の高さに驚くだろう。

 

『初めまして。wishです。』

 

男性の声。最初はそれ以上それ以下だけで、正直に言うとどうでも良かった。

でもその人は、wishは私が思っていた以上に私の絵の何処が良くて、悪いのか、前回描いた絵を例に示してくれるのだ。それは正に私の肯定感と、そして絵が前よりも鮮明になっていくこの感覚。まるで麻薬のように私の心はwishの肯定に飢え始めていた。

 

『そう。私がown。』

 

ある日の事だった。一週間ほど雪が来なくなって、そしてセカイという摩訶不思議な空間に導かれ雪が最近新進気鋭のownである事を知った。そして…それは雪がニーゴに入れたwishだって知っているはず…とwishに裏切ったのかと声を出そうとした時、雪は凄い剣幕でwish…願に縋り付いていた。

 

『願……願、願、願、願、願。貴方だけは、今の私を受け入れてくれるよね?』

 

いや。縋り付くだけではああはならない。雪…まふゆの身体の影からまるで鎖が縛り付けるように願の足首を捉えるのを見てしまったのだ。

私は多分その時に、まふゆを知ってしまったのだろう。

 

「ふふっ……」

 

ニーゴの絵を描く傍ら私は一枚、秘密裏に描き続ける絵がある。

これは誰にも見せるわけでも、また誰かがこの絵の存在を知るわけがない。

 

「“天才とは何か”」

 

いつか。私は願にこう質問した覚えがある。それはつまり“天才”とは一体何を指すのか。と。Kは音楽の天才、雪は詩の天才、Amiaはアニメーションの天才。

それに比べて私には絵の才能なんて、無い。だからこそ知りたかった。詩の天才に今まで付き添って来た。彼だからこそ。

 

「そうだな………」

 

その時間は今までよりも長い。非常に長く感じる時間だった。

 

「自分と他人の違いを、明確に知るもの。……そんな気がするよ。」

 

ああ。本当にこの天才は、何処でも人の心を乱す。

きっと、ニーゴの中で一番“天才”だと言えるのは願だけだと思う。けど願の天賦は一人、孤高な天才では無い。寧ろその逆だ。彼の天賦は、“人といる事で発揮される”才能だ。……それに名前をつけるならば“調和・繋ぎ止める”才能だろうか。人を惹きつけ、そしてそれに繋がれた人は必ずと言って良いほど彼を必要としてしまう。

 

「質の悪い依存症みたいなモノよね。」

 

寧ろ、そんな主人公らしい才能を持った彼をここまで堕としたまふゆは一体どう言う存在なのかと言いたくはなるが、大体想像付く。願を構成する全てをわざわざ一つずつ手折ったのだろう。想像するだけでも非常に悍ましい。

 

「ま。私も、同罪か」

 

そこまで分かっておきながら何もしない。何も出来ない私が言える話では無い。

願は必要なのだ。必須なのだ。私たちに。願が昔誰かと一緒だったとか、願を愛している人がいたのかも知れない。でも、それでも私たちがその全てを簒奪する。

 

「………………ああ。どうか。」

 

私は仕上がったその絵に、信仰深い巫女のように手を合わせる。

こんなことはしてはならないと知っている。これは許されてはならない行いだと知っている。でも、きっとこれっきりだと決めている。

 

少女は一人、愚かしくも自分の描いた絵に祈りを捧げる。

………その絵とは菩提樹を背景に、曼荼羅を背負った神々しい願。

少女が、絵名が願をどう言う目で見ているのか理解できてしまう絵であった。

 

 

 

「これ、こっちの方が良くないです?」

 

「でも。これにしちゃうと……」

 

とある部屋。カーテンは完全に閉め切られたその部屋にて男女は二人、パソコンの画面と睨めっこしていた。少女は…奏は椅子に座り、何度も何度も幾つかの旋律を再生する。少年…願はそんな奏の背中から手を伸ばして、デスクトップを指差す。

 

「ですが、今回の曲は……」

 

「それだとこういう解釈も………」

 

おかしな点を挙げるならば一つ。二人の距離感は無いようなモノだ。

直に熱を感じるように身体はピッタリとくっつき合い、声を交わすその距離も30cm有るか無いかと呼べるほどだった。

 

「でも、この曲をそういう風に…」

 

「ですが、これを見た時そういう解釈を……」

 

段々と声が荒くなっていく。奏と願が一体一で曲を作り続けると大体熱中するといつもこうだ。何故か不思議なことに感性が近しい奏と願は毎回この様にぶつかる。

だがそれでも彼らはそれがまた新しい世界を開くのだと知っているからこそ、この白熱する議論を楽しんでいるのもまた事実であった。

 

「…………まあ。一旦落ち着きましょう。」

 

「そうだね……」

 

両者、怒鳴り声になる前には必ず沈静化するのもまた面白い点だ。

曲に対して真剣になっている二人だからこそ、きっとこれは通じる芸当なのだと嫌にでも自覚せざる終えない。

 

「…………風呂でも入って来たらどうですか?」

 

「うん……そうする。」

 

奏の髪の荒れぐらい。そして目の充血具合から見て昨日からずっと音楽を作り続けていたことぐらい願はお見通しだ。奏は下手をすれば人間的な生活を忘れてしまうことが多々あることを知っているし、その現場に遭遇してしまった以来、二人の間に遠慮というものが消失しているのも事実だ。

 

「あ………一緒に入る?」

 

「…………背中ぐらいは流しましょうか?」

 

じゃあ宜しく。と願の腕を引く奏。あきらかに色々とおかしいだろうと言いたいが、これが彼らの常識であるのだ。彼らの仲には恥辱というものは荼毘に付したらしい。

 

 

「痒いところ、有りませんか?」

 

「ぅん………無い………」

 

シャワーで奏の身体を冷やさないように流しながら、願は奏の髪の毛をシャンプーで洗う。その本職も裸足の見事な手際である。その裏付けに奏の身体には余分な力は掛かっておらず、願に全てを委ねるかのように目を閉じて待っている。

 

「流しますよー」

 

「……はーい」

 

シャワーヘッドを手に取り、奏の髪の毛を洗い流す。

慣れた手つきから分かるように、実はこれもう何度か目の行動だ。

本当に、これで男女の関係がないとは嘘だと言いたいが事実らしい。

 

「あ…そう言えば匂った?」

 

「ええ。カップラーメンの香りなら」

 

最後に体にお湯を浴びている奏は、片目を開いて願に問う。

例え、一晩だからとは言え匂わない訳がない。前々ならば別に自分だけだからそこまで気にしないが、流石に願がいる手前そこまで女を捨てた訳じゃない。

願にとって、奏からは匂いはしないと否定する。ただ、非常に部屋からはカップラーメンの匂いはしたが。

 

また食生活が疎かになっているのを間接的に願に咎められて、奏は顔を背ける。

流石にどうかとは思っていたらしい。ただそれ以上に手軽で楽だったからカップラーメンの生活になってしまったのは認めているらしい。

 

「………次入る?」

 

「………濡れてしまいましたし、お借りします。」

 

でもこのまま行くとお説教だと察した奏は話を逸らすために、願に次お風呂入るか聞く。奏の手前、一応着てはいるが薄着で居るのだ。濡れてしまうのは通理だろう。このままだと願自身が風邪を引いてしまう。

 

「じゃあ先出るね。」

 

「キチンと拭いてから服着て下さいね。」

 

すれ違うように、奏は風呂場を出る。別に願が身体を洗い終わるまで待っていても良い。でも、残念ながら今日は風呂の栓を抜いてしまった。流石に裸で居るのは寒いと先に出てバスタオルを被ろうと戸に手を掛ける。……あ、そう言えば

 

「興奮、した?」

 

「…………ヘッ………」

 

少しこうすけべな感じで奏は願に見せる。だと言うのに願は一瞥した直後、鼻で笑ってお湯を浴び始めた。そんなノってくれない願を見て、奏は不満そうに口を膨らませ、どうにかしてやろうかと思案する。横目で願の姿を見ると上を向きながら目を閉じて顔からお湯を浴びていた。

 

「…………えい。」

 

奏は、自分の下着と下着の間に願の薄着を入れた。今日はお手伝いさんが来てくれる日である。だからこそこれはもう洗う物だ。それに願の服は家に二着くらい置いてある。……慈悲深い奏さんは取ってきてやろうと、箪笥を開ける。

 

「…………………………」

 

奏は願の服を取って自分の今着ている服の上に乗せてみる。明らかに、願の服の方が大きい。こんなのを着てたんだと奏は一人、想像してしまう。

 

「…………………………っ!!」

 

そしてその直後に浮かんでしまう願の裸。頭の中で何度も何度も浮かんでは消えてその間奏は動けなくなってしまう。……最近は、いつもそうだ。頭に浮かんでは消えて何度も何度も巡って、その間凄くお腹の下辺りが熱くなってしまう。

 

「置いとくよー!」

 

「………?ああ。ありがとうー!」

 

収まってきた所に、奏は急いで願のパジャマを風呂前に置いておくことにした。

時間はもう午後。そろそろお手伝いさんが来てしまう時間だ。奏は一人部屋に戻って意味もなく、椅子を回転させる。………前までならばきっと新しい音楽を考えていたはずなのに。

 

「………お風呂ありがとう。」

 

「あのさ……パジャマ………」

 

「分かってるよ。……明日の昼には一旦帰るよ。」

 

なら良いや。と奏は首を縦に振る。そう。奏が何故願に薄着ではなく、パジャマを持っていったのか。それはつまりお泊まりということの暗黙の了解だった。

 

「お手伝いさん……来たね。」

 

下からチャイムの鳴る音がする。でも奏は願を椅子にして背中で願に抱えられているこの体勢からはしばらくこのままで居たいと動きを鈍くする。

 

「はい。迎えに行って。……こっちは部屋のゴミ片付けてますから。」

 

そんな奏を察したのか願は奏を抱え下ろす。名残惜しそうに部屋を出る奏を尻目に、願は部屋に散らばった楽譜や諸々の痕跡を少しずつ整えて、ゴミは袋に纏めて捨てようと動く。

 

 

「………ああ。穂波。」

 

「………居たんだ。願くん。」

 

台所。炊事場に向かえば、そこには古くからの顔見知りであった望月穂波が、鍋を舁き回していた。“あの日”以降幼馴染は、いや。願は幼馴染を避ける様になってしまった。もう、綺麗な幼馴染達と歪んで穢れ切った自分ではダメなのだと願は思案す━━

 

「ダメだよ。願。」

 

「      」

 

願の思考に空白が走る。いつもの様に悪い方向に転がる筈だった思考は穂波の頬に添えられる手で強制的に中断させられる。いつの間にか顔と顔の距離は近く、マウストゥマウスの域まで迫っていた。

 

「………………分かってるよ。」

 

「なら良いんだけどね」

 

何処までも溜め込むんだから。と既に鍋に顔を向けている穂波の顔は何処かさっきより嬉しそうだ。その悲しげながらも何処か歓喜が混じっている穂波の微笑みは願を過去の追憶に誘う。

 

『…………何も言わないのか。』

 

『言ったところで。だよ。』

 

あの日の再会は最悪だった。願自身が幼馴染達を完全に避けていたというのもある。これまで10年以上付き合ってきた幼馴染だから習性を理解していない訳がなかった。それが、この再会だ。奏の家での再会。ハウスキーパーと雇い主の友人という最も想像の付かなかった最悪な喜劇。

 

『………………私も、逃げちゃったからね。』

 

『そう、か。』

 

願は穂波は幼馴染から逃げて来た。古いものをゴミとして捨てた様に。

 

『それに……私たちじゃダメだったんでしょう?』

 

『……………………………………』

 

深い沈黙。その沈黙は何よりも詳しく肯定だと認めている様な物だった。

穂波も“あの日”から壊れてしまった。私たちから光を強奪したあの紫色の眼差し。

 

『今は、何も言わないよ。』

 

『………………………………そうか。』

 

二人の視線は消える。誰が言うわけでもなく、背中で会話していた。

今の顔は見られたくない。今の表情だけは見せたくなかった。

 

『……………………………すまない』

 

言う資格が無いにしろ言ってはならないにしろ。今の願がそれを口に出してはならないにしろ。それは、穂波への呪いになってしまう。

 

『…………お、そいよ………』

 

部屋を出る。廊下に出る。ドアの向こうで穂波の啜り泣く声だけがする。

許してくれとか、もう一度なんて言える訳がなかっただろうに。

 

 

「………望月さん。ありがとう。」

 

「はい。大丈夫ですよ。」

 

日も暮れ始めた夕方。穂波は一通りの家事を終え、奏の家を出る。

その後は語ることもないだろう。願と二人っきりになった奏は、晩御飯までまた願を椅子にしながら音楽を作り、そして日付が変わる頃。

 

「おやすみ……」

 

「おいこら。」

 

ベット上の楽譜を一度地面に置いて、奏は願を抱き枕にする様に抱えて寝ようとする。

 

「え?」

 

「え。じゃ無いよ。」

 

流石にそれはと止める願だが、奏はもう寝居る様に足と身体を使って願を下にする。性別の差、そして筋力的に退かせられなくは無いがそれをすると本格的に縄で縛られる(2敗)のを知っている願は一度ため息をついて、諦めた様に瞳を閉じる。

 

「………………………おやすみ」

 

「うん。おやすみ」

 

こうして、1日が終わっていく。

 

 

『はじめまして。wishです。』

 

わたし、宵崎奏と、外夜願の初会合は雪の紹介によるものだった。

わたしが集めた音楽サークル。ニーゴ“25時、ナイトコードで”は、わたしの選んだ人選に狂いはなかったが、雪の負担が大きいことに少しだけ不安だった。何故なら雪は作詞だけでなく、mixまでこなして居たから基本深夜は何時も居るのを考えたらその負担の大きさは察して余るべきであった。

 

だからこそ、雪のその提案には賛成だった。後は技術だったがそれは何回かテストとして雪がやってくれていたらしい。三曲ほどのmixをしてくれたみたいだけどその技術は雪のも劣らずとも。という後はその人の人相だけだった。……その点、雪が推す人だからあまり心配はしてなかったけど。

 

『はじめまして。Kです。ニーゴの作曲をしてます。』

 

『そうなんですか?』

 

その後は至って普通に話は進んだ。いや。どちらかと言えば盛り上がった方だろう。wishはこの歌のここの旋律がどうだとか。この歌のリズム的な解釈は等と語れる程だった。……正直楽しんで話していたのは認めよう。

 

『Amia。動画の資料入れときます。えななん、絵の資料も。』

 

ニーゴでのwishの働きは本当に凄かった。特にわたしたちがまだ制作段階でのアシストは一度wishの手が入ってしまうともう二度とアシスト無しでは出来なくなるほどだった。

 

『K。このリズムだと合わせた時に………』

 

その働きはまさに天才的。wishは人を支える天才だった。

でも、そんな日が続く事もなかった。

ある日、雪が失踪したのだ。そのまま行方知れずで一週間。そしてその行方はwishでさえ知らないという事実。誰もが手をこまねくこの事態を動かすかの様に“untitled”という誰も知らないファイルが有った。そしてそれを開くと、そこには私は一度夢に見た灰色の何もないセカイに立っていた。

そしてわたし達は本名で挨拶をし合い手分けして探そうと言うその時に、雪が現れた。

 

『……ねぇ、これは?願?』

 

『……………違う。わたし。』

 

そこには、姿の違うミクが立っていたのだ。白色で服も何処かまばらで瞳の色も左右で違うけど、それは明らかにミクだと言える存在だった。

 

『雪が、ownだよ。』

 

何となく、そんな気がしていたのだ。それはわたしだけの勘とも言えるだろう。

 

『消えたがってるくせに………』

 

そうだ。わたしは消えたがっていた。だって、心の何処かで思ってた。わたしの歌にはそんな力なんて本当は無いんじゃないかと。……でも、それでも誰かを救う歌を作らなければならない。

 

『願……願、願、願、願、願。貴方だけは、今の私を受け入れてくれるよね?』

 

雪の異常なまでのwish…願の執着を見た。でも何故か、わたしの心に残ってしまったのは、何処か羨ましいと言う羨望だった。そしてそれは間違えだったのだ。

 

『ねぇ。どうしたら、わたしは貴方の様に………』

 

『……………自分の様にですか。』

 

わたしは雪を完全に救えなかった。でも、雪は願と居る時だけ救われた様な許された様な顔をしていたのだ。……ならどうして。

 

『わたしは………救わないといけないのに。』

 

父を殺した。わたしの音楽で。わたしがでしゃばったから。

作曲者の父がいた。そんな父は「誰かを幸せにする曲」を作る。そんな姿にわたしは憧れたのに。その全てわたしが壊してしまった。……わたしの才能がお父さんを苦しめて、殺してしまったのだ。

わたしの曲が、誰かを幸せにできる曲じゃなかったから、お父さんはああなった 。なってしまったのだ。

わたしは、誰かを幸せにできる曲をつくれるようにならなきゃいけない

どんな人でも、救える曲を わたしは……つくり続けなくちゃいけない。

 

それが…わたしの出来る償いだから。

 

『じゃあ。俺が…許しましょう。』

 

『………………え?』

 

『貴方の歌は……既に誰かを救ってるんですよ。』

 

『………でも。』

 

『そもそも。全ての人を救おうとするのが傲慢なんです。』

 

『…………っ!でもっ!』

 

『まずはその両手で抱えられる分だけでも救ってください。』

 

『………………!!!』

 

『まふゆ……救ってくれるんでしょう?』

 

そう。それはわたしと貴方だけの秘密。貴方との約束。

子供みたいに小指を繋いで誓ったあの日の約束。わたしは雪を、まふゆを救い。願はわたしを許し続ける。そんな側から見れば歪で、約束にもなってない約束。

でもわたしは、わたしにとってそれは光だった。

 

「━━━━━━━━━━っ!」

 

突然、目が覚める。閉まっているカーテンからはまだ朝日が見えないところを見るとまだまだ朝には遠い様だ。隣を見てみるとそこにはあどけない顔して眠りに就く願がそこには居た。

 

「……………………………ん。」

 

身体を願の隣にピッタリとくっ付ける。

ぐっすり寝ている願の身体はポカポカして心地がいい。

 

「…………………………………」

 

身体を擦り付ける様に動く。まふゆに対抗するわけじゃないけど、願はわたしの神さまだ。わたしに、わたしだけに救いを与えてくれる何処までも優しい神さま。

 

「……………………………」

 

だから神さまを縛り付けるまふゆとは一回話をしないといけないかも知れない。

神さまはわたしのです。って。だって、わたしがまふゆを救うまでずっと、ずっと居てくれるって約束してくれたもん。そのために穂波からも………

 

「………………」

 

………今はまだ寝てて良いかな。ああ。どうかこの幸せが続きます様に。

 

 

 

 

まふゆ『今日、付き合って』

 

とある日。願のスマホに入ってきた一通のメール。まだ授業中だと言うのに願はバレない様にスマホを取り出して誰からか見る。……まふゆからだった。

 

願『駅前』

 

これぐらいで良いだろう。長々と文面で話すのは得意としないから。

どうせ向こうも“優等生”なのだから放課後までスマホ見ない筈だ。

 

 

「気をつけー。礼!」

 

終礼の鐘が鳴り、放課後になった。部活動をやっている人たちが急いで教室を出て行き、特に何もなければ思い思いに教室を出て行く。スマホを見るとそこにはまふゆの了承を示すスタンプが貼られていた。

 

「遅い。」

 

「優等生外して良いのかよ……」

 

急いで駅前まで来たというのにそこには既にまふゆが待っていた。

本来、願が所属している神高よりまふゆの宮女の方が終礼の鐘が鳴るのは遅い筈だ。だというのに、駅前にまふゆの方が涼しい顔をして着いているのは非常に謎だ。駅まで直線距離的にはどっちも変わらないというのに。

 

「………別に。願なら良い。」

 

「そ。………で今日は?」

 

まふゆは基本的に猫被りだ。……いや。あれを猫と呼んで良いのか分からないが非常にガワを被るのが上手いとだけ認識していれば良い。

そしてその被りに被った猫を下ろして素を晒すのが願と居る時か、ニーゴといる時だけというのがまた闇の深い話である。

 

「いつもの」

 

「はいよ。」

 

じゃあ行きますかね。お嬢様と願はまふゆの手を引き、連れて行く。

それに身を任せる様にまふゆは隣で腕組みをするかの様に願の腕を絡めとる。

 

「………………………」

 

「…………………………」

 

二人が人気を避け、時には人並みに身を隠したどり着いた店は小さな古い喫茶店だった。外から見るならもう店がやってるのかやっていないのか定かでは無いほどで、でも店内は綺麗にされて、昔ながらの喫茶店をそのままにしたかのような暖かさが溢れていた。

地元の穴場と言うのだろうか。どちらかと言えば老いた人が多く席に座り、思うがままに喋っている。されど煩すぎることもなく、またこんな店に二人以外の学生が来ることはないから何気に気に入っているのもよく来る理由となっていた。

 

「……………」

 

飲み物と摘める物を頼んで二人は特に喋るわけでもなく、思い思いに確実することをする。まふゆはいつもの様に参考書を取り出して、目の前で願は読書をする。

時間が許されるその時まで。互いのスペースを乱すわけでも、何か話すこともなくただ目の前に居るというだけの時間をコーヒーの香ばしい良い匂いと共に過ごしていた。

 

「…………………………帰る?」

 

「………うん。」

 

だけどそんなぬるま湯みたいな時間はすぐに終わってしまう。

窓から見える景色はもう暗くなり始めて、もうすぐ夜になってしまう。

 

「ありがとうございました。」

 

「また来てねぇ……」

 

優しそうなお婆さん……この喫茶店のオーナーが嬉しそうに勘定する。

よほど若い男女が珍しいのだろうか、最近では顔見知りだと言える様になってきた。…まあその分願とまふゆの仲の邪推もされてはいるが。

 

 

「抱きしめて」

 

「……………ん。」

 

喫茶店を去って直後。夕暮れになった人気の少ない路地で突然まふゆが抱きしめる様に言ってくる。そしてそれを願は決して遮ることなく、まふゆを抱きしめる。

 

「………もっと、もっと」

 

「………………………っ…」

 

もっと苦しく。もっと強く。そういう様にまふゆは願の身体に擦り付ける。

夕暮れに伸びる影は一つに、もっと奥深くに混ざろうとするかの様に見える。

 

「……………っ……ん……」

 

「……………………ん………」

 

さらにそれだけじゃ飽き足りないと言わんばかりにまふゆは願とディープキスを始める。口と口が繋がり、舌と舌が絡まり合い、ドロっとした甘い液体が交換される。二人ともさっきまでコーヒーを飲んでいたせいかコーヒーの風味がするがそんなのもお構いなしにキスも深いハグも続く。

 

「…………ありがと。」

 

無限に続くと思われたそんな愛情のぶつけ合いは、どちらともなく終わった。

まふゆは仏頂面の上に何処か名残惜しそうに去って行く。

 

「………………………………」

 

さようならの挨拶はしない。…だってさよならは怖いから。

何も言葉は交わさない…だって交わしてしまうとずっと続いてほしいから。

ただ、夜に彼らは消えて行く。まふゆは家に、願はバイトに。そこにはどうしようもない断絶した、されど何処か深くで繋がる“何か”が有るのだ。

 

 

「ただいまー!」

 

「あら。お帰りまふゆ。晩御飯できてるわよー。」

 

「嬉しい!今晩は何かなー?」

 

………何も何も、感じない。

 

「まふゆ。今日はどうしてたの?」

 

「今日はねー。部活無かったから図書館で勉強してたよ。」

 

「偉いわね。まふゆ。」

 

「うん。将来のためにね。」

 

………怖い。怖い。怖い。

 

「じゃあお母さん。私は部屋で勉強してるから。」

 

「そう。がんばってね。」

 

自分が分からなくなる。自分が消えて行く。

落ちて行く。何処までも何処までも落ちて行く。

 

「………………………………」

 

上を見れば、糸に雁字搦めになった私がいる。

抜け殻の様に落ちて行く私は雁字搦めになった姿は遠ざかり、もう見えなくなってしまった。それでも私はひたすら堕ち続ける。

 

「…………………」

 

光が消えて、声が消えて、体が溶けて行く様で、記憶にも穴が開き始める。

………でも、それでも私は願との記憶だけは鮮明に思い出せる。

 

 

『………………………っ!』

 

一目惚れだった。この世界で何処までも灰色のこの世界でたった一人の同類。

誰からも理解してもらえないこの胸に空いた空洞。幸せな筈なのに、満ち足りてる筈なのに。…何もわからない。何が好きだった? 何がしたかった?

その全てに答えられない。何処までも深い穴だけが空いていた。

 

『………まっ!!』

 

でも貴方もそうだった。唯一の同類。誰よりも満ち足りてる筈なのに大きな空洞でハリボテの言葉を並べている同類。今ならきっと言えるのだろう。

 

ハジマリの夜。私はその日、“運命”に出会ったのだ。

 

『………名前は外夜願。四人の幼馴染が居て、成績優秀。そして基本的に幼馴染達といる事が多い……か。』

 

そこからの私は速かった。まずは情報を集めた。どんな手段でも構わない。どんな方法でも構わない。…彼が欲しい。そうだ。私は彼が欲しいんだ。

その時だけだろうか。私が人間関係に明るい事に感謝したのは。

クラスメイトは、噂が大好きな子達はまるで伝書鳩のように情報をくれる。

 

『バイトもこなしていて…そして教師とも仲が良い』

 

そして願を知れば知るほど、同類だった。むしろ似ていない点が性別しか無いのではないかと言わんばかりに私たちは似ていたのだった。……いや。唯一家庭環境と、幼馴染という存在だけは対極だったが。

 

『…………問題は幼馴染………か。』

 

きっと願がまだ堕ちていないのはきっとその幼馴染が居るからだろう。何となくそんな気がした。でもそれは間違いではないだろう。何か一つ持っておかないと簡単に堕ちてしまうだろうから。

 

『…………………でも、大丈夫か』

 

願はやっぱりガードが固かった。まあそれは当たり前か。貴方は本当に私とよく似ている。だからこそ付け入る隙が出来る。そんなあからさまな隙を用意してる詰めの甘い所なんてギャップがあって良いと思う。

 

 

『こんばんは』

 

勝負は夜。私の塾の終わりと願のバイトの終わりが重なる時間の日に私は決めた。……わざわざ数週間も掛けて願の放課後を調べ上げたのだこれはまさに純愛と言っても過言ではないだろう。

 

『…………?こんばんは』

 

願は不思議そうな顔して私を見ていた。そんな上面だけ作ったかの様な顔に対して何処までも内面は動いていない無な状態に、私はとても喜んだ。

 

『私の名前は朝比奈まふゆ。貴方の名前は?』

 

『外夜願……』

 

......あ。…ああ!私の見込んだ通りだ。願は私の素顔に気がついてくれる。私のどこまでも空いている空白を埋めるのはやっぱり願だったのだ。

欲しい。欲しい。欲しい。

黒い要求が滲み出てくる。はじめての感覚だ。他の何を、全てを捨ててでも願だけは欲しい。願の構成する全てに私を刻み込みたい。身も心も、全部私のモノにしたい。

 

『話をしない?』

 

『…………っ。良いだろう』

 

初めての感覚だった。燃えるような灼熱の煩い、そしてドス黒いまでの所有欲。

貴方が、欲しい。肉片一ミクロ、魂のその全て貴方を構成するその全てを私だけを見、私だけに依存して欲しい。

 

『よく、そんな状態で居られるね。君は』

 

『君こそ、よく見ても気がつかないほど。一体どれだけ偽り続けるつもりだい?』

 

『君じゃない。まふゆ。そう呼んで?願。』

 

『まふゆ』

 

『そう。』

 

嬉しい。嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しいっ!!!

今までに感じたことのない歓喜が身体中を蹂躙する。全身が痺れるような快感と快楽で溢れる。私は今まで空っぽだった。……ああ。でもそれに間違いはない。その空っぽは願から向けられる全てで埋まるのだ。まるでこうなる事が運命。いや定めなのだろう。凹と凸はこの時噛み合ったのだ。

 

『私のモノになってよ。願。』

 

『……………随分と情熱的だな。まふゆ。』

 

『そう?私、結構尽くす方だと思うよ?』

 

『抜かせ。お前の目には何も写っていないのは明白だ。』

 

よくそんなナリで愛していると嘯く物だ。そう願は苦々しく呟く。

あ。。そんな顔は観察をし続けて初めて見た。………やっぱり運命なんだ。

貴方も私といる時だけ、本当を曝け出せる。私も貴方といる時だけが幸せなんだ。

 

『写ってない?……そうだね。』

 

『分かっているなら、今日会った事━━』

 

でも少しばかり強情だった。私の予定なら願はもう首を縦に振ってる筈なのに。

そんな願も良い思う。でも、流石に私だって我慢の限界という物だってある。

公園のベンチ、そして隣り合わせで座ってる私たち。……取る手段は一つ。

 

『……………どういうつもりだ?』

 

『そう。怒らないで?』

 

押し倒して感じる願の熱は非常に暖かく。

今まで感じたなによりも安らぐモノだった。

もっと、もっと欲しい。貴方の全てを。貴方の全部が欲しい。

 

『大好き。大好き。私たちきっと良い関係が作れると思わない?』

 

『思わない。どうであれ俺はお前が━━━━』

 

うるさいなぁ。そんなうるさい口は塞いじゃお。

 

『何をするつもりだっ!!』

 

『名前は外夜願。四人の幼馴染が居て、成績優秀。そして基本的に幼馴染達といる事が多い……どう?間違ってない?』

 

『お、まえ……』

 

『でもその実、幼馴染なんてどうでも良くて、そんな自分が嫌い。違う?』

 

『…………………………違う。』

 

『嘘つき。』

 

そんな怒られた子供みたいに目を逸らす願も可愛い。……後一押しかな?

 

『貴方は、幼馴染なんて本当はどうでもよくて。』

 

『……………………』

 

『極論、他がどうなろうと知ったことではない究極の排他的論者。』

 

『………………………』

 

『中身なんて空っぽでただ何が好きなわけでも、何がしたいとかもない生きた屍。』

 

『…………………』

 

『可哀想だよね。でも、幼馴染はもっと可哀想じゃない?』

 

『どう、いう、ことだ……』

 

そう。願の致命的な隙は幼馴染の存在。今まで隠し通せてきたその空白…でも本当に隠せてきたの?願は。だって初めて見たあの日から私は気がついたというのに。

 

『本当に気がついていないのかな??』

 

『………………………』

 

『もし気がついていなくても最低だよね。』

 

『誰よりも君と長くいたはずの幼馴染には何も言わなくて…それってさ。結局赤の他人と大差ないって事じゃない。』

 

『……………………めろ………』

 

『可哀想だよね。幼馴染。そんな“人でなし”風情が人間様に近づいて良いの?』

 

『……………………ゃ………』

 

『ダメだよね?……だからさ。』

 

ここだ。まだ笑っちゃダメだ。ここからが本番。願が堕ち切ってしまうのか。私に沈むかの瀬戸際だ。やり方は覚えた。何千回ともシュミレートした。

 

『同じ人でなしの私が一緒に居てあげるの。』

 

『………………………ぁ………』

 

『可哀想な願は私が生きる理由にしてあげる。…だから私も願を生きる理由にさせてよ。』

 

『それは、いつまで?』

 

『死ぬまで。……ううん。死んだ後も永遠にずーっと。』

 

『…………分かった。』

 

あ。。あああ!!夢にまで見た時が来た。最初に話しかけてくれた以上に、私の名前を呼んでくれた以上の衝撃が身体を走り続ける。胸先はブラを押し上げるほど硬くなって、股下は酷い濡れ様だ。お腹の下辺りは今凄い蠢いてるのが分かる。今まで一度もそんな感覚は味わったことなんて無かったはずなのに。

 

『大好き。大好き。大好き━━━━━━━』

 

次のキスは、私が舌を絡めて行っても願は拒絶するどころか優しく受け入れて、とてつもなく長いディープキスになった。最高の時間だ。草むらに無粋な乱入者がいる事には気に食わないが、別に今はそんなどうでも良い事以上の快楽と快感が走る。

 

『ずっと、一緒だよ?願。』

 

『…………うん。よろしくね。まふゆ。』

 

 

「ああ。………良い夢見た。」

 

もうそろそろ25時だ。今日もまたニーゴは始まるのだから。

 

 

 

 

 

「きた。願」

 

「遅くなった。ミク。」

 

ある日の夜遅く。まふゆの作り出したセカイ。通称“誰もいないセカイ”。そこにはわずかに光が差すだけの、静かで何もない、無機質なセカイ。でもそんなセカイを願は気に入っていた。ちなみにここに入り浸るのが一番長いのは願だったりする。だからこそ必然的に、セカイの中の住人であるバーチャルシンガーであるミクとは一番親しい仲である。

 

「…………ん。」

 

「はい。」

 

そこには既に座って願を待っているミクが居た。もしここで願がミクの指定する行動以外を取れば願は強制的に意識を落とさせられる未来しか見えない。

その行動とは…膝枕されないといけないと言うことだ。非常に幼気な少女に見えるミクに男子高校生である願が膝枕されるという構図は犯罪臭半端ないが、ミクはこれをしないと少し機嫌が悪くなるのは後々来るバーチャルシンガー達の秘密だ。

 

「……………おやすみ。」

 

ミクの膝枕は何処か人肌の暖かさで、リズム良く撫でられる髪の毛と優しく歌われる子守唄が願の意識を簡単に奪い取ってしまったのだ。

 

 

「まだ、おきちゃだめ」

 

願が寝てから十数分が経過した所だろうか。ミクは突然歌う事を止めて、願に言葉を掛ける。願はまだ寝ているはずなのに。

 

「まだ、お休みの時間…だよ?」

 

だが、その願の姿を見ればミクの言葉の意味が分かる。

そう。願の胸元からは黒い、黒い靄が外に出ようと蠢いてるのが見えるのだ。

それの正体は、何処かの世界線本編でセカイを一変させた願の負の感情の大元。隠している闇は、このセカイのまふゆの想いに共鳴するかの様に何度も願自身の抑制から振り切ろうとする。

 

もし、その闇が産まれ出てしまったのならば新しいセカイ。…セカイと呼べるかも怪しい深淵が生まれてしまう。勿論、そこでは想いの歌なんて存在することもなく、ミクも現れない。本当に終わったセカイが産まれてしまう。

それは違うだろうとミクは思っている。ミクは願が大好きだ。まふゆの想いから産まれたからある意味当然とも言えるが、それを抜いてもミクは願が好きだ。大好きなのだ。

 

「…………今日は、忙しい。」

 

いつもなら、これだけで終わるというのに、今日はどうやら“外”からの干渉もある様だ。全く諦めたら良いと言うのに、“教室のセカイのミク”は。

 

「願は私たちの。……私たち以外には渡さない。」

 

そうなのだ。この何もないセカイでこのセカイを綺麗だと褒めて、私と一緒に歌を歌ってくれたのも。このセカイを一緒に隣で歩いてくれたのも。ミクにもってご飯を一緒に食べたのも。遊ぼうとボール遊びをしてくれたのも。

 

全部、全部願がしてくれたミクの大切な思い出なのだ。

 

 

 

 

 

 

「はい!大丈夫です。宵崎さん…もっと押していきましょう!」

 

『でも、やりすぎると……』

 

「問題ないですよ!願は鈍感ですから押し倒すぐらいしないと!」

 

『……うん。頑張ってみるね。』

 

「応援していますね!宵崎さん!」

 

嘘つき。わたしは…望月穂波はそんな事思ってない癖に。でもそれでもわたしはこの道を選んだ。たとえ宵崎さんを利用するつもりでもわたしはわたしの全てを使って、わたしの願いを叶える。

 

未だにあの日は悪夢として私の夢に棲みついている。

あの日は、私たちにとっての思い出の日。私たちの始まりの流星群の日だった。みんなバラバラになった今でも、願だけは私の近くに居てくれた。そしてそれは変わらないと思っていたのに

帰り道の公園。そう言えば昔、みんなで遊ぶとなったらここで集まってから咲希ちゃんを迎えに行ってたんだっけ。そんな懐かしさが感傷となって脳裏を泳ぐ。…今となっては遥か昔の追憶に過ぎないが。

 

『………願?』

 

もう真っ暗で人気なんて無いはずの公園で、騒がしい声が聞こえる。

それも何か楽しんでいるとかじゃなく、言い争い。……しかもその声は私たちがよく知っている幼馴染の声に似ているのだ。

 

『………見て、みようかな?』

 

もし幼馴染じゃなかったら引き返そう。わたしはこの時の選択を恨んでいるし感謝している。もし、この時に知らなかったら今はもっと悲惨な事になっていた未来が有っただろうから。

 

『…………………………ぇ?』

 

もっていた、鞄が腕の中から抜けていく。私の力が抜けていく。

どういう……事?分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からないワカラ、ナイ。

 

『願……え?げ、ん?』

 

そこにいたのは、願と見ず知らずの女の人とキスをしている姿、だった。

夢だよね。夢、だよね。わたしが見た幻想で、わたしが見たただの悪夢。

それだけなら、よかった。それだけで、良かったのだ。

 

次の、日だった。

 

『昨日、私たちみてたよね?』

 

『……どちら、さまですか?』

 

昨日の今日って事もあってかわたしはその日マトモに勉強できたかさえあやふやだ。ただノートは碌な文字が書けていないしよく話す人には保健室行ったら?と声を掛けられたのだけが朧げに覚えている。……でも、寝たく無いのだ。今寝たら昨日のキスを思い出してしまうから。

 

『単刀直入にいうね?……もう願には関わらないでくれるかな?』

 

『どういう、事ですか!?』

 

紫色の髪をした綺麗な先輩だった。でも、わたしに向けられる視線は何処までもつめたくて、怖かった事を覚えている。

 

『だから分からない?』

 

耳元で呟かれる言葉。その後のわたしをわたしは覚えていない。ただ部屋は酷い荒れ具合で、わたし自身酷い形相だった。目は充血していて、涙の跡がハッキリと残っていた。わたしは未だに夢に、みる。朝比奈まふゆの最後の呟き。

 

それは━━━━

 

もう願は私が寝取っちゃったから、ごめんね?

 

 

「だから、何がなんでも宵崎さんには勝ってもらわないと困るんですよ。」

 

別に全ては偶然だ。わたしが宵崎さんの家の家事代行になったのも。

その、宵崎さんと朝比奈まふゆが関係があったのも。

そして、宵崎さんが願に好意を持ち始めたのも。

 

「宵崎さんが朝比奈まふゆから願を寝取る。」

 

そして宵崎さんとの契約。“宵崎さんが願に抱かれる時は、一度だけ参加させてもらう”

なら、後はわたしがその一回で願との間に子どもを作ってしまえば良い。

それだけでわたしは良いんだ。……良いはずなんだ。

 

「……………………あははははははははは」

 

口から笑い声と涙が一緒に流れる。

 

「なんて、最低」

 

ねえ。願。どうして、わたしたちじゃダメだった…の?

 

 

 

 

 






外夜 願

ニーゴでの活動名義は“wish”
意味はなんの捻りもなく、名前である願いを英語に変えただけ。
活動担当は、mixや対外担当。やってることはモモジャンifと大差ないがそこにニーゴ達のパーフェクトコミュニケーションが求められる。…そしてパーフェクトコミュニケーションに成功したのがこのナチュラル信仰(される)系ヒロイン兼主人公という。お前、救世主の才能あるよ……

このルートはランダムエンカウント。本編軸が始まるまでに一定以上“朝比奈まふゆ”の好感度を超えた際に分岐してしまう。

与えられる咎は「怠惰」



朝比奈まふゆ

色々と悩んでいる原作前の時期にこんな全方位脳焼き機に関わったせいで盛大に爆破された。まあそうなったらですね。やっぱり自分色に染め上げたいという欲求が芽生えた。
そのせいで、基本は原作のまふゆと変わらないのに願といる時だけ感情が芽生えるという一種の依存状態に陥っている。でもそれでもまふゆが幸せそうなのがなんとも。
願を自分色に染め上げることに成功して、自分の胸の中で堕ちていく願を見て人知れず絶頂していたのはまふゆでさえも覚えていない。
ちなみにその時の視線には大体気がついているから、トドメを刺しに行った。どう考えてもオーバーキル。



宵崎 奏

原作と一番離れてるのだーれ?多分奏。
原作の中で奏に無かった“奏を許す人間”というのが出来上がってしまったせいでその陽だまりから抜け出せなくなってしまったある意味では救われ、ある意味では囚われた少女。
それでも幸せそうに願を兄貴分として過ごしている奏は笑みを浮かべる回数が多くなって行っている。尚、ここから兄貴分に劣情を抱くまでがデフォなので……まぁまふゆvs奏が勃発する日もそう遠くない。

ちなみに穂波とは契約を交わしている。


東雲絵名

凡才。決して天才には至れぬ器。
彼女自身も天才とは孤高で理解のしにくい存在だと思っていたのだが“他者がいなくては成り立たない天才”というのを見て覚醒。‥覚醒?

一番“普通”に近しい彼女は、一体どういう経緯で願が堕ちてきてしまったのか検討が着いてきてしまっている。ここで“天才”ならばどうにか願を救うことが出来るだろうけどもしそれをしてしまったら、少なくともニーゴは元の形を維持できないと知っている。分かっている。



暁山瑞希

実は一番クソでか感情持ち。
ただ静かに隣に寄り添って自分と同じ様に楽しんでくれる。理解者を超えた理解者でありながら大親友。ちなみにこの関係を度し難いとは思っているが、何も行動にしない辺り思っているだけである。(というか思っていることさえ危うい)





初音ミク(ニーゴver)

ここで登場ミクさん。
セカイに生まれしバーチャルシンガーにしてまふゆの想いより産まれたそのミクは願の事をひどく気に入っている。それこそ他のセカイのミクの干渉を自発的に妨げたり、願の明らかに産まれてはならないセカイを眠らせてあげたりと大忙し。ちなみにその対価に願の膝枕を所望している。(そしてよく何回も出来てご満悦である)



望月穂波

今回の被害者。まさかのハウスキーパーのバイト先が、願を奪った原因の一つであることだがそれはそれこれはこれと分けて頑張ってます。
それはそれとして願はよく奏の家に行くため何度か鉢合わせるたびに、異常なほど願を気にするなんでやろな(すっとぼけ)

聡明で誰よりも人との調和を得意とする穂波は奏の異常とも取れる依存性を感じ取っている。そして穂波もそれを利用して焚き付けて少なくとも願との子だけでも宿そうとする執念と狂気にまで至ろうとしている。

そうそれは全て、あの日の深夜の公園。私たちの始まりの場所で忌まわしいあの売女と願が口づけをしたあの日から。彼女は醒めない悪夢に囚われたままなのだ。



星乃一歌・天馬咲希・日野森志歩

信じてた幼馴染が先輩に寝取られた……
少なくともニーゴ系列とは仲良くできない。というか朝比奈まふゆとは犬猿の仲。
これ、レオニ結成出来んの???


めっちゃ頑張ったから感想いっぱい欲しいでーす(直球)
よろしくお願いします。

次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。